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musasabi journal


第110号 2007年5月13日

 

フランスで、サッチャーさんのようなサルコジさんが大統領になり、英国では考え方の点でサッチャーの息子みたいなブレアさんが退陣する・・・ヨーロッパも変わりつつあるってことですが、そもそもブレアさんという人は、英国の首相として国内的にも国際的にも何を遺したのか?実は何も遺さなかったのではないか?国内的にはイラク戦争が不評であったのですが、本人は「絶対に正しいことをやった」と言っている。それが「信念の政治家」ということで前向きに評価される部分もある。しかしイラク戦争の主人公であるアメリカやブッシュさんにとって、ブレアさんの「信念」は、本当にそれほど重要な位置を占めていたんでしょうか?アメリカのジャーナリストが書くイラクについての本には、英国の支持なるものがどの程度の重要性を持って紹介されているのか?どうも疑問ですね。

目次

1)ブレアさんのこれから
2) ブレアさんの10年
3)「パブリック」の権威が落ちている
4)北朝鮮:オルブライト元国務長官の見方
5)短信
6)むささびの鳴き声

1)ブレアさんのこれから


6月末をもって首相でなくなるブレアさんの生活について5月5日付けのThe Economistの政治コラムBagehotが「ビル・クリントンの例ににならうのがいいかもしれないが、余り簡単ではない(Bill Clinton is likely to be the model for Tony Blair's retirement. The prime minister won't find it easy)」と言っています。

このコラムによると、国連は事務総長が新しくなったばかりだからアウト、EU委員長の職についてはブレアさん自身が退屈する。NATOの事務総長になって、この組織をこれまで以上に「エキゾチックな戦争に関与させる」のは干渉主義のブレアさんには合っているかもしれないけれど、「加盟国の殆どが恐怖におののく」(the prospect would terrify most of its members)というわけでこれもない。

ウォルビッツ総裁がスキャンダルに巻き込まれている世界銀行の総裁ということになれば、ブレアさん念願のアフリカ支援にも力を発揮できるかもしれない。が、ブレアさんは経済についてはブラウン財務相任せだったくらい、知識薄弱というわけで・・・。

Bagehotによると、ブレアさんにはこの種のビッグな国際組織は合わない。官僚機構が巨大で、彼のような「お茶の間政府」(sofa government)というやり方で、インフォーマルな政治をやってきた人には向かないのだそうです。

で、モデルになるかもしれないのがビル・クリントン元アメリカ大統領。この人の場合、過去6年間で講演によると収入だけでも4000万ドル(約50億円)も稼いでいるんだそうです。それ以外に自伝の出版とか自分で作った財団からの収入もある。クリントンとブレアは考え方としては似ているし、ブレアさんも同じようにやれるのでは・・・?

が、問題もあることはある。まず首相回顧録の出版については、直ぐにはやりにくい。労働党が政権にあって、しかも不仲がとやかく言われたブラウンさんが首相ともなると、内幕風の本を書くにはもう少し時間が経たないと。

講演旅行はいけるだろうし、先輩のサッチャーさん(レーガンと仲良しだった)も首相を辞めてから、アメリカでの講演で大いに稼いだ。対テロ戦争でブッシュさんとともに戦った実績もあって、ブレアさんはアメリカでは非常に人気が高いのですが、サッチャーさんと違うのは、ブレアさんは「本当の政治的基盤」(real political base)がアメリカにはないというのが弱みらしい。共和党のアメリカ人は、ブレアさんを尊敬し、はっきり物を言ってくれた友人として感謝もしているが、彼のことを「心の友」とまでは思っていない。仲間という意味ではむしろ民主党支持者の方が近いけれど、ブレアさんのイラク戦争支持とブッシュさんとの仲の良さもあって、彼らのブレア観も曇りがちというわけです。

では、サッチャーさんが一時そうしたように、国会議員として残って、影で影響力を発揮するback-seat driverのような存在になろうとするのは、意図せずに党内の「ブラウン大嫌いグループ」の求心力的存在になるからやめたほうがいい。だいいちブレアさん自身が望まない。

