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musasabi journal 67
18 September 2005

 

非常にはっきり言って、私は日本の四季の移り変わりが大好きであります。
いつの間にか写真のような赤とんぼが出て来て飛び回ったりしている風景・・・
いいですよね、こういうのは。
とんぼもさることながら背景の空 ・・・
まだ夏のように暑い日であったのですが、空はかなり秋。
デジカメでかなり近くまで寄ったのですが、
このとんぼは全く逃げる様子なしでした。
というわけで、毎度お騒がせのむささびジャーナルです。

目次
@もう一つの「廃案」:障害者自立支援法案
A極めて日本的」な革命:小泉自民党の地すべり的勝利
BBSEは人間の死体から!?
C英国におけるマイホーム文化の誕生
D短信
E編集後記

@もう一つの「廃案」:障害者自立支援法案


随分昔のことのように思える8月8日、参議院で郵政民営化法案なるものが否決された日、実はもう一つ廃案に追い込まれた法案がありました。障害者自立支援法案という法案です。読んで字の如く障害者が自立して生活することを応援しようというものらしいのですが、障害者や障害者福祉に携わる人々の間では、生活が苦しくなるということで批判も多いものです。

私、前号のむささびジャーナルで、日本全国に植えられたイングリッシュオークの現在をお知らせしました。その中の一本が大阪府枚方市にある障害者福祉施設「わらしべ園」に植わっています。で最近のその施設の運営に携わる今井亨さんから、この障害者自立支援法案についての「個人的な意見」をメールで説明して貰いました。ここで皆様にも紹介させてもらいます。

何故これを皆様にお読みになることをお勧めするのかと言いますと、今井さんもおっしゃっているとおり「この法案を語ることは現在の日本を語ることにもなる」と、私も考えるからです。彼のメッセージ(イチバン言いたいこと)は次の文章ではないかと思います。

<<日本の福祉は障害者・高齢者等のいわゆる社会的弱者とされる人たちを「一般社会から切離した上で保護する」という方法をとってきました。そして、この保護にかかるコストは一般社会の元気な人たちが負担しましょうというやり方です。このやり方は、その善し悪しは別として、社会にとっては「効率的」であり、日本が高度成長を遂げてくる過程ではうまく機能してきたといえます。しかし、高度成長の時代が終わり、社会に停滞感が広がり、少子高齢化という課題が重くのしかかってくる中、日本の福祉は問題を露呈することになります>>

彼の言う「効率的」とは、要するに「弱い人は別の所にいてもらいましょう。健常者がお金で面倒みます。その代わり、アンタたちはアンタたちの場にいてください。我々(健常者)と一緒になろうなどと思わないでください。アンタたちは動作も遅いし・・・我々の仕事について来れない。非効率なんですアンタたちがいると」ということではないかと(私は)想像しています。

で、日本の福祉はどのような「問題を露呈」しているのでしょうか?障害者福祉を考えると、何故日本の今を考えることになるのか・・・このあたりのことが、今井さんの「寄稿文」には細かく書かれています。問題の性格上、どうしても記事が長いので別に掲載することにしました。ここをクリックしてください。pdfファイルで添付します。開けない場合は是非私にお知らせください。別のやり方でお送りします。これをお読みいただいて、よろしければ「むささびジャーナル」または今井さん宛て、ご意見・ご感想などお寄せ頂ければ幸いです。

さらにわらしべ園について私が書いたものについてはここをクリックしてください。

いろいろ「クリック」だらけで申し訳ありまへんな!

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A極めて日本的」な革命:小泉自民党の地すべり的勝利


9月12日のThe EconomistのウェブサイトはJapan's voters back Koizumiという記事で小泉さんの選挙勝利を伝えています。

が、そのイントロ部分でThe outlook for other reforms, however, is less clear(郵政以外の改革の行方は定かではない)と慎重なことも言っています。The Economistが日本の改革の行方に慎重な理由のひとつに民主党の大敗があります。

If the DPJ disintegrates or sinks into uselessness, the loss of a legitimate opposition could yet do more harm to Japan's chances of reform than the immediate benefits it has gained from Mr Koizumi's victory.(もし民主党が分裂したり沈没したりすると、しっかりした野党がいなくなり、これが日本の改革にとって害になり得る)ということです。小泉さんは来年の秋には辞めると言っている。しかも自民党の議席数は多い。で、怠慢になって改革のペースがにぶるのではないか・・・というのが、この雑誌の懸念のようです。

