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美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
musasabi journal
第119号 2007年9月16日

  

ぐっと涼しくなりました。夜になると虫の音がにぎやかであります。考えてみると、こおろぎでもマツムシでもカネタタキでも、よくぞあのような音色が出せるものですよね。虫の音で思い出しましたが、ツクツクボウシという蝉がいますね。あの蝉の鳴き声を文字で表せますか?「ツクツクボーシ」?違います。あれは「オーシーツクツク」なのであります。先日、ラジオを聴いていたら小沢昭一がそう言っておりました。あの人の言うことだ、間違いはない(多分・・・)。

目次

1)unimpressiveな首相の辞任
2)英国社会は壊れている?
3)大人は子供に干渉しよう
4)国際イスラム「聖戦」の内幕
5)短信
6)むささびの鳴き声

1)unimpressiveな首相の辞任


最近のThe Economistに出ていた「安倍が出て行った(Out goes Abe)」という記事は安倍さんのことをunimpressive prime ministerと表現しています。unimpressiveという英語をOxford English Dictionaryで引いたらordinary(普通の)というのとnot special in any way(いかなる意味においても特別とはいえない)という説明が出ておりました。例文として出ていたのが"His academic record is unimpressive"というものだった。「学業の出来が悪い」ってことです。

有名な戦後の首相の孫であり、外務大臣の息子でもあった安倍氏の全人生は、首相になるべくちやほやされて育ったのであり、ちやほやしたのは彼を支配する母親である部分が少なくない。その母親こそが、昨年彼に自民党の総裁選挙に出馬するように言い張った人なのである。党の重鎮たちは、もう少し時間をおいてからにするように強く勧めていたのだ。彼らの忠告を聞いておけば良かった。安倍氏はいまごろさぞや後悔しているであろう。安倍氏の首相時代ほど冴えないものは想像するのが難しい。 The grandson of a famous post-war prime minister and son of a foreign minister, Mr Abe had his whole life been groomed to be prime minister?not least by his domineering mother, who last year insisted that he bid for his party’s leadership while grandees of the ruling Liberal Democratic Party (LDP) were urging him to bide his time. If only, he must now be thinking, he had heeded their advice, for it is hard to think of a less glorious term than Mr Abe’s.

さんざんです。この記事が書かれたころには、自民党の総裁選に福田康夫さんが出馬することが分かっておらず、後継者は麻生さんだろうしています。麻生さんについてはCocky(生意気)とかearthy humour(洗練されていないユーモア感覚)のような形容詞が使われています。また考え方はneo-conservative views which resemble Mr Abe's(安倍さんの考え方に似たネオコン思想)なのだそうであります。

小沢さんについては、テロ特措法へのスタンスは「戦略的(tactical)」なものであり、「賢明にも、安倍さんの土俵に乗って(つまりテロ特という分野で)安倍さんに挑戦したのである」(he cleverly challenged Mr Abe on his own ground)と言っております。そして・・・

小沢さんに残された課題は、自民党が政権党としての信任を回復するするには総選挙しかないのだ、ということを自民党に分からせることである。が、それも時間の問題だろう。(he has still to convince the LDP that the only way to reclaim its mandate to govern is through the gamble of calling a general election. It is just a matter of time)

というのが結論であります。

▼安倍さんと麻生さんをネオコンと呼んでおりますが、これは「右翼的」という程度の意味だ(と私は推測しています)。アメリカでいうネオコン(西欧的な自由だの民主主義は武力を使ってでも世界に普及させるのだという思想)とは違いますよね。むしろ安倍さんの「戦後レジームからの脱却」は、突き詰めていくと、サダム同様に、あちら(アメリカ)のネオコンに潰される。ただ安倍さん(麻生さんは分かりませんが)とあちらのネオコンが似ているのは、両方とも現実的というよりも観念的ってことでしょうね。

▼ついでと言ってはナンですが、福田さんについてはBBCのサイト(アジア版)が「外交的にはハト派で、かなりの政治的影響力がある」(a foreign policy dove with considerable political clout)と伝えております。

▼それにしても、安倍さんが辞めてこの方、日本の新聞もテレビも、「よくぞあれだけ」と思うくらいに飽きもせずに同じようなコメンテーターを登場させて同じような話ばかりしているものですね。本日(日曜日)の朝には、テレビの3局が麻生・福田を招いての政治番組をやっていた(私はどれも見なかったけれど)。言論機関による創造性の自己ギブアップ(voluntary give-up)ですね。私はウンザリしています。

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2) 英国社会は壊れている?