というわけで、Bagehotの結論は次のとおりです。

ブレア氏が賢いならば、英国の政治からは身を引いて、時間が経ってから本を書き、財団でも設立して気候変動・世界の貧困・中東和平などについて講演旅行でもすれば、かなりの稼ぎにはなる。クリントン氏だって十分幸せそうではないか。尤もクリントンの場合は、奥さんのおかげで、またホワイトハウスに戻れるかもしれないし、民主党もまた彼を崇拝しているという恵まれた状態にある。ブレアさんの将来はもう少し暗い。(If Mr Blair is sensible, he will walk away from British politics, write his book later rather than sooner, set up a foundation and make lots of fairly well-paid speeches about climate change, world poverty and the need for a Middle East settlement. After all, Mr Clinton seems happy enough. But then he has a wife who could soon get him back in the White House and a party that adores him. Mr Blair's prospects are bleaker.

クリントンの講演収入(6年間で50億円)ですが、1年平均で8億円を超えるってことですよね。本の出版だの財団運営だので10億円は超えるんでしょうね。で、現役の首相や大統領の給料はいくらなのかが気になって調べたら最近の産経新聞のサイトに次のような数字が出ておりました。

アメリカ ブッシュ大統領 4700万円(40万ドル)
英国 ブレア首相 4400万円(18万7000ポンド)
ドイツ メルケル首相 4200万円(26万1500ユーロ)
日本 安倍首相 3956万円
シンガポール リ・シェロン首相 2億4000万円
  • シンガポールの首相の2億4000万円というのは何なのですかね?それはともかく、クリントンの現在の収入を考えると、大統領だの首相だのというのは「カネでやってんじゃねぇ」ということですね。はっきり言って安い。給料は円で比較しても余り意味がない。例えばブレアさんの「18万7000ポンド」というのは、英国での暮らしにとって何を意味するのでしょうか?英国でこれをお読みの方、教えてくれません?
2) ブレアさんの10年


4月8日付けのThe Observer紙には、ブレアさんの10年間における「決定的瞬間10項目」(Ten defining Blair moments)なるものが掲載されています。それを見ていると、ブレアさんのさまざまな面が見えてきます。

1)イラク戦争 Going to war with Saddam

下院がイラクでの軍事行動を支持する投票を行ったのが2003年3月18日。賛成412票・反対149票。その48時間後にイラク爆撃が始まったわけです。クック外相、クレア海外開発大臣らの主要閣僚が辞任。これまでに100人を超える英国兵士が死んでいます。またフセイン大統領が所持していたとされる大量破壊兵器に関する情報漏えいをめぐって英国内で自殺者も出ています。

2)キツネ狩りの禁止 The Ban on foxhunting

97年の選挙の公約に掲げたのがこれ。農村地域からの大変な抗議にもめげず下院で禁止法案が可決された。動物愛護団体からは大いに賞賛されたわけですが、その後キツネ狩りは以前と同じように続いている、とThe Observerは伝えています。

3)ゲリー・アダムズとの握手 Shaking hands with Gerry Adams

ゲリー・アダムズは北アイルランドのテロ集団と言われたIRAの政党であるSinn Fein党の党首。1997年10月にブレアさんとアダムズ党首が会談。英国首相とSinn Fein党党首が握手したのは72年ぶりのことであったそうで、北アイルランド和平はブレアさん最大の功績とされています。

4)ダイアナ妃への敬意 Paying tribute to Princess Diana

ダイアナさんが死んだのが97年8月。チャールズ皇太子との不仲に加えて、王室が彼女の死に冷淡であるということで批判を浴びていたときに、ブレアさんがダイアナ妃のことを「国民のプリンセス」(people's princess)と呼んで喝采を浴びた。社会的なムードを捉えて自分のものにする才能は殆ど生まれつきとされました。

5)地方自治法28条の廃止 The repeal of Section 28

地方自治法28条は1988年にサッチャー政府が作ったもので、学校において同性愛について教えることを禁止したもの。これに違反して罰せられたという例はないのだそうですが、同性愛の人々にとっては人権無視ともとれる法律だったのを、ブレアさんが2003年に廃止した。同性愛者に対する差別を禁止して、英国を「より寛容な社会」(a more tolerant Britain)にしたということで、The Observerは好意的に紹介しています。

