musasabi journal 2011年3月17日 粘り強い国の地震・津波・原発:The Times特派員のレポート
3月17日付のThe Timesのサイトに、東京特派員のRichard Lloyd Parryが東北大地震についてのレポートを書いています。仙台からのレポートです。題して「最悪の事態が起こったとしても、この粘り強い国の対応は世界の模範となるであろう」(If the worst happens, this resilient nation’s response will set an example to the world)。Lloyd Parryは英国のジャーナリストとして日本で暮らすこと16年になるそうです。
抜粋して紹介すると・・・。
●日本にとってのこのボディ・ブロー(大地震+津波+原発事故)はどのような効果をもたらすのだろうか?日本をノックアウトさせてしまうのだろうか?あるいは、日本人はかつて何度もそうであったように立ち向かって、団結心、目的意識、そして最も日本的なものである「敢闘精神」をもって暗黒の時代から再び蘇るのだろうか?
What, then, will be the effect of the recent body blows? Will they force a reeling nation to its knees? Or will the Japanese react as they have so many times and emerge from this dark hour with unity, purpose and that most Japanese of virtues, “fighting spirit”?
●原子炉やオーバヒートし、がれきの下に遺体が埋もれているというときに、わずか5日間で、そのような壮大な判断を下すのは不可能なことである。しかし、原発危機について日本政府がどのようなパフォーマンスを見せようが、普通の日本人が素晴らしい成績を残したことは明らかであり、ここでもまた例外的とも言える日本社会の強さを見せつけたことも明らかなことである。それは目に見えるような形で示せるようなクオリティではない。起こっていない事柄の中に極めて明確に見ることができるようなものなのだ。たとえば、これまでに深刻な店舗における略奪行為は報告されていない。食糧、水、石油、ガソリンなどが不足しているにもかかわらず、それらの価格は先週(震災前)とほとんど同じようなレベルなのだ。店舗やガソリン・ステーションには長い行列が見られるけれど、誰も列を乱したり、口げんかをしたりすることがない。イライラしてクルマの警笛を鳴らしたり、ということもないのである。
It is impossible to make such grand judgments after five days, with the reactors overheating and the bodies still lying under the sodden ruins. But whatever the performance of the government on the nuclear crisis, it is clear that ordinary Japanese people have emerged with outstanding credit and demonstrated once again the strengths of their remarkable society.
They are undemonstrative qualities, which become most obvious in the things that are not taking place. There have been no reports of significant looting. Despite the shortages of food, water and petrol, prices are at much the same levels they were last week. In the queues at shops and petrol stations, no one shoves or argues or sounds his car horn.
●日本的な親切も全く失われていない。仙台においては、市役所が帰るべき家がない旅行者のための避難所として開放されている。そこで私は見ず知らずの人々からお菓子をもらった。無理やり私に押しつけて行ったのだ。塩釜の避難所では、1000人もの被災者のための夕飯を見つけるのに四苦八苦であるにもかかわらず、この私にまでかまぼこをいくつかくれた。どうしても持って行けと言うのであった。
Japanese hospitality is uneroded. In Sendai, the City Office was opened up as a dormitory for homeless travellers, and I left with several packets of biscuits pressed on me by solicitous strangers. This became positively uncomfortable at the evacuation centre in the town of Shiogama where, despite struggling to find dinner for a thousand refugees, they would not hear of me leaving without a couple of fish sausages.
●日本が地震と津波から立ち直ることを疑いがないし、おそらく世界を驚かせるようなスピード回復するであろう。原発における放射能漏洩は、津波や地震とは違った性格の危機であり、きわめて複雑な問題である。地震国であるにもかかわらずこれほど多くの原子力発電所を作ったことで、日本は全くもって誤った選択をしたことを世に示したことになった。これから政府が、情報を共有する率直さと必要な避難を実施するだけのスキルを持って対応するということは、政府にとっては大変なチャレンジであると言えるし、その能力が容赦なく問われることになる。
There is no doubt at all that Japan will recover from the earthquake and tsunami, and will do so at a pace that will impress the world. The nuclear leak is a different kind of crisis, infinitely more complicated by comparison. By building so many nuclear power stations in such a seismically active country, Japan has been proven to have shown disastrously bad judgment. The way that the government handles the next few days and weeks, the frankness with which it shares information and the skill with which it executes any necessary evacuation, will be immense challenges that will test its competence unforgivingly.
●しかしながら、たとえ最悪の事態となって、大量の放射能がばらまかれ、大混乱の脱出劇につながったとしても、それは世界のどの場所におけるよりも、醜悪さ・混乱・恐怖などの少ない脱出となるであろう。この数日間で日本人は再び日本人らしさを見せつけたのである。そのような人々とともに生きていることに、私は誇りを覚えるのである。
However, even if the worst happens and a mass radiation leak leads to a panicked exodus, it will be less ugly, chaotic and frightening than it would be anywhere else in the world. Once again, the Japanese have shown their singularity in the past few days. I feel proud to live among them.
以上です。今回は推敲なしの同時通訳のようなものになりました。
▼テレビで被災地と原発のシーンばかり見ているといい加減に疲れます。なのに他に手がつかないので、結局見ることになってしまう。で、余計疲れるわけであります。ということは、そういう状態と共存することしかないってこと。メディアも含めて日本全体がガタガタしているように見えるけれど、私としては、菅さんも枝野さんも東電も保安院も、みんなよくやっていると思います。というより、誰がやってもこれ以上のことはできないだろうってことです。
▼それにしても、一番よくやっていると思うのは被災者の方々です。自分たちが腹ぺこのはずなのに、Lloyd Parryにかまぼこを持って行けと言って譲らない人々です。とにかく今は彼らと団結して、被災者と共にあるしかない。疲れたなんて贅沢ってもんだ。
▼うちはこれから3時間の停電です。
messages to musasabi journal