雨・雨・雨・・・でいい加減うんざりしていたら、北朝鮮のミサイル発射とかで、ちょっとびっくりしたのであります。ただもうすでにトンボが飛んでいるのを見ました。やけに早い。ワールドカップについてですが、私の予想によると「フランス」が優勝します。ダメモトの強さにはどこも勝てない。
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目次
北朝鮮によるミサイル発射について、7月6日付けのThe Economistが社説を掲載しています。Kim
Jong Il is a threat to stability in Asia. He should be resisted--especially
by China(金正日はアジアの安定に対する脅威であり、彼を止めなければならない。特に中国の役割が大事だ)というイントロで始まるもので、北朝鮮を取り巻くこの地域が「危険なライバル関係にある国でいっぱい」(a
region full of dangerous rivalries)であり、今回のミサイル発射が、そのような危険な地域を安定させようとする努力を踏みにじる(incinerate:焼却という意味)ものだとしています。
この記事によると、北朝鮮がミサイルを発射したのは、アメリカが自分たちをイランやインドのような核大国として扱うことを願ってのことなのだそうです。今回のミサイル発射は他国からの経済制裁の可能性などを考えると、気が狂ったとしか思えない行動ですが、金正日氏には彼なりの計算がある(Mr
Kim calculates differently)。つまりミサイル発射をしても中国からの食糧や石油の供給が停止することはないし、韓国からの援助も続く。そうなるとますますアメリカと中国や韓国の間を切り裂くことができる・・・。
この社説の結論と思われる部分のみ書き出して、そのまま訳してみます。
Where things
go from here depends largely on China. North Korea's 1998 test
blew a gaping hole in China's diplomacy in the region. It pushed
Japan into co-operating even more closely with America on security
matters, including on missile defences that some day might be
extended to cover Taiwan. The latest test will reinforce Japan's
readiness to do more in its own defence, and with America. And
it is also a snub to China, which has been convening the six-way
effort.
事態がこれからどうなるのかについては、中国次第という部分が大きい。1998年に北朝鮮がミサイル実験をしたときには、この地域における中国の外交に大きな痛手となった。安全保障の点で、日本がそれまで以上にアメリカとの協力関係を深めることになったことがそれだ。例えば将来は台湾をもカバーするかもしれないミサイル防衛システムなどもその一つと言えるだろう。また北朝鮮による最近のミサイル実験は、れまで以上に積極的に自国の防衛に取り組もうという日本の姿勢をさらに強化することにも繋がるだろう。しかも(日本は)アメリカと一緒になって自主防衛を強化しようというのである。そのこと(日米防衛接近)はまた中国にとっては、困ることなのである。しかも中国は6カ国協議を召集する役割を果たしてきているのである。
The temptation
for a wounded China will be to blame all this on America and Japan.
China does not want to antagonise the unpredictable Mr Kim; and
it is keen to draw South Korea closer in the game of regional
rivalries (both countries have rows with Japan over disputed islands).
The result could be a new round of regional suspicion and rivalry-or
worse.
で、「キズついた中国」としては、これらの事態をすべて日本とアメリカのせいにしてしまいたい気持ちに駆られるだろう。中国としては、何をしでかすのか分からないミスター・キムを敵にはしたくない。中国はまたこの地域におけるライバル争いの中で韓国を自分の方に引き寄せたい(中国も韓国も日本とは領土問題を巡ってもめているのだ)。そうなるとこの地域に新たな猜疑心と敵対意識が生まれる。あるいはもっと悪い結果になるかもしれない。
Alternatively
China could shoulder some real responsibility for security in
East Asia and close ranks against Mr Kim. That should start with
a clear condemnation from the UN Security Council. But it should
go further. Loth to apply sanctions, China props up Mr Kim's regime.
Holding back some of that largesse would show him that he cannot
destabilise the neighbourhood and get away with it. A lot more
than the awkward Mr Kim's future depends on it.