6)国民保健制度への批判に応える Facing up to his NHS critics

ブレアさんの最大の功績(biggest legacy)とされるのがこれ。2000年1月にテレビのインタビューに答える中で「保健のための予算をEU並みに引き上げる」と発言して話題になった。ブラウン蔵相との激論の末にブレアさんが押し通したとされるもので、結果として保険料が値上がりしたし、1997年以来これまでに570億ポンドの支出増加につながったのですが、The Observerは「優れた目的のためであれば、英国人は増税も我慢することを示した」としてこれも好意的。中には「医者の給料が高すぎる」と批判する意見もあるのですが、「昔なら手術待ちの間に死んでしまったかもしれない心臓疾患の患者も今では生きていられる」(patients who once would have died waiting for heart surgery now survive)のだそうです。

7)4人の子供の父親に Becoming a father again

ブレアさんには3人の息子と娘が一人いますが、3男のレオが生まれたのが2000年5月20日。現役の首相が子供をもうけたのは、英国では150年ぶりのことであったそうですが、そのことが「仕事と家庭の両立をまじめに考える首相」というイメージにつながった。育児休暇を増やし、政府による子育て支援を拡大したのもブレアさんの業績だそうです。

8)警察の取調べ Being questioned by Scotland Yard

この10年間でお金にまつわるスキャンダルが2回あった。最初は1997年で、タバコの広告禁止から自動車レースを除外したこと。F1富豪と言われる人物から労働党に対して100万ポンドもの献金があったことが発覚した。2番目のはさらに深刻で、昨年(2006年)労働党への献金と引き換えに、貴族院議員の地位を与えたというので、ブレアさん自身2度も警察の取り調べを受けている。ブレアさんは潔白を主張しているのですが、首相になる前に「自分は白以上に白(whiter than white)」と宣言していただけにイメージダウンはかなりのもの。

9)ロンドン五輪 Winning the 2012 Olympics

2005年7月、ライバルのパリを退けて五輪を勝ち取ったブレアさん、その3日後にはスコットランドでのG8サミットで歴史的ともいえるアフリカ支援についての各国首脳の支持を取り付けたのだから、有頂天にならないほうが不思議というもの。で、7月7日にあのロンドン・テロに見舞われたわけ。テロ後のロンドン市民の団結ぶりが、却って五輪主催都市としてのロンドンのイメージアップに繋がったともいえるのですが、肝心の五輪の開催コストが当初見積もりの3倍にまで膨らんでしまっているのが問題。

10)シェリー夫人とブラウン蔵相の狭間で Laughing off Cherie vs Gordon

2006年の党大会で、ブラウン蔵相が、ブレアさんとの「仲のよさ」について演説しているのを聴いたシェリー夫人が「ウソつき!」と口走ったことがマスコミにばれた。ただでさえ不仲が噂されていただけに、どうなることやらと周囲を心配させたのですが、ブレアさんは演説の中で「これでシェリーが隣のヤツと駆け落ちする心配がなくなった」(I don't have to worry about Cherie running off with the bloke next door)とやって会場大爆笑で一件落着に。このギャグについてThe Observer紙は「ブレアのユーモア感覚と難しい人間関係をスマートにこなせる能力を示したもの」とべた褒めしております。

  • 同じ日付のThe Observer紙が掲載した世論調査によると、英国人の過半数が、過去10年間のブレア政府の下で英国は「より危険で、より不幸で、より楽しくない国」(a more dangerous, less happy, less pleasant place to live)になったと感じているのだそうです。これは全国2000人の成人を対象に行った調査によるもので、ブレアさんが首相になった1997年当時と比較して、「より危険」という人が69%、「より不幸」が58%、「より楽しくない」が58%などとなっています。ブレアさんにとってショック(かもしれない)なのは、彼の教育政策について45%もの人が「良くない(poor)」「全く良くない(very poor)」と答えていることです。
  • 「より危険・・・」という評価は「イラク」のおかげ以外の何物でもないわけですが、イラクがなかったら、ブレアさんの評価はどうであったのか?かつてThe Economist誌は、ブレアさんのことを「ウソつきトニー(Tony Bliar)」と呼んだこともあるのですが、何かにつけて「理念」を語りたがる政治家だけに、現実と合わないときのしっぺ返しは非常にきついってことですね。
3)「パブリック」の権威が落ちている


The Economistの5月5日号に公的(パブリック)な職業人(メディアも含む)に対する英国人の信頼度調査が掲載されています。「権威に対する信頼が落ちている(Confidence in authority is collapsing)」というイントロが示すとおり、この種の人たちに対する信頼感が薄くなってきているという数字が出ています。

