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musasabi journal
第124号 2007年11月25日

  

かなり寒くなりましたね。ただ昨日と本日(11月25日)は、関東地方は快晴。真っ青な空でした。ちなみに本日は、私が暮らしている町の清掃日でした。近所の川原へ皆で出かけて行って清掃をする日です。1年に2回あります。今日は何故か、市長さんが来て挨拶をしておりました。この人、近所に住んでいて、自動車学校を経営しています。はっきり言って、邪魔な存在です。いえ、市長ではなく、自動車学校が、です。

目次

1)フィンランドが気にするロシアの「歴史認識」
2)ロシア、何故いま「歴史の書き換え」なのか?
3)ブレアさんのその後
4)J曲線の左側
5)短信
6)むささびの鳴き声

1) フィンランドが気にするロシアの「歴史認識」


フィンランド最大の日刊紙、Helsingin Sanomatのサイト(英文版)を見ていたら「えっ?」と思うような記事が出ていました。題して「ロシアの新しい教科書ではスターリンが英雄扱い(Stalin portrayed as hero in new Russian school textbook)」。つまり歴史教科書の記述が問題になっているのは、日韓・日中だけじゃないんですね。

白状すると、ロシアとその「あちら側」(フィンランド寄りということ)の歴史など何にも知らないので、Helsingin Sanomatに出て来る人名・地名・出来事などについては分からないままに紹介してみます。

Helsingin Sanomatによると、ロシア政府は、現在使われている歴史教科書の中の20世紀・21世紀のロシア史については不満だとしており、このほどある学者グループが書いた教科書を「推薦」(recommend)することにしたのだそうであります。ロシア版の「新しい教科書を作る会」ですな。

この教科書は「スターリン政権が独裁的であったことは認めながらも、権力を集中させることで近代的な産業基盤が確立され、ソ連は近代化に成功し、先進国の民主的な価値観を受け入れるようになった」として、スターリンにも評価されるべき点はあったのだ、というニュアンスのことを言っている(とHelsingin Sanomatは書いている)。

Helsingin Sanomatが批判的に書いていることは他にもあります。

  • 「強制的な農業集団化は、ソ連が工業国家となるために避けることができないステップだった」とは書いてあるけれど、その過程でウクライナで飢饉が起こり数百万人が死んだということには全く触れていない。
  • 1940年にエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国がソ連の一部になったことについて、あたかも自発的にソ連に加盟したかのような記述になっており、ソ連の赤軍が3国を占領し、これらの国の指導者を投獄してしまったという事実は全く書かれていない。
  • スターリンのテロについて、1935年〜1937年のことに触れ、80万人が処刑され、1800万人が収容所に入れられたと書いてある。が、実際には1950年代まで続いたテロ政治のトータルな犠牲者数には触れていない。
  • 1939〜40年、ソ連とフィンランドの間に冬戦争というのがあったのですが、これについてもロシアの新教科書は、あたかもフィンランドが戦争を始めたかのように記述しており、英国やフランスのみならず、ヒトラーのドイツまでもがフィンランドに味方したおかげで「フィンランドのソビエト化というコミンテルンの願いは実現しなかった」と、それがあたかも遺憾であるかのように書いている。
  • ソ連崩壊後の1990年代にさまざまな共和国がソ連から独立したことについても「必ずしもソ連から離れることを望んでいたわけではない」と注釈したりしている。

というわけです。 この記事については、次のThe Economistの記事も参考にしてください。

 

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2) ロシア、何故いま「歴史の書き換え」なのか?


