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美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
musasabi journal
第120号 2007年9月30日

   

むささびジャーナル、120回目を迎えました。この際、日記代わりに本日(2007年9月30日)のYahoo!(日本語)のトップページあったニュースの見出しを書いておきましょう。 @長井さんは即死に近い状態(ミャンマーで死んだ日本人カメラマン) A親方 介抱せず暴行を口止め(時津風邪部屋で力士が死んだ事件) BJA草津市職員が450万円着服 Cauショップ「24」DVD無料配布(なんですか、これ?) D17歳天才テニス少年プロ転 EK-1 バンナは秒殺KOで決勝 F井ノ原 2日連続のサプライズ D〜Fは何のことだかわりまへん。

目次

1)ミャンマー革命の今後
2)チョムスキーのアフガニスタン戦争
3)テロ特を支持しないとホントに孤立するんですか?
4)英国人の宗教観
5)短信
6)むささびの鳴き声

1)ミャンマー革命の今後


9月27日付のThe Economistの『ミャンマー革命』(Revolution in Myanmar)という記事は、

もし世界が協調して行動するならば、この暴力は邪悪な体制の断末魔の苦しみということになるだろう(If the world acts in concert, the violence should be the last spasm of a vicious regime in its death throes)

というイントロで始まっています。

ミャンマーでは、1988年に民主化を求める大衆運動が盛り上がったことへの反動として軍部のクーデターが起こり、多くの人々が殺されたのですが、The Economistは、そのときミャンマー人たちは「自分たちの独裁者のみならず日和見主義の国際社会の両方によって騙された(In 1988 Burma's people were betrayed not just by the ruthlessness of their rulers, but also by the squabbling and opportunism of the outside world)として、 果たして世界は同じ過ちを二度繰り返すことを避けることができるだろうか?(Can the world avoid making the same mistake twice?) と言っています。

カギを握るのは中国ですが、中国とミャンマーには共通点がある。1980年代に世界的のあちらこちらで革命が起こり、独裁政権が打倒されたのですが、中国とミャンマーだけが自国の国民を弾圧・虐殺した後も同じ政府が続いているということです。中国の場合は1989年の天安門事件のことを指しています。

ただ中国はこれまで、この種のことが起こると必ず「他国のことには不干渉であるべし」というスタンスであり、今回も似たようなことを言っているので、余り当てにはならない(it is a thin hope)かもしれない。とはいえ今回は、ミャンマーの政権が平和的に移譲されるのを助ける方が中国にとって得だと思われる理由が二つある、とThe Economistは言っています。

まず、中国はミャンマーとの国境地帯が安定化することを望んでいるが、そのために現在のミャンマーの軍事政権が役に立つとはとても思えない(it is becoming obvious that the junta cannot provide it)ということ。現政権の経済政策が失敗したことで燃料価格が値上がりしたことが、現在の混乱の発端であるのですが、経済政策の失敗によって、ミャンマーからタイへの難民が200万に上っており、それが国境地帯を不安定にしているというわけです。

The Economistはさらに、中国政府がいま大いに心配しているのが、この事件の北京五輪への影響であるに違いない(China must also be wondering nervously how all this will affect next year's Olympic games in Beijing)と言っています。これまでも中国は、悪名高きスーダン政府を支援するなどして国際的にも顰蹙を買っており、ミャンマーについての国際的な努力を中国が邪魔するようなことになると、それが五輪ボイコットの呼びかけに繋がったりするかもしれない(it may provoke calls for a boycott of the games)。

もちろんミャンマーが中国の言うとおりになると考えるのは間違っている。ミャンマーの軍事政権はミャンマーの独立は自分たちだけが保障できると考えており、どの国の指図も受けないはず(They will take orders from no other country)。それでも中国の役割は重要で、それは中国以外の国々による対策がミャンマーにもたらすインパクトを薄め、結果として軍事政権を擁護するようなことを、中国がやってはならないということだ、ということです。

スー・チーさんらについてThe Economistは「自由で公正な選挙が行われるということを前提としてではあるが、スー・チーと国民民主連盟は、1990年の選挙における彼らの地すべり的勝利という結果を尊重することを主張すべきではないだろう。さらに実に不本意なことではあろうが、国民民主連盟は現軍事政権に対して静かに退場するために必要とするインデンティブをオファーするべきだ」と言っています。

で、The Economistの結論はというと:

このような主張は夢物語のように聞こえるだろう。そして世界が(軍事政権に対する)一連の要求を団結して突き付けると同時に、耳の遠い年老いた軍人たちに言う事を聞かせるためにどのようなムチとニンジンを用意するのかについて合意しないでいるならば、これからも夢物語のままで終わってしまうだろう。(This all sounds a pipedream. It will certainly remain so if the outside world does not unite around a set of demands, and agree on the sticks and carrots that might make deaf old soldiers listen.)