全部で24種類の職業が挙がっているのですが、信頼度満点を100として、50点以上の信頼を得ているものを挙げると:

1 )ファミリードクター(90点)
2) 教師(80点弱)
3) 裁判官(70点)
4) 地元の警官(60点強)
5) チャリティー関係者(60点強)
6) BBCニュース(60点)
7) ITV(民間TV)ニュース(50点)
8) 警察幹部(50点)

つまり50点以上は全体の3分の1ということになる。特にひどいのが政治関係で「地元の国会議員」(local MP)が25点で最高得点。労働党政府の閣僚と高級官僚は20点にも満たないという有り様です。

以上は現時点での信頼度ですが、これを2003年(イラク戦争の年)当時の数字と比較すると、信頼感が向上しているは裁判官(+2)だけで、あとは大なり小なりすべて下落(マイナス)となっている。興味深いのは下落の度合いで、最悪がITVのマイナス28、その次が「高級紙」(信頼度40点)のマイナス22、BBCでさえもマイナス19という具合に、メディアへの信頼度が最も落ちているという点。

信頼失墜という意味では、警察幹部は20、警官が16、労働党閣僚が11ポイント、教師は11、チャリティ関係者は10、それぞれ信頼度を落としている。尤もこの種の傾向は英国に限ったことではなくて、アメリカ人の6割が政府を信頼していないし、ヨーロッパ諸国では、政府・政党に対する信頼度15%というひどい数字になっているのだそうです。

で、なぜこのような現象が起こっているのかという点について、ロンドン大学のLord Layard教授は「資本主義・グローバル化・行き過ぎた個人主義(capitalism, globalisation and rampant individualism)が他者への不信感を生んでいる」と言っています。

The Economistはさらに「政府が国民を信用していないから、国民も政府を信用しない」として、町中に設置された監視テレビカメラを例に挙げています。相互不信(mutual suspicion)ということ。

ところで、24職業のうち信頼度最低はというと「大衆紙」で10点以下、ビリから2番目は「不動産屋」で10点強となっています。

  • 信じて疑わなかったものが、実はあてにならないのだ、ということは最近の日本でもさんざ経験していますよね。この調査でちょっと意外な気がするのは、教師に対する信頼度が以前よりも低いとはいえ、いまだにかなり高いってことですね。サッチャーさんの時代に始まった「教育改革」の波の中で、教師に対する風当たりはかなり強かったはずなのに・・・。
  • 仕事柄、私にとって面白いのはメディア部門の信頼度です。大衆紙は殆ど信用されていないのに、the Sunなどは相変わらず300万部という大きな部数を誇っている。「読者は多いけれど信用されていない」ように見える状況はどのように理解すればいいのか?
  • 政治家や官僚への信頼感も惨憺たる有様ですが、その理由の一端として、メディアがこれらの人たちを「信用できない人たち」として描くことが多いから、ということは言えると私は思うのですよ。テレビメディアの信頼度が高いということは、テレビで悪口を言われて評判を落とすことが多いということでしょうね。どこか日本と似ている。 死んだジャーナリスト、アンソニー・サンプソンは、「このような状況下では、優秀な若者が政治の世界に入りたがらず、それが政治の質を落とし、民主主義の危機に繋がっている」と言っています。
4)北朝鮮:オルブライト元国務長官の見方

アメリカのNew Perspectives Quartely(NPQ)というサイトを見ていたら、クリントン政権のときに国務長官だったMadeleine Albrightさんが、北朝鮮の問題について、インタビューを受けて語っていました。メッセージは「北朝鮮とも話し合って外交関係を作れ」というもので、「外交関係を樹立することは脅しに屈することではなくて、話し合いのチャネルを開くということなのだ」ということのようです。この人はアメリカの外交官では唯一、金正日氏と直接会ったことのある人物です。

インタビューの全文はここをクリックすると読むことができます。ここでは一ヵ所だけ紹介します。それは北朝鮮との対話の可能性について述べている部分です。

NPQ:北朝鮮に核放棄させて元に戻させることは可能か?それとも我々にできることは、核を持った北朝鮮を囲みこむことまでだと思うか?
Is it possible now to "walk back" North Korea from having nuclear weapons? Or is the best we can do now is just to contain it?

