musasabi journal
発行:春海二郎・美耶子
第104号 2007年2月18日

Back numbers

 

2月も後半になってしまいました。我が家の付近では梅の花が見事に咲いております。梅は桜のように派手ではないけれど、一番最初に春を告げてくれ、しかもじっくりと長い間咲いてくれているのがいじらしくていいですよね。

目次

1)英国の弱みは中等教育?
2)ブレアさんの大学財政支援策
3)大衆紙が苦戦している
4)David Halberstamが語る「ベトナム」と「イラク」
5)短信
6)むささびの鳴き声

1)英国の弱みは中等教育?


前回のむささびジャーナルで、戦後の英国の教育政策の移り変わりについて簡単に報告しました。あれは主として小学校教育(primary education)に関するものでした。2月3日付けのThe Economistが珍しく「英国特集」をやっています。経済・政治・社会など幅広く現在の英国の状況を伝えており、特集はThe birthplace of globalisation in the 19th century is coping well with the latest roundという文章で始まっています。即ちいわゆる「グローバリゼーション」は19世紀の英国によって始まったものであるが、アメリカが主導権を握る21世紀のグローバリゼーションについても英国はうまくやっている・・・というわけで、英国の現状についてはかなり自信ありげなニュアンスです。

例外なのが「教育」についてで、Education and skills are Britain's weak spots(教育と技能が英国の弱み)と書いてあります。この特集が「弱み」として特に挙げているのが、中学教育(secondary education)と大学教育(higher education)です。英国の教育制度は日本のような6・3・3・4制と違って、いろいろとチョイスが存在するので、私などには非常にややこしいのですが、あえて単純化するならば、小学校が5〜10才、中学が11〜15才(卒業時は16才)で、ここまでが義務教育。その後、日本で言う高等学校があり、大学があるわけですが、このあたりのところが、私にはさっぱり分からないし、The Economistの記事とも関係がないので、ここでは勘弁してもらいます。

The Economistはまず、OECDによる教育の達成度(attainment)についての国際比較を挙げています。要するに読み書きソロバンの能力ですね。義務教育を終えた25〜64才の人びとを調べると「レベルが高い」と思われる人が約25%、「中くらい」が約35%ときて、「低い」が約40%弱となっている。フランスも同じような数字です。日本はというと「高い」がほぼ40%で、「中くらい」が45%で、「低い」は20%以下となっています。アメリカも日本と同じような割合になっています。ドイツは「中くらい」が非常に多く、スウェーデンは「高い」が多い。英国の弱みは「中くらい」の割合が低いことにある・・・というのがThe Economistの指摘です。

英国人の6分の1が読み書きがまともにできず(functionally illiterate)、5分の1の人が計算に弱い(innumerate)・・・つまりこれだけの数の大人が読み書きソロバンの点では小学6年生と大して変わらない能力しかないということになる。これもOECDの数字だそうですが、現在年齢が55ー64才の人の中で中学教育を終えている人の割合を調べると、英国はOECD加盟30カ国のうち13位、25-34の年齢層だと23位というわけで、中卒の割合ということでは韓国やアイルランドにも劣るとされています。

16才で義務教育が終わるのですが、その間にGCSE(General Certificate of Secondary Education )と呼ばれる全国学力試験を受けることが義務になっている。The Economistによると、このテストで「良い(good)」の点数をとる学生が増えているのですが、それは外国語や数学、科学のような難しい科目を選択しない学生が増えていることがその理由として挙げられています。

2) ブレアさんの大学財政支援策


中等教育もさることながら、英国の高等教育(higher education:日本でいう大学教育)もまた大きな問題を抱えています。この場合は、学力のレベルというより、もっぱら財政的な困難だそうです。昔は大学まで行くのは、ごく一握りのエリートの子弟に限られており、大学はタダ(つまり政府のお金で賄われていた)であったのですが、今や40%の高卒者が大学へ行く時代になっており、とても税金だけで賄える状況ではなくなってきている。The Economistによると、学生数の増加によって、1989年と97年の間の約10年間で、学生一人に費やされるお金が36%も減少したのだそうです。