▼アメリカや英国は例によって「人道主義」とかいうので、強硬姿勢をとっており、福田さんは「経済制裁がベストの道だとは思えない」というようなことを言っていますね。日本の首相が、ブッシュ大統領やブラウン首相に対して「イラクだのアフガンだのの実績を見れば、アンタらにとやかく言われたくない。ここはジャパンにお任せを」なんてこと言うってのは、「夢物語」(pipedream)なんですよね、多分・・・。

▼The Economistの記事の原文をお読みなりたい方はお知らせを。

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2) チョムスキーのアフガニスタン戦争


Noam Chomskyというアメリカ人が数年前に行った講演原稿(The War in Afghanistan)を読んでいたら、どうやらこの人も「アフガン」も「イラク」も同じ(ブッシュの間違い)と思っている(つまり私と意見が似ている)ことが分かり、多少ほっとしております。

まずアメリカ軍によるアフガニスタンでの軍事行動が、「国連による承認(authorisation)を得ているかどうかについて議論があるが、安保理の決議案なるものがambiguous(どうとでも解釈できる)なもので、はっきりしないけれど、この議論そのものが最も大切なポイントを避けてしまっている」(it avoids the central issue)」と言っています。

アメリカ政府は安保理の承認を得ないということを主張した。安保理の承認などを得てしまうと、自分よりも高いところに権威が存在し、しかもそれを尊重しなければならない。権力のシステムが強いとその種の権威には抵抗するものなのである。Washington insisted on not obtaining Security Council authorization, which would entail that there is some higher authority to which it should defer. Systems of power resist that principle if they are strong enough to do so.

▼つまり「世の中のことはアメリカが決めるんだ。文句あっか!」ということですね。

アフガニスタン爆撃が始まって1週間後にブッシュ大統領が、軍事行動の目的はアルカイダのネットワークを破壊することにあるのだから、アフガニスタンの支配的な勢力であるタリバンが、オサマ・ビン・ラディンを差し出すならば、軍事行動をやめてもいい、という趣旨の発言をする。

本日、ビン・ラディンと彼の仲間を引き渡すならば、あなた方の国に対して我々が行っていることを考え直してもいい。あなた方にはまだチャンスがあるのだ・・・If you cough him up and his people today, then we'll reconsider what we are doing to your country. You still have a second chance.

で、アメリカなどの圧倒的な軍事力にタリバンが屈したときには、アメリカは「正義が勝った」という高揚感に包まれたわけですが、チョムスキーは「おそらく第二次大戦におけるドイツや日本も戦争の初期には同じような感覚であっただろう。ただ昔も今も変わらないのは、軍事力による勝利は物事の解決には全くならない(the victory of arms leaves the issues where they were)」は言っています。

アメリカや英国のインテリの意見は、米軍らによるアフガニスタン爆撃は「基本的には正義の戦争」(basically a just war)であり、これに反対する意見は「取るに足らない(can be dismissed)」ということで固まっている。無視されている意見の中にはアフガニスタンの人々の意見が入っている。2001年10月にペシャワールというところに集まったアフガニスタンの指導者たち(約1000人)の一致した意見は、アメリカがやっているのは「ロバの背中にまたがっている人間ではなく、ロバを打ちのめしている」(beating the donkey rather than the rider)というものだった。つまりテロリストを討たずにアフガニスタンという国や人々を殺している、というわけです。

Abdul Haqという人は、アフガニスタンでも反タリバン活動の指導者として知られていたのですが、アメリカについて次のように語っています。

アメリカのやっていることは、自分の腕力を見せ付けて勝ち点を挙げ、世界中の人々を恐怖で震え上がらせることだ。彼らには、アフガニスタン人の苦難や何人の命が失われたか、ということはどうでもいいことなのだ。それが我々には気に入らないのだ。現在のアフガニスタンが苦しんでいるのは、これらアラブの狂信者たちのおかげであるが、1980年代に彼らをこの国へ連れてきて、武器や基地を与えたのが誰なのか、我々は知っているのだ。それはアメリカ人であり、CIAなのだ。アラブの狂信者たちを助けたアメリカ人たちが勲章をもらい、昇進している間に我々アフガニスタン人は、アラブの狂信者とその仲間たちのお陰で苦しんでいるというわけだ。そして、アメリカが(アラブの狂信者によって)攻撃されると、アメリカは(アラブの狂信者を育てた)アメリカ人を罰するのではなく、アフガニスタン人を罰しているというわけだ。

