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美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
musasabi journal
第117号 2007年8月19日

   

2週間ほど、夏休みをもらいました。どこへ行こうという気もなく、ただ家でブラブラして、散歩でもしようか・・・と思っていたのですが、この暑さは全く「想定外」でありました。散歩なんてとんでもない。家にいたって暑いんですから。ついにクーラーを入れてしまいました。


目次

1)粉ミルクの広告を禁止せよ!
2)英国のインターンシップ事情
3)洪水報道と南北格差
4)変わった法律世界事典?
5)短信
6)むささびの鳴き声

1)粉ミルクの広告を禁止せよ!


BBCのサイト(8月6日)を見ていたらBaby milk ads "must be banned"という記事が出ていました。National Childbirth TrustというNPOが訴えているもので、赤ちゃん用のミルクの広告を禁止せよというもので、Save the ChildrenやUnicefのような子供の福祉関連の組織もこれに同調しているのだそうです。彼らによると、赤ちゃんは最低6ヶ月は母乳で育てられなければならないのに、それをしない母親が多すぎるというのです。

イングランドの法律では粉ミルク(formula milk)のメーカーが6ヶ月以下の赤ん坊を対象に広告掲載をすることは禁止されているんですね。ただ、6ヶ月を過ぎた赤ちゃんようのfollow-on milkなるものについては広告が許されている。

上記のNPOによると、メーカーの多くが、いわゆるformula milkとfollow-on milkの違いが分からないような製品名であったり、同じロゴを使用したりして、結果として母親が6ヶ月以下の赤ちゃんにも人工ミルクを与えても悪くないというような印象を与えている。

英国では76%の母親が母乳で育児を始めるという数字が出ており、7年前に比べると7%増えているのですが、彼らの殆どが数週間でformula milkに変えてしまうのだそうです。6ヶ月間の母乳保育という理想の育て方をしている母親は25%に過ぎないのだそうです。National Childbirth Trustでは、母乳で育った子供はばい菌からも守られているし、将来の健康のためにも望ましいことは間違いないと主張している。

ただこの組織が主張する「formula milk広告禁止」については、疑問視する人もいるようで、ケント大学のLee博士は、母親の育児と広告の関係を調査した結果として、「広告で宣伝されているから、母乳から人工ミルクに変えた」ということは殆どない(negligible)であると言っています。この博士に調査を依頼した乳幼児食品協会(Infant Diatectic Foods Association: IDFA)によると、母親が母乳育児を止める理由は個人的な問題による現実的な理由(pragmatic decision based on personal circumstances)と言っている。例えば母乳を与えるときの痛みの問題もあるし、formula milkの方が授乳作業を親だけでなく父親も責任をシェアできる。さらに働く母親の場合、仕事に復帰することが容易になるなどの理由もある、というわけです。

Lee博士はさらにformula milkによる育児を悪者扱いすることの問題点を次のように指摘しています。

多くの母親がおっぱいからミルクビンに切り替えることに罪の意識と失敗の意識を覚えている。人工乳の広告禁止という最近の議論によって、母親の罪悪感がより強いものになるだろう(Many mothers feel an immense sense of guilt and failure when they move on to the bottle, and this latest debate about advertising is likely to make them feel even worse)。

英国の食品安全局(Food Safety Agency: FSA)は、EU基準なども考慮に入れながらformula milkの宣伝についての新たな規制を考慮しているらしいのですが、広告禁止を訴えるグループでは「formula milkの宣伝が母乳促進のための宣伝を阻害することがあってはならない(should not counter the promotion of breast feeding)」というEU勧告(recommendations)を挙げて、FSAもこの勧告に合意すべきだと言っています。

BBCの記事によると、formula milkメーカーの広告には、含有成分に触れながら「母乳に近い」(even closer to breast feeding)とか「これ以上母乳に近いものはない(the closest to breast milk)」などというものが多いのだそうです。

  • 妻の美耶子に聞いてみたのですが、彼女は3人の子供を育てたのですが、母乳云々については「よく憶えていない」としながらも「多分、それぞれ1年間くらい母乳だったかも」と言っております。 人工乳の広告を禁止せよ、という主張はなにやらタバコの広告禁止と似ていなくもない。育児のことなど全く分からないのですが、Lee博士が指摘する、母親の「罪悪感」論には同情しますね。
2) 英国のインターンシップ事情


