musasabi journal
発行:春海二郎・美耶子
第82号 2006年4月16日 

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82号のむささびジャーナルです。 プロ野球のパ・リーグをご存知で?私が贔屓にしている西武ライオンズが開幕前の大方の予想(楽天とビリを争う)を大いに裏切って、快調に飛ばしております。ところで最近のプロ野球では試合前に国家演奏と国旗掲揚なるものがあります。いつごろから始まったのですかね、あれは?場内アナウンスが「皆様、ご起立ください」と言うと、私はトイレに行くことにしております。自分だけ立たないと妙な眼で見られる(ような気がする)のも気持ち悪いし、かと言って、無理矢理起立させられるのはもっと不愉快だし・・・というわけで、消極的抵抗運動のために、したくもないトイレに行っております。

目次

1)チョコレートと英国人

2)ネオコンのルーツ

3)極東ロシアの「北朝鮮奴隷」

4)中国の英語熱

5)WikipediaBritannica

6)女王を知るための80項目(短信に変えて)

7)むささびの鳴き声 :編集後記

1)チョコレートと英国人

4月13日付けのGuardianが英国人のチョコレート好きについての調査を報告しています。Datamonitorという組織が発表したもので、英国はヨーロッパではダントツのチョコレート好きの国なのだそうです。

2005年の1年間で英国人が食べたチョコレートは平均一人当たり10kg、これはイタリア人のほぼ5倍の量なのだとか。英国人に次いで多いのがドイツ人の8・1kg、フランス人の6・8kgなどときて、スペイン人がぐっと下がって3・9kg、イタリア人が2・2kgなのだそうであります。

というわけで日本はどうなのかと気になったので、日本チョコレート・ココア協会なる組織のサイトを見たら、2004年の数字として1人あたりの年間消費量は1・84kgとなっていた。英国などに比べるとかなり低いですね。ちなみにこのサイトでは、ヨーロッパ一の消費国はスイスで、一人当たりの消費量は9・6kgとなっています。

ところでチョコレートの消費量をkgで言われてもピンとこないですよね。英国でイチバン人気はSnickersという商品らしいのですが、これウチの近所のセブンイレブンで売っているのを調べたら1個が60gとなっていました。つまり英国人が1年間でSnickersを約160個以上も食べるのに対して日本人は約30個ということになります。

  • 私もチョコは嫌いではないし、Snickersも買うことがあるけれど、おそらく1ヶ月にせいぜい2個ってところですかね。1年間で24個。一月で2個。英国人の平均個数である年間160個は信じられない数字です。一ヶ月に10個以上も食べるのですか!?
  • ところで英国ではこの夏、MonopolyだのScrabbleのようなボードゲームをチョコレートで作って売り出そうという動きがある、とGuardianの記事は伝えているのですが、それって売れるんですかね。ベタベタして気持ち悪いのでは!?

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2))ネオコンのルーツ

Francis Fukuyamaという人が書いたAmerica at the CrossroadsYale University Press)という本をアマゾンコムで取り寄せて読んでいます。9・11以後のアメリカの外交政策について書かれているのですが、当然のことながら「外交政策」などというものについて書かれた本について、私などが感想を云々することはできません。

何故この本を読んでみる気になったのかというと、イラクにおけるどうにもならない(としか思えない)行き詰まりを見るときに、どうしたって「何故アメリカはイラクを攻撃するようなことをしたんだろう?」という素朴な疑問があったからです。ブッシュが悪いとかアメリカが傲慢だとかいうのは構わない(私だってそう思う)けれど、「何故?」というところが分からないと気分が悪くて仕方ない。

というわけで読み始めたのですが、最初の部分で、この戦争の推進役といわれる、いわゆる「ネオコン」(neoconservatives)と呼ばれる人たちのルーツが紹介されており、これは個人的には極めて面白いと思いました。Fukuyamaさんによると、「ネオコン」の思想的なルーツは1930年〜1940年代のニューヨーク市立大学で学んでいた一群の学生たちにあるのだそうです。彼らはインテリなのですが、家柄としては労働者階級であり、(全てではないにしても)その多くがユダヤ系の移民たちであった。彼らはインテリではあったのですが、「家柄」の関係もあって、ハーバードとかコロンビア大学のような「名門大学」には入れなかった人たちであったのだそうです。ちょっと屈折しているわけですね。

