テロ特措法なるものの延長をめぐって「小沢さんが党首会談をやってくれなかった」というので安倍さんが辞めてしまいました。「延長すべきだ」という人が必ず挙げる理由が、この法律がアフガニスタンにおける「テロとの闘い」を海上自衛隊が支援するものであって、イラク戦争を支援するのとは違うということですね。
さらに言うと、イラク戦争についてはアメリカの国内世論が分裂しているけれど、アフガニスタンにおける戦いについては支持する意見が多い。国際的な世論も同じ。従ってテロ特反対などと言っていると、日本は国際的に孤立してしまう。だから自衛隊によるアメリカ軍などへの給油活動は続けるべきである。大ざっぱに言うとこういうことですよね。
アメリカなどによるアフガニスタンでのテロ戦争を支援しないと、日本は「国際社会」で孤立する、という、「とにかく孤立だけは避けたい」というメディアの思考様式は本当に哀しいですよね。「何でもかんでもアメリカ一辺倒はウンザリだ」という反米・嫌米・離米・脱米の意識が生まれるのは当たり前ですよね。アメリカや英国を支援しないと本当に孤立するのでしょうか?「孤立」とは、そもそもどのような状態のことを言うのでありましょうか?アメリカが日本と国交断絶でもするんですか?英国が日本の観光客の入国を拒否でもするんですか?
・・・というようなことを考えていたら、9月28日付けの日経新聞にニューヨーク大学のリンカーンという教授のインタビュー記事が出ていました。彼は次のように言っています。
「米政権は自衛隊のインド洋での給油活動の継続を求めている。私自身は、これに反対する民主党の小沢一郎代表の立場に同調する。ブッシュ政権の安保政策には米国内でも反対論が強い。給油活動はアフガニスタンでの対テロ戦争関連の任務とはいえ、ブッシュ政権を支援するのは破綻したイラク政策を支持することと同義だと見られている。アフガン復興を支援するなら他に方法があると思う」
さらにアメリカのPew Research Centerという機関の世論調査によると、2006年1月の段階では「アフガニスタンにおける軍事行動は成功だった」と考えるアメリカ人は52%で、「失敗だった」とする30%をかなり上回っていたのに、12月になると「成功だと思う:45%」「失敗だと思う:42%」という具合で、やめた方がよかったかも、と考えるアメリカ人がかなり増えています。少なくとも、日本のメディアが言うように「アメリカ人の大多数が支持している」とはとても言えない。
最近になって、実は自衛隊が供給している石油はアメリカのイラク戦争に使われているのではないか、という記事も出てきたりしていますが、そんなことどうでもいいんじゃありませんか?要するにアメリカや英国のやっている対テロ戦争(war
on terror)は正しいのか、間違っているのか。それだけです、ディスカッションをするべきなのは。正しいというのであれば、石油がイラクで使われたって何も悪いこっちゃない。
▼確か安倍さんは「国際社会の要請に応えることが、私のいう"主張する外交"なのであります」と言っていました。分かります?私には分からない。それと政治家やメディアの人たちのいわゆる「国際社会」ってどこにあるんです?その点については、以前に書いたことがあります。ここをクリックしてください。
BACK TO TOP
アメリカの社会調査機関であるPew
Research Centerのサイトを見ていたら、宗教(religion)というものに対する国別の意識調査結果(2002年)が出ていました。「宗教は非常に大切である」(religion
is very important)と考える人の割合についての調査です。今から約5年前、2002年末の数字なのですが、宗教をvery
importantと考えるアメリカ人は10人に6人(59%)にのぼるという結果になっています。いわゆる先進国の間ではダントツの数字です。
G8諸国における数字は
アメリカ
|
59%
|
英国
|
33% |
カナダ
|
30% |
イタリア
|
27% |
ドイツ
|
21% |
ロシア
|
14% |
日本
|
12% |
フランス
|
11% |
という具合です。Pew Researchの調査は44カ国を対象にしたものなのですが、宗教が大切と考えるのは大体において開発途上国といわれるところに多い。例えば:
セネガル(アフリカ)
|
97%
|
インドネシア
|
95% |
インド
|
92% |
ナイジェリア
|
92% |
パキスタン
|
91% |
という具合です。宗教をアメリカ人と同じ程度に大切だと思っている国は、トルコ(65%)、ベネズエラ(61%)、メキシコ(57%)などとなっています。Pew
Researchの調査は、何故アメリカでは宗教がそれほど大切にされるのかということには触れていません。おそらくこのあたりのことについては、いろいろと研究されてはいるのでしょう。私の限られた知識によると、AMERICAN
THEOCRACY(神権の国、アメリカ)という本を書いたKevin Phillipsという人が次のように言っています。
これほどの宗教に熱心であり、それがゆえに「アメリカ人こそは神によって選ばれた人間であり、アメリカこそは神が選んだ国である」などと宣言する国は、現代の西洋ではアメリカしか存在しないだろう。(No
other contemporary Western nation shares this religious intensity
and its concomitant proclamation that Americans are God's chosen
people and nation.)