日本でも最近出てきているもので、私が学生だった頃には考えられなかったシステムに企業のインターン制度というのがありますね。新卒の学生が実際に就職する前に、企業で「仕事体験」(work experience)を積むという、あのシステムです。その昔(といっても10年ほど前のことですが)アメリカのクリントン大統領が不倫事件を起こしたときの相手(Monica Lewinsky)はインターンだったのですよね。

8月16日付けのThe Economist(英国版)によると、英国でもこれが流行り始めたのは、ここ4〜5年のことらしいのですが、大手の銀行などが盛んに取り入れているんだそうで、一社あたり100人もの卒業予定者をインターンとして採用したりしている。夜間勤務などに使われるらしいのですが、給料が週給で600ポンド(約15万円)、中にはニューヨークへの出張などを提供するところもある。要するに優秀な学生を自社の戦力として確保しようという作戦で、特にオックフフォードのような一流大学の就職アドバイザーには企業からの接触が絶えないのだそうです。The Economistによると、厚遇のインターンシップが企業のPR活動として考えられている(A flashy internship is seen as the best advertisement possible)ということもある。

尤もいいハナシだけではない。英国労働組合会議(Trades Union Congress: TUC)によると、テレビ、映画、広報関係のような「派手な業界」(glamorous industries)のインターンシップは学生をこき使うために行われているとしか思えないようなケースが多い。

(この種の業界は就職先としても人気があって)就職希望者が列をなす。良心的でない企業の場合、それをいいことに、さんざタダ働きをさせてまともに仕事を教えないというところもある(If you're a bit unscrupulous you can make them do loads of work for free, without even teaching them much)。

というわけです。特に浮き沈みが激しい広告業界などは、いまやこの種の「タダ働き」なしには生き残れないといわれており、無給で働くコピーライターやアーティストも結構いるらしい。また「インターン」という立場が、法律で定められている最低賃金(18〜21才で4・45ポンド)以下の仕事を意味することもあるけれど、「教育の一環」ということで許されているような部分もある。実際のインターンは教育の一環とはとても思えないのに、です。

国会議員がこのような事態の改善に動く可能性は高くない。彼ら自身がこれまで無給研究員を大いに使ってきているからだ。また多くの新聞社も波風を立たせようとするような立場にはない(MPs are unlikely to press for better enforcement, given that they themselves have been enthusiastic users of unpaid researchers. Many newspapers are in no position to kick up a fuss)

ただ事態改善の動きも少しはあるらしい。最近、労働党にタダで使われていた、ある若いカメラマン文句をつけたところ、直ちに党本部から労働党議員に対して、若い運動員の取り扱いに関するガイドラインが配布されたのだそうです。また2月にはテレビ各社に対して「無給の見習いは構わないが、学生が意味のある仕事をするときは最低賃金は払うべき」というアドバイスを与えているのだそうです。

さらにIPAという広告業界の団体は今年、学生のための「サマースクール」なるものをやっており、対象は9名だけなのですが、参加者には一人当たり1000ポンド(約25万円)プラス経費が払われている。この企画を考え付いたMark Runacusというマーケティング会社の役員は「ちゃんとした給料を払うのがフェアであることはもちろんだが、この企画によって企業と就職希望者がお互いを見極める機会を持てる」(paying people properly is only fair. But it also allows companies to give candidates an extended once-over)と言っている。

The Economistは、銀行の中には自社のアナリストの3分の2をインターンの中から採用するものも出てきており、あとどのくらいすると他の業界がこれに倣うことになるだろうか?(How long before other industries catch up?)と言っています。

  • 英国における最低賃金ですが、21才以上の場合は時給5・35ポンドだそうです。円でいうと、軽く1000円を超えるわけですが、5・35ポンドというお金がいまの英国で何を意味するのか?前に紹介したビッグマックの値段は、1個2ポンドです。つまり最低賃金で2個半買えるってことですね。日本の値段は280円だった。多分スーパーのパートの給料は時給で800円にいかないのでは?つまり大体2個半ってこと。これが正しいとすると、どこも同じようなものですね。
3)洪水報道と南北格差