彼らのもう一つの特徴は強烈な反共産主義者であったのですが、面白いのは元来は社会主義を信奉していたのに、スターリン時代のソ連の現実に幻滅を感じた「左翼くずれ」(disillusioned Left)であったという点であります。つまり正しいと信じていた思想が、現実には全然正しいとは思えないものとなったことに直面して「転向」したというわけです。ここにも屈折があります。

彼らの反共主義は冷戦が終わって、共産主義という敵がいなくなるとともに消えてしまう。それがどのような経緯を経て、イラク戦争の推進思想になるのか、についてはもう少し読まないと分からない(申し訳ない)のですが、Fukuyamaさんによると、彼らの現在の思想的な特徴として、外国との関係に「モラル」を持ち込むことにある。それも軍事力をバックにしたモラルです。

さらにもう一つの特徴としてregime change(体制変革)という考え方もある。この場合の「体制」は外国の体制のことです。「アメリカの外交政策は、自由と民主主義というアメリカの価値観・モラルを広めることを主なる目的とするもので、そのためには相手国の体制を変革することもやぶさかではない」という発想です。こういうのを「博愛的覇権主義」(benevolent hegemony)というのだそうです。サダム・フセインのような残虐極まりない独裁者の手からイラクの人たちを「解放」するのだというわけです。

  • ネオコンのルーツなどは知る人ぞ知るで、知らないのは私だけであったのかもしれませんが、この本について、私が自分のような知的レベルでも面白いと思ったのは、以上のようなポイントです。現実に幻滅した社会主義者が極端な右翼主義に走るということは、どこにでもあるものですね。アメリカにもあったんだ。名前を出すと差し障りがあるので言いませんが、私と同年輩もしくは少し年上の世代には「昔左翼・今右翼」という人がかなりいるように思います。それから英国の評論家のPaul Johnsonという人も(私の知る限りでは)そのような感じであります。いずれもとびきりのインテリで、私なんかとは全く違う人々であります。
  • それから「自由と民主主義」という絶対的な「善」のためには、外国の体制を変革することも許されるという「博愛的覇権主義」は、どこか英国のブレアさんに通じるものがあるように思えてならないという意味で面白い。ブレアさんは、何年か前にシカゴで「国際社会のドクトリン」(Doctrine of International Community)というタイトルの演説をして「国際社会に害悪をもたらすような独裁者は排除してもいい」というニュアンスの主張をした。サダム・フセインだのミロセビッチだのという人たちがこれにあたるのですが、彼らを排除するためには「爆撃もやむを得ない」というわけです。

で、America at the Crossroadsという本ですが、著者が言いたいのは、アメリカの外交が余りにも他国との協力を考えずに軍事力にのみ頼りすぎているということで、ブッシュさんを批判しております。特に「イラク」については、結果についての計算が余りにも甘すぎた。それはネオコンと呼ばれる人たちが犯した過ちであるということのようです。

ちなみにThe Economistの書評によると、「アメリカのイラク政策が間違っていたというFrancis Fukuyamaの主張は大いに説得力がある」としながらも、「9・11テロについて(当時の)アメリカ政府の政策チームが、現在のFukuyamaのようにテロの脅威に対して”楽観的”になれただろうか」(Could the team in the White House on September 11 have been as sanguine about the threat as he is?)とも言っています。あの当時の状況からすれば仕方なかったんじゃない?ということのようです。