フィンランドの新聞が問題にしているロシアの歴史書き換えという話題は、11月10日付のThe Economistでも取り上げられています。こちらの場合は、フィンランドの問題ではなく、「書き換え」をしようとしているロシアの意図と事情を解説する記事になっています。

社会主義ソ連が崩壊して以来、ロシアは「公式イデオロギー」(official ideology)というものを持たずに過ごしてきた。ロシアのエリートたちは、ソ連時代の「壮大なる社会設計」(grand design)にはうんざりしており、現実主義(pragmatism)と物質的に豊かになること(enrichment)の方に力を注いできた。プーチンでさえ、2004年の時点で、自分の夢は「ロシアを経済的に競争力のある国すること(to make Russia competitive)」と語っていた。

それがエネルギー大国として力を持ち、世界的にも中心的な役割を果たしたいという念願が強くなるに及んで、ロシア人の意識を高揚させるような「何か」が求められるようになった。The Economistによると、ロシアという国では、国の現在や未来よりも「過去」を語ることに大いなる情熱が注がれるのだそうです。

ロシアがどのような国になるのかは、どのような歴史を選択するかということにかかっている。だからこそ、クレムリンは歴史を教えるという仕事を歴史家たちに任せておくわけにはいかないと考えるようになったのだ。(What kind of country Russia becomes will depend in large part on what kind of history it chooses. And that is why the Kremlin has decided that it cannot afford to leave history teaching to the historians)

今年の初めに歴史の教師たちを集めた会議があったのですが、そこでプーチンは次のように演説したのだそうです。

ロシアの歴史には、もちろんいくつかの問題になるようなページがある。しかしそれはどこの国も同じことだ。我々の歴史が抱える問題は問題は他国のそれに比較すれば少ない方だし、他国の問題ほど酷いものでもない。(Russian history did contain some problematic pages. But so did other states' histories. We have fewer of them than other countries. And they were less terrible than in some other countries)

プーチンのメッセージは「何びといえども、我々に罪の意識を強制することは許されない(we can't allow anyone to impose a sense of guilt on us)ということにある、とThe Economistは言っています。

『ロシア現代史:1945-2006』というタイトルの教師のためのマニュアルが出ており、次のような事柄が含まれているのだとか。

  • 1991年のソ連崩壊はロシアの前進にとっては悲劇的な誤り(tragic mistake)だった。
  • スターリンの独裁は、アメリカが始めた冷戦に対処するための必要悪(necessary evil)だった。
  • ロシアは冷戦に負けたのではない。冷戦を終わらせたのだ。
  • ゴルバチョフは中欧・東欧を失うことによって、ソ連の安全保障ベルト地域をギブアップした。
  • 冷戦終結以来、アメリカによる反ロシア政策が進められ、ウクライナやグルジアで反ロシア革命が起こり、アメリカがロシアを攻撃するための跳躍台が作られた。

というわけで、ロシアはいま「新しい孤立」の時代にある(a new isolation of Russia)と書かれている。このマニュアルにはさらに次のような記述もあるそうであります。

国の経済が外国資本や外国からの輸入に依存し、世界市場が定める要件に準ずるようになると、その国は自分の利益を守れなくなる(If the national economy is dependent on foreign capital, on imports or the terms of the world market, such a country cannot defend its own interests)

そしてこのマニュアルの最終章は「主権的民主主義」(Soverign Democracy)というタイトルになっていて、政府のイデオローグである、ウラジミール・スルコフという人の考え方が紹介されている。

この人によると、ロシアに必要なのは、ロシアの国民性に適した政治体制であり、国際規準などは「外圧」として無視した方がいい。で、ロシアの国民性とは「本能的に強い指導者を希求する(instinctive longing for a strong hand)」性格であり、政治体制としては、中央集権・権力の個人化と理想化(centralisation, personification and idealisation of power)という形になるのが、ロシアという国の政治文化だ、とされている。つまり組織(institution)よりも強力かつ賢明なる指導者(strong and wise leader)の方が重要視されるということだ、ということです。

The Economistは「強力かつ賢明なる指導者」とはもちろんプーチン大統領のことであり、歴史教科書の書き換えも結局はプーチンを神格化するために行われているようなものだと言っています。

ロシアでは、学校でどの教科書を使うかは、今のところは自由なのですが、クレムリン版の歴史を見ると、その自由もそう長くは続かないかもしれない(the version of history now proposed by the Kremlin suggests that freedom may not last)」とのことであります。