Albright:私は北朝鮮を元に戻すことは可能だと思う。リビアは核を破裂させる前にギブアップしたではないか。なぜ彼らはそうしたのか。部分的には経済的な理由があるし、孤立状態のリビアが世界と再び繋がることを望んだということもあるだろう。リビアではカダフィが唯一の支配者であったし、彼の気持ちが変わることはありえたのだ。状況は北朝鮮と非常に似ている。
I think it is possible to walk North Korea back. Libya never detonated a bomb, but it did give up its program. Why? Partially it was for economic reasons. Partially it was because it was isolated and wanted to reconnect to the world. Also, Khaddafi was the sole ruler, who could simply change his mind. The situation is very similar for North Korea.

つまり十分な経済的なインセンティブと安全保障の枠組みさえあれば、北朝鮮は核兵器を放棄する可能性はあると思う。北朝鮮と外交関係を持つということは、右翼の連中が言うように脅しに屈するということではない。これは脅しなどではない。外交関係を持つということは、何かに対するお礼の贈り物とか報酬というものではない。敵であれ見方であれ、話をするチャンネルを持つということなのだ。
So, if there is a proper framework of economic incentives and security, I think North Korea could give up its weapons. Opening diplomatic relations is not succumbing to blackmail, as the right wing says. It's not blackmail. Having diplomatic relations is not a gift or reward, it's a channel to talk with enemies and friends alike.

Albrightさんは、このもう少し前の部分で、冷戦時代にアメリカがソ連と結んだSALT (Strategic Arms Limitation Talks:戦略兵器制限交渉)の例を挙げて、北朝鮮とアメリカが武器管理協定のようなものを結ぶのが望ましいというニュアンスのことを言っています。ソ連がSALT違反をしたとアメリカが考えたときにはジュネーブで会談を持つシステムを持っていた。彼女によると、この種の協定を結ぶ相手は敵であって味方ではない(you make arms control agreements with your enemies, not your friends)とのことで、北朝鮮が約束違反をしたときに、それを解決できるだけのシステムを作っておくことが大切だというわけです。

  • 最近の新聞報道などによると、アメリカ政府は安倍さんたちが考えている以上に、北朝鮮との接触・外交交渉を進めようとしているようですね。要するにAlbrightのような意見が主流になってきているように見えます。安倍さんらは、相変わらず拉致が解決しない限り、北朝鮮とはなんらの話もしない・・・という強硬路線のようで。
  • しかし安倍さんらは、それで物事が自分たちが動いてほしいと思う方向へ動くと考えているのでしょうか?以前、日本記者クラブでこの分野の専門家が話しをしたことがある。その人によると、安倍さんはブレアさんを含むヨーロッパの首脳と会談した際に必ず「拉致」問題を持ち出して、支援を要請したのですが、相手の反応はきわめて弱いものであったそうです。理由は簡単で、欧州ではその手のことはいつも起こっているので大して珍しくないから。
  • で、その専門家によると、6カ国協議の北朝鮮以外の参加国からは「拉致が解決しない限り、北朝鮮への援助はしない」という安倍さんの姿勢について、それを貫く限り、北朝鮮の核放棄はない。安倍さんはそれも承知で強硬路線を走っている。何故かというと、日本も核武装を狙っているからだ・・・という見方さえ出てきているのだそうです。
5)短信


免許取得後、3時間で免停に

ブルガリアの首都、ソフィアであろうことか、ドライビングスクールの教師(48才)と教え子(23才)が酒酔い運転で捕まり、教え子は取得したばかりの免許を、教師のほうは運転免許のみならず教える免許も取り上げられてしまった。免許がとれた嬉しさに二人でお祝いの一杯のつもりで行ったカフェで飲みすぎ、へべれけ状態で運転しているのを警察に見つかってアウト。免許取得3時間後のことであったそうです。