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3)極東ロシアの「北朝鮮奴隷」

韓国・朝鮮人のことをロシア語でKoretskyというんですね。最近、Le Monde Diplomatique(英語版)のサイトを読んでいて分かりました。LMDの記事はAlain Devlpoという記者が書いたもので、極東ロシアにおける北朝鮮労働者の実態レポートです。記事のタイトル「北朝鮮の奴隷たち」とあるように、北朝鮮から職を求めてきた人々にとって現実はかなり厳しいようです。

ハバロフスクの北にあるアムール地方には森林がたくさんあり、北朝鮮からの労働者はこれらの森林からの木材切り出し人として働くケースが多い。何せ極東ロシアはロシア全体の33%という面積を占めているにもかかわらず、住んでいる人の数という点ではロシア全体の5%にすぎないのだそうです。だから森林の伐採作業についても働き手を見つけるのが大変なわけです。

この記事によると、20世紀において、北朝鮮から極東ロシアへの労働移民の歴史は3つの段階に区切ることができるそうです。第一の波が起こったのは第二次世界大戦終了と朝鮮戦争の終わりという時期で、ウラジオストックなどにおける魚の処理工場を中心に働いていた。その当時で約25000人の北朝鮮労働者とその家族がソ連に住んでいたのだそうです。

第二の波は1966年、ソ連のブレジネフと北朝鮮の金日成がウラジオストックで行った秘密会談の後に起こったとされています。この会談で、北朝鮮がソ連の森林伐採事業の助けるために年間15000〜20000人の労働力を提供することが約束された。当初はこれらの北朝鮮労働者の多くが、囚人であったそうです。

第三の波は現在起こっているわけですが、これはロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正日との間の会談に関係がある。ロシアがまだソ連であったころに北朝鮮に対して支援の名目で行った貸付について、金正日が自国の経済状態を説明して債務の帳消しを求めたのに対するプーチンの答えは「問題外」という冷たいものであったそうです。そこで北朝鮮としては、借金返済の代わりに労働者を送り続けると約束せざるを得なかった。

ただ最近の北朝鮮からの労働者は囚人ではなく、職を求めてくる普通の人々で、年間約1万人の北朝鮮人が労働ビザを発給された合法的の労働力です。ただそのような合法労働者がどのような条件下で働いているかについては、秘密のベールに覆われているのだそうです。

LMDのAlain Devlpo記者は極東ロシアにいる韓国のキリスト教の牧師さんから聞き出したハナシによると、森林伐採の労働キャンプで働く北朝鮮労働者の労働時間は一日16~17時間、休みは新年、金日成および金正日の誕生日そして北朝鮮労働党の結成記念日を含めて、1年に1週間。それから労働ビザでロシアへ来るためには、結婚して家族がおり、しかも家族は北朝鮮に残していくことが条件になるのだとか。Alain Devlpo記者にハナシをした牧師さんによると、これらの家族は、一種の人質とされるのだそうです。

このレポートを全部紹介するのは大変なのでやめておきますが、最後に一つだけ。現在のロシアにおける森林伐採は民間企業がビジネスとしてやっているのだそうで、ロシアの森林からとれた木材でも、ベストの品質のものはロシア国内で売られ、中くらいの品質のものは北朝鮮へ行き、残りは中国と日本へ売られるのだそうです。

  • 4月14日付けの朝日新聞に「ロシアの森 中国特需」という記事が出ていました。中国はとにかく大量の木材をロシアの森から買っているのですが、実際の購買量や販売経路などに不透明な点が多く、「盗伐」の報道さえもあると報道されています。
  • で、朝日新聞の記事によると、日本で使われている割り箸の90%が中国からの輸入なのだそうですが、中国の業者が安いロシア材を使って安く輸出している。ただ中国の輸入増大でロシアの原木の値段も、1立方米60ドルだったものが100ドルにまで上がってしまったのだそうです。ちなみに割り箸の原料はシラカバなんですね。

LMDの記事(英文)をお読みになりたい方はここをクリックすると出ています。

4)中国の英語熱

4月15日付けのThe Economistによると、中国では英語教育が12歳からであったのが、最近9歳にまで引き下げられたのだそうです。北京オリンピックのこともあるのでしょうが、英語熱は燃え盛っており、この分野の市場は年間600億ドルで世界最大らしい。20年もすると、英語をしゃべる中国人の数は、現在の英語圏の人口を上回るのではないかとさえ言われている。

