ご存知の方も多いかと思いますが、10月8日号のThe Economistが「日本特集」をやっています。トーンとしては、比較的日本に好意的なアングルの特集になっています。18ページにわたる企画なので、これを一言で報告するのは私には不可能ですが、政治・経済・外交を中心にこれからの日本を占っています。ほんの一部だけ紹介しておきます。それは日本における少子高齢化について述べている部分です。
人口減少は未来永劫には続かない・・・かもしれない
まず厚生労働省の予測として、これからの日本では、15-64歳のいわゆる「労働人口」が1年に0・7%ずつ減っていき、総人口も現在の1億2000万から1億人(2050年)にまで減少することを挙げています。しかしながら(The
Economistらしいのですが)、現在予測されている人口減少が未来永久に続くかというと必ずしもそうではない。同じような傾向にあったフランス、北欧、アメリカではこれが再び上昇している。同じ事が日本でも起こる可能性はあるとのことです。
が、現時点では労働人口の減少は起こっているし、しばらくは続くわけですが、そうなると企業は、これまで以上に女性の労働力に頼る傾向が強くなり、女性の幹部が増えたりもする。となると子供を育てる女性が少なくなり、人口減少はとまらなくなる。女性が働きながら子供も持つために、かつてはオジイチャン・オバアチャンに頼っていたが、当のオジイチャン・オバアチャンが、海外旅行をしたりして「自分の生活」を楽しむ傾向が強くなって、子育て支援を期待することは難しい。
となると公的なお金を使って女性のための育児環境を整えることが必要になる。そのためにも無駄な公共支出を削るという小泉改革がこれからも続けられる必然性が出て来る(bound
to continue)というわけです。
また少子高齢化とは直接関係はありませんが、少ない労働人口で大きな生産性を挙げるために、製造業の間におけるロボットの採用と生産性の向上のことも語られています。製造産業では労働人口の減少や高い人件費を嫌って、中国に工場を作ってモノ作りをするところが増えているわけですが、特に電子技術のようなハイテク分野においては、中国の生産性が低く、中国人労働者を管理するのもタイヘン、なおかつ知的財産の保護(中国では特許権の管理がかなりいい加減)などの理由がある上に政治的な関係もよくない・・・というわけで、日本国内で製造を続けるためにロボットを使うケースが増えてくるし、日本は他の先進国に比較すると、労働を機械にやらせる技術というのが進んでいるのだそうです。
日本は「アメリカ型」資本主義にはならない
The Economistによると「日本はアメリカ式の自由市場型経済にはならない」(Japan
is not going to be an American-style, free-market economy)のだそうで、その理由と「ソフトバンク・インベストメントのミスター北尾のようなベンチャー・キャピタリストでさえも、企業の社会的責任(social
obligations of companies)について語る」として、ミスター北尾がホリエモンのような若き起業家が余りにも金儲けのことばかり考えすぎることを批判していると伝えています。
政治について、先ごろの小泉・自民党の大勝利から野党が学んだことは、政治に必要なのは「カリスマ、明白なメッセージ、そして変革を推進する姿勢」であるということで、いずれは野党の若い政治家の時代が来る(Their
time will come)と予測しています。
外交:日本は欧州の英国と似ている!?
外交については、「中国による日本イジメに呼応して自民党にはタカ派的な意見が強くなっており、これが国民の間におけるナショナリズムに火をつけた部分はあることはある」としながらも「日本は基本的には平和国家である続けるだろう」として、日本が核保有国になることは「殆どあり得ない」(little
likelihood)と分析しています。またちょっと面白いと思ったのは、アジアにおける日本について「欧州における英国と似ている」として次のように報告していることです。
When comparisons
with the European Union are made, it is often assumed that the
right analogue for Japan is Germany, since both were defeated
in 1945. But that does not feel quite right. Japan's situation
is akin to Britain's in many ways, being in Asia but not entirely
of it, and having a closer relationship with the United States
than with its neighbours. Yet during the next few decades, Japan's
ambition should arguably be to do what France once did successfully
in Europe: to be the Asian country that aims to use regional institutions
to give itself a greater voice in world affairs, and to prevent
its hefty neighbour from pushing it around. Except, of course,
that it will want to remain on friendly terms with the Americans.
つまり日本は「アジアに位置するけれど完全にアジアというわけではない。また近隣諸国よりもアメリカと緊密な関係にある」という点で英国と似ているというわけです。しかしながらこれからの日本を考えると、「かつてフランスが欧州で試みて成功した例に倣うべきだ」としています。即ち「アジアの一員としてアジアの組織や体制(institutions)を利用しながら、世界的な発言権を増すことであり、強い隣国(中国のこと)にこずき回されるのを防ぐこと」というわけです。但しフランスとの違いは「アメリカとの同盟関係はこれからも維持することを望むであろう」ということ。
日本は「着実で豊かで信頼性のある亀」であるべし
またThe Economistは日本特集に関連して、社説の部分でも日本のこれからについて語っています。その結論部分で、日本の対中関係について次のように語っています。
If all that
is done, however, great prizes are within reach: rising productivity,
rising living standards, a rising international reputation and,
above all, a rising chance to face up to China on equal, or even
superior, terms. Japan's relationship with China is a scratchy,
tense affair; the latest dispute concerns gas and gunboats. If
conflict-diplomatic or military-is to be avoided, Japan needs
to become stronger, but also to foster other Asian alliances,
perhaps through European-style regional institutions. To its Asian
neighbours, the Chinese hare is impressive but also worrying.
A Japan that showed itself to be a steady, prosperous and reliable
tortoise would be an appealing counterweight. In Japanese fables
tortoises do win races, but they are also something else: they
are symbols of potency.
様々な改革などが為されるならば、報いは大きいだろう。生産性も生活水準も上がり、国際的な評判も高くなる。そしてなんといっても、中国との関係は対等あるいは中国の上に立つものになる可能性さえもあるだろう。現在の対中関係は緊張感に満ちている。最近では紛争にはガス(開発)や砲艦(の出没)の問題もある。日中間の紛争(外交的なものであれ軍事的なものであれ)を避けようとするならば、日本はもっと強くなる必要があるし、他のアジアの同盟国との関係を強くする必要がある。それは欧州スタイルの地域的な組織作りによって可能となるかもしれない。アジアの近隣諸国にしてみれば、中国の疾走は"印象的"かもしれないが、不安に駆られるものでもあるのだ。日本が「着実で豊かで信頼性のある亀」として自らを示すことができるならば、(中国との関連で、アジア諸国にとっては)魅力的なカウンターバランスを提示する国となるであろう。日本のお伽噺では、亀は競走に勝つことになっているだけではなく、秘めたる力のシンボルともなっているのである。
- あれは今から30年ほど前のことだったか、The
Economistが掲載した日本特集の見出しを今も鮮明に覚えています。MUST
JAPAN SLOW DOWN? というものでした。当時、日本は(今の中国に似て)日の出の勢いの経済力で世界中にモノを売りまくっていたわけです。それに対して海外から「もっとゆっくりやれ」というような批判が出ていた。そういう傾向に対するアンチの姿勢を示したのがこの雑誌であったわけです。非常に残念ながらその記事の切り抜きがどうしても見当たらない!
- それはともかく、いま必要なのは「反中国」的な愛国心ではありませんよね。日本の国内をもっと住みやすい場所にすることですよね。中国や韓国が日本をどのように思おうと、我々にはどうにもならないし、はっきり言って関係ない。
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