とはいえ結論の部分ではFor the first time in many years, a Japanese leader has picked a genuine fight over an important issue and refused to compromise. And the voters have rewarded his courage.(ついに一人の日本のリーダーが重要な問題と真剣に闘う姿勢を見せ、妥協を拒否したのだ。そして選挙民も彼の勇気に応えたのだ)と、もうベタ褒めであります。

  • まあ、欧米のメディアに褒められたからって「だから何だってのさ」と、亀井さんとか田中康夫さんあたりに開き直ってもらっても構わないけど、どの国も一人だけでは生きていけないということを考えると、この種の雑誌にこのような記事が掲載されるってのはPR効果が大きいですよね。日本のメディアが「小泉さん、今こそ謙虚に」などと情緒的論じているのともかなり違いますね。

以上はサイト上での記事ですが、9月17日付けの同誌は、再び小泉さんの写真を表紙に掲載、A very Japanese revolution(極めて日本的な革命)というタイトルの特集を組んでいます。何が「極めて日本的」なのかというと「どうもイマイチ分からない」という点です。何が「イマイチ分からない」のかというと、ラディカルな小泉さんのラディカルな大勝利によって、日本が本当にラディカルに変わるのかというと、これがどうも。何故なら小泉さん率いる自民党そのものは、殆ど変わっていないということであります。さらにラディカル改革の張本人が、あと1年で首相でなくなるという点です。これもabsurdというわけ。

The Economistはまた自民党よりも民主党のマニフェストの方が、自民党のそれよりも「リベラルでより広範囲な改革」(a more liberal and far-reaching set of reforms)を約束しているとも言っています。

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BBSEは人間の死体から!?


最近見たBBCのサイトによると、狂牛病(BSE)のそもそもの発端は、牛が人間の死体によって飼料を食したことにある(かもしれない)という学説が、The Lancetという英国の科学誌に掲載されて話題になっているそうです。

なんだか気味が悪いこの学説はケント大学のAlan Colchester教授が発表したもの。1960〜1970年代にかけて、英国はインド、バングラデッシュなどから大量の動物の骨を輸入した。これが砕かれて肉骨粉として、肥料や飼料の原料になったわけですが、教授によるとその中に実はプリオにおかされた人間の骨が紛れ込んでいたのではないかというのであります。

インドなどではヒンズー教の教えで、人間が死ぬとカンジス川に流すことが「葬式」と考えられている。もちろん遺体をそのままサブーンとやるのではなくて、火葬にしたうえで流すのが理想ではあるのですが、それには結構お金がかかるので、貧困層の人々の中にはズバリ死体そのものを川に放り込むということが少ないのだそうです。

で、インドなどではbone collectorといって、動物の骨を集めて売るという商売が昔からあり、ガンジスの「動物の骨」もその対象になっている。そうした業者が集めた骨の中に、CJDで死んだ人の骨が紛れ込んでいたのでは、と教授は言っています。毎年約120人のヒンズー教徒がCJDで死ぬという統計があるのだとか。

Colchester教授のこの学説については、疑問を呈する向きも随分あります。BSEの権威といわれるバース大学のDavid Brownという先生は「可能性が全くないとは言わないが、かなり低いだろうな」(It's certainly a possibility that you can't rule out completely, but I would say that on a scale of probability, it would be down at the low end)と言っています。

バンガロア(インド)にあるインド国立精神衛生・神経研究所のSusarla Shankarという教授は、この説は「科学的でない」(the theory would not stand up to scientific scrutiny)として「もしこの説が本当なら、インドにいる牛にだってBSEが出てもいいはずなのに、いまだに一例も見当たっていない」としています。

尤もColchester教授もこの説については、確たる証拠が足りないということは認めているのですが、「さらなる調査を進めるだけの価値はある」(the theory is plausible enough to warrant further investigation)とも言っています。

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C英国におけるマイホーム文化の誕生


Exeter大学のJeremy Blackという先生が書いたBRITAIN SINCE THE SEVENTIESという本はサッチャー首相が登場した1970年代から今日までの英国社会の移り変わりをコンパクトにまとめてあり、その種のことに興味のある人にはいい参考書です。日本もそうですが、英国もこの30年間は大変な変わりようですから。

マーガレット・サッチャーは、小泉さんのキャッチコピーである「官から民へ」の元祖みたいな人で、1979年に彼女の政権が誕生してから実に様々な産業や企業が国営から民営になりました。鉄鋼・電力・鉄道・航空・・・私の記憶に間違いがなければ、自動車メーカーのRoverの前身であるBritish Leylandも国営だったのでは?