▼最近、日本記者クラブで、ロシアのガスプロムというエネルギー関連の企業とビジネスを行っている商社マンの話を聞いたのですが、この人によると、プーチンが断固として決意していることの一つが「絶対に社会主義には戻らない」ということなのだそうです。そのことと、The Economistの記事で紹介されている「ロシア人の国民性に適した政治体制(強力な指導者による中央集権的民主主義)」なるものを合わせると、どういうことになるのでしょうか。個人崇拝的資本主義?国家中心資本主義?いずれにしても矛盾であることに違いない。

▼ガスプロムとのビジネスについてのこの商社マンの話は、The Economistの記事などと違って、かなりロシア人に近い感覚で、ロシアとの付き合いを語っていてタイヘン面白い。日本記者クラブのサイトに掲載されています。

▼日中・日韓の教科書問題と絡めて考えると「何びとといえども、我々に罪の意識を強制することは許されない」というプーチンのメッセージは強烈であるという気がしませんか?

3) ブレアさんのその後


今年5月に首相の座をゴードン・ブラウンに譲ったブレアさん、その後どうしているのかと思っていたら、11月18日付けのThe Independentのサイトに「きわめて豊かなリタイアメント生活」(a very lucrative retirement)を送っているという記事が出ておりました。どう豊かなのかというと、首相時代の年収(186,429ポンド=約4700万円)なんて、ちょっと格調高い講演会を二つやれば稼げてしまう(it now takes him just two high-profile speeches to earn the same amount)のだそうです。

その記事によると、ブレアさんは最近、中国の広東省にあるGuangda Groupという企業に招かれて20分しゃべっただけで、講演料が237,000ポンド(ほぼ6000万円!)だったらしい。

ブレアさんの場合、アメリカのWashington Speakers Bureau (WSB)というエージェントと契約をしており、講演を頼むためには、ここを通すことになっているのだそうです。このエージェントは、ブレアさん以外に、アメリカ国務長官だったColin PowellやMadeleine Albright、連邦準備制度理事会(FRB)の前議長、Alan Greenspanらの有名人をクライアントとして抱えているのですが、ウェブサイトを開くと、トップページにブレアさんの名前が出ているということは、この人を抱えていること自体がWSBにとっていいPRになるってことなのでしょう。

この種のことに詳しい「業界筋」によると、WSBを通じてブレアさんに講演を頼むと、一回で少なくとも75,000ポンド(約1900万円)はとられるそうであります。それでも1年に50回も世界中の金持ち相手にお話をすれば、300万ポンドは楽に掻き集められる(easily rake in £3m)。これに加えて首相時代の回想録出版で、少なくとも450万ポンドは稼げるだろう、とThe Independentは言っています。

ところでブレアさんは、アメリカ、国連、EUそれにロシアの4カ国を代表する中東特使を勤めており、つい最近もパレスチナの経済発展についての提案なるものを発表したりしています。The Independentによるとこの職自体は無給なのですが、活動費として200万ポンドかかっているし、英国外務省はスタッフを4人出向させているので、それやこれや合わせると、英国の税金を年間40万ポンド使っていることになるのだとか。

で、最初に出てきた20分の講演に237,000ポンド払った中国の会社は「催涙ガス関連製品」のメーカーであると同時に、オーナーは不動産で大金持ちになった「問題の人物(controvertial figure)」だそうであります。

ちなみにブレアさんの年金は、64,000ポンド(約1600万円)だそうで、自分の事務所を運営するのに年間9万ポンドもかかるらしいので、とにかく稼ぎまくる必要はある。だから少々問題のある企業からの依頼でも断るわけにはいかないってことなのでしょうが、そのあたりのジレンマについてThe Independentの記事は次のように書いています。

ブレア氏は、将来、自分の顧客が自分のクリーンなイメージをキズつけるようなダメージについては「身震い」して避けたいと願っているであろう。しかし奥さん、4人の子供、5件の住宅、そして何よりも歴史における自分の居場所などをサポートしようと思えば、仕事の選り好みは余りできないかもしれない。But, with a wife, four children, five houses and a place in history to support, he can't be too choosy about where the work takes him.

