musasabi journal
発行:春海二郎・美耶子
第68号 2005年10月2日 

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前号のむささびジャーナルで「障害者自立支援法案」について報告させてもらいました。10月1日付けの朝日新聞の第4面に、この法案が今国会に再提出されるというニュースが出ていました。一段見出しで9行。これ以上小さくなりようがないというようなスペースでした。で、同じ日の朝日新聞(我が家では朝日を購読しています)、一面の左半分が、同紙による「NHK番組改変報道」についての社長さんのお詫びと、これに関連して同社の取材内容を整理した社内資料が外部に流出し、これが「月刊現代」という雑誌に掲載されてしまった問題についての記事によって埋められていました。それだけではありません。14面と15面、それに38面にも関連記事が出ていた。ちょっとおかしいんでは? 以下「編集後記」でお話します。

目次
@小泉さんの単独インタビュー
A英国人の生命観
Bエチケット学校が復活している
C短信
D編集後記(というより長めのぼやき)

@小泉さんの単独インタビュー


日本の新聞などでも報道されましたが、小泉さんが英国のThe Times紙と単独インタビューを行って、その記事が同紙のサイト(9月28日付け)に掲載されていました。How a lowly samurai inspired Koizumi to put rebels to sword(名もないサムライがコイズミによる造反者退治にインスピレーションを与えた)という見出しの記事で、インタビューは40分程度であったらしい。

ここでいう「名もないサムライ」とは織田信長のことで、16世紀末の日本で名もない(lowly)サムライから出発しながらも天下をとるにいたった信長が行った、お寺の焼き討ちだの人殺しだのを 「お手本」(role model)にしたわけではないけれど、小泉さんは信長からインスピレーションを受けたのだ、とTimesの記者は書いています。

インタビューでは、郵政改革、古い自民党の打破等などについて語っていますが、私が最も興味を持ったのは、靖国参拝と日中関係についての小泉さんの次のようなコメントでした。

I would assume that it's for political reasons that China is opposing my visits to the Yasukuni Shrine. I would assume that China doesn't welcome a growth in Japan's political influence. They are opposed, for example, to Japan becoming a permanent member of the UN Security Council because they want to check Japan's influence on the international stage.(中国が私の靖国参拝に反対するのは政治的な理由だ。中国は日本の政治的影響力が増大することを好まないのだ。中国が(例えば)日本の国連安保常任理事国入りに反対するのは、国際舞台における日本の影響力を抑えたいのだ)

これまで日本の新聞やテレビで伝えられる小泉さんの発言に比べると、ずいぶんはっきり言っているように(私には)思えるのです。この問題について質問されると、小泉さんは大体において「日中関係は極めて緊密だ」という、イマイチ要領を得ない発言をする。

さらにThe Timesの記者がShould we expect a visit to Yasukuni before the year is out?(今年中に靖国参拝はあるのか)と聞いたのに対してI think that sort of thing is best left unsaid. That [is something that] the Chinese also understand.(その件については言わないでおいた方がいいだろう。中国側もそのことは分かっていることだ)と答えています。小泉さんのこの発言について、The Timesの記者はhe gave the impression that he would visit Yasukuni before the year's endと書いています。「今年中には参拝するという印象を与えた」というわけです。そういうことですかね?

  • The Timesの記者は「これは選挙後に小泉さんが行った初めての単独インタビューだった」と得意気でした。でしょうね・・・。
A英国人の生命観


YouGovという機関によって最近行われた世論調査が英国人の生命に関連する倫理観を表わしていて興味深いものがあります。例えば堕胎(abortion)を全面的に非合法にすべきだという意見は、わずか6%でした。ただ堕胎を許している現在の法律はより厳しく適用すべきであると考えている人が64%に上っている。例えば現在の法律によると堕胎が許される期間は妊娠後24週間以内となっているのですが、76%の人がこれをさらに縮小すべきだとしており「現状でいい」という人の19%を大きく上回っています。

さらに堕胎は要求があれば自由に認められるべきかという問いについては、「認められるべき」という人が41%で「認められるべきでない」の48%と殆ど同じで意見が二分されているのですが、年齢別にみると、結構意見の違いがはっきり出ていて、35歳以下の人々は53対34で「認められるべき」という意見が多く、55歳以上になると61対29で反対意見が多くなっています。