そこで98年に授業料(年間1000ポンド:約25万円)制度が導入されたものの、とても間に合わず2006年にはこれが3000ポンドに値上げされた。それだけの授業料をとったとしても、学生(英国人)一人当たり4000ポンドのお金が政府から出ている(外国人の学生にははるかに高い授業料課せられている)。オックスフォード大学の場合、学生一人を教えるための費用は12,000ポンドを超えるのだそうです。

こうした大学の財政難対策として、最近ブレア政府が打ち出しているのが、大学による寄付金集めの奨励策で、2月11日付けのThe Observer紙によると、イングランドにあるトップ75大学に限り、外部からの寄付金2ポンドに対して1ポンドの資金が政府から拠出され、200万ポンドまでがこの奨励策の対象になるというアイデアです。例えばオックスフォードの卒業生が100ポンド寄付すると、政府から50ポンドが下りるので合計は150ポンドになるというわけ。

Observerの記事によると、英国の大学とアメリカの大学の決定的な違いは、卒業生などからの寄付金の額なんだそうです。米ハーバード大学の場合、寄付金の積立額はほぼ150億ポンドに達するのに対してオックスフォードのそれはたったの36億ポンド。しかも学生数はハーバードが6650人で、オックスフォードは11,200人。これじゃ勝てっこない!昨年の数字ですが、ハーバードは3億500万ポンドを、89000人からの個人寄付で集めたのだそうで、寄付の62%が100ドル以下となっています。つまり少額ながら沢山の人々が寄付をする。そのような習慣が英国の大学卒業生にはない(There is no culture among former students of giving small donations en masse)とのことです。

ブレア政府の寄付奨励策を発案したブリストル大学のEric Thomas教授は「英国に"与える"文化がないと考えるのは間違いだ」(it is wrong to assume there is no giving culture in the UK)として次のようにコメントしています。

There wasn't even a culture of asking. You can't test if there is a culture of giving when you are asking people...(そもそも英国には寄付を頼むという文化がなかったのだ。"与える"文化があるのかどうかは、たずねてみなければ分からないではないか)

  • うーん、「寄付を頼むという文化がなかった」とのことですが、これは「頼む」ということへのエリートなりのこだわりなんでしょうかね。「叩けよ、さらば開かれん」というのは英国のエリートには合わなかった!?
  • ところで日本の大学の財政状況だって決していいはずないと思いますが、どのようにして生き延びているのでしょうか?
3)大衆紙が苦戦している


皆様ご存知のとおり、英国の新聞には「高級紙」(quality papers)と呼ばれるものと「大衆紙」(popular papers)と呼ばれるものがはっきり分かれて存在しています。平たく言うと、quality papersはインテリが読み、popular papersは大衆が読む。National Readership Surveyという調査によると、ロンドンの地下鉄の中でFinancial Timesを読んでいるのは中流・中上流階級の男で、年齢は45才以下なのだそうです。さらにそのとなりでThe Sunに掲載されている女性の胸の写真を食い入るように見つめている男は、労働階級でFTの読者よりも10才若い・・・というのが典型なのだそうです。

発行部数の大きい順に並べると次のようになります(数字は2003年のもの)。

1) The Sun:約350万部
2) Daily Mail:240万
3) Daily Mirror:200万
4) Daily Express:95万
5) Daily Telegraph:93万
6) The Times:65万
7) Financial Times:46万
8) Guardian:40万
9) Independent:22万

上位の4紙が程度の差はあるけれど、一応「大衆紙」というカテゴリーに入る。5〜9の高級紙は部数からいうと下位を占めていることがはっきりしていますね。Financial Timesの46万部には海外の読者も半分以上入っていると思うので、ここに入れるのが適当であるかどうかは分からない。

