musasabi journal 66

4 September 2005

我が家の台所にある冷蔵庫の陰でこおろぎが大きな声で鳴いています。つまり秋ってわけ。いいですよね、こういう風情は。むささびジャーナルは2003年2月末から始めたのですから、これで3度目の秋を迎えたということです。どうもありがとうございます。夏を3回乗り切ったというのは大したものであります。

今回のメニューは下記のとおりです。


1)イングリッシュオークのその後
2)ヒラリーにはマードックがついている!?
3)動物愛護の行き過ぎ
4)民間警備会社の市場を警察が脅かす?
5)短信
6)編集後記

1) イングリッシュオークのその後


私、かつて日英グリーン同盟という企画にからんだことがあります。日英友好関係の促進というわけで2002年に日本のいろいろなところにイングリッシュ・オークという樹木の赤ちゃんを植えてもらったのです。その頃のオークの背丈は、大体1メートルってとこでした。実はその後もオークのことが気になりまして、育っているのか死んでしまったのか・・・いくつかの町の人たちに「オークのその後」を写真で知らせてもらいたい、とお願いしたのです。有難いことに、何の義理もないのに私のお願いを聞いて、その後の写真を送ってきてくれています。面白い写真を送ってくれたところをいくつか皆様にもご紹介申しあげます。下記をクリックしてください。

北海道・余市町

東京都板橋区

大阪府枚方市

大阪府能瀬町

岡山県玉野市

これら以外にもいくつかあります。下記をクリックしてください。

オークのその後

この「追跡」企画をやっていてつくづく思うのは、日本中のいろいろなところで、正にいろいろな人々がいろいろなことを思い・感じながら暮しているのだ・・・ということです。全くもって当り前で私自身もその一人であるわけですが、ちょっとしたヒマを見つけてデジカメ持ってオークの写真を撮って送ってくれるという、余裕がよろしいじゃありませんか。でしょ?応援のほどよろしくお願いします!

back to top

2)ヒラリーにはマードックがついている!?

New Statesmanといえば、英国の左派系マガジンの代表的な存在ですが、8月29日号のトップストーリーとして、何故か2008年のアメリカ大統領選挙にヒラリー・クリントン(現上院議員)が立候補すること間違いなしという記事を掲載しています。

記事といってもAndrew Stephenという人の推測エッセイなのですが、筆者によると"with a little help from her new friend Rupert Murdoch, she will win"なのだそうです。ホリエモンも真っ青になるメディア王、ルパート・マードックをバックにして絶対勝つ、というわけであります。ホントかな!?

ヒラリーは今でも「立候補はしない」と言っているそうなのですが、周囲の環境がヒラリー・クリントン大統領誕生に向けて着々と動いていることは否めない、とAndrew Stephenは言っておりまして、その例としてABC放送が9月27日からCommander in Chiefなるドラマをスタートさせるのですが、これが母親で妻でもある女性がアメリカの大統領になるという筋書き。火曜日の夜9時というプライムタイムに放映されることになっている。

さらに最新の世論調査によると民主党員の間で彼女を大統領候補に推す人が39%、ジョン・ケリーの21%を大きく引き離している。また民主党員以外でも「恐らくヒラリーに投票するだろう」という人が51%もいる。 しかしながら何と言ってもヒラリーにとって強い味方はルパート・マードックだ、と言うのがAndrew Stephenの見方。マードックといえば儲け話なら誰とでもくっつく・何処へでも行く感じですが、基本的には保守派で、ブッシュのイラク戦争を支持しているし、これまでだってリベラルなヒラリーは、マードック傘下のメディアでさんざこき下ろされてきた。それが最近になってちょっと事情が変わってきて、マードックとヒラリーがお互いに擦り寄っている(かつてマードックとブレアが擦り寄ったのと同じだと筆者が言っています)

マードック擦り寄りの証拠の1つは、彼が所有する新聞、New York Postの態度の変化で、つい最近までヒラリーのことを「リベラルの悪魔」呼ばわりしていたのに、彼女がイラクの米軍増強を支持する発言をした途端に「意外な戦士(unlikely warrior)現る」と絶賛したのだそうです。現在アメリカ国内では、ヒラリー叩きの本が数多く出版されたりして、反ヒラリーのプロパガンダキャンペーンが進行しているのに、何故かマードック傘下のメディアだけは「奇妙に静か(conspicuously quiet)」というのが怪しいというわけです。 この筆者によると、「マードックが擦り寄っているだけではなくて、ヒラリーの方でもかつてのような進歩的リベラルから中道右派へシフトしているフシも見られる」そうで、イラクの米軍増強支持のみならず、同性愛結婚に反対したり、メソジスト派キリスト教徒であることを強調したりしている。そういえばマードックが尊敬するサッチャーさんもメソジストでしたよね。

それとこの夏の世論調査でもヒラリーに「好ましいイメージ」を持っている人は57%にも上っているし、ヒラリーを大統領にというバッジやパソコン用ヒラリー・パッドのようなヒラリーグッズも「ホットケーキみたいに売れている」というのがこの記者の印象です。