人間クローンについては「技術が発展して母親にも赤ん坊にも安全であるとなった場合」という条件で聞いたところ、60%が人間クローンは禁止すべきだとしており、20%が「不妊症の夫婦の助けになるなら」ということで賛成、法律的な規制なしに賛成は10%となっています。生まれる赤ん坊の性を両親が選択できるようにすることについては、77対14で反対となっています。

年齢のせいもあるのかもしれませんが、 私個人がイチバン興味を引かれてしまったのが  「安楽死」(euthanasia)についてでした。なんと87%の人が、人間は死ぬ時を決める権利がある(people should have the right to decide when they want to die)であり、そのための医療措置を求める権利があるとしている。これに対する反対意見はわずか8%です。で、現在上院で審議されているのがterminally ill billという法案です。要するに不治の病に冒された患者の安楽死を認めようというものです。この種の法案が通ると、英国では年間15000人の安楽死者がでるのではないかとGuardian紙が伝えています。

  • 福祉国家と言われるフィンランドの福祉担当大臣が日本記者クラブで会見を行ったときに、尊厳死についての質問が出ました。「フィンランドでは尊厳死は禁止されている」とはっきり言っておりました。
Bエチケット学校が復活している


Finishing schoolを日本語ではなんと言えばいいのでしょうか?主として若い女性を対象にマナーだの教養だのを教える学校のことです。「花嫁修業学校」かな?ま、日本語訳はともかく、この種の学校はかつて英国でも大いに栄えたのですが、時代の変化に伴ってすたれ、殆どが秘書養成学校だのビジネススクールだのになった。

が、ここへきてひょっとすると、また復活するかもしれないという動きがある、とThe Economistが伝えています。同誌が伝えているのが、Diana MatherとPenny Edgeという二人の女性がチェシャーに設立したFinishing Academyなる学校で、料理、上手な会話から歩き方・立ち方まで教えようというもの。「女性の可能性を最大限に生かす」(to make the most of themselves)というのがモットーなのですが、昔と違うのはそれぞれのレッスンの狙いが「ビジネスウーマン」としての女性育成に置かれている。

従って「優雅な歩き方」レッスンもあるけれど、「パブリックスピーチ」「ビジネスネットワークの作り方」「健康食の作り方」etc・・・という具合になっているのだそうです。もちろん昔ながらのレッスンもある。「優雅な歩き方」は本を頭の上において落とさないで歩く訓練だし、「クルマから優雅に降りる方法」なんてのもあるんだとか。

この学校のサイトによると、授業料は5日間コースで650ポンド(宿泊費は別)だそうです。高いんでない、チョット!?それからこの学校では、男のためのコースもやっているそうです。ここでも歩き方・話し方・食べ方などの訓練もありますが、男だけのコースとしてゴルフ、釣り、射撃などに混じって、クルマの手入れ、地図の読み方・使い方などもある。何故か「ボタンのつけ方」レッスンなんてのもあるんだそうです。

  • 女性コースにあって男コースにないのが「クルマから優雅に降りるレッスン」で、ドアを開けてクルマの外へ出るときに両方の膝を優雅に揃えて地面に降り立つのがコツなのだそうです。確かに男が「膝を優雅にそろえる」のは気持ち悪いよな。というわけで、どうしてもこの学校へ行ってみたいという「物好き」はhttp://www.pagetraining.com/finishing-academy.htmにあたってみたら?
C短信


考えるビールマット

パブへ行ってビールを頼むと、大体グラス一杯のビールとそれを置くコースター(ビールマット)がついてきますが、ドイツの大学の先生が「考えるビールマット」なるものを開発したそうです。何を「考える」のかというと、あなたが飲んでいるビールの残りの量を計測、それをバーカウンターに伝達する・・・で、注文が楽かつ迅速に出来るというわけ。マットの裏側にセンサーがついていて、グラス満杯のビールがだんだん少なくなり、殆どなくなるとそれをグラスの軽さを感知してあなたに成り代わって追加注文いたしますということ。もちろんグラスが空になったからといって追加が欲しいとは限らないので、注文したいときは、マットの上を軽く叩くのだそうです。このマットは例えばパブにおける「カラオケ大会の投票システムにも使える」と、発明した大学の先生は言っています。