最近の日本では若年層による凶悪犯罪や迷惑行為が問題になることが多く、辞めた安倍さんの教育再生会議などが「モラルの復活」を叫んだりしています。英国も同じことのようで、悪がきが患者を運ぶ救急車を襲って乱暴を働いたお陰で患者が病院に到着する前に死んでしまった。若者が騒いでいるのを咎めた大人の男性が殴り殺された。いじめ現場を加害者がデジカメで撮影、あとからそれを鑑賞して喜んでいる。ロンドンで若者が14才の不良グループに追い回された挙句にバットで殴り殺された・・・この種の報道があとを絶たない。

で、ふた月ほど前に、どちらかというと保守的なThe Spectatorという雑誌に「英国社会は壊れている(It's the Broken Society, stupid)というエッセイが掲載されていました。また同じころに出たThe Economistにも激増する若者の犯罪を嘆くエッセイが出ていた。同じような読者層を持つこの二つの雑誌が同じようなテーマを扱っているということは、英国のインテリ中流層が似たような危機意識を共有している風にも思えます。

The Spectatorのエッセイは元Sunday Timesの編集長だったAndrew Neilという人が書いたもので、かつて経済的に没落したとされた英国が、サッチャー以来の20数年間で奇跡的に復活する一方で、若者がモラル低下と犯罪の増加によって、社会的な崩壊現象に見舞われている。ブラウンの労働党であれキャメロンの保守党であれ、Broken Societyをどうするのかが課題だと訴えています。社会崩壊の例として次のような数字が挙げられています。

▼英国で生まれる子供の42%が未婚の両親から生まれている
▼結婚カプルの45%が離婚に終わる
▼子供の24%がシングル・ペアレントである
▼英国は10代妊娠が欧州最高で、18才以下の妊娠の46%が堕胎している(これも欧州一)

Andrew Neilによると、現代の英国にはunderclass(下層階級)とでも言うべきクラスの人々が存在して社会を蝕んでいる。underclassとは、物質的な意味での貧困層というのとは違う。政府からもらう福祉手当でそこそこお金はあるのに、質素(thrift)・義務感(endeaver)・結婚(marriage)といった伝統的な価値観とは無縁の世界で勝手気ままにやっている人のことを言っている。「サッチャーさんのころは300万人の失業者がいて問題になっていたけれど、経済が復活した英国には、労働年齢であるにかかわらず職を持たずに福祉手当で生活している人が530万人もいる」とのことであります。

ほかにもいろいろあるのですが、要するに経済的に豊かになったけれど家庭が崩壊し、社会的なタガが緩みきってしまっている、というわけです。サッチャリズムによって復活した英国が、ブレア/ブラウン政権の10年間の福祉政策のおかげでダメになってしまったと嘆いております。家庭崩壊に関連してNeilが指摘しているのは、シングル・マザーの家庭で育った少年たちが「男のお手本(male role models)を身近に持たないこと、母親が子供たちをコントロールできずティーンエイジャーになるころには犯罪予備軍と落伍者になる運命にあるということです。

  • 英国という国は1979年〜1997年の約20年間におよぶサッチャー革命のおかげで、経済的には立ち直ったのに、ブレア政権の10年間で福祉依存人口が増えて社会崩壊が起こった・・・と言っているわけですが、サッチャー以前の英国(福祉国家が追求されていた)ではどうだったのでしょうか?現在の社会崩壊が「個人中心主義」のサッチャリズムにルーツがあるってことはないんでしょうか?
  • Andrew Neilは、家庭に「男のお手本」がいないことを非行に走る若者が多いことの理由の一つだと言っています。このようなことを言う人は日本にもいますよね。父親の権威失墜を嘆いたりして。自慢ではありませんが、私(3人の子供の父親)なんかコメディアンとしてもの笑いのネタにはなっても「権威」などゼロでありましたね。