▼「アラブの狂信者たち」とは、オサマ・ビン・ラディンとその仲間たちのこと。彼らは80年代のソ連によるアフガン侵攻が起こったときにアラブ諸国から乗り込んできて、ソ連との聖戦(ジハード)を戦ったのですが、それを支援したのがCIAだったということです。前回のむささびジャーナルで紹介したINSIDE GLOBAL JIHADという本によると、これらのアラブ人たちはタリバンを含むアフガニスタン人たちを全く見下していた

Abdul Haqは自分の反タリバン活動についてアメリカに支援を求めたのですが無視された。またアフガニスタン革命女性協会(RAWA:Revolutionary Association of the Women of Afghanistan)という組織はタリバンとアルカイダを打倒するためにアフガニスタン人が立ち上がるように呼びかけ、国連にも支援を求めたけれど、これも無視された。Chomskyによると、アメリカは湾岸戦争のときも、イラク国内の反フセインの人々の言うことを無視したのだそうです。

Chomskyはまた、英国の軍事史研究家として知られるMichael Howardという人が、アメリカなどによるアフガニスタン爆撃は「ガン細胞を除去するのにタイマツを使うのと同じ」(trying to eradicate cancer cells with a blow torch)という批判を紹介しています。この人は、アルカイダのような国際テロリストに対応するには、国際的な警察活動と国際裁判に拠るしかない、と主張しています。

▼アメリカがアフガンに侵攻したのが2001年10月、日本のテロ特措法の成立とカブール陥落が11月、12月にタリバンが崩壊。Chomskyがこの記事を書いたのが2001年12月。あれから6年、オサマ・ビン・ラディンが捕まっていないのはもちろんのこと、今年になって韓国人がタリバンに拉致までされているということは、タリバンさえも実は死んではいなかったということですよね。まさにChomskyの言ったことが当たっていたとしか言いようがない。 結果論ではなく、です。

▼Chomskyの講演原稿はメチャクチャ長いものなので、例によって私の独断によって、ポイントと思われる部分を抜き出してみました。原文をお読みになりたい方はお知らせを。

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3) テロ特を支持しないとホントに孤立するんですか?


テロ特措法なるものの延長をめぐって「小沢さんが党首会談をやってくれなかった」というので安倍さんが辞めてしまいました。「延長すべきだ」という人が必ず挙げる理由が、この法律がアフガニスタンにおける「テロとの闘い」を海上自衛隊が支援するものであって、イラク戦争を支援するのとは違うということですね。

さらに言うと、イラク戦争についてはアメリカの国内世論が分裂しているけれど、アフガニスタンにおける戦いについては支持する意見が多い。国際的な世論も同じ。従ってテロ特反対などと言っていると、日本は国際的に孤立してしまう。だから自衛隊によるアメリカ軍などへの給油活動は続けるべきである。大ざっぱに言うとこういうことですよね。

アメリカなどによるアフガニスタンでのテロ戦争を支援しないと、日本は「国際社会」で孤立する、という、「とにかく孤立だけは避けたい」というメディアの思考様式は本当に哀しいですよね。「何でもかんでもアメリカ一辺倒はウンザリだ」という反米・嫌米・離米・脱米の意識が生まれるのは当たり前ですよね。アメリカや英国を支援しないと本当に孤立するのでしょうか?「孤立」とは、そもそもどのような状態のことを言うのでありましょうか?アメリカが日本と国交断絶でもするんですか?英国が日本の観光客の入国を拒否でもするんですか?