中国にとって、もう一つの選択肢がある。それは東アジアにおける安全保障のためにホンモノの責任の一端を担い、ミスター・キムに対して団結するということである。そのためには、まずは国連安保理事会が明確な非難をするということから始めなければならない。しかしそれだけでは不十分である。中国が経済制裁に消極的な態度をとればミスター・キムの体制を支援することになるのだ。北朝鮮への援助のいくばくかを保留にすることは、「近隣諸国の情勢を不安定にしておいて、そのままで済むということはない」ということをミスター・キムに対して伝えることにもなる。変な人間ミスター・キムの将来などよりもはるかに重大なことがそれにかかっているのだ。
というわけであります。この社説の全文をご希望の際はご連絡ください。
- 朝日新聞7月5日(私の誕生日です)付けの社説は『北朝鮮ミサイル発射 無謀な行動に抗議する』というタイトルで、厳しい調子で北朝鮮のミサイル発射を非難していました。あの日の新聞は各社とも社説は「北朝鮮に抗議する!」と極めてアジテーション的な見出しばかりでした。
- このことについて、NHKのラジオを聴いていたら、メディア評論家という人が「どの新聞も、どこかの政党のビラのようだ」と批判、同じ7月5日、小泉首相が「(ミサイル発射は北朝鮮にとって)なんのプラスにもならない。常に対話の余地は残すつもりだ」という趣旨の発言をしたということについて、「首相の発言の方がはるかに冷静・新鮮でした」と言っておりました。言えてる。
- 確かに朝日新聞の社説は非常に勇ましいものではあったのですが、読んでいて非常に虚しい思いをしましたね。何故か?当り前のことを大声でがなっているのを聴くことの虚しさです。7月5日の時点では、どんなに強い言葉で北朝鮮を「非難」しているようでいて、実は何も言っていない。北朝鮮に抗議なんて当り前でしょ?これからどうするのかってことを読者は知りたいはずなのに。
朝日の社説を読みたい人はここをクリックしてください。
早ければ来年、遅くとも再来年には首相の座をブラウン財務大臣に譲るものと言われている、英国のブレア首相ですが、首相を辞めた後どうするのかということがメディアの話題になっています。何せまだ53才という若さです。隠居ってわけにはいかない。というわけで、the
GuardianのMichael
Whiteという記者が「関係者から聞いた話」に基づいた憶測記事を書いています。
まず噂にのぼったのがアナンさんの後を継いで国連事務総長になるのではということ。クリントン元米大統領あたりは「ブレア事務総長」というアイデアを支持するコメントを行ったりしているし、ブレア氏本人も"I'm
not going for the UN job"(国連の仕事はやらない)と記者会見で否定している。さらにこの職は地域別の持ち回りということになっており、アナン氏(アフリカのガーナ)の次はアジアからということで、韓国、スリランカ、タイなどの人物になるというのがもっぱらの噂。そもそも国連60年の歴史の中で、安保常任理事国の人間が事務総長になったケースは皆無、というわけで「ブレア事務総長」のセンはない、とWhite記者は言っています。
次なる噂として報道されているのが、あのメディア王、ルパート・マードック率いるNews
Internationalに破格の給料で迎えられる、というセン。Daily
Mailという新聞が報道しているのですが、この新聞自体がマードック傘下の新聞なので、これもかなりガセネタ(希望的観測)に近い。7月にカリフォルニアで開かれる、この企業の重役会で講演を行うことになっており、これを引き受けたこと自体がブレアとマードックの親密さ加減を示しているということで、この説にこだわっている人もいるらしい。が、別の噂によると、この招待をブレアが断ると、キャメロン保守党党首に招待が行ってしまうということで、これを防ぐためにブレアさんが参加することになったというのが真相だとか。ただこの企業には、スペインのアズナール元首相も取締役として参加しているらしいですね。
そのマードックですが、自分が経営するオーストラリアの新聞The
