musasabi journal
発行:春海二郎・美耶子
第70号 2005年10月31日 

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10月28日(金)の日経新聞夕刊に「木を植える」というタイトルで宮脇昭という人のインタビュー記事が出ておりました。「世界で最も多く木を植えてきた」この人は、森づくりを始めて30数年になるそうですが、これまでに国内外で1500ヵ所にもなるんだとか。1928年生まれというから、私(1941年)より13年上ということになる。

この人はインタビューのなかで「趣味でも何でも、生涯続けられることがあるのなら、それを続ければいい。好きで続ければ仕事です」と語っています。『好きで続ければ仕事』というのはいいですね。というわけで、好きで始めたむささびジャーナルも今回で70号になりました。宮脇さんの植樹のような社会性はないけれど、好きやっているということでは同じ(と思いたい)です。

目次
@英国人の英国観
A保守党と選挙制度
BPress Gazetteに見る英国のメディア事情
C短信
D編集後記

@英国人の英国観


私がしょっちゅう引き合いに出す英国の世論調査機関、YouGovのサイトを見ていたら、現在の英国の人々が自分たちの国や文化、ライフスタイルについて何を思っているのかを示すちょっと面白い調査結果が出ていました。「英国的(Britishness)ということを定義する上で何が一番のポイントになると思うか」という問いかけなのですが、37項目を挙げてアンケートをとっています。対象は18歳から上の成人約3500人。

37項目を全部語るのは面倒なので、私が勝手に面白いと思ったものだけ挙げてみると「最も大切だ」とされたのが「自分の考えを言葉にできる権利」(British people's right to say what they think)で61ポイント。表現の自由、言論の自由ということで、これは分からないでもない。意外な気がするのが2番目で「1940年にナチス・ドイツと闘ったこと」(Britain's defiance of Nazi Germany in 1940)というもので、これが59ポイント。トップとわずか2ポイントしか差がない。3位の「公明正大さ」(British people's sense of fairness and fair play)が54ポイントで、2位との差が5ポイントもある。調査対象が「18歳から上」となっていますが、3000人のうち、1940年のナチズムを身を以て知っている人は何人いるのでしょうか? にも拘わらずこれが2位ってのはどういうこと?

さらに王室(The Monarchy)が38ポイントの14位というのも意外に低いと思います。それと国歌(God Save the Queen)が29ポイントの21位は「そんなところかな」というのが私の感想。案外、国歌には淡々としているのですよね。

最下位の3つは何だと思いますか?37項目中の37位はWarm British beer。室温で飲むとかいう、あれ。たったの8ポイント。下から3番目はthe quality of Britain's restaurants。これも驚かない。で、一番意外であったのがビリから2番目。これがBritain's membership of the European Unionで9ポイント。低いんですねぇ。英国人の気持ちの中でEUの一員であることがそれほど低い地位なのだとは思わなかった。

英国人であることに誇りを感ずるか?という問いについてのパーセンテージは次のとおりです。

Very proud 50%
Fairly proud 36%
Not very proud 8%
Not at all proud 3%
Don't know 2%
I am not British 2%

調査結果のオリジナルはここをクリックすると出ています。

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A保守党と選挙制度


最近のThe Economistは、英国における次なる総選挙に向けて「保守党が勝つためには労働党もさることながら、選挙制度そのものと戦わなければならない」(To win power, the Tories must beat the electoral system as well as Labour)という記事を掲載しています。

1997年の総選挙で労働党が勝って、現在のブレア政権が誕生したわけですが、その際に労働党が獲得した票数は全体の43・2%であったのに、獲得議席数は356議席、保守党(197議席)を179議席も上回ってしまった。

で、今年(2005年)5月の選挙では獲得票数は全体の35・3%にまで落ち込んだのに、議席数では66議席も他党を上回って政権を維持してしまった。保守党の票数は32・3%で、労働党とそれほど差はないのに、議席数ではオハナシにならないくらいの差がついてしまった。

小選挙区制の英国で労働党が有利な戦いを進めることができた1つの理由として、労働党の地盤とされる選挙区(ウェールズやスコットランド)が大体において、保守党の地盤とされるところ(イングランド) よりも小さい(投票者の数が6200人ほど少ない)のに国会での議席数がそれを反映していないということが挙げられている。