で、Black教授も述べているし、私自身も興味があったのは住宅の民営化です。サッチャー登場以前の英国では、普通の人たちは自治体が運営する賃貸住宅に暮していたのですが、サッチャー政権によって作られた1980 Housing Actという法律によって、これを買い取ることが許されるようになった。Black教授によると、これがproperty-owning society (持ち家社会)の始まりとなった。その社会はまた個人の利益追求を尊重するものでもあり、それ以後の英国社会に大きな変化をもたらした要因の一つとなったわけです。

サッチャーさんの「持ち家奨励政策」のお陰で、例えばイングランドとウェールズにおける持ち家人口は、77年の54%から85年には62%へ、90年には67%にまで上昇した。その一方で賃貸公営住宅の人口は32%(77年)→27%(88年)→24%(90年)と減り続けたそうです。

また公営住宅が盛んであったスコットランドでも1989年からの10年間で、マイホーム(懐かしい言葉ですな)所有者が36・4%から52・8%にまで増えている。当然ですが、民間の住宅建設会社によるマイホーム建設も、80-85年で73万6000戸であったのに、86-90年には90万4000戸と大変な増加を示しています。

と、ここまでは結構なのですが、地方政府(労働党が多かった)を目のカタキにしていたサッチャーさんは公営住宅の売却によって得た収入を使って地方自治体が新しい公営住宅を作ることを許さなかった。お陰で自治体による公営住宅の新築件数が、75-79年の54万2000棟から80-85年には22万6000棟へと半減、さらに86-90年には15万6000棟にまで激しく減少した。

もともと公営住宅の住人は低所得者が多いわけで、公営住宅が減れば結果としてホームレスが増えざるを得ない。スコットランドにおけるホームレスの数は78-79年には16,034人だったのが、86-87年には30,839人へと激増したのだそうです。地方自治体にとって厳しいのは、公営住宅を売ったお金で新たな公営住宅を建てることが許されないという一方で、ホームレスに住宅を提供することが義務付けられていたということ。地方自治体によっては、B&Bのようなところに住まわせたところもあった。B&Bに限らず「地方自治体に住宅を貸す」ということが「成長産業」(growth business)になった町もあったのだそうです。

このように書くと、あたかもサッチャーの住宅民営化政策が失敗したようにも響くかもしれません。がBlack教授の本によると、1979年から89年までの10年間で英国における被雇用者の数が2250万人から2690万人に増えている(女性のパートも含まれているのですが)。さらに英国人の平均可処分所得も82年から92年までの10年間で37%も増えているし、標準所得税は33%(1979年)から25%(88)へと下がっている。

つまりサッチャーの住宅民営化政策は、ホームレスを生み出すなどのマイナス面もあったけれど、全体としては英国人の生活を借家公営住宅からマイホームへと変化させ、それに伴ってDIYショップが盛んになったり、ガーデニング・ブームが起こったりという変化ももたらしたようです。これ以上書き始めるときりがないので止めておきます。

  • 個人的な思い出ですが、私が初めて英国に行ったのは1980年代の初めだったと記憶しています。その時に英国政府が進めていた「ニュータウン」という職住接近の街づくりの現場を見せてもらったのですが、その際に、「子供二人の若い夫婦向け」という新築モデル住宅(show house)を見て少しばかりショックだったのを覚えています。余りにも小さかったのです。その当時の日本の住宅に比べれば良かったと記憶しているのですが、「え?こんなの!?」というのが第一印象でした。
  • もう一つBlack教授の本で興味深いと思ったのは、英国における「ガーデニング・ブーム」が90年代の初めに始まったという点です。ここでいう「ブーム」というのは、普通の人の趣味としてのガーデニングが広まったという意味であり、例えばガーデニングのテレビ番組が盛んになって、その道のセレブリティみたいな人たちが登場したのも、この頃であったということです。
  • 確かめたわけではないので、正確かどうかわからないけれど、ひょっとすると日本におけるガーデニング・ブームも同じような頃に始まったのではないか?これも私自身の想像にすぎませんが、英国におけるガーデニングがマイホームの増加に呼応したカタチで生まれたのに対して日本におけるブームは、むしろバブル経済がおかしくなって人々が「ゆったりした生活」を求めたことに由来している。
  • つまり英国のガーデニングが、初めてマイホームなるものに住んだ庶民の極めてつつましい趣味・道楽であったのに、それが日本に入ってくると、「ゆとり」などという、何やら高尚な貴族趣味のようになり、これがまた受けてしまった・・・と私などは思っているのですが、違うか!?