確か7月の下旬だったと思うけれど、英国で洪水がありました。私、ある用事があって英国へ電話をしました。電話の相手はバーミンガムの近く、いわゆるミドランズと呼ばれるイングランドの真ん中でした。「洪水がタイヘンだという報道があるけれど、そちらは大丈夫なんですか?」と聞いたところFloods are all taking place in the south, not hereとのこと。「洪水は南の方だから心配はないですよ」というわけ。 実は7月の初旬にも洪水があったのですね。その頃は大して注目していなかったのですが、イングランドの北部を襲ったもので、ヨークシャーなどでかなりの被害がでたのだそうです。

で、これに絡めて8月9日付のThe Economistに面白い記事が出ておりました。英国内におけるニュース報道についての「南北格差」に関するもので、被害は北部の洪水の方がはるかに大きかったにもかかわらず、「南」の洪水は大々的に報道されたのに「北」のそれは余り報道されなかったというわけ。この記事を読むと現在の英国における新聞事情の一端が見えてくるように思います。

英国という国は、政治の面ではロンドンの政府の力がきわめて大きくて中央集権国家であることは、むささびジャーナルでもたびたび紹介してきましたが、この記事によると、新聞についても同じことが言えて、どうしても記事がロンドンもしくは大新聞の読者が多く住む南イングランドを中心としたものになってしまうらしいのです。

小さくて中央集権的な英国においては、全ての全国紙(The Economistも含む)がロンドンに基盤を置いているが、それは新聞社だけではなく、読者もまたロンドン中心なのである。対照的にアメリカ、ドイツ、オーストラリアのような連邦制の国では、全国紙は存在するものの殆どが首都とは違うところに基盤があるものである。In small, centralised Britain, all the big national papers,including The Economist, are based in London (as are many of their readers). By contrast, federal countries including America, Germany and Australia have a national press which exists almost entirely outside the capital.

読者の地域的な分布を見ると、高級紙といわれるFinancial Times, Guardian, Independent, The Timesは、いずれも読者の60%がロンドンもしくは南東イングランドに偏っている。Financial Timesなどは7割の読者がこの地域に住んでいる。反対に北イングランドの読者が多いのは、Daily Star, Daily Mirror, Daily Expressのような大衆紙です。その大衆紙にしても最大の部数を誇るThe Sunの場合、読者の4割がロンドンと南東イングランドで、北イングランドは3割に過ぎない。

北イングランドは昔から製造業が盛んな地域であったのですが、それが衰退した後、それに取って代わる産業が現れていない。全国紙に記事を売り込んでも、なかなか取り上げてもらえないという哀しさがあるようなのです。「全国紙の報道デスクたちには、北イングランドというと"石畳"の町という時代遅れのイメージが焼きついてしまっていて、それに取って代わるものを見つけられない」(National newsdesks realise that the old cobbled-streets stereotype is out of date, but are not sure what has replaced it)というわけです。

英国の大新聞はいずれも経営難でリストラが進んでおり、ロンドン以外をカバーする記者の数が減っている。北イングランドのような「動きのない場所」(quiet corners)についてのニュースはどうしても通信社からの記事やお役所や組織が発行するの広報資料に頼らざるを得ない。そうなると紙面の中では余り派手な扱いはされなくなる。北イングランドを代表する新聞であるYorkshire Postなどは、地元の水害が全国紙が余り取り上げられなかったことについて、「災害は南で起こらない限り"重大"なものにはならない」(Disasters aren't serious unless they happen in the south)と皮肉ったりしています。

尤も「地方」を無視しているのは、全国紙だけではなく、地方紙そのものが地元のニュースよりも「全国」ニュース(national stories)を掲載する傾向にある、という人もいます。Cardiff UniversityのBob Franklin教授によると「地方紙は地方紙でなくなっている(The local press isn't local anymore)」と言っています。教授は1987年からこれまでの20年間におけるWest Yorkshireで発行されている地方紙30紙の選挙報道を分析したのだそうです。20年前のこの地方の新聞の選挙報道は4分の3が地元の候補者の活動に関するものであったのに、2005年の選挙ではこれが3分の1にまで減り、残りは全国ニュースをもとにしてローカル風にアレンジしたものだった。

The Economistは、このような地方紙の全国紙化現象は、記者修業の世界にも影響が出てきている。昔はジャーナリスト志望の学生は、まず地方紙でメモとりだのなんだのという基本的な修業を積んで、能力のある人たちは、ロンドンの全国紙へと上っていくというのが普通であった。それが最近の地方紙ではそのような場は提供されず、別のスクールのようなところで基礎的な技術を身につけた人を雇うようになっているとのこと。そうなると、記者志望の若者たちも、わざわざ地方紙で修業などという面倒なことをやらずに、最初から全国紙の世界を目指す傾向が出てきている。