Australianのインタビュー(6月29日)で、ブレア首相は次なる総選挙(2009年または2010年)の「少なくとも1年前」には首相の座を退いて、ブラウン財務大臣に首相の座を譲るべきだと語ったと伝えられています。そうすることによって、英国の選挙民が首相としてのブラウンさんの力量を観察したうえで選挙に臨めるからだ、というわけです。
1997年にブレアさんが選挙で勝利したときに、マードック経営の大衆紙、The
Sunがブレア支持を打ち出し、これがブレア勝利の決定打となったことはよく知られています。この新聞はそれまではサッチャー、メージャーの保守党を支持してきたのですから、97年の鞍替えは大いに話題になりました。
で、ブレアさんにとって気になるのは、The
Australianとのインタビューの中で、マードックが次なる選挙では、保守党の若き指導者であるデイビッド・キャメロン党首を支持することもありうると述べたことです。
ちなみにマードックはオーストラリア生まれですが、現在はアメリカ国籍。The
Australianとのインタビューの中で、「次なるアメリカの大統領はヒラリー・クリントンだろう」と述べたらしい。アメリカ版ナベツネみたいな人ですが、何が面白くてそれほどの力を持っているんですかね。
- マードックのこの発言は、BBCのサイトでも報道されているくらいなのだから、かなりの重みがあるってことでしょうね。と思ったら、BBCのサイトへの投書欄に反マードックのコメントがわんさと掲載されておりました。例えば・・・
I
felt that the BBC publicising Murdoch's announcement was as
bad as the announcement itself. Why should any of the media
try to dictate our voting? (マードックの発言内容もさることながら、BBCがそれを伝えるってことも問題だ。メディアが我々の投票を誘導するのはよくない)
I
don't think Murdoch has as much power as he likes to tell himself.
The British public aren't stupid and aren't going to vote one
way or the other just because the morning paper tells them to.
Of course the main problem is that most aren't going to vote
at all..!(マードックなんて自分で考えるほど力はない。英国人はバカじゃない。新聞が何か言ったから、ある党に投票するなんてことはない。そもそも投票に行かないってことも問題なのであるが・・・)
半藤一利さんの『昭和史・戦後篇』(平凡社1800円)は、第二次大戦後の日本(1945年〜1989年)の歴史を語り口調で振り返っているのですが、ずばりこの時代を生きてきた私(1941年生まれ)にとっては、なにやら自分史の本という感じでした。ちょっと長くなるかもしれないけれど、これはと思われる部分だけ書き出してみます。
半藤さんによると、第二次大戦後の日本にとって、国として進むべき方向として次の4つの選択肢があったのだそうです。
1)天皇制を中心として陸海軍をしっかり装備した「普通の国」になること
2)アメリカ的な資本主義からは距離を置いた国家(半藤さんは「社会主義国家」と言っています)
3)軽武装・通商貿易国家(一生懸命働いてとにかく豊かになろう主義)
4)小日本(国際的な一切のごたごたに関与しない文化国家。金持ちでなくてもいい、静かに平和に暮らしていこうじゃありませんか主義)
これらのうち4番目の「小日本」は米ソ対立の冷戦下では殆ど不可能。結果的に日本が選択したのは3番目の「軽武装・通商国家」です。東京オリンピックから大阪万博を経てこれまで、信じられないような貧困から富裕への歴史でした。たったの30〜40年のことですからね。
2番目について、半藤さんによると「社会主義」的ではあるけれど、必ずしもソ連の傘の下に入るという意味ではなく、天皇制なしの「共和国」と言っています。