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3) 大人は子供に干渉しよう


一方、The EconomistのエッセイはThe perils of privacy(プライバシー尊重の弊害)というタイトルで「若者の非行は昔からあるが、英国の場合、昔も今も変わらない問題がある(Britain's wayward yoof is an old problem, but a problem all the same)というイントロで始まっています。

「昔も今も変わらない問題」とは、英国の大人たちが、他のヨーロッパの国に比べて、若者の非行を見ても不干渉を決め込む傾向にある(British adults are less likely to intervene tha other Europeans if they see youngsters up to no good)ということです。

この記事によると、ヨーロッパ大陸の国では、夏ともなると街の広場で同じファミリーの3世代が楽しげに食事をしたり、談笑したり、ダンスまでしている光景が見られる。それに引きかえ英国の子供たちが両親と時を共に過ごすということは殆どない。両親が家にいないということもあるけれど、子供たち自身にとって、公の場で親と仲良くしているのを見られるというのは「デジカメがついていない携帯電話よりも悪い」(worse than a mobile phone without a camera)らしい。「昔は教会や青少年クラブのような老若男女が集う場があったのに、それらが姿を消してから、若い人と年寄りが触れ合うことが少なくなってしまった」とのことで、結論は次のように書かれています。

「一般論として、英国人はでしゃばることを好まないという感覚のようなものがある。現代の世代間の断絶現象は、英国的人間関係を特徴付けるプライバシーの尊重と控えめな精神が極端な形をとって表れたものであるといえるだろう。それにしても危険な傾向ではある」(The British are an emotionally unforthcoming lot in general; perhaps this intergenerational chasm should be seen as just an extreme form of the privacy and reserve that mark many British relationships. But it is a dangerous one.)

  • 「子供のことに干渉したがらない大人」も他人事ではないですね。本当は「干渉」もしなければいけないのだろうけれど、正直、おっくうだもんな。子供の生活に干渉するのもイヤだし、子供に干渉されるのもカンベンして欲しい。
  • それから両親と仲良くしているのを見られるのをイヤがる傾向てえのは、つまり「ダサい(古い表現ですね)」と思われるてえことなんですかね。だとすると微笑ましい気がしないでもない。分かるもんね、それって。
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4)国際イスラム「聖戦」の内幕


INSIDE THE GLOBAL JIHAD(出版元:Hurst & Company)はモロッコ生まれのイスラム教徒の青年が、フランス、英国、ドイツの情報機関のスパイとして、ヨーロッパのイスラム過激派にもぐりこんでいろいろと活動をした挙句、結局これらの情報機関に捨てられるまでのストーリーを描いているのですが、ストーリーと言ってもフィクションではなく、この青年が書いた一人称の「手記」です。つまり本当の話なのですが、サスペンスタッチで書かれているうえに、英語も比較的やさしいということもあって、小説でも読むような感じで引き込まれてしまった。

この本は筆者が1995年〜1996年の2年間にわたって、西側のスパイとしてアフガニスタンにあるイスラム・テロリストの養成キャンプにもぐりこんだ生活が中心に描かれています。もちろん、この本では「テロリスト」ではなく「ムジャヒディン (mujahidin:戦士)」という言葉が使われています。「ジハード(jihad)」は武器を持って戦う「聖戦」という意味もありますが、基本的には「愛」とか「精神的救済」のことを言うのですね。ただこのキャンプは「聖戦」に勝利するムジャヒディンの養成が目的であり、爆弾の仕掛け方、毒薬の作り方、それに昔の日本の苦行僧のような肉体鍛錬などが中心です。そこに集まってくるムジャヒディン候補生との交流を行うことが中心になっています。テロリスト候補生の出身は、アルジェリア、チェチェン、カシミール、キルギスタン、フィリピン、タジキスタン、ウズベキスタンなどさまざまです。