全国的大衆紙のMirrorを有するTrinity Mirrorグループは傘下に約200の地方紙を所有しており、グループ内に地方ニュースをカバーするネットワークをまだ持っているのですが、Franklin教授は、将来のこととして、「記者会見などで"そういえば、Rochdale(地方都市の一つ)はどうなっているんだ?"ということさえ考えない人たちの方が多くなるかもしれない」(when you get to the news conference there may not be many people thinking, ‘Gosh, what's happening in Rochdale?`)とメディアの世界の地方格差を危惧しています。

  • 日本では、地方紙というと大体「一県一紙」と決まっていますが、あるサイトを調べていたら、英国にはRegional papersと称するものが1300もあるんだそうですね。それから全国紙を出版している会社が地方紙も発行しているというのも変わっていますね。それから記者が記者になるために、日本だと大卒でそのまま新聞社に就職するのが普通ですが、英国の場合、その習慣が崩れてきているとはいえ、まずは地方紙で修業を積むというのも面白いですね。
4)変わった法律世界事典?


silly seasonという英語は日本語でなんというのでしょうか?直訳すると「アホな季節」ですが、要するにニュースネタがない季節のことを言うんだそうです。特に議会が休みのいまがまさにsilly seasonというわけです。The Timesのサイトを見ていたら、silly seasonを楽しむための特集というわけで、「世界中にあるアホらしい法律リスト」(a list of the world's most ridiculous laws)なるものを掲載しておりました。確かにsillyかつridiculousなものがいろいろあります。いくつか紹介しますが、いずれも「そんなこと知ったからってなんになるのさ」と言われそうなものばかりです。

1)ロンドンの金融街(City)で、タクシーで狂犬病のイヌもしくは人間の死体を運ぶことは法律違反である(It is illegal for a cab in the City of London to carry rabid dogs or corpses.)

  • あえて"City"と断っているということは、金融街以外なら合法ってことですかね。

2)議会の下院・貴族院で死ぬのは違法である(It is illegal to die in the Houses of Parliament.)

  • ちょっと待ってくらはいよ。誰も死にたくて死ぬんじゃないでしょうが。それと、この法律に違反した場合、どのような罰が与えられるのでありましょうか?

3)英国王室の人間をあしらった切手を逆さまに貼ると反逆罪になる(It is an act of treason to place a postage stamp bearing the British monarch upside down.)

  • でも、慌てていてやってしまうってこともあるよね。いずれにしても切手を逆さまに貼るということは余りない。でも反逆罪ってのは穏やかでない。

4)フランスの法律では、ブタの名前にナポレオンを使うことは禁止されている( In France, it is forbidden to call a pig Napoleon.)

  • 「サルコジ」も違反、かな?

5)米国アラバマ州では、目隠しをしたままクルマを運転するのは法律違反である(In Alabama, it is illegal for a driver to be blindfolded while driving a vehicle.)

  • ダレがそんなことするのさ!?

6)米国オハイオ州では、サカナを酔わせるのは州法違反である(In Ohio, it is against state law to get a fish drunk.)

  • 酔っ払ったサカナてえのは、どんな泳ぎ方をするんでしょうか?昔、蟹が酔っ払って、ヨコではなくてタテにまっすぐ歩いていたというハナシを聞いたことはある。

7)米国フロリダ州マイアミでは、警察署内でスケートボードに乗るのは違法である(In Miami, Florida, it is illegal to skateboard in a police station.)

  • きっと誰かがやったんでしょうね。犯人がスケボーで逃走したとか・・・。

8)同じくフロリダの法律ですが、未婚の女性が日曜日にパラシュートに乗ると刑務所行きもありうる(In Florida, unmarried women who parachute on Sundays can be jailed.)

  • これは何なんですかね。わっかんねぇな。

9)米国バーモント州では、夫の許可なしに妻が入れ歯をすることは禁止されている(In Vermont, women must obtain written permission from their husbands to wear false teeth.)