またイングランドにおける投票総数を見ると、保守党が労働党を6万票も上回っているのに、イングランドにおける両党の獲得議席数はというと、労働党が285で保守党が193議席と、保守党の方が92議席も少ない。これは保守党の票が効果的に配分されていないということを意味する。

さらに人口動態の変化も労働党有利に動いている、とThe Economistが指摘しています。元々労働党が強いとされていた都市部の住民が郊外に移住する傾向が強く、郊外で強かった保守党の地盤を崩しているというわけです。なるほど。

英国では次なる総選挙までに選挙区の線引きの見直しが行われることになっているそうですが、ある政治学者によると、現在の選挙区のままだと、仮に労働党の票の1・5%が保守党に流れたとしても、労働党が22議席上回るのだそうです。現在の選挙区のままで保守党が政権に就くためには、労働党票の8%が保守党に流れる必要があるとのことで、保守党にとっては厳しい話ですが、これがひょっとすると、英国における選挙制度の改革に繋がるかもしれない、とThe Economistは言っています。

この場合の「改革」が小選挙区制そのものの見直しということなのか・・・それはこの記事では定かではありません。

  • 英国の例を見るまでもないのですが、9月の衆議院選挙では自民党が「圧勝」したことになっています。ただ獲得投票数ということからすると「自民・公明」の政権チームよりも野党の合計得票数の方が多かったのですよね。昨日のテレビを見ていたら田中秀征さんという人が、いわゆるl小泉チルドレンとかいう人たちの中で、次回の選挙でも当選する人は、2-3人だと言っておりました。

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BPress Gazetteに見る英国のメディア事情


売上げ好調、小さくなったGuardian

英国の新聞業界の専門紙Press Gazetteによる英国の新聞業界事情を読んでいると、あちらの業界の方が日本のそれよりもいろいろな動きというか変化のようなものが激しいように思えますね。最近のサイトに出ていた記事の中で面白いと思ったのは、Guardianという新聞が、今年9月にサイズを小さくしたところ、売上げが40万部を突破したというニュース。これは2003年12月以来2年ぶりの快挙なのだそうです。8月の34万部に比較すると6万部も増えていることになる。

これだけだと新聞業界に身を置いて、しかも英国の新聞事情をウォッチングでもしているのなら「へぇ、そうなの」となるかもしれないけれど、普通の人にはどうってことない記事ですよね。私のようにほんの少しだけでもこの業界と接している人間にとっては興味をそそられるニュースではある。

例えば発行部数の40万部についてですが、日本の日刊・全国紙(朝日とか毎日とか読売とか)と一ケタ数字が違う。読売は1000万部、朝日は800万部などと言われている。Guardianという新聞は40万という部数でも経営が成り立っている。日本とは事情がかなり違うようでありますね。

次にサイズを小さくした件。Guardianの場合はタブロイドよりも少し大きいBerlinerとかいう版なのだそうですが、いずれにしてもかつての大判をかなり小さくして売上げを伸ばしている。実は英国ではThe IndependentとThe Timesの2紙もタブロイドにして部数が伸びている。何故、サイズが小さくなると新聞が売れるのか?私自身が手にした感覚によると、通勤客が持ちやすい、(電車の中で)読みやすいというのが最大かつ唯一の理由ではないかと思ったりするのですが。この記事を英国内で読んでいる方のご意見はいかがですか?

BBCがアラビア語のテレビ放送

2007年にBBC World Service TVがアラビア語のテレビ放送を始めることになっているのですが、これに伴ってブルガリア語、タイ語など10ヶ国語のラジオ放送が廃止されるとのことで、アラビア語放送の始まりで200人程度の雇用があるのですが、廃止されるラジオ局で働いていたスタッフ約200人がリストラなのだそうです。新しいアラビア語のテレビ放送は、ビン・ラディンの肉声を流したり、爆撃されるイラク市民の様子を延々放送したりで有名なあのアルジャジーラに対抗して始まるとされています。BBCの海外放送は外務省からの資金提供で成り立っているのですが、この新しいサービスのために余分な予算は提供しないという方針であったので、仕方なしに他の言語放送(ラジオ)を削ることになったもの。アルジャジーラに対抗という意味ではアメリカが2004年2月にアル・フーラなるテレビ局を作ったのですが、中東での人気はぱっとしない(最近のThe Economist誌)らしい。BBCは「信用度(クレディビリティ)の点ではBBCの方が上」ということで自信はありそうです。