この本が単なるサスペンスとして扱われるわけにはいかないのは、筆者の体験したムジャヒディン養成キャンプこそが、約5年後に9・11という形で実を結ぶことになるということです。この本が書かれた頃、このキャンプの主宰者はGIA (Armed Islamic Group)という名前であったのですが、これが後のAl Qaeda(アルカイダ)に繋がります。筆者がキャンプでの養成コースを修了してヨーロッパへ帰るのが1996年の春。彼とすれ違うようにして96年5月19日、オサマ・ビン・ラディンがパキスタンのジャジャラバードというところに到着します。ビン・ラディンはそこからアフガニスタンのテロリスト養成キャンプに入ったとされています。この本が「単なるサスペンスではない」というのは、筆者が語っているキャンプでの生活は、9・11への準備とも言える活動であるからです。

実際、年代で見ると、1980年代のアフガニスタンは侵入したソ連に対するアフガニスタン人を中心にしたジハードの時代だった。89年にソ連が撤退したあとの90年代半ばまではイスラムの多国籍部隊によるジハードの時代になり、90年代も末になってAl Qaedaによる国際ジハードの時代が到来して現在にいたっているということになる。

キャンプではイスラムの教えを叩き込まれるのですが、その部分も全くの門外漢である私にも分かりやすく書いています。例えば戦いとしてのジハードには先制攻撃的なジハードと自衛のためのジハードの2種類があり、現代のジハードの中でも最も重要なのがパレスチナの地をイスラエルから奪還するためのジハードです。エルサレムこそはイスラムの心臓部であり、生存のために自分の心臓を守るのは自衛のためのジハードであるというわけです。カシミールにいるヒンズー教徒もまた彼らの敵です。彼らは偶像崇拝主義者でユダヤ人の部族に源を発している。

さらに大いなる敵として存在しているのが、いわゆる「シーア派」(Shiites)と呼ばれる人々で、彼らはイスラムの教えを改革(innovation)しようとするものであり、コーランに反している。その意味でシーア派が多数を占めるイランはイスラムにとっては「根源的な敵」(primordial enemy)であるというわけです。ただ矛盾もある。このキャンプでの教えによると、政府というものは全てイスラムを基礎にした「神権政府」(Theocratic government)でなければならないにもかかわらず、この当時(90年代半ば)世界も唯一の神権政府がイランであったわけですから。彼らにとってはまた無宗教社会も敵です。その意味で社会主義者、サダム・フセインに率いられたイラクは彼らの標的であったのですが、それはイラクをイスラムの神権国家にすれば、イランを包囲できるという理由もあった。

面白いのはキャンプで訓練されるアラブ出身のムジャヒディン候補生たちは、ホスト国であるアフガニスタンで勢力を伸ばしていたタリバンを嫌っていたということです。彼らによるとタリバンは、イスラム法を余りにも厳格・極端に実施しすぎる団体であるとのことです。彼らによると、タリバンもまたコーランの教えから外れてイスラムを改革するinnovatorであったわけです。

この本はOmar Nasiriという元青年スパイとBBCのGordon Corera記者に語った一部始終をCoreraがまとめたものです。Omar Nasiriというのはもちろん本名ではない。ただ面白いのは彼自身、スパイでありながら、自分が敬虔なイスラム教徒であることを守っているということです。Al Qaedaのテロにはついていけないものを感じているのですが、「アメリカを始めとする西側諸国はイスラムの領土から出て行くべきだ」とも考えている。

9・11テロに対するアメリカ人たちの反応は、筆者によると「途方もなくナイーブ」(endlessly naive)なものだと言って、次のように書いています。

「アメリカ人たちはアメリカが攻撃されたのだと怒っている。3000人のアメリカ人がアメリカ領土で殺された!と叫んでいる。確かに悲劇であるには違いないし、犯罪であることも間違いない。しかし(アメリカ領土でアメリカ人が殺されたことを怒るのなら)イスラムの国で何百万というイスラム教徒が殺されていることはどうしてくれるのか?中東、アフリカ、ボスニア、チェチェン、アフガニスタンなどなど、である。彼らにとっては時間は止まっているってことか?(We've been attacked on American soil ! Three thousand Americans killed on American soil! A tragedy, no doubt. And a crime. But what about the millions of Muslims killed on Muslim soil? In the Middle East, in Africa, in Bosnia, in Chechnya, in Afghanistan. Did time stop for them?)