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D短信


72時間連続、英語の勉強

上海イブニングニュースという新聞によると、上海にある学校で26人からなるクラスの学生が72時間ぶっ続けで英語の授業をやって、ポーランドの学校が持っていたそれまでの世界記録(66時間)を破ったのだそうです。PA通信の記事によると、学生の年齢は20から30と書いてあるところを見ると、いわゆる大学にあたるところなんでしょうね。ポーランド学生の66時間を破った時点で、賞金がそれまでの100元から300元に跳ね上がったのだとか。これに参加したある学生は、「何にも覚えていない。二度とこんなことやらない!」とコメントしています。

  • 72時間ともなると、起きているだけでもキツイはずですよね。

結婚制度を廃止する

知らなかったけれど、来年はスウェーデンの総選挙なんですね。で、この選挙で「結婚制度の廃止」をスローガンにした新しい政党が誕生するのだそうです。政党名は、スェーデン語ではなんというのか分かりませんが、これを伝えるPA通信はFeminist Initiativeと言ってところをみると、女性解放運動の政党のようです。創立者のTiina Rosenbergさんは「我々は現在の結婚(marriage)に代わって同棲(co-habitation)を奨励するような法律の成立を目ざす」とコメントしているのですが、必ずしも男一人・女一人の共同生活にこだわらず、何人で暮らしても構わないのだそうであります。ということは、例えば男一人と複数の女性が暮らすということもあり?と思ったら「我々は、女性が男性に服従する一夫多妻制を目指すものではない」と強調しております。党の役員は全員女性ですが、女性票だけでは勝てないというわけで、男性のために「6時間労働の推進」を約束しているそうです。
  • この種の運動が起こるのは女性が虐げられている社会だと思っておりました。スウェーデンというのはそんな国なのでしょうか?日本では社会保障と男女平等社会の見本のようにいわれておりますが。

田舎の香りを瓶詰めに

オランダのSKORというアート関係の団体が「田舎の香り」を瓶詰めにして売り出すそうです。商品名はL'essence de Mastenbroekというもので、オランダ北部にあるMastenbroekという村の名前と同じ。で、この村の香りって何なのか?というと「干草・家畜・ハーブをミックスしたもの」なのだそうです。この団体では「L'essence de Mastenbroekの狙いは都会人に本当の田舎の匂いをかいでもらいたい」と、この商品開発の目的を語っております。蘭とかバラなどの花の香りは入っていないのだそうです。
  • つまり「花の香り」は「本当の田舎の香り」ではないってこと!?香りの瓶詰めというのはよくあるアイデアですよね。

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E編集後記


●仕事柄、私はメディア関係の人たちと接触する機会が多いのですが、最近、その人たちの話を聞いていると、小泉さんの大勝利を喜ぶ声は全くない。むしろ「独裁政治だ、大変なことになった」みたいな意見さえも聞こえる●これ、不思議ですね。小泉さんの最大の売り物は「自民党(的体質の政治)を徹底的にぶち壊す」ことだったはずです。で、昔ながらの自民党的派閥政治だの談合だの癒着だのを口を極めて批判してきたのはマスコミのはずであります●今回の選挙では、少なくとも昔ながらの自民党的な政治を推進してきた人たちのある部分は追放されたのではありませんか?マスメディアの多くが望んでいたことを小泉さんがやってのけたのではありませんか?だったら、もう少し喜んでもいいのはありませんか?●私の家では朝日新聞をとっているのですが、小泉さんの地すべり的大勝利を伝える一方で「(小泉さんは)謙虚であれ」というニュアンスの社説やらコメント記事を満載しています●私は民主党に入れたので、どの道、自民党の大勝利にはそれほど喜びを感じないのでありますが、少なくとも「派閥政治」という何だかよく分からないものの中で大きな顔をしてきた(とマスコミでは伝えられた)人たちが退散したということでは喜ばしい結果であると思っておりますね●日本のマスメディアは常に時の政府に対する「批判勢力」という立場をとることをもって自らの使命と考えており、決して自らの立場を鮮明にしない。楽な話ですね、実に。批判なら(自己批判も含めて)誰だってできるもんね。「謙虚であれ?そんなことアンタら言われなくても分かってます!」という小泉さんの声が(私には)聞えてきます。


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letters to musasabi journal