ちなみにAndrew Stephenによると、2008年の共和党の大統領候補はディック・チェイニー現副大統領だそうですが、その理由は「チェイニー氏が全面否定しているから」ということだそうです。マスコミが期待する、ヒラリー・クリントンとゴンドリーサ・ライス現国務長官という女性同士の大統領選挙というセンはない、というのがAndrew Stephenの見るところです。

  • で、ヒラリー・グッズですが、Hilary Clinton for President 2008という文字入りのバッジは2・99ドル、パソコン・パッドは16・99ドルだそうです。前者はともかくパッド17ドルは高いんでない!?

back to top

3)動物愛護の行き過ぎ


英国には動物愛護の団体というのがいろいろあります。動物虐待防止協会(RSPCA)のように180年以上も前に設立されたようなものもある。しかしナニゴトにも「行き過ぎ・やり過ぎ」ということがあって、最近、スタッフォードシャーという田舎で起こった、過激派動物愛護団体による嫌がらせなどはその典型かもしれません。

被害を受けたのはモルモットの生産農家で、30年前に酪農から研究所向けのモルモットの生産に切り替えて商売をやってきたのですが、ここ6年ほど過激派からの嫌がらせがひどい。手製の爆弾を仕掛けたりされたうえに、あろうことかこの一家のお墓から死んだ母親の遺体まで盗みだすということまでやられてしまった。で、この一家は今年末までにモルモット生産を廃業して、もとの酪農家に戻ると宣言したのだそうです。

これを伝えるThe Economistの8月27日号によると、実験用に動物を殺すことに関しては、英国は世界でも最も厳しい規制を設けている国なのだそうです。その英国で科学的な実験のために殺される動物の数は、年間およそ275万頭で、うち85%がマウスやラッツ、犬・ネコ・サルがは3%となっています。かつてはこれが550万頭であったことを考えるとかなり減っている。

The Economistは、一部の動物愛護活動につきものの偽善として「イヌやネコを小屋に閉じ込めるなんてとんでもない、という人がベーコン・エッグをむさぼり食っている」とか「動物の毛皮製品の売買を非難する人が、同じく動物からできた皮革製品を平気で身につけている」等などと言っています。同誌はまた「科学実験のために殺される数百万の動物は非常に丁寧に扱われており、英国内の養鶏場で殺される数億羽のニワトリの殺され方よりもはるかにマシだ」と言っています。

The Economistの結論は、
And science is, by and large, kind to its animals. The couple of million (mainly rats and mice) that die in Britain's laboratories are far better looked-after and far more humanely killed than the billion or so (mainly chickens) on Britain's farms. Indeed, if Darley Oaks makes up its loss of guinea pigs with turkeys or dairy cows, you can be fairly sure animal welfare in Britain has just taken a step backwards.

モルモット生産の停止をやむなくされた、スタッフォードシャーの農家が食肉用の七面鳥や乳牛でやっていけるのだとしたら、英国の動物愛護は「一歩後退」となるだろう、というのが結論です。

  • 考えてみると(考えなくても分かる!?) 動物愛護を言いながら、随分長い間、イヌにキツネ狩りをやらせるという、かなり残酷なことをやっていたわけです。ある英国のイヌ好き爺さんにキツネ狩りをどう思うか聞いたところ「あれは英国の田舎の伝統なんだ」と非常に肯定的であったのを覚えています。さらに言うと、英国には狂牛病とかfoot and mouthなどのように動物がらみの問題が結構あります

back to top

4)民間警備会社の市場を警察が脅かす?


8月20日号のThe Economistによると、7月7日のテロ以来、警察によるロンドンの警備が厳しくなって思わぬとばっちりを受けているのが民間の警備会社なのだそうです。

現在、英国には約2000の民間警備会社があって13万人の警備員を雇用している。彼らはいずれも店舗や住宅地の警備を行っています。

警察当局もこれまでは、こうした警備会社の存在を歓迎してきており、ロンドン警視庁のブレア総監などは1998年の時点で「パトロールは警察の独占ではなく、警備会社も歓迎すべきだ」などと発言したりしている。警察・警備会社・地方自治体のお役人を併せて「警察ファミリー」という呼びかたをすることもあった。

然るに最近目立っているのが、police community support officers (PCSOs)と呼ばれるコミュニティ警備員で、彼らは身分的には警察の管理下に置かれ、警察をサポートしてパトロールを行うことを専門にしている。彼らが民間警備会社の市場を奪っているとうわけです。現在のところ英国内のPCSOsの数は約6200ですが、2008年までには24000人にまで増員されることになっているそうです。

PCSOsは正式な警察官のような訓練を必要としないので、人員確保のコストも低くて済む。 PCSOsによってビジネスを脅かされているうえに、来年3月から法律によって民間警備会社の警備員は、法律によって4日間の訓練と犯罪歴のチェックにパスしなければならなくなる。こうなると、現在の警備員の約10%は職を失うだろうといわれています。

back to top

5)短信


敵の党に献金して除名

労働党の上院議員Lord Haskinsが、労働党を除名されるのではないかとされています。除名とはおだやかでないけれど、今年7月の下院選挙のときに、あろうことか彼の地元の自民党(Lib-Dem)の候補者にお金を寄付してしまったことが理由。寄付金は2500ポンドだから、それほど大した額とも思えないけれど、まずいことにそのLib-Demの候補者が労働党の候補者を破って当選してしまった。