しかるに最近の傾向として大衆紙の部数の下落が目立つのだそうです。2月15日付けThe Economistの記事によると、大衆紙の代表格The Sunの発行部数はここ1年間で3%下落、二番手のMirrorは6%の下落を記録しています。

新聞の発行部数の減少は今に始まったことではなくて、ここ40年ほどの傾向だそうです。背景はいろいろですが、一つにはテレビ。10軒に7軒の割でケーブルだのサテライトだのといった多チャンネルテレビを持っている。さらにインターネット。「いつもネットを使う」という成人が5人に3人。6年前には3人に一人に過ぎなかったのが、です。つまりニュースはテレビとネットで十分、新聞は要らないというわけ。これは英国に限ったことではありませんよね。

ただ、不思議なのは部数低下が見られるのは大衆紙のことで、高級紙のほうは大衆紙ほどではないということ。1984年〜2000年の16年間で、大衆紙は年平均2・1%の割で部数が減り、2000年以後はそれが2・6%となっているそうです。しかしGuardian, Times, Telegraphのような高級紙は減り方がわずかであるし、Independentなどは少しとはいえ部数を伸ばしているのだそうです。

何故こうなるのかというと、高級紙が政治的・社会的な意見の点ではっきりしており、読者はその違いを意識して購読している。例えば中道左派で知られるGuardianが、急に保守的なTelegraphの論調の記事を掲載することはない。左派的な考え方をする読者は、ある意味自己確認がしたくて同じような論調の新聞を読む。また読者であるインテリ層がインターネットへ流れる傾向はかなり前から起こっており、現在ではこれも落ち着いてきている。さらにこの種の読者はネットと印刷媒体の両方を読む傾向にある。

そこへいくと大衆紙の場合、ヌード写真とか有名人のスキャンダルが中心だから、新聞の間の違いは実は殆どない。つまり固定客的な読者がいない。セックスだのスキャンダル記事を求める読者はネットだけでなく、雑誌にも流れる。また最近の都市部におけるフリーペーパー(無料新聞)の伸びも大衆紙の売れ行きに大きな影響を与えているのだそうです。

The Economistは、大衆紙が苦境を乗り切るためには「読者を子供扱いするのを止めること」(to stop patronising readers)が肝心だというコンサルタントの言葉を載せています。つまりセックスと有名人のスキャンダルさえ載せていれば売れると考えるのを止めることというわけです。The Economistの結論メッセージは次のとおりです。

「もっと胸を出させよう」という発想を止めて、大衆的なテーマを基にして、各紙の特徴的なジャーナリズムを開発することを考えてもいいのではないか。高級紙の方はそれをやって読者が離れることを止めることができたのだ。大衆紙が同様のことをできないというのは、読者をバカにすることになる」
Instead of laying on still more breasts, they might concentrate on developing distinctive journalism on popular themes that readers cannot find elsewhere. Similar tactics have helped to stanch the flow of readers from quality papers. To argue that red-tops cannot do likewise demeans their readers.

4)David Halberstamが語る「ベトナム」と「イラク」


いまから(多分)30年以上も前に読んだペーパーバックにThe Best and the Brightestという本があります。New York TimesのDavid Halberstamというジャーナリストが書いた本で、アメリカがどのようにしてベトナム戦争の泥沼にのめりこんで行ったかを詳細に報告したドキュメンタリーで当時のベストセラーになった。何と今でも読まれていると見えて、第20刷を重ねているそうです。

Halberstamはケネディ、ジョンソン、ニクソンの3大統領のベトナムへのかかわりを批判的に書いているのですが、30年後のいま、ベトナム以上の泥沼としか思えないイラク戦争についてHalberstamが何を想っているのかが気になってYahoo!を調べたら、この人が2004年にある雑誌とインタビューをしたときの記事が見つかった。