・・・というようなことを考えていたら、9月28日付けの日経新聞にニューヨーク大学のリンカーンという教授のインタビュー記事が出ていました。彼は次のように言っています。

「米政権は自衛隊のインド洋での給油活動の継続を求めている。私自身は、これに反対する民主党の小沢一郎代表の立場に同調する。ブッシュ政権の安保政策には米国内でも反対論が強い。給油活動はアフガニスタンでの対テロ戦争関連の任務とはいえ、ブッシュ政権を支援するのは破綻したイラク政策を支持することと同義だと見られている。アフガン復興を支援するなら他に方法があると思う」

さらにアメリカのPew Research Centerという機関の世論調査によると、2006年1月の段階では「アフガニスタンにおける軍事行動は成功だった」と考えるアメリカ人は52%で、「失敗だった」とする30%をかなり上回っていたのに、12月になると「成功だと思う:45%」「失敗だと思う:42%」という具合で、やめた方がよかったかも、と考えるアメリカ人がかなり増えています。少なくとも、日本のメディアが言うように「アメリカ人の大多数が支持している」とはとても言えない。

最近になって、実は自衛隊が供給している石油はアメリカのイラク戦争に使われているのではないか、という記事も出てきたりしていますが、そんなことどうでもいいんじゃありませんか?要するにアメリカや英国のやっている対テロ戦争(war on terror)は正しいのか、間違っているのか。それだけです、ディスカッションをするべきなのは。正しいというのであれば、石油がイラクで使われたって何も悪いこっちゃない。

▼確か安倍さんは「国際社会の要請に応えることが、私のいう"主張する外交"なのであります」と言っていました。分かります?私には分からない。それと政治家やメディアの人たちのいわゆる「国際社会」ってどこにあるんです?その点については、以前に書いたことがあります。ここをクリックしてください。

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4)英国人の宗教観


アメリカの社会調査機関であるPew Research Centerのサイトを見ていたら、宗教(religion)というものに対する国別の意識調査結果(2002年)が出ていました。「宗教は非常に大切である」(religion is very important)と考える人の割合についての調査です。今から約5年前、2002年末の数字なのですが、宗教をvery importantと考えるアメリカ人は10人に6人(59%)にのぼるという結果になっています。いわゆる先進国の間ではダントツの数字です。 G8諸国における数字は

アメリカ
59%
英国
33%
カナダ
30%
イタリア
27%
ドイツ
21%
ロシア
14%
日本
12%
フランス
11%

という具合です。Pew Researchの調査は44カ国を対象にしたものなのですが、宗教が大切と考えるのは大体において開発途上国といわれるところに多い。例えば:

セネガル(アフリカ)
97%
インドネシア
95%
インド
92%
ナイジェリア
92%
パキスタン
91%

という具合です。宗教をアメリカ人と同じ程度に大切だと思っている国は、トルコ(65%)、ベネズエラ(61%)、メキシコ(57%)などとなっています。Pew Researchの調査は、何故アメリカでは宗教がそれほど大切にされるのかということには触れていません。おそらくこのあたりのことについては、いろいろと研究されてはいるのでしょう。私の限られた知識によると、AMERICAN THEOCRACY(神権の国、アメリカ)という本を書いたKevin Phillipsという人が次のように言っています。

これほどの宗教に熱心であり、それがゆえに「アメリカ人こそは神によって選ばれた人間であり、アメリカこそは神が選んだ国である」などと宣言する国は、現代の西洋ではアメリカしか存在しないだろう。(No other contemporary Western nation shares this religious intensity and its concomitant proclamation that Americans are God's chosen people and nation.)

アメリカ人の宗教観がどのようにして形成されるのかは、誰かに教えてもらうことにして、同じような話題の調査が英国人についても行われています。YouGovという機関が今年(2007年)の2月に行ったもので、英国人の宗教意識がいろいろと入っていて非常に面白い。

例えば、「神の存在」ということについて、自分の感覚にイチバン近いものはどれか、という趣旨の質問に対する答えは:

  • この世を造った存在であり、私の祈りに耳を傾けてくれる存在としての神を個人として信じている(I believe in a personal God who created the world and hears my prayers):22%

  • 何かを信じてはいるけれど、それが何であるかが分からない(I believe in something but I am not sure what):26%

  • 自分は懐疑主義者であり、神がいるかどうかを知ることは不可能であると思っている(I am an agnostic. I don't think it is possible to know if there is God or not):9%

  • 自分は無心論者であり、超自然的存在としての神などという話そのものがナンセンス(I am an ateist. The whole notion of a supernatural God is nonsense.):16%

  • 自分が何を信じているのかは分からないし、そのようなことは余り考えたことがない(I am not sure what and I don't give it much thought):10%

というわけです。最初の二つに共通しているのは I believe in という言葉ですよね。一つは宗教に熱心な人たちであり、もう一つは「宗教(キリスト教とかイスラム教など)というほど固まったものではないけれど、何か人間のアタマ以外のものを信じている」というグループでしょう。実はこれ以外にも少数%の答えがあり、11%がどちらかというと「信じている」グループに入っています。これらを合計すると59%。らくに半数を超えている。あとは懐疑主義、無神論、無関心という「信じない」グループで、合計すると35%。