1番目の選択肢は(半藤さんの解説では)三島由紀夫が切腹までして訴えた国家ということになる。三島由紀夫は死んでしまったけれど、思想としては確実に生きていますね。『国家の品格』という本が200万部も売れているんですから。しかもホリエモンだの村上ファンドだのといった、アメリカ的「拝金主義」が日本人をダメにした、というような意見が圧倒的に力を持ってきている。そこへ持ってきて、中国はケシカラン、韓国は生意気だ、北朝鮮は怖ろしい・・・というわけです。ついでに、と言っちゃ申し訳ないけれど、東京都民が石原慎太郎のような人を知事としてかついでいる。
半藤さんはそのようにおっしゃっていないけれど、私の見るところによると、日本は(3)から出発したけれど、限りなく(1)に近寄っていますね。私自身は戦前の日本(天皇陛下ばんざい!と言っていた日本)のことは身を以ては知らないのですが、現在の社会的な雰囲気として、一人一人の人間の生活や思いよりも「社会」だの「国家」だのを論ずることが重要だと見なされているような気がして、これが非常に気持ち悪い。
- はっきり言って、社会だの国家だのを論ずるのはハナシとしてはとても面白いけれど、それはあくまでも「ハナシとして」という程度のことに過ぎず、そのような立場にない自分には、やはり自分の周囲にしか出発点も終着点もないように思える。背伸びして(背伸びが悪いとは思いません)「国家」だの「社会」だのを論ずるにしても、やはり大切なのは、明日のご飯の方がちゃんと食べられるのかってことだという視点は忘れられませんよね。
半藤さんの本についてもう一つ。1960年代のことなのですが、安保闘争というのがあって、その後で社会党の浅沼稲次郎という委員長?が右翼の若者テロに刺し殺されるという事件がありました。それから、深沢七郎という人が書いた『風流無譚』という小説を掲載した「中央公論」の社長宅に右翼が押し入ってお手伝いさんが殺されるなんてこともあった。
そのときに日本ジャーナリスト会議が「言論機関への暴力に対して、断固たる態度で言論・表現の自由を守れ」という趣旨の声明を出した。これについて半藤さんは,
「まあ、その通りなんですが、こんな声明だけで大丈夫なのかいな、という、非常に寒々しい思いを私たちなどはもっていました」
と書いています。半藤さんはさらに次のように書いています。
「暴力のもとにジャーナリズムは必ずしも強くないのです。戦前、軍の暴力のもとにジャーナリズムがまったく弱かったのと同様で、それは残念ながら、しっかりと認識しておかなくてはいけません。表現の自由を断固たる態度で守らなければならないというのはその通りですが、断固たる態度を必ずしもとれないところがジャーナリズムにはある、それは反省と言いますか、情けないくらいの私の現実認識でもあります」
かなり強烈なメッセージであるけれど、悲しいかな、当たっていると思います。
- 外国のメディアのことは大して知らないけれど、日本の新聞やテレビには「断固たる態度」そのものがない。中央公論の事件とか安保闘争などの時代は、私も学生であったので、わりとよく憶えているのですが、学生の国会突入デモと右翼のテロを一緒にして「暴力は右も左もよくない!」などと言っていたのですからね。
- 悲しいけれど、半藤さんの言うとおり、メディアは暴力には本当に弱い。尤も暴力に強い組織なんて、警察か暴力団しかいないのですが・・・。ただメディアは「態度」をとることを極端に嫌がるんですよね。これじゃ、若者のみならず普通の人から面白くないと思われてもしゃあないですよね。
私がいつも参考にするThe
Economistという雑誌のアメリカ・セクションにLexingtonというコラムがあります。どちからというと英国関連の記事に興味があるので、このコラムは普段余りマジメに読むことはないのですが、6月29日付けのコラムは、アメリカ人の幸せ追求感覚について述べられており、筆者のアメリカ観が出ていて非常に興味深いものがありました。このコラムの筆者が英国人なのかどうかは定かではないけれど、この記事に関する限りヨーロッパ人であることは間違いない。
アメリカで7月4日(July 4th)というと独立記念日に決まっています。この記事もそれにひっかけているのですが、トマス・ジェファーソンが起草した「独立宣言」(1776年)は面白くもなんともない(dull)としながらも、前文にある「全ての人間は平等に造られており、不可侵なものとして、生命・自由・幸福追求(life,