インタビューのタイトルは「イラクはベトナムの繰り返しか?」(Is Iraq "Another Vietnam?")というわけで、ベトナム戦争とイラク戦争の似ている点と違う部分について語っています。非常に長いインタビューなので全部紹介することは到底できませんが少しだけ紹介します。全文はここをクリックすると出ています。

まず二つの戦争の類似点の一つとして、アメリカ政府における「情報の腐敗」(intelligence corruption)を挙げています。間違った情報を基に戦争を始めたのが「イラク」なら、「ベトナム」の場合は情報そのものは正確であったのに、ワシントンの政府関係者が素直に受け取らなかったことが「腐敗」であるということです。

Halberstamによると、ベトナム戦争のときは、情報機関、国防省、国務省の人たちが正確で正直な情報をあげていたのに抹殺された。その抹殺者(slayer)が当時の国防長官、ロバート・マクナマラだった。マクナマラは自著の中で、「ベトナム戦争では、自分たちが欲しい情報が全く入って来なかった」と言っているけれど、Halberstamは「それはマクナマラによる残酷なウソ」(One of the many cruel lies that Robert McNamara tells in his book)であり、ベトナムの現場から情報を送った人びとに対する「名誉毀損」(blood libel)だと主張しています。ワシントンの人々は自分の望むような情報だけを欲しがったというわけです。「情報というものは引き金を引きたがる人間の欲望に見合うように作られるものだ」(Inevitably, intelligence gets tailored to the desires of the people who want to pull the levers)とHalberstamは言っています。

Halberstamは「我々はベトナムで情報腐敗を犯したが、イラクでは明らかにもっと大規模な情報腐敗が行われている」と語っているのですが、大量破壊兵器を見つけることができなかったことを責めるよりも「証拠がないのに(大量破壊兵器があるという)証拠があると言い張ったことの方が責められるべきだ」と言っています。しかしHalberstamのインタビューの中で、最も強調しているのは次のポイントです。

しかし何といっても、最悪の情報の失態は、我々が(イラクで)解放者として花束をもって歓迎されるだろうと信じたということである。これこそが情報に携わる人びとが犯した最大の失態なのだ。しかもこのことがより厳重に追及されていないということこそがショッキングなことなのである。 But the most egregious failure of intelligence was the belief that we would be greeted as liberators, with flowers thrown in our path. This is the greatest failure of the intelligence people, and it is shocking if people do not push on this harder than they are.

つまりCIAはWMDについての情報収集はやっていたかもしれないが、イラクの人びとの心についての情報収集・提供は全くやっていなかったか、非常に不正確であったということ。しかもそのことについての反省が全くない(とHalberstamには見える)ということです。

もう一つの類似点は、アメリカがベトナムやイラクの歴史や周辺地域ことを殆ど何も知らずに、アメリカの考えを押し付けようとしたことにある。アメリカが押し付けようとしたのは、ベトナムでは反共産主義であり、イラクでは民主主義です。アメリカはベトナムが共産化すれば周辺国にこれが波及するドミノ効果をもたらすと考え、ベトナムを共産主義・中国から守ろうとしたのですが、実はベトナムには昔から中国に対する民族主義的な敵対意識が強かったということに気がつかなかった。アメリカの敵であった北ベトナムのホーチミンの言った言葉にBetter to eat the French dung for 100 years than the Chinese dung for 1,000(中国のクソを1000年間食うより、フランスのクソを100年食らうほうがまし)というのがあるそうです。

イラク戦争の推進派は「イラクを民主化すれば、民主主義は中東全体に拡がるはず」(if we get a functioning democracy going in Iraq, then democracy will spread to the other nations in the region)という「民主主義のドミノ」のようなことを考えており、中東諸国の間における敵対意識や歴史の違いのことは考えていなかった。イラクを「民主化」することで、アメリカは中東諸国間の敵対意識に火をつけてしまった、とHalberstamは言っています。