Pew Researchの調査でアメリカ人の59%がreligion is very importantと答えている一方で、英国人の場合も59%がI believe in...と答えている。どこか共通しているように見えなくもない。が、次のアンケートを見ると、やはり違うかな、とも思えたりするのであります。

  • どのような頻度でお祈りをしますか?
毎日祈る:10%
比較的定期的に祈る:14%
殆ど祈ることはしない:31%
全く祈らない:43%

▲つまり英国では、7割以上の人が祈ることはしない。アメリカ人の家庭に行くと、かなりの人々が食べる前に祈りますよね。

  • どのような頻度で教会に行きますか?
1週間に一度以上:2% 
1週間に一度:4%
月に2〜3度:3%
月に1度:2%
月に1度以下:8%
結婚式や葬式以外には行かない:62%
全く行かない:18%

▲つまり80%が殆ど教会を意識していないってことになる。これもアメリカ人とはかなり違うのではありませんかね。

宗教について、アメリカ人はファナティック、英国人は及び腰という風に結論づけたとして、日本人はどうなのかというのが気になりますね。インターネットを探していたら、評論家の吉本隆明さんと社会思想史研究家の笠原芳光という人の対談が見つかりました。その冒頭で笠原さんが次のように言っています(対談そのものはここをクリックすると読むことができます)。

「近年の日本人の宗教意識調査によると、「宗教は必要だと思いますか」という質問には、必要だと思う人が72%、思わない人が25%といった回答があります。ところが、「あなたは信仰を持っていますか」という質問に対しては、持っている人が33%、持っていない人が65%。ほとんど逆なんですね。これは日本の特徴ではないかと思います。一方、アメリカで行なわれた調査では、信仰を持っている人は93%、持っていない人は7%。日本とは非常に違うんですね」

一方、国際基督教大学の森本あんり教授の『現代に語りかけるキリスト教』という本によると、日本人は特定の宗教集団への帰属意識はないかもしれないけれど、必ずしも「無宗教」というわけではない、として次のように言っています。

「(日本人が)「宗教を信じない」ということは、「キリスト教徒が信じるようなしかたでは宗教を信じていない」という意味であって、宗教的な価値観や世界観をいっさいもたない、という意味ではありません。つまり、特定の宗教団体には属していないが、かといって宗教とまったく無関係に生きているわけでもない、ということです」

▼以前にも書いたことがありますが、英国人の信仰心についてのアンケートで私が好きであったのは、Do you believe in God?という質問に対する回答です。21%がyesと答え、11%がno。でもイチバン多かったのが23%で、Doubt but believeというものだった。「(神様なんて)いないと思うけれど、ひょっとするといるかもな・・・」というわけです。この回答を見て、私としては英国人が好きになってしまったわけであります。どことなく「おっかなビックリ」というのがいいじゃありませんか。

▼「宗教」(religion)と「信仰」(faith)は別物ですよね。ただ共通しているのは「論理」(logic)の世界ではないってこと。でも別物ではありますよね。言ったことあるかもしれないけれど、我が家は妻の美耶子を始め子供3人と美耶子の母親の5人全てがクリスチャンです。私だけなんでもない。昔は子供たちから、意識の低い「無神論者」(atheist)であると「からかい」と「いじめ」の対象になっておりました。私の場合、「無神論者」というほど凄いものではなくて、英国人のDoubt but believeと似たようなものなのですが・・・。

▼それにしてもPew Research Centerの調査で、何故フランス人の宗教心(11%)は、こうまで低いのでありましょうか?それから(関係ありませんが)ミャンマーの町をデモ行進していた僧侶たちはみんな驚くほど若いですね。年齢が若いということもあるけれど、表情が非常に若いという気がしましたね。

 

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5)短信


たった7分間で電話料金が87,000ポンド

50kmも離れていないところへ電話して7分間しゃっただけで87,000ポンド(2000万円弱)も請求されれば誰でもびっくりしますよね。ウェールズに住むタイロンとドーンのチャドウィック夫妻がまさにそれをやられた。奥さんのドーンが地元の電話局(BT)に電話をしたら「請求書が正しい」の一点張りだったのだそうです。でも結局、BTのコンピュータ上のミスということが分かった。ドーンが地元紙のDaily Postに語るところによると、ダンナさんのタイロンは数ヶ月前に心臓麻痺の発作に襲われたとかで、問題の請求書が入った封筒を開けたのがドーンだったのが「不幸中の幸」で、タイロンが開けていたら二度目の発作を起こしたに違いない、とドーンが言っているそうです。

▼この請求書の内訳でありますが、電話料金が74,585.39ポンド+VAT(付加価値税)=87,749.85ポンドということ。つまり約74、000ポンドの通話料金の税金が13,000ポンドということになる。高いなぁ!

