え〜っとあの映画、なんてったっけかなぁ?英国のナントカ・イシグロって作家が書いた小説を映画にした、あれ。そお!カズオ・イシグロの「日の名残り」(The
Remains of the Day)は英国の執事が主人公でしたよね。アンソニー・ホプキンスが主演だった。
で、いま英国(イングランド)の執事さんが世界的に不足しているんだそうですね。英国執事組合(Guild
of Professional English Butlers)によると、現在英国内にいる執事の数はおよそ5000人なのですが、プロの執事になろうという人が不足しているんだそうです。
ここ10年ほどで特にネット関係でお金儲けをしたミリオネアからの需要が高いわけですが、英国だと年収平均3万ポンド(約700万円)なのが、アメリカへ行くと年収25万ポンドの執事もいるんだとか。ずいぶん違いますな。
執事というとマルチタレントであることが要求されるわけですが、毎朝の新聞にアイロンをかけるなんてのも仕事らしい。
が、なんつっても、英国人執事に求められるのは「問題が起こっても冷静・沈着に対応する能力」(calmness in the face
of adversity)で、きりっと結んだ唇(stiff upper lips)から出る「よろしゅうございますな(very good,
sir)」という言葉はこれからも生き残るであろうとのことです。
イラク戦争開戦当時には「ブッシュのプードル犬」などと悪口を叩かれたブレアさんですが、最近(6月2日)のThe
Economistに掲載されたブレアさんの寄稿エッセイを読むと、英米関係・欧米関係についての考え方がよく分かります。
ブレアさんが憂慮しているのは、英国内の意見として見られる「孤立主義」の傾向だそうで、これはメディアや政治家の間において「対欧懐疑主義(Eurosceptics)」と「対米独立外交路線(independent
foreign policy from America)」という形をとっている。それではどこと同盟を組むのか?ということになると、中国やインドとの「新戦略的関係(a
new strategic relationship)」を考えるべきだ、というわけですが、その際に英国がこれまで依拠してきたアメリカや欧州との繋がりをバイパスすべきだと言っている(とブレアさんは主張している)。で、ブレアさんは次のように主張しています。
現実的になってもらいたい。もちろん中国やインドとは英国なりの関係を保つだろう。しかし英国が中国やインドに対して影響を与えることができるのは、欧州やアメリカとの強力な同盟関係にあるからこそなのだ。(Get
real. Of course we will have our own relationship with both
countries. But we are infinitely more influential with them
if we have two strong alliances behind us.)
次に欧州内において「これからもアメリカに依存し続けるのか?」(is
it worth it to continue such reliance on America?)という懐疑主義的な意見についてブレアさんは「アメリカの政治指導者たちが欧州を重要度ナンバーワンの仲間として見ているのかどうかを自問してみろ」(We
would be better asking whether the political leaders in America
still see Europe as their first port of call)と言っている。
彼によると、アメリカとヨーロッパは同じ価値観を共有していることをはっきり認識すべきであり、大西洋を超えた同盟(trans-atlantic
alliance)が必要である。が、そのためには欧州自体が一致団結して「強いヨーロッパ」を形成していなければならない。弱いヨーロッパは、アメリカにとって頼りにならない同盟相手(A
weak Europe is a poor ally)であるというわけです。であるゆえに(アメリカとの強力な同盟関係が必要であるがゆえに)、EU加盟国間の緊密な協力関係が必要なのだ、というわけです。
中国やインドはそれぞれの人口がEU全体の3倍もある国なのだ。そのような国とやっていくためには他のどのような考え方(つまりアメリカと強力な同盟関係を保つということ)以外はすべて時代遅れというものなのである。(In
a world in which China and India will each have a population
three times that of the EU, anything else is completely out
of date.)
ところで、The Economistに掲載されたエッセイの中で、ブレアさんは「我々は自分たちの価値観のための立ち上がらなければならない」(We
must stand up for our values)というわけで、得意の(?)価値観論を展開しております。イスラム過激派によるテロとの戦いに関係して、次のように訴えています。
民主主義や自由というものが「西側諸国」の考え方であり、これらの考え方とは無縁の国々や人々に間違って押し付けようとしている、という言い方ほどバカバカしいものはない。自由や民主主義と無縁の政府はあるかもしれないが、国民がこれらに無縁であるということはない。民主主義廃止を投票で決めたところなどあるだろうか?言論の自由よりも秘密警察の方がいいなどと考える国民はいるだろうか?There
is nothing more ridiculous than the attempt to portray "democracy"
or "freedom" as somehow "Western" concepts
which, mistakenly, we try to apply to nations or peoples to whom
they are alien. There may well be governments to whom they are
alien. But not peoples. Whoever voted to get rid of democracy?
Or preferred secret police to freedom of speech?
- ところでThe Economistに掲載されたブレアさんの寄稿文をお読みになりたい方はお知らせください。
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