▼現在のブレアさんの活動については、事務所サイト(http://www.tonyblairoffice.org/)を見れば出ています。ただThe Independentが伝える中国における「退屈なスピーチの内容」(uninspiring content)を知りたいと思ったのですが、それは出ていませんでした。

▼首相であったことを利用して(言葉は悪いけれど)講演会などで稼ぎまくるのはブレアさんだけではないことは当然です。私の記憶ではサッチャーさんなどもかなりの回数日本で講演をやったと思います。もちろん回想録は売れただろうし・・・。

▼勝手な想像ですが、サッチャーに比べてブレアさんが可哀そうな気がしないでもないのは、インターネットの発達で、ブレアさんの在任中のことについてはかなりの情報が既に出回っているってことなのでは?もちろん「自分だけが知っている」ということは、いろいろとあるのだろうとは思うけれど、サッチャーさんの回想録ほど「そんなことあったんですか」という部分は少ないんじゃありませんかね。

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4)J曲線の左側


Ian Bremmerという人が書いたThe J Curve(J曲線)は、今の世界で「強権的」とされる国々の性格を語りながら、いわゆる「先進国」がこれらの国とどのように付き合っていけばいいのかという問題を検討しています。外交政策の立案者やちょっと危険な国に投資をしようかという企業経営者などに読まれるべく書かれた本なのですが、私のような「ただの素人」が読んでも、何やら理解できるような気になってしまう本でもある。

碁盤の目を描いて、その上にアルファベットのJを斜めに傾けたような曲線を描いてみてください。縦軸が国の「安定度」(Stability)、横軸が「開放度」(Openness)を示すと思ってください。つまり縦軸の上へ行くほど「安定度」が高く、横軸を右へ行くほど「開放度」が高い国ということになる。

J曲線の左上先端に来る国は「最も閉鎖的ではあるが安定している国」であり、右上先端に来る国は「最も開放的かつ社会的にも安定している国」ということになる。左端の典型的な国として挙げられているのが、北朝鮮、キューバ、フセイン政権下でのイラクです。右端に来るのはアメリカ、英国、日本、スェーデンなどのいわゆる「先進国」です。

両方とも「安定している」(stable)ということでは共通しているのですが、左端国は「閉鎖的であるが故に安定している」(it is stable because it is closed)のに対して、右端の国の場合は「開放的であるが故に安定している」(it is stable because it is open)。先進国の社会的な安定は、外国に向かって門戸が開放されていたり、国内的には表現の自由や情報公開などによって支えられている部分が大きい。北朝鮮やビルマのような国の場合、外の世界に向かってオープンでないこともありますが、「国境の内側における情報や考え方が自由に流れるようになっているか」(flow of information and ideas within a country's border)が問題になる。

いまやグローバル化が進行している情勢で、どの国も閉鎖的であり続けることは不可能であり、いずれも左側から右側へ移行せざるを得ないのですが、筆者が強調しているのは、移行の過程でどの国も一度は縦軸のイチバン下まで下がってから徐々に右側の曲線を上っていくものだということです。つまり独裁国家がオープンになっていく過程で必ず社会的な不安定を経験する。しかも右の曲線に比べて左側は急激に落下する。つまり独裁体制の崩壊がきわめて急速に進行する。

著者は、J曲線の左側にいる北朝鮮を右側に移行させるためにアメリカを始めとする先進国がとるべき政策は「体制転覆」(regime change)しかない、と言うのですが、それはアメリカがフセイン政権下のイラクに対して行ったような「ショックを与えて震え上がらせる」(shock and awe)軍事行動による体制転覆ではなく、北朝鮮内部に変革要求の機運を作り出す(to create demand for change from within the DPRK)ことにある。そのためには北朝鮮の人々を外の世界にの影響にさらすような方法を見つけることが必要であるとのことです。