筆者は幼いころに家族とともにベルギーへ移住するのですが、想い出話として、ベルギーで第二次世界大戦についての映画を見て感激したことを語ります。いずれもアメリカ映画で、筆者もアメリカの兵士になってドイツ軍や日本軍と戦うことを想像して興奮します。ナチは純然たる悪(pure evil)ではあるが、「日本人は別だ」(Japanese are different)と思ったのだそうです。

私はカミカゼに魅了されてしまった。アメリカの航空母艦に突っ込んで行って炎となる、あのカミカゼの姿に魅了されてしまった。彼らは敵には違いないが、私は彼らを賞賛し、彼らのことが理解できたのだ。自分たちよりもはるかに強いパワーを眼前にして、彼らの国を救い、彼らの尊厳を守るためにカミカゼにできるのはあれしかなかったのだ。(I was fascinated by the kamikazes, by the images of them crashing into American aircraft carriers and exploding in flames. They were the enemy, of course, but I also admired and understood them. In the face of a much stronger power, they did the only thing possible to save their country and their honor.)

筆者は結婚するためにスパイ稼業から足を洗います。その過程で自分を雇った西側の情報機関からの護衛を求めます。口では護衛を約束した仏・英・独の情報機関ですが、必要がなくなったらオシマイというわけで、彼は捨てられてしまう。2001年9月11日の同時多発テロが起こったときには、自分が暮らしているドイツの情報機関にアルカイダについての情報提供を申し出るのですが、彼らは関心を示すことがなかった。というわけで、BBCに一部始終を話すことにした、というわけです。

  • この本とは直接関係がないのですが、先日(9月9日)にBBC World Serviceを見ていたら、カタールのドーハで若い人たちを集めて討論会をやっておりました。テーマは「今こそアルカイダを話し合うべきか?」(Is it the time to talk to Al Qaeda?)というものだった。賛成・反対の専門家によるディスカッションのあとで会場からの質問を受付け、そのあとで賛成・反対の投票をしたのですが、かなりの大差で「話し合うべき」という意見が勝ちました。会場がロンドンやニューヨークではなく、ドーハであったということもあるのですが、欧米の意見とはかなり違うものですね。

    筆者(多分40才くらいか?)が子供のころ、カミカゼ特攻隊に「感激」するという部分ですが、仕事柄、中東の人たちと話しをすることも多いのですが、西欧やアジアとはかなり違う視線で見ていることが分かります。アメリカナイズされた日本ではなく、負けてしまったけれど、欧米を相手に戦った「あの日本」を称賛する視線です。ちょっとまごついてしまう。
5)短信


記憶喪失で英語ペラペラ

グラスゴーで行われたオートレースで、チェコから参加したMateji Kusという選手が転倒、その上を別のバイクがKusのアタマを轢くような形で通り過ぎていった。倒れた選手は45分間、意識不明状態が続いたのですが、病院で目が覚めた彼に妙なことが起こった。英語を非常に流暢かつ上品に喋ったのだそうです。この人二日前に英国に到着したばかりで、英語は全くできない人だったのに、です。それから彼は48時間にわたって記憶喪失にかかった。そして記憶喪失から目覚めた途端に英語は一言も話せなくなった(つまり元の状態に戻った)。担当の医者によると、これは外国語アクセント症候群(Foreign Accent Syndrome)というもので、脳に強い衝撃が加えられたときに起こる一種の言語障害なのだとか。

  • 記憶喪失から覚めたときの記者会見で「バイクでアタマを轢かれなくても英語が話せる方法を知りたいな」と通訳を通じてコメントしたそうです。そんなことあるんですかね。