デジタル写真の使用禁止時間に疑問の声

10月13日付けのPress Gazetteによると、国際サッカー連盟(FIFA)が「ワールドカップの試合の写真に関しては、試合終了後1時間以内には報道目的で使用してはならない」と決めたのだそうです。普通の新聞については特に支障はないのですが、インターネットによる報道については1時間も使用禁止というのはいたい。世界新聞協会(WAN)のティモシー・ボールディング事務局長は「編集権利の侵害だ」と怒っていますが、この新聞ではFIFAは禁止の理由が説明されていないのでイマイチよく分からない。

パブ業界紙の主張

現在、英国でパブを始めとする飲み屋さんの24時間営業を合法化しようという動きがあるのですが、Daily Mailという新聞が『パブの24時間営業に反対しよう』(Say No to 24-hour Pubs)というキャンペーンを行ったところ、パブ業界紙のPublicanが「パブ差別だ」これに抗議、業界関係者にDaily Mailの不買運動を呼びかけた。びっくりしたDaily Mailは「我々はパブに反対しているのではなく、深夜の飲酒に反対しているのだ」というわけで、キャンペーンのタイトルをSay No to 24-hour drinking(24時間飲むのは止めよう)に変えておさまったのだそうです。

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C短信


入れ歯が喉につかえて危機一髪

ブルガリアの首都、ベオグラードで危機一髪、警官が77才になるおばあさんの命を救ったという事件があった。そのおばあさん、道端でサンドイッチを食べていて気を失って倒れたのを、たまたま通りかかった25才になるお巡りさんの目にとまり、抱き起こして背中をさすっていたら、口から飛び出してきたのが入れ歯だった。「サンドイッチを食べていたので、てっきりこれが喉につかえたんだろうと思っていたのに・・・まさか入れ歯を吐き出そうとは思わなかった」と助けた警官はコメントしています。このおばあさんが吐き出したのは総入れ歯だったそうです。

  • 確かに口から入れ歯の上下が飛び出してきたらびっくりするでしょうね。でもサンドイッチを食べていて総入れ歯が喉につかえるって・・・どういうことだったのでしょうか!?

牢屋を囚人に任せる

ブラジルのある牢屋で看守が、あろうことか捕まっている囚人に留守を任せて昼ご飯を食べに行ってしまった。で、留守を任された囚人がまんまと脱走に成功したという当り前のハナシ。同僚の囚人によると、クリスチアーノという囚人は模範囚で、留守を任されるのも一度や二度ではなかったそうです。何度もやらされるうちに魔が差して・・・というわけ。当然ながらこの看守はクビになったらしい。クビになった看守は「それまで何度もやったことなので・・・」とガックリしているそうですが、要するに人間は信じちゃいけないってことですね。

  • ウーン、牢屋の留守番を囚人にお任せ・・・か。ちょっとまずいだろな、これは。

銀行強盗は初恋の人

オーストリアのオーバーミルシュタットという町に覆面の銀行強盗が押し入り、行員(女性)から金を盗って逃走したけれど、すぐ捕まってしまった。何故かというと、確かに顔を靴下で覆っていたけれど、目だけは外から見える。その目は澄んだブルーで、行員の幼いころのボーイフレンドであることが直ぐに分かった。で、犯人逃走後すぐに警察に連絡、名前を告げたら直ぐに御用となった・・・。

  • この女性行員にとって、犯人は「初恋」の人であったらしい。強盗にはついてない。

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D編集後記


●むささびジャーナルは私の道楽であります。それ以上でも以下でもない。冒頭イントロ中の宮脇昭さんのコメント(好きで続ければ仕事)に照らすならば、これは明らかに「仕事」です。が、お金には関係ない●それはともかく、私のメールが「迷惑メール」になっていないことを祈ります。最近いろいろとヘンなメールが送られてきます。タイトルが「奈々子です」「あなたを待っています」「大人の付き合い」等など・・・●開けたい誘惑に駆られつつも、奈々子さんなんて知らないし、いきなり「待っています」と言われても困る●ワケのワカラナイのもありますね。「ココしかない!」(ど、どこしか何がないんです!?)「赤字覚悟」(そりゃ止めた方がいい)「少ないですが、3万円なら」(もらえるんですかぁ?)・・・●「受信ボックス」で「むささびジャーナル」というタイトルを見ただけでそのまま削除する人もいるんだろうな、当然。怪しい者ではないのですが。

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letters to musasabi journal