筆者は、shock and aweというやり方では、金正日政権は、ありとあらゆる手段を駆使して北朝鮮の孤立化政策を継続しようとするだろう、というわけで、

北朝鮮に懲罰的な制裁を与えて、北朝鮮の人々が外の世界と交流する機会を断ち切ることは、(外国が)自分で自分の首を絞めるようなものだ。北朝鮮に明かりが灯り、世界で最も抑圧的な警察国家に対して 人々のエネルギーが解放されるためには、北朝鮮の市民と外の世界とのコンタクトは必要不可欠だ。(Imposing punitive sanctions and cutting off oportunities for North Korea's people to interact with outsiders is self-defeating. Contact between North Korea's citizens and the outside world is essential if the lights are to be turned on in North Korea and the energy of the North Korean people is to be let loose on the world's most oppressive police state)

と主張しています。いわゆる「強硬路線」は、現政権の力を強めるだけだということです。北朝鮮が左の曲線を下がる過程で、破滅状態にならないために、筆者は韓国と中国の役割が決定的だと言っている。中国はいまでも「トロイの木馬」として北朝鮮に入り込み、あの国の市民が外側の世界に触れるための力になれると言います。筆者が提案しているのは、古い携帯電話やパソコンを持ち込んでピョンヤンの人に渡すとか、かなり素朴なことを言っている。

で、その中国は、筆者によると「経済は開放的・政治は閉鎖的」というわけで、J曲線の左から、右へ一挙に行ってしまおうとしているけれど、政治的な自由が許され、社会が開放的になる過程で、一度はJ曲線を下へ降りる(社会的な不安定を経験する)ことは避けられない。

中国を不安定期を通り過ぎてJ曲線の右側に連れてくるためにアメリカなどの外国が取りうる最悪の選択は、ワシントン政府が北朝鮮やキューバに対してとったやり方だ。The worst choice the United States and others could make in trying to bring China through instability toward the right side of the J curve is the choice Washington has made in its relations with North Korea and Cuba.

ここでいう「最悪の選択」とは中国を孤立させることだというわけです。 筆者によると、最近のワシントンでは9-11直後のような「悪の枢軸」(axis of evil)という言葉に代わって「独裁の辺地」(outposts of tyranny)という言葉が使われるようになっているのだそうです。かつてより柔軟路線に変更しているということ。

ある意味、この路線変更は、軍事力によるregime changeが、たとえそれが信頼するにたる軍事圧力であったとしても、アメリカの外交政策の主要部分にするには、余りにも高くつきすぎる、ということをワシントンが認識したことを反映しているのだ。(In part, this shift reflects Washington's recognition that military regime change--even credible military pressure--is prohibitingly expensive as a major component of US foreign policy.)

▼経済は開放的・政治は閉鎖的という中国ですが、最近日本記者クラブで中国事情に詳しい研究者の話を聞く機会があった。その人が言うには、現在の中国は「原始資本主義社会」なのだそうです。一握りの超金持ちと貧しい大衆に二極分離している社会ということです。日本の格差の比ではないそうです。

▼中国もロシアもかつては社会主義のお手本であったのが、ロシアはそれをギブアップしており、中国も経済に関しては資本主義みたいになっている。何十年も前に読んだ、ソビエト社会科学アカデミー(確かそんな名前だった)というところが出したマルクス経済学の入門書によると、資本主義社会にあっては。生産手段(機械)が一部資本家階級に独占され、利潤追求の過程で資本家はますます金持ちになり、貧富の差が極限にまで達したときに、搾取されている労働者による革命が起こり、労働者階級独裁による社会主義ができる。

▼その社会主義の生産力がどんどん向上すると、やがては大きなパイを皆で平等に分け合い、しかも貧困層というものが存在しない「共産主義社会」が実現する・・・というプログラムのはずだった。で、いまの中国やロシアが、むき出しの原始資本主義社会だとすると、マルクスの理論でいくと、やがて労働者・農民らによる革命が起こることになっている。

▼社会主義社会が原始資本主義になるとは、マルクスもエンゲルスも想定していなかった事態でしょうね。でも、かつて社会主義を経験した大衆が「原始資本主義」に異を唱えるとすると、行き着くのはどんな社会なんですかね?