  • これは分かるな。ダンナの許しも得ずに入れ歯をする女なんて・・・許せない!ではダンナの入れ歯は妻の許可が必要なのか?必要ではない。男のやることに女がガタガタ(入れ歯の音)言うのはおかしい。

10)英国沿岸に死んだ鯨が打ち上げられた場合、その頭部は法的には王様の財産となる。尻尾の部分については女王に帰属するが、それは女王が尻尾の骨を使ってコルセットを作る必要がある場合である。(The head of any dead whale found on the British coast is legally the property of the King; the tail, on the other hand, belongs to the Queen - in case she needs the bones for her corset.)

  • こうなると、もうなんだかさっぱり分からない。

というわけで、どれをとってもさっぱり分からない法律ばかりですが、いずれもなんらかの時代的背景があって出来たものなのでしょう。そのあたりのところが書いていないのが残念。他にも出ているのですが、暑いのでこのくらいにしておきます。全部見たい人は、ここをクリックすると出ています。

5)短信


眠りガス泥棒

Daily Mirrorによると最近フランスでは、眠りガス(sleeping gas)を使った泥棒が流行っているんだそうですね。ある英国の老夫婦がキャラバンカーでフランスを旅行したとき、キャラバンの窓を少し開けていたのが失敗で、そこからこのガスを打ち込まれ、眠ってしまった。目が覚めたら所持金の1200ポンド、パスポート、携帯電話、キャッシュカードなど持っていかれてしまったというわけ。「目が覚めたら、みんななくなっていたし、気分は朦朧で・・・」(When we woke up everything was gone and we had a really woozy feeling)と言っていたそうです。

  • このガス、毒ではないそうです。だからご安心を・・・ってわけにはいかないな。

職場の人間関係

英国のリクルート会社が行った職場環境に関する調査によると、オフィスワーカーの3人に1人が、同僚が嫌いで職を変えたいと思っているのだそうです。40%が職場に「少なくとも一人はイヤなヤツがいる」、20%が「上司がイヤでイヤで仕方ない」、10%が「となりに坐っているヤツが気に入らない」と答えている。約2500人を対象にした調査であったのですが、27%が毎日のように会社を変えたいと思い、24%が仕事は人生では大切なものではないと感じている。それにしても、同僚だの上役だのの何がそんなにイヤなのかというと「怠慢、お喋り、群れたがり」(laziness, talking too much and cliques)が3大理由であったそうです。

  • イヤの理由の中の「怠慢」というのが注目ですね。自分だけがマジメにやっている、と思っている人が多いってことですね。

「絶壁」は成功しない!?

中国のChina News Networkによると、鄭州という町にあるJunjieという幼稚園は超一流エリート幼稚園として知られているそうですが、ここへ入るための絶対的な条件の一つが「頭が丸い」ってことなんですってね。経営者のLi Junjie氏によると「頭が丸いのは賢い証拠」なのだそうで「平らな頭はどんなに勉強してもイチバンにはならない」(a student with a flat head can never be outstanding no matter how hard he works) のだそうです。ちなみにこの幼稚園は授業料が年間7000ポンド(約180万円)、生徒21人で先生は13人だそうです。

  • ウーン、でも毛沢東ってどちらかというと「絶壁アタマ」ではなかったですか?周恩来も。 ちなみに私は、絶壁ではないけれど、大して丸くもない。どちらかというとジャガイモ風なんですが、ダメだろな。

6)むささびの鳴き声

▼「戦争体験を語り継ぐ」という活動をしている人たちについての報道に接して、私が感じてしまう虚しさは何なのか?ということが気になって仕方ありません。非常に悲惨な体験を語られるのを聴いていると、胸が塞がれる思いがするのは本当なのですが・・・。ちなみに私は昭和16年生まれだから戦争を実体験としては知らないに等しいし、自分の両親や親戚にも戦死したり、戦災で家を焼かれた人もいません。

▼で、何が虚しいのか?一つには、体験者が「戦争は絶対にやっちゃいけない」と訴える反面、現に戦争が行われていることがあるでしょう。第二次世界大戦以後、地球上で戦争がなかったときなんてありますか?つまり体験者の全く正当なメッセージとはおよそかけ離れた現実がある。それが虚しさの理由の一つかもしれない。これを解消するためには、そもそも戦争って何なの?というディスカッションが一緒に行われる必要がありますよね。彼らが体験した戦争は何故起こったのか?いま起こっている戦争は何故止まないのか?というディスカッションが、体験者も交えて行われることで、少しは「虚しさ」も消えるかもしれない。実際にそれはあちこちで行われているに違いない。知らないのは私だけなのでしょう、きっと。