アメリカ人の宗教観がどのようにして形成されるのかは、誰かに教えてもらうことにして、同じような話題の調査が英国人についても行われています。YouGovという機関が今年(2007年)の2月に行ったもので、英国人の宗教意識がいろいろと入っていて非常に面白い。
例えば、「神の存在」ということについて、自分の感覚にイチバン近いものはどれか、という趣旨の質問に対する答えは:
-
この世を造った存在であり、私の祈りに耳を傾けてくれる存在としての神を個人として信じている(I
believe in a personal God who created the world and hears my
prayers):22%
-
何かを信じてはいるけれど、それが何であるかが分からない(I believe in something
but I am not sure what):26%
-
自分は懐疑主義者であり、神がいるかどうかを知ることは不可能であると思っている(I am
an agnostic. I don't think it is possible to know if there is
God or not):9%
-
自分は無心論者であり、超自然的存在としての神などという話そのものがナンセンス(I am
an ateist. The whole notion of a supernatural God is nonsense.):16%
-
自分が何を信じているのかは分からないし、そのようなことは余り考えたことがない(I am
not sure what and I don't give it much thought):10%
というわけです。最初の二つに共通しているのは I
believe in という言葉ですよね。一つは宗教に熱心な人たちであり、もう一つは「宗教(キリスト教とかイスラム教など)というほど固まったものではないけれど、何か人間のアタマ以外のものを信じている」というグループでしょう。実はこれ以外にも少数%の答えがあり、11%がどちらかというと「信じている」グループに入っています。これらを合計すると59%。らくに半数を超えている。あとは懐疑主義、無神論、無関心という「信じない」グループで、合計すると35%。
Pew Researchの調査でアメリカ人の59%がreligion is very importantと答えている一方で、英国人の場合も59%がI
believe in...と答えている。どこか共通しているように見えなくもない。が、次のアンケートを見ると、やはり違うかな、とも思えたりするのであります。
毎日祈る:10%
|
比較的定期的に祈る:14%
|
殆ど祈ることはしない:31%
|
全く祈らない:43%
|
▲つまり英国では、7割以上の人が祈ることはしない。アメリカ人の家庭に行くと、かなりの人々が食べる前に祈りますよね。
1週間に一度以上:2%
|
1週間に一度:4%
|
月に2〜3度:3%
|
月に1度:2%
|
月に1度以下:8%
|
結婚式や葬式以外には行かない:62%
|
全く行かない:18%
|
▲つまり80%が殆ど教会を意識していないってことになる。これもアメリカ人とはかなり違うのではありませんかね。
宗教について、アメリカ人はファナティック、英国人は及び腰という風に結論づけたとして、日本人はどうなのかというのが気になりますね。インターネットを探していたら、評論家の吉本隆明さんと社会思想史研究家の笠原芳光という人の対談が見つかりました。その冒頭で笠原さんが次のように言っています(対談そのものはここをクリックすると読むことができます)。
「近年の日本人の宗教意識調査によると、「宗教は必要だと思いますか」という質問には、必要だと思う人が72%、思わない人が25%といった回答があります。ところが、「あなたは信仰を持っていますか」という質問に対しては、持っている人が33%、持っていない人が65%。ほとんど逆なんですね。これは日本の特徴ではないかと思います。一方、アメリカで行なわれた調査では、信仰を持っている人は93%、持っていない人は7%。日本とは非常に違うんですね」
一方、国際基督教大学の森本あんり教授の『現代に語りかけるキリスト教』という本によると、日本人は特定の宗教集団への帰属意識はないかもしれないけれど、必ずしも「無宗教」というわけではない、として次のように言っています。
「(日本人が)「宗教を信じない」ということは、「キリスト教徒が信じるようなしかたでは宗教を信じていない」という意味であって、宗教的な価値観や世界観をいっさいもたない、という意味ではありません。つまり、特定の宗教団体には属していないが、かといって宗教とまったく無関係に生きているわけでもない、ということです」
▼以前にも書いたことがありますが、英国人の信仰心についてのアンケートで私が好きであったのは、Do
you believe in God?という質問に対する回答です。21%がyesと答え、11%がno。でもイチバン多かったのが23%で、Doubt
but believeというものだった。「(神様なんて)いないと思うけれど、ひょっとするといるかもな・・・」というわけです。この回答を見て、私としては英国人が好きになってしまったわけであります。どことなく「おっかなビックリ」というのがいいじゃありませんか。
▼「宗教」(religion)と「信仰」(faith)は別物ですよね。ただ共通しているのは「論理」(logic)の世界ではないってこと。でも別物ではありますよね。言ったことあるかもしれないけれど、我が家は妻の美耶子を始め子供3人と美耶子の母親の5人全てがクリスチャンです。私だけなんでもない。昔は子供たちから、意識の低い「無神論者」(atheist)であると「からかい」と「いじめ」の対象になっておりました。私の場合、「無神論者」というほど凄いものではなくて、英国人のDoubt
but believeと似たようなものなのですが・・・。
▼それにしてもPew Research Centerの調査で、何故フランス人の宗教心(11%)は、こうまで低いのでありましょうか?それから(関係ありませんが)ミャンマーの町をデモ行進していた僧侶たちはみんな驚くほど若いですね。年齢が若いということもあるけれど、表情が非常に若いという気がしましたね。
BACK TO TOP
|