  • で、へべれけ運転をしていたのは、23才になる教え子の方です。

280万ポンドの使い途

Daily Mirrorによると、12年前に宝くじで280万ポンド(約6億円)を当てたのに、今では元の生活に戻ってしまった人が、プリマスにいるそうです。Michael Antonucci(58歳)氏がその人なのですが、280万ポンドの主な使い途を紹介すると、昔の修道院を買い取るのに75万、家具店を開くのに30万ポンド、水辺の高級アパートを買うのに30万などなど。「細かいところ」では、ロックバンドを始めるための4万、トップレスモデルの女性との結婚式に1万ポンドなんてのもある。要するに殆ど使ってしまったらしいのですが、「大富豪として墓場へ行っても仕方ないんじゃない?(You don't want to die as the richest man in the graveyard, do you?)」と言っております。

  • 名前からすると、この人はイタリア系なんですかね。ちなみにトップレス嬢は22歳、彼女との結婚は3ヶ月も持ったというから素晴らしい!?で、彼の「元の生活」はというと対米国向けのセコハン家具の輸出なのだそうです。

メニューにも版権?

レストランのメニューの呼び方にも版権があるんでしょうか?北ヨークシャーのリッチモンドという小さな町のパブが、昨年のクリスマス特別ディナーとしてFamily Feast(家族でご馳走)という名前の食事を用意したところ、あのケンタッキー・フライド・チキン(KFC)から、同じ名前のメニューがKFCでも使われているというクレームがついた。が、最近になってKFCから訴訟取り下げの連絡が入ってパブ側でもほっとしているんだとか。KFCのスポークスマンは、この事件について「思った以上に波紋を広げてしまった」と当惑気味なのだとか。訴えられたパブ側は「KFCの関係者をディナーに招待した」と言っているそうです。

  • 確かにFamily Feastなんて、どこでもつけそうな名前ですよね。このニュースはDaily Mirrorが伝えているのですが、KFCの場合は、単にチキンから揚げとフライドポテトの組み合わせのことらしい。パブの側の料理が何であったのかは分かりません。でもKFCのそれって余り「ご馳走」(feast)とも思えませんね。
6)むささびの鳴き声


▼新聞・雑誌の記事にはしょっちゅう出てくるのに、私自身がどうしても使えないカタカナ言葉に「イデオロギー」というのがあります。「教育現場にイデオロギーを持ち込むな」とか「ネオコンとリベラルのイデオロギー対決」等など。似たような言葉に「思想」「哲学」「考え方」「価値観」などがあり、それなりに分かったような気がしており、自分が書く文章の中でも使ったことはある。でも「イデオロギー」だけはどうにもならない。

▼で、英国の新聞のサイトを見ていたらSimon Jenkinsという政治評論家がThere is no Blairism. An 'ism' needs a coherent set of ideasという見出しのエッセイを寄稿しており、「この世に"ブレア主義"というものはない。"主義"というからには"首尾の通った一連の考え方"が必要だ」というわけです。ひょっとすると、このismてえのがイデオロギーにあたるんだろうか?

▼このエッセイの中で、Jenkinsは"首尾の通った一連の考え方"について、「ある計画を一定の方向に持って行くだけの能力を有したイデオロギーのことを言う」(an ideology capable of driving a programme in a particular direction)と定義しています。Jenkinsが言いたいのは、ブレアさんが首相になる約20年前に首相になったマーガレット・サッチャーにはThatcherismというものがあって、ブレアさんはThatcherismを引き継いだに過ぎないということです。

▼サッチャーさんには、首相としての自分が、英国という国をどのような方向に引っ張って行こうかということについて、明確な考え方があったけれど、ブレアさんにはそれがなくて、その場その場で適当な言葉を使って切り抜けるというやり方で最後まで来てしまった(Blair in office has taken things as he found them, tootling along until the dying fall of his departure)というわけです。

▼この記事に見る限り、Simon Jenkinsはイデオロギーを「人々を引っ張っていくことができるだけの首尾一貫性を持った考え方」という意味として使っているようですな。つまりイデオロギーてえものは、どちらかというと政治の世界における主義・主張ってことなんですかね。だからvegetarian(菜食主義者)のような個人的な事柄における主義のことはイデオロギーとは言わない?

▼確かにブレアさんの場合、演説上手で人を惹きつけるようなところがありましたよね。でもあとからよく読んでみると、実は余り大したことは言っていないということがあった。「私は誰がなんと言っても、天地神明に誓って、一点の疑問の余地もなく、1+1は2であると申し上げたい!」という感じですね。このあたりのことについては、また別の機会に書かせてもらいます。

むささびジャーナルへのメッセージ