600億ドルの大半が辞書、教科書、補助教材などで占められているのですが、外国企業は中国の企業に対して出版ライセンスを与えるという形式のビジネスをしなければならず、利益そのものがどの程度あがるのかは疑問であるとのこと。それにしてもMacmillanの場合、1億冊の教科書を売っているのだそうです。推定によると、中国における書籍販売の5分の1が英語の教材であるという、信じられないような数字になっています。

当然、私立の英語学校もたくさんできており、全国で5万もあるのだそうであります。そこで目立つのは生徒の低年齢化で、English Firstという学校の場合、かつては生徒の大多数が成人だったのに、今では70%が子供であるといいます。もちろん5歳から英語を教えている幼稚園もたくさんある。ちなみにEnglish Firstの場合、中国に進出してから10年たつのだそうですが、直営は68校のうちわずか4校で、あとは全て名前と教材を提供するフランチャイズ校ということで、まだ投資を取り戻せていない。

The Economistによると、この分野における日本と中国の決定的な違いは、日本では英語圏からのネイティブ・スピーカーを受け入れているのに対して、中国政府は外国人の教師は歓迎していない。どころか数年前までは、外国人を英語教師に雇うと罰金を課せられていたのだそうです。

同誌はまた、中国の英語熱は盛んには違いないが、商売になるほどオープンな市場になるかどうかは「中国共産党しだい(only if China's Communist Party allows)」としており、共産党は余り乗り気ではないとのこと。その理由として「英語教材や教師を許すと、それと一緒に西洋流の学び方や考え方も入ってくる。それが共産党の権威にとって将来の脅威になりかねないからだ」(It is reluctant because, along with English textbooks and teachers come western ways of learning and thinking-ways that might one day threaten the party's authority)としています。

  • 日本には昔からJETなる政府のプログラムがあって、アメリカやイギリスなどの英語圏の若い人が来て、公立学校で英語を教えたりしているのはご存知ですよね。ネイティブ・スピーカーを歓迎しない中国共産党の態度の良し悪しはともかく、日本がやっているJETプログラムは、日本の子供たちの英語力向上に本当に役に立っているのでしょうか?はっきり言って、私には疑問です。尤もJETプログラムは日本を知る人を増やすという意味では、結構役にたっていて、駐日大使館の外交官でも「元JET」が多いですね。
  • このThe Economistの記事を読んで、日本の文部科学省(中教審)の人たちが、小学校から英語を、と主張する理由の一端が推察されるような気がしましたね。ビジネス界もこの方針には賛成なのだそうです。要するに中国や韓国に負けたくないってことですよね。
  • 先日、ラジオを聴いていたら、小学生から英語を教えることの良し悪しについてディスカッションをしていたのですが、英語教育推進の意見の一つとして、トッフルの英語テストについて、日本人の成績はアジアの中でもビリから二番目という指摘がありました。ちなみにビリは北朝鮮なのだとか。 このことについて、日本で英語を教えるアメリカ人に聞いてみると、トッフルに対する態度が日本人と他のアジアの人々(特に中国や韓国)では非常に違うのだそうです。「日本人以外の人々は、就職に有利だというわけで、必死になっていい点をとろうと努力するが、日本人の場合は自分の英語力はどのくらいなのか、"ちょっと試してみよう"という軽い気持ちで受験するケースが非常に多い」とのことでありました。つまり血眼になっていないってことです。いいんじゃありませんか、それで?
5)WikipediaBritannica

オンライン百科事典のウィキペディア(Wikipedia)はご存知ですよね。インターネットでひける百科事典で非常に便利です。日本語版は約13万項目出ているのですが、英語版になると100万項目を超える。しかもタダで使えるわけですから、流行って当り前で、私なんかもしょっちゅう使います。ウィキペディアの場合、掲載項目は世界中のボランティアによって提供される。自分の好きな項目を登録すればそれが掲載されるというわけ。