  • でも、やっぱしパブでビールを頼むのはカウンターに行って、カタコトの英語でa half-pint bitter, please!と怒鳴る(必ず"ナニ?"と聞き返される)というのが、まっとうですよね。

e-Bayの大迷惑

インターネットオークションのe-Bayサービスを悪用したハッカーのお陰で、自転車12台・モーターボート4台・トレーラ住宅1台など、合計27万ポンド(約5500万円)相当の品物を自宅に届けられたという話。ドイツのIserlohnというところに住むHorst Lukasという如何にもドイツ人みたいな名前のお年寄り。心当たりがないのだから、すべて送り返したのですが、お陰で相手から抗議の手紙やメールをもらったして大迷惑を被っているそうです。中にはロックコンサートのチケットなどもあったとか。警察でハッカー・ハンティグンを開始しているそうです。

  • 私はインターネットオークションなんてやったことないけれど、トレーラ住宅まで配達されればビックリするでしょうな。

1億7000万円のクリスマスギフト

アメリカ・テキサス州アラスに本社を置くNeiman Marcus百貨店が配布しているクリスマスギフトのカタログによると、今年の決定版はあのエルトン・ジョンのライブコンサートなのだそうです。つったって、ただのコンサートでないことは当り前です。エルトン・ジョンがあなたのご自宅まで出向いて90分間のコンサートを開きましょうというのがギフトなのだそうです。で、お値段はというと、85万ポンド・・・ってことは1億7000万円。エルトン・ジョンによると、500人までならゲストを招待してもいいとのことですが、売上金はすべて彼が主宰しているエイズ撲滅のための基金に寄付されること、というのが条件だそうです。

  • このこと、ホリエモンあたりに伝えてあげたら?
D編集後記(というよりも長めのボヤキ)

●で、イントロの部分について。「障害者自立支援法案」に関する記事が小さいことについては文句を言いませんが、ひと月殆ど4000円という購読料金を払っているお客(私のこと)としては「NHK番組改変報道」問題に対するスペース配分については文句を言っておきたいものです●短く言うと、朝日とNHKの揉め事についての「説明」などのために何で3ページも4ページも割くんだよ、ということです。この件についてどちらの言い分が正しかったのかなどということは、NHKと朝日の関係者の間で、勝手に揉めていればいいのでありますよ。ましてや朝日の誰の給料が減給であろうとなかろうと、読者である私の知ったことではないってこと●「新聞は公器なのだから、この種のこともきっちり読者に説明する義務がある」ってこと?だとしても、1ページもあれば十分でない!?●と、これは朝日に対する文句です。が、その前夜(9月30日)のNHKニュース(9時だったと記憶)には嘲笑ってしまいました。朝日との揉め事について触れ、朝日の社長の会見やらNHKの見解やら安倍なんとかいう自民党の人のコメントやらを長々と報道しておりました。少なくとも3-4分は使っていた。5分だったかな?しかもそのニュース番組のトップニュースだった●内容は「ほらみろ、朝日は間違ってNHKは正しかった。そのことは安倍代議士も同じように考えている」というものでした。視聴者である私としては「だからなんだっての!?」と言いたいわけであります。自分たちが正しかったと言いたいために、しかもたったそれだけが目的で、このニュースを報道したとしか思えないのですよ。NHKが「正しかった」ことを知ることが視聴者にとって、何故それほど大切なことなのさ・・・と聞きたいのであります、私は。やるなとは言わないけれど5秒で充分●朝日については購読をやめれば済むけれどNHKについては、強制的に受信料を取り立てようという考えであるって、ホントですか!?だとしたら、その前にここで政治家の事前介入が問題になっている、あの番組をもう一度放送して欲しいです。申し訳ない、私、見損なってしまったのです●テレビの話ついでにもう一つだけ文句を言っておくと、テレビ朝日が放映した昭和のヒット歌謡曲番組の締めくくりが布施明の「シクラメンの香り」であったのは腑に落ちない●昭和の歌謡曲の代表といえば、都はるみの「あんこ椿」に決まってるじゃありませんか。百歩譲っても、八代亜紀の「おんな港町」です。「責任者を出せ!」と言いたい。

 

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