ベトナム戦争とイラク戦争の相違点は何か?ということについて、Halberstamは次のように言っています。

ベトナム戦争の場合、アメリカは、フランスがやったのと同じように、ただ撤退すればよかった。ベトナム人はアメリカ人を追いかけてくることはなかった。彼らはただ自分たちの国を取り戻したかっただけなのだから。しかしイラク戦争ははるかに危険だ。彼らは我々をアメリカまで追いかけてくる。イラク戦争は、ありとあらゆる反米勢力の結集ポイントになっていくだろう。 In Vietnam all we had to do was go home as the French had done. The Vietnamese didn’t want to follow us, they just wanted their own country back. This is much more explosive. These guys want to follow us home. This war is going to be a rallying point for all kinds of forces against us.

The Best and the Brightestの初版が出版されたのが1972年ですから、ベトナム戦争が終わる3年前のことです。この本は次のような文章で終わっています。

こうして戦争は続き、この国を切り裂いた。初期のころの怒りは、いまや無感動にとって変わられたように思えた。アメリカ人は、トンネルの出口に光を見出すことはなかった。ただ大きな暗黒だけが広がっていた。 And so the war went on, tearing at this country; a sense of numbness seemed to replace an earlier anger. There was, Americans were finding, no light at the end of the tunnel, only greater darkness.

  • 最後の文章を見ていると、とても34年前のアメリカについての本とは思えませんね。現在のアメリカそのままという感じではありませんか?
  • ベトナム戦争といえば、先日(といっても昨年末)、日本記者クラブでベトナム首相が記者会見をやった時のコメントを思い出します。「わが国は、これから汚職を一掃し、健全かつ効率的な市場経済を導入してやっていくのだ」と強調していました。日本企業にもどしどし進出して欲しいということですが、もちろん結果論にすぎないけれど、アメリカはベトナムが共産化することを防ぐために、あれほどの数の爆弾を落とし、村を焼き払ったのですよ。それが30年後のいま、当のベトナム人が「我々は市場経済を目指します」と言っている。歴史の皮肉ってんですよね、こういうの。
5)短信


1本12万円?のナチワイン

Daily Telegraphによると、ヒットラーの肖像写真をラベルに刷り込んだ「ナチワイン」なるものが、まもなく競売にかけられるのだそうです。1943年ものの赤ワインで、ヒットラーの54才の誕生日記念ワインとして作られたものが、つい最近フランスのある車庫で発見された。密封されているけれど、年齢(ワインの)からして飲むのには適さないらしい。競売はプリマスで行われるのですが、落札価格は500ポンド(12万円前後)程度とされています。

  • オークション主催者は「極めて珍しい(extremely rare)」とか言っております。珍しくても飲めないんじゃ・・・とか言っているような人間には競売の世界など分からないんですよね。

92年ぶりに届いた戦場からの手紙

1915年、第一次世界大戦でフランスの西部戦線で闘っていた英国の兵士がWiltshireに住むフィアンセ宛てに出したハガキが最近になって見つかり、92年ぶりに配達されたそうです。手紙を出したのはWalter Butlerという18才の青年、相手は 同い年のAmy Hicksという女性で、「まだ生きているから安心しろ」という内容。日付は1915年7月28日。このハガキはWalterとAmyの一人っ子であるJoyce Hulbert(86才)のもとへ配達された。WalterとAmyは1919年に結婚したのですが、Joyceが生まれた後で離婚、Amyは1978年に、Walterは79年に死亡したそうです。

  • このハガキは最近になってWiltshireで郵便配達をする人の郵便袋の中から見つかったらしいのですが、今ごろ見つかったことについてはmysteriously turned upとなっている。「不思議にも出てきた」ってことですが、92年間も見つからずにいたということになる。英国の郵便配達の袋はどのようなつくりになっているんでしょうか?そっちの方がミステリー!?