でも百科事典といえばなんつったってBritannicaでしょう。最近科学誌の Nature BritannicaWikipedia のどちらが正確かという比較をしたのだそうです。The Economistに出ていたのですが、Natureの編集部が適当な項目を選び、それぞれの記述をその分野の専門家に見てもらうというのが企画でした。

その結果、予想されたとおりBritannicaに軍配が上がった。そこまでならよかったのですが、この調査の過程で、実はBritannicaの記述にも結構誤りがあることが判明したそうで、NatureによるとBritannica の正確度は、Wikipediaよりもたった30%しか上でなかったのだとか。

面白くないのがBritannicaで、直ちに自らの調査チームを作ってNatureの調査そのものを仔細に調べるという作業を行った結果、それが「誤りで誤解を生みやすい」(wrong and misleading)調査であるとして、英国のTimesやアメリカのNew York Times紙上に意見広告まで掲載した。

Wikipedia との比較はともかくとして、Britannicaの記述自体の正確さについては、42項目の中に123の誤りが見つかったというのがNatureの主張。この場合の「誤り」には事実の誤りもあれば「誤解を生みやすい記述」もあるし、書いてあるべきことが抜けているというomissionという誤りもあるというわけです。Britannicaの場合はプロがそれぞれの記事を「編集」して掲載しているのに対して、Wikipediaの場合は記述が長くなり、omissionの可能性は少ない。それに読みやすさという点では、もちろんプロの手になるBritannicaの方がうえであることは間違いない。

The Economistは、この二つの百科事典を比べるのは「リンゴとミカンを比較して良し悪しを云々するようなもの(comparing apples with oranges)」というわけで、Natureの調査企画そのものを皮肉って、次のように結論しています。

Most people don't need an expert to tell them that, while Britannica is readable and reliable, Wikipedia is a fatantistically useful source of rough and ready information. And, on top of that, it's free. (Britannicaが読みやすくて信頼できるのに対して、Wikipediaがおよその情報をすぐに入手できると言う意味で極めて役に立つものであることは、専門家に言われなくても分かる。しかも(Wikipedia)はタダなのだ。

  • で、ひょっとしてWikipediaをお使いになったことのない人のために、日本版はここを、英文版はここを、それぞれクリックすると出てきます

というわけであります。殆どが英米の人物の演説であるのがタマにキズですが、それにしてもよく集めたものだと感心してしまう。しかもこのような文献がいとも簡単に入手できてしまう。変な時代になったものですよね。ただ実に厖大な情報が簡単にアクセスできてしまうので、私のような人間の場合、情報洪水に溺れてしまうのではないかという一種の恐怖感のようなものを持ってしまうことも事実ですね。

それからもう一つ溜息がでてしまうのが、英語による情報量の圧倒的な多さ加減です。Wikipediaにもいろんな言語があるのですが、言語によって掲載項目の件数が全く違う。英語版は最近のバージョンで100万項目を超えているのに対して、10万件台というのが、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、フランス語などの欧州言語と日本語、1万〜10万件というのがアラビア語、ヘブライ語、中国語、韓国語などときて、1万以下になるとアイスランド語、タガログ語、ベトナム語等などという次第。インターネットの情報世界が如何に英語中心であるかが分かりますね。

6)女王を知るための80項目(いつもの短信に変えて)

エリザベス女王が80歳になるというわけで、4月11日付けのGuardianのサイト版に80 things the palace wants you to know about the Queenという記事が出ていました。バッキンガム宮殿が発表したエリザベス女王に関する諸々80項目というわけです。英国の新聞や雑誌は「・・・についてのXX項目」という企画が好きですね。まさかここで80項目全部紹介するわけに行かないので、全部知りたい人はバッキンガム宮殿のサイトを見てもらうとして、いくつかアトランダムに取り出してみると:

●エリザベス女王の生年月日と出生地:1926年4月21日、ロンドンのBruton Streetで生まれたのだそうです。(正確には17番地となっていますが、これはどういうところなのでしょうか?)