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5)短信


英単語の人気調査

Nincompoopなんて英語は聞いたことがなかったけれど、これ「アホ」(a very stupid person)という意味らしいですね。言葉のゲームソフトメーカーのUbisoftが2000人の英国人を対象に行った調査によると、Cambridge English Dictionaryから抽出した16,500の英単語のうちイチバン人気があったのがNincompoopだったそうです。2番目にポピュラーだったのが"love"で、第三位が"mum"だったとかで、調査を行ったUbisoftの人は「英国人の語彙が落ちている」と言っています。

▼日本語についても同じような調査がないか検索したけれど見つからなかった。が、宝島社発行の『からだが弾む日本語』なる本が紹介されていて、声に出して読むべき日本語の中に『惚(ほ)れた数(かず)から振(ふ)られた数(かず)を 引(ひ)けば女房(にょうぼ)が残(のこ)るだけ』というのがありました。

ミンスパイの大食い

ミンスパイといえば、確か英国では昔からクリスマスに食べるお菓子だったと記憶していますが、イングランドのサマセットという町にあるホテルで、ミンスパイ大食い競争なるものが行われ、Clive Pearsonという人が10分間で26個食べて優勝、1000ポンドの賞金を手にしたそうです。Daily Mirrorによると、アメリカのラスベガスでは大食い世界選手権というのが行われており、Cliveも是非これに参加したいと張り切っているとか。この人のコメントによると、勝利の秘訣はちょっとずつ水を飲みながら食べることなのだそうであります。

▼大食い競争てえのはどこにでもあるんですねぇ。最近、テレビでよく見るけれど、実に気持ち悪い。特に若い女性の大食いは・・・情けないで、ほんまに・・・。

イヌの香水

イヌ用の香水なるものがロンドンのMungo & Maudとかいう店で売っているそうですね。Lyn Harrisという香水職人が作ったもので、香りはというと「French blackcurrant, Tunisian neroli, mimosa and violet leaf on a base of sweet vanilla bourbon with a little almond」とかで、なんだかさっぱり分からない。お店では「イヌがリフレッシュして人間の鼻にもアピールする香り(A scent that would refresh the dog and appeal to the human nose too)だと言っております。値段は38ポンド(ほぼ1万円)だそうです。

▼この香水の香りの説明の最後を見ました?「甘いバニラのバーボンにちょっとアーモンドを加えた」だって。この香水にコーディネイトするシャンプー(約16ポンド)もあるんだそうです。ええ加減にせんかい!イヌやろが、たかが・・・!!!

45秒で160文字

textingという英語は、ケイタイでメールを送ることを言うんですってね。で、最近、ニュージーランドのElliot Nichollsという17歳が、目隠しで160文字のメールを45秒間で送り終わったという世界記録を樹立したのだそうです。この人は1日で50通ほどのメールを送るらしい。50通ならそれほど異常でもないかもな。ちなみに与えられた課題メール文(160文字)は「the razor toothed piranhas of the genera serrasal musand pygocentrus are the most ferocious freshwater fish in the world, in reality they rarely attack a human」だったそうで、言うまでもなく綴りのミスなどゼロで送らなければならない。