モナリザ番のストライキ

パリのルーブル美術館の守衛さんたちが賃上げ要求でストをやるそうですね。PA通信によると月給で約100ポンド(25000円)の値上げを要求しております。この守衛さんたちはこの美術館にある、例のダビンチのモナリザの肖像画のガードをしている人たちで、精神的ストレスに対する補償を要求しているってことらしい。「余りにも多くの人が立ち止まって写真を撮ろうとするし・・・モナリザ番のストレスはタイヘンなんです」とのこと。現在、ルーブル美術館には180人の守衛さんが雇われており、ストについては3分の1が賛成、大半は棄権だったそうで、スト決行には十分な票であったとのことです。

  • 私、美術館なるところへは殆ど行ったことがないんでありますが、ルーブルの場合、日曜日には6万5000人の入場者があるんだとか。で、ガードマンが180人というのは確かに少ないという気がしないでもないな。
6)むささびの鳴き声


▼北朝鮮の「核」をめぐる6者協議が「合意」を見たとされる2月13日の翌朝の日本の新聞の論説を読んでみました。拉致問題をどうするのかというくだりだけを書き出すと次のようになります。

東京新聞   日本にとって懸案である拉致問題は「日朝関係」の作業部会で討議されることになった。北朝鮮は「解決済み」という主張を繰り返しており前途多難だ。「拉致の解決なくして支援なし」の政府の方針には、周辺国の理解もある。政府は一層の協力を得るよう力を尽くしてほしい。

日本経済新聞
 日本が拉致問題の解決なしに本格的な支援に加わらない姿勢を堅持したことは正しい。対北朝鮮政策の基本原則がぐらつけば相手に足元を見透かされるだけだ。

毎日新聞
 日本政府は、今後、拉致問題を6カ国協議の場にどのように持ち出すかという難問に直面する。合意文書で関係国による5作業部会の設置が決まった。日朝国交正常化部会もできる。1部会だけの遅れが許されないかのような表現もあり、拉致問題封じ込めになりかねない。慎重に対応すべきだ。

朝日新聞
 悩ましいのは日本の対応だ。政府は、拉致問題で進展がない以上、当面の重油支援の経費負担には応じないという。<中略>だがいずれにしても北朝鮮の核放棄が実現に向かって動き出すとすれば、日本も積極的にかかわっていくべきだ。安全保障上の大きな国益がそこにかかっているからだ。「核」を動かすことで「拉致」の活路を開く。そんな取り組みを求めたい。

産経新聞  協議の過程で、日本が拉致問題にこだわるあまり、全体の交渉の中で日本だけが孤立する、との指摘がなされたが、無用な心配だ。拉致という国民の命がかかわる問題では、妥協することの方が、国内的、国際的な信用を失う。孤立を怖れず、むしろ孤高を保つ気概こそが必要だ。孤立しているのは日本ではなく、北朝鮮であることを忘れてはならない。


読売新聞  日本は、拉致問題の進展がない限り、北朝鮮への支援はしない方針だ。30日以内に開かれる日朝関係の作業部会で、北朝鮮がどう出てくるのか。それを見極めたうえで、慎重に検討すればよい。

▼拉致問題に関する限り、産経と日経が一番分かりやすい(と私には思えます)。東京新聞は拉致問題解決のために周辺国からの協力を得るべく努力すべしと言っており、読売新聞も毎日新聞も似たような意見のようですが、アメリカを含む周辺国からの理解だの協力だのが怪しくなったときにどうするのかということについては「孤立してでも主張せよ」という産経ほどには分かりやすくない。一番わけが分からないのが朝日新聞。「核」を動かすことで「拉致」の活路を開く・・・ってなんのこと?どうしろってのさ!?

▼それから、この状況の中で「孤立しているのは北朝鮮だ」と指摘しているのは産経だけです。 ちなみに産経新聞は社説欄のことを「主張」と名づけていますが、残りはいずれも「社説」です。このあたりも産経の分かりやすさが目立ちますね。

▼104回目のむささびジャーナルにお付き合いをいただき有難うございました。105号が出るころには、もう3月ですね。