●女王になったのが1952年、それ以来受け取って手紙類の数は約300万通。

●女王主催のガーデンパーティに出席した人の数は約110万人。

●クルマの運転を習ったのは1945年、陸軍入隊のときなのだそうであります。

●英国王室を代表して初めて中国を訪問したのは1986年(訪日は1975年:むささびの註)

などなど、いずれも「だからなんなのさ So what?」といいたくなるようなどうでもいい話題ばかりありますが、そこはGuardianのこと、バッキンガム宮殿の発表にはない事実もいくつか掲載して、抵抗(?)を試みております。例えば・・・。

●2005年に公務遂行のために政府からもらったお金(grant)は3670万ポンド。(1ポンド200円あたりで計算してください)

●1964年当時の調査によると、30%の英国人が「女王は神に選ばれた存在」と信じていた。が、2000年の調査では「王室がないと英国は悪くなる」と答えた人は44%にすぎない。(つまり半数以上が王室がなくてもいいと考えていた!?)。さらに2001年の調査では、王室が「お金に値する」(value for money)と考える人は10人に1人、「王室はよく働いている」と評価したのは4人に1人であったそうです。

●女王の質素・倹約ぶりは有名だそうで、宮殿のスタッフに「廊下を歩くときは真中ではなく、端を歩け」と命令したのだとか。理由は勿論「カーペットがいたむから」。(これはそれほど悪いハナシではない)

いずれにしても、大したこっちゃないか。失礼しました。

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7)むささびの鳴き声(編集後記)

●日本新聞協会という組織が出している『新聞協会報』という新聞の4月11日号に作家の柳田邦男さんが「危機の活字文化とメディア」というタイトルで行った講演の抜粋が出ていました。その中でインターネットの普及と新聞の今後について語った部分があり、私としてははっとしてしまいました。「新聞を購読せず、ニュースは携帯サイトで十分という人がいる」と言ったうえで、携帯サイトのニュースと新聞記事の「致命的な違い」として「新聞には読む人の関心事以外のニュースも載っており、そこには世界がある」とおっしゃっています。

●もう一度言いますが、これには、はっとしましたね、私は。「自分の関心事だけを見ていては、世界が見えない」というのは本当ですよね。インターネットのお陰で、とてつもない量の情報にアクセスすることが可能になったこと自体は、悪いことではないけれど、情報にアクセスしようとするとき、眼が点になっているような気がするのは、そういうことなのですよね。

●柳田さんは、ITという新しい技術の良さは否定しないけれど、「負の側面を見たうえで取り入れること」の大切さを語っておりました。実は柳田さんのこのコメントにしても、私が『新聞協会報』という印刷物を「何気なく」読んでいたら眼に入ってきたわけで、インターネットでは、このような現象って(私に関する限り)殆ど起こらない。お陰で自分の世界が少しだけ広くなったというわけであります。

●中教審なるところが「国際競争に打ち勝つために」小学校からの英語導入を決める一方で、それに反対して「日本語の美しさや武士道を教えろ」と主張する『国家の品格』なる書物が殆ど200万部も売れている。かと思ったら、自民党と公明党が教育基本法に盛り込む「愛国心」がらみの文言で合意したという記事が出ておりました。

●大の大人が教育問題で侃々諤々(かんかんがくがく)やっているわけですが、心底情けないのは「とりあえず生きていればいいのだ」というニュアンスの考え方が全く見られないことであります。もう一度言わせてもらいますが、英語なんか出来ても出来なくても死にはしません。それから「1000円からお預かりしま〜す」というちょっと変わった(と私には思える)日本語を使うコンビニのお姉さんたちだって、真剣に生きているのでありますよ。私の弟なんか俳人・高浜虚子をタカハマ・ウソコと読んで大笑いされたけれど、まだ生きています。それも結構楽しく生きております。

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