エベレストは神聖です

世界の最高峰・エベレスト山(8840m)ともなると、登頂記録にもいろいろありますね。最高齢(71才)、最年少(15)、片足による最初の登頂、盲人最初の登頂・・・ほかにもいろいろある。で、最近エベレストの山頂(気温氷点下10度)で、素っ裸で数分間立っていたというので「世界最高峰ヌード」という記録を達成した人がいるんですね。男ですが。地元のネパール登山協会では「エベレストは地元では神聖な場所とされているので、品をわきまえない記録挑戦は控えて欲しい」と言っています。

▼実はこのヌード男はネパールの人なんだそうです。しかしこれとは別にパンツ一枚で登頂を試みてヒンシュクを買ったオランダ人もいるんですね。ところでウィキペディアによると、エベレストに登山するためにネパール政府に支払わなければならない登山料金は一人約300万円なんですってね。これは知らなかったな。

8才でホールインワン

えーっと、ゴルフのタイガー・ウッズを知ってますよね。彼が最初にホールインワンをやったのは、何才のときだか知ってます?6才のときだったんだそうです、これが。しかるにイングランドのサフォークにあるゴルフ場で8才になる少年がホールインワンをやってしまった。Daily Mirrorによると、この少年が凄いのは、これが三度目のホールインワンだったってこと。4才と6才のときにもやっているんだそうです。

▼そんな年で105ヤードも飛ばすということが凄いじゃありませんか。私はゴルフはやったことないので、分からないけれど。

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6)むささびの鳴き声


▼最近、日本記者クラブで広島平和文化センターのスティーブン・リーパー理事長が記者会見を行いました。目的は、このセンターが中心になってアメリカ各都市で企画されている「原爆展」の趣旨説明をすることにありました。リーパーさんはアメリカ人です。

▼アメリカでは、原爆投下は犠牲者を増やさないために必要だったという意見が強いとされていますね。で、会見に参加したジャーナリストが「そもそもアメリカによる広島・長崎への原爆投下が不必要だったという意見がアメリカでも出てきている。アナタがたの原爆展を通じて核兵器の悲惨さを訴えるのはいいことには違いないが、アメリカが何故日本に原爆を落としたのかのディスカッションもされるべきではないのか」と質問しました。

▼それに対するリーパー理事長(私より多分4〜5才若い)の答えは、「自分自身はあの原爆投下は不必要であっただけでなく、戦争犯罪だったと思っているが、和解(reconciliation)というものは、過去のことを語ることによってはなかなか成り立たない。我々が訴えたいのは、これからの核戦争の回避ということだ。和解は将来のことを話し合うことによって成立するのだ」という趣旨のことを言っておりました。

▼戦争をめぐる「和解」というと、日中や日韓の和解を想起しませんか?加害者は日本であり、被害者は韓国・中国であるとされていますね。こと原爆に関する限り、アメリカが加害者であり、日本が被害者であること、そして和解(reconciliation)を訴えたリーパーさんがアメリカ人であることにご注目ください。

▼で、9月27日付けの読売新聞の夕刊に出ていた記事。中国で行われた女子のワールドカップ・サッカー試合で、日本とドイツが対戦して日本が負けた。その試合中、中国人の観客から日本の選手へのブーイングが鳴り止むことがなかったらしい。しかし負けた日本選手が、試合後に中国人の観客に対して「どうもありがとう(謝謝)」と大書した横断幕を掲げて感謝の意を表したところ、そのことについて、中国の新華社が発行している新聞が次のような論評を掲載したのだそうです。

日本女子チームは我々に「過去に生きる者は過去の中に消え去り、未来に生きる者は未来に向かって前進する」という現実に相対すべきことを教えた。

▼広島のリーパーさんが記者会見で言ったことと、中国の新聞の論評が似ているように思いませんか?120回目のむささびジャーナルにお付き合いを頂き有難うございました。


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