実はLord HaskinsはLib-Demのみならず労働党の候補者にも献金をしていたらしい。それに労働党候補者への献金の方が大きかったのだそうです。Lord Haskinsは「Lib-Demの候補者はたまたま私の個人的な友人だったから・・・」と言っているのですが・・・。労働党本部ではIf the allegation is true then the Labour Party's rules make it clear that he is no longer eligible to be a member of the Labour Party.と言っています。本人は除名のことについて「新聞報道でのみ知らされたのは不愉快」と怒っています。

  • ウーン、これはしゃあないじゃない?いくら個人的な友人と言っても選挙は別ですよね。

遺産を残すより生活を楽しむ

ある機関の世論調査によると、昨今の英国人は、自分の死後、子供たちに遺産を残すくらいなら、自分が生きているうちに使って生活をエンジョイしようという人が多いのだそうです。

Joseph Rowntree Foundationという組織が成人2000人を対象に調査したもので、子供たちに遺産を残すために節約生活をしようという人は4分の1だったのだそうです。この結果について調査を行ったバース大学のローリングソン教授は「老人は自分の子供たちに遺産を残すためにケチケチ生活を送るものだ、という一般的な概念をぶち壊すものだ」とコメントしています。

この調査によると、半数の成人が親から何らかの遺産を受け継いではいるものの、その額は少なくて、5万ポンド(約100万円)以上の遺産を受け継いだ人は、全体のわずか5%に過ぎなかったそうです。そのような人たちは金持ちクラスと言われる人に限られる。 誰から遺産を受け継いだのかについては、39%が両親、31%が祖父母。

遺産の種類について、不動産と答えた人は28%、半数以上の人たちが、不動産を受け継ぐことはないとしています。 この調査について意外な気がしたのは、「老人は子供たちに遺産を残すために節約生活を送る」とうのが英国で「一般的な概念」となってきたのだということです。私は超金持ちは別として、英国人のアタマには「遺産を残す」などという殊勝な気持ちはそもそもないのだと思っていました。

  • 昔、マーガレット・サッチャーが首相になった当座(1980年初頭)、張り切って行ったのが、国民に「持ち家」を奨励するということでした。普通の人たちはそれまで、日本でいう「公団住宅」に暮していました。借家です。サッチャーが政権に就いてまず行ったのが、こうした公団住宅を民間に売却することでした。住宅の民営化ですね。どことなく今の日本と似ていなくもない。違いは民営化の対象が郵便局であるってことですね。

訳すとシラケル、ジョーク

ある大学の授業で、教授が学生たちに与えた課題は、なるべく言葉を少なく使った「ショートストーリー」を書けというもの。ただしその中には「宗教(religion)・セックス(sexuality)・ミステリー(mystery)」という三つの要素が含まれていなければならない、という条件がついていた。ということで、最優秀(A+)の点を貰ったのは?

A college class was told that they had to write a short story in as few words as possible.

Instructions: The story has to contain the following three things.

  • RELIGION
    SEXUALITY
    MYSTERY

Below is the only A+ short story in the entire class.

"GOOD GOD, I'M PREGNANT; I WONDER WHO DID IT?"

back to top

6)編集後記


先日(8月29日)日本記者クラブで「6党首討論会」なる催しがありました。田中・長野県知事(公務で欠席)を除く6つの党のリーダーが集って「議論」すると同時に、集った記者から質問を受けるという趣向の2時間強でありました。NHKで生中継されたものです。見ました?翌日の新聞はいずれも「小泉さんの完勝」というニュアンスでこの催しのことを伝えていました●確かにそのとおりで、2時間のうち小泉さんはどう少なくみても1時間以上はしゃべった。残りを5人で分けたということです。これだけ見たって勝負はわかりますよね●では何故小泉さんだけ、そんなに長くしゃべることができたのかというと、答は簡単で、反対党の党首も会場にいた記者も殆どみんな質問を小泉さんにぶつけてしまったからです●何故、民社党の福島さんは(例えば)公明党の神崎さんに「あなたの党は小泉さんの靖国参拝は反対といっている。もっと強く言ったらどうです?」とか何とかいう質問をすれば小泉さんの出番はなかった。だのに福島さんや志位さん(共産党)の意図は哀しいくらい分かりました。つまり「小泉さんをやっつけているところを視聴者にみてもらいたい・・・」ってこと。でも結果的には小泉さんの「完勝」などと言われる結果に・・・。哀しいですよ、実に。

back to top

letters to musasabi journal

 


業務案内
ロゴをクリック
Click logo to find out
who we are & what we do

 

Backnumbers
バックナンバー

UK Watch
英国情報

Finland Watch
フィンランド情報

むささびJの
勝手にコラム

むささびMの
聞いてくれません?

Small News
TOP PAGE

the
green alliance
club