▼というようなことをクダクダ考えていたら、8月15日付けの朝日新聞が『戦争という歴史 「千匹のハエ」を想像する』というタイトルの社説を掲載していました。それを読んで、私、自分が感じる虚しさの理由の一端が分かったような気がしました。この社説は「中学、高校で歴史を学ぶ皆さんへ。今日は62回目の終戦記念日です。夏の暑い盛りですが、少し頭を切りかえて、あの戦争のことを考えてみませんか」という書き出しで始まっています。

▼例によってメチャクチャ長い社説なので、要約するのもタイヘンですが、あえてやってみると、まず映画監督の新藤兼人さんの戦争体験を紹介しながら、次のように書いています。

戦争は醜い。個を破壊し、家族をめちゃめちゃにする。そのことをきちんと伝えるのが生き残った者の責任だ。そう考える新藤さんは、自らの戦争体験をもとに「陸(おか)に上(あが)った軍艦」という映画の脚本を書き、自ら証言者として出演しました。この夏、映画が公開されています。

▼朝日新聞の社説は次に、日本青年会議所という組織が作ったアニメの中の主人公と目される青年の次のような語りを紹介しています。

「愛する自分の国を守りたい、そしてアジアの人々を白人から解放したい。日本の戦いには、いつもその気持ちが根底にあった」 「悪いのは日本、という教育が日本人から自信と誇りを奪っている」

▼つまり新藤さんが戦争の醜さを語り、青年会議所が「日本が悪いと思っていたが、そうではなかったことがわかりました」と言っているわけです。朝日新聞は、青年会議所のアニメは「新藤さんが味わったような非人間的な軍の日常や、日本が侵略などでアジアの人々を苦しめたことにはほとんど触れていません」と言っています。

▼で、朝日新聞の意見(だと思う)として、私たちは過去を体験することはできないけれど、戦争の現実につながるさまざまなこと(例えば原爆資料館や中国や韓国にある記念館など)に触れることができるというわけで、次のように言っています。

そして、現実の戦争を想像してみることができます。その力を培うことこそが、歴史を学ぶ大きな意義だと言えないでしょうか。 見たくないものに目をふさげば、偏った歴史になってしまいます。一つのことばかりに目を奪われれば、全体像を見失う。いかに現実感をもって過去をとらえるか。その挑戦です。

▼イチバン最初に書いた、私が感じる「虚しさ」は、朝日新聞の社説のこの部分に関係しているように思えます。「想像を逞しくして、戦争の醜さを考えようではないか。そうすれば戦争という悲劇を繰り返すこともないかもしれない」と訴えいる。つまり、戦争を考えるには「想像力」が必要というわけです。この呼びかけに応える中学生や高校生たちって、どんな人たちなのでしょうか?私と同じでないことだけは確かであります。中学・高校時代の私はというと、「いい学校に入ろう」という受験のことしかアタマになかった。それだけでアップアップであったわけです。戦争のことなど考えるアタマなどどこにもなかった。はっきり言って、いまでもそれがあるかどうか疑わしい。他人事なのですよ、戦争なんて。おそらく朝日新聞の社説を書いた人たちからすると、私のような存在は、実に嘆かわしいということになるかもしれない。

▼しかし、新藤さんの言葉のうち、戦争は「個を破壊」するという部分については、戦争とは全く別のこととして大いに共感するわけです。しかし「個を破壊」するのは、戦争だけではないですよね。安倍さんの『美しい国』は明らかに、私という個を破壊するものだし、青年会議所の言う「アジアの人々を白人から解放したい」などはおハナシにならない。たかだか一回くらい巡業をさぼっただけで、「国技」だの「品格」だのを振り回して、よってたかっていじめまくるのも「個の破壊」であります。

▼というわけで、戦争体験者の「語り」に私が虚しさを覚えるのは、戦争の悲惨が語り継がれる割には戦争は全くなくならないということもありますが、 語り手の「悲惨」と同じような「悲惨」が今あるのに、「戦争」という悲惨だけに限定されて語られることへの違和感が原因なのであろうと思うわけです。本当は新藤さんと私は「同志」かもしれないのに、です。新藤さんの想いを考えるために「想像力」など要らないのです。