1時間に100回も咳が出る

Manchesterにある大学の講師(57歳)が、1時間に100回も咳が出るという気の毒な「病気」?にかかっており、「治してくれた人には5000ポンド(約130万円)払ってもいい」と訴えています。この症状は過去13年間も続いているのだそうですが、不思議とチューインガムを噛むと直るのだそうであります。ただ悪い事にこの講師が大のガム嫌いなんだとかで、「東洋医学の鍼(ハリ)もやったし、ホメオパシーもやったのに直らない」とのこと。最近、結婚したのですが「家内も私の咳にマイっている(sick)」そうで、事態は深刻です。

  • 1時間に100回ということは、1分でほとんど2回ってことですね。

ガーデニングよりNintendo

バーミンガムにあるSunrise Homeという老人ホームで、いまちょっとしたブームになっているのが、NintendoのWiiとかいうコンピュータ・ゲームだそうです。これまでの老人ホームにおける余暇といえばガーデニングかブリッジかクロスワード・パズルと相場決まっていたのが、いまやWiiにとって代わられたのだとか。ここに住んでいる人の大半が80代か90代だそうです。100才のカップルも凝っているのだとか。

  • 私、Wiiって何のことか知りません。サイトを見る限りでは、昔のテレビゲームでいろいろな種類のソフトがあるんですね。私は買わない方がいい。凝ってしまうに決まってます。
6)むささびの鳴き声


▼安倍さんの辞任について、京都大学の佐伯啓思教授が次のように言っています((朝日新聞9月15日)。

安倍氏の不幸は、彼の政治手法も理念も小泉氏のものとは大きく異なるにもかかわらず、小泉氏の後見によって首相になったことにある

▼佐伯教授によると、その結果として安倍さんの政策は

一方で憲法や教育という戦後レジームの見直しという保守的政策を掲げ、他方で改革の続行、成長の追求をかかげるという支離滅裂なものとなる

というわけです。これ、当たっていますね。

▼佐伯先生は、どちらかというと安倍さんの「戦後レジームからの脱却」を支持しておられるようでありまして、安倍氏の本来の政治的使命である憲法や教育がまともに争点にならず、小泉さんの大衆的人気主義や改革主義によってうやむやにされることは望ましくないと言っています。「安倍さんの本当の敵は自民党自体だった」というわけで、安倍さんがぶっ壊すべきなのは「(保守の理念を失った)自民党」だそうであります。

▼佐伯教授は、上に指摘するような矛盾に「安倍氏自身が十分に自覚的であったとは思われない」と言っています。私の推察にすぎませんが、先生は「戦後レジームからの脱却」という考え方は正しかったけれど、安倍さん(のアタマには)荷が重すぎたということを言いたいのではないかと思うわけです。

▼この先生がおっしゃっている(と私が解釈する)ことに、私もある部分までは共感します。安倍さんが訴えていた「戦後レジームからの脱却」という考え方が、余りにも無視され過ぎたということであります。誰もマジメに安倍さんの言うことを聞かなかった。 これは、はっきり言ってアンフェアであるってこと。

▼これも私の推察ですが、メディアを中心にした「ものを考える人たち」が、安倍さんのアタマをまるでバカにしており、「この人の言う哲学などディスカッションには値しない」と思っていたのでしょうね。「戦後レジームからの脱却」という考え方は、安倍さん後にも佐伯先生のような方々によって受け継がれるわけだから、その良し悪しはきっちり検討した方がいいに決まっているのに、です。

▼私と佐伯教授が分かれる(と私が思う)のは、先生が「戦後レジームからの脱却」は本気で支持されるべきであったとおっしゃっているのに対して、私は本気で反対されるべきであった、と思っているということであります。その部分を詳しく説明したいのですが、今のところその能力がないのであります。もちろん先生のように四六時中「思索する」という生活を送ってもいない。

▼でも、死ぬまでに、自分にも他人にも納得いくように説明してみたいですね。

▼ところで、2002年、私がまだ英国大使館というところでお世話になっていた頃に、日英グリーン同盟という企画がありました。イングリッシュオークを植えるというものなのですが、北海道の余市町というところが、植えられたオークの成長を変わった形で記録しています。ここをクリックしてもらうと分かります。実は同じことを東京都内でなさっているファミリーもあるのでありますが、こちらは完全な個人的なものなので、了解なしに写真を公開するのは止めておきます。

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