▼アタシなんか、自慢じゃないけど、ケータイは持っていてもメールなんかやれないもんな。

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6)むささびの鳴き声


▼最近の新聞に出ていたコメントをハナシのネタにいくつか紹介します。

--日米関係を心配する向きがある。

「何の心配もない。ブッシュ大統領なんて米国民に支持されていないんだから、何で気兼ねするんだ。いま米国内でもブッシュ大統領の政策は批判の的だ」

▼これは朝日新聞に出ていた民主党の小沢さんとのインタビューでのコメントです。インド洋での給油活動から日本が撤退することについての質問と答えです。1行目は、小沢さんらの言うように、自衛隊がインド洋から撤退すると、日米関係が悪くなるのでは?という質問です。 2行目はそれに対する小沢さんの答え。

▼「評論家的な論評」をさせてもらうと、小沢さんは「アメリカの言いなりになるのは沢山だ」という日本国内の世論を意識して、このような答え方をしたのかもしれないけれど、利口な政治家の言うコメントではないと思いませんか?小沢さんとしては、ブッシュがどう思おうと知ったこっちゃないと考えているのかもしれないし、ブッシュだって小沢さんの言うことなど気にもとめないかもしれないけれど、このコメントを読めば、国民に支持されてもいない人を大統領に担いでいると言われているようで、ブッシュを支持していないアメリカ人だって余りいい気持ちはしない。というわけで、やはり日米関係は心配ということに・・・。

▼次に11月22日付けの毎日新聞夕刊に出ていたものを紹介します。赤木智弘さんという「フリーター」が中島岳志・北大准教授との対談の中で言った言葉です。

若者を批判して上の世代が偉ぶるのは、彼らがこれから若者にはなり得ない、若返ることがないからですよね。安心してたたける。それは男性が女性を、白人が黒人をたたくのと同じ構図だと思います。

▼うまいこと言うなあ、と心底感心しました。本当のことですからね。この対談での赤木さんの発言をもう一つ紹介すると・・・:

バブルまでの終身雇用は、本人が努力して得る身分というより、当然の仕組みだったわけです。バブル崩壊以後、そうじゃなくなったのに、自分たちの過去を「努力したんだ」と言って下の世代をたたけるようになった。

▼赤木智弘さんは『若者を見殺しにする国:私を戦争に向かわせるのは何か』という本の著者だそうです。私、何故か「若者」という言葉が嫌いなのでありますが、それはともかく、この人は注目に値する。彼のブログ毎日新聞の対談は必読です。

▼最後は企業とは何か?という問題について・・・

会社は株主のものだと言うが、ほんとうにそうだろうか。最初の株主が金を出資して会社は存在し始める。しかし資本だけでは会社は動かない。働く人々がいて、自分たちの時間を、つまり人生の一部をそこへ提供して、初めて会社は動き出す。

▼これは作家の柴田翔さんが、日本経済新聞に書いていた「人生の持続する時間」という小さなエッセイの書き出しです。柴田さんのメッセージは、企業を考えるということは、そこで働く人々の幸せに想いをいたすことであるべきだ、ということのようであります。株主は「明日の株価上昇を企業に求める」けれど、その企業で働く人間は「今日・明日のためではなく、1年後・10年後を考え、自分の人生の持続する時間を考えて暮らしている」というわけです。

▼株なんてやったことないし、企業経営なんて私の世界ではない。さらに言うと、私、66歳にもなるのですが、「企業」といえるような場所で働いたのは、わずか3年足らずであります。つまり柴田さんが語っている世界には、どのみち縁のない生活を送ってきています。ただ、柴田さんは「10年後を考えて」会社生活を送れるような環境にない人々の幸せについてはどのように考えているのでありましょうか?柴田さんのこの文章とその前の赤木智弘さんのフリーター感覚のコメントを比較すると面白いと思います。

▼確か柴田翔という人は、私が大学生であったころ(殆ど半世紀も前)に『されどわれらが日々』という作品で芥川賞を取ったのですよね。過激な学生運動についていくことができず、自分を「裏切り者」だと思い込む若い学生の孤独感のようなものを描いた作品だったと記憶しています。『国家の品格』を書いた人が「企業は従業員と経営者のものであることに決まっているでしょう!株主のものだなんて、とんでもない」と言っておりましたね。

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