liberty and the pursuit of happiness)の権利がある」と謳った部分のみは、「アメリカ人をアメリカ的ならしめているもの」(that
makes Americans so American)としています。
●個人としての幸福の革命性
The Economistの筆者は、この宣言を書いたアメリカの建国者(Founding
Fathers)たちこそは、「個人の権利と幸福の追求」(individual
rights and the pursuit of happiness)という二つを結び付けて考えた最初の政治家たちであるとしているのですが、この二つは「爆発の危険性のあるコンビネーション」(explosive
combination) であると同時に、アメリカと旧ヨーロッパとの決定的な違いを表わしているとしています。
つまり当時のアメリカ開拓者たちが捨ててきたヨーロッパ諸国には、それぞれの国に共通の伝統とかアイデンティティ(この英語の上手な日本語訳を教えてください)、あるいは「公共的道徳心」(public
virtue)のようなものがあった。言い換えるとそれぞれの国民が「神聖なる支配者」の下で、それぞれに与えられた役割を従順に果たす・・・そのような社会がヨーロッパであったわけです。
旧約聖書にヨブ記というのがあって、そこには「人間、生まれつき苦しみを背負っている。そのことは火が上昇していくのと同じくらい当り前のことだ(man
is born unto trouble, as the sparks fly upward)」と書かれている。アメリカ人は宗教心の深い人々であるにもかかわらず、アメリカ文明というものは、まさにこのヨブの言葉(人間、生まれつき苦しみを背負っているという言葉)に対するアンチの証明としてこれまで発展してきたと言える
(Americans, for
all their overt religiosity, have dedicated their civilisation to
proving Job wrong)というのが筆者の見方です。
●「幸せ」を求めれば求めるほど「不幸」になる?
The Economistの筆者は、アメリカ中どこへ行っても「追求」(pursuit)だらけだと言います。アメリカ人の労働時間は年間平均で1731時間、ドイツのそれは1440時間。これも幸福の追求のため。またアメリカ人は「幸福の追求」のためなら引越しは普通で、現在年間平均4000万人がよりよき住みかを求めて移住するのだそうです。アメリカ人はさらに自分に合った教会を求めて歩き回ることもいとわない。これも全て「幸せの追求」というわけです。
こうしたアメリカ風「幸せの追求」については、アメリカ内外から批判がいろいろとある。その一つとして「幸せという幻想を追えば追うほど、ホンモノを見失う」(the
more you pursue the illusion of happiness the more you sacrifice
the real thing)ということがある。例えば、良い生活を求めて引越し・移住を繰り返すことが、離婚を増やし、不幸な子供を増やすという結果になっている。また今日のアメリカ人は30年前に比べると「親しい」友人の数がはるかに少なくなっているという調査結果もあるのだそうです。
さらにアメリカ人は「幸せ」即ち「モノを所有すること」と思い込んでいる、と批判する向きもある。値の張る靴を所有することが、本当に「幸せ」に通じるのか?ということです。
●アメリカ人の圧倒的多数がhappy
people!
「幸福感などという話題に世論調査がどの程度役に立つものなのかは疑問だ」としながらも、The
Economistの記事は、アメリカ人が結構幸せな人々であることを示す調査をいくつか挙げています。Pew
Research Centreという研究所が今年行った調査によると、84%のアメリカ人が「非常に幸せ:34%」(very
happy)もしくは「かなり幸せ:50%」(pretty
happy)と答えているのだそうです。Harris
Pollによるもう一つの調査によると、95%が自分の家庭について満足しており、91%が社会生活についてfeel
goodと答えている。
Pew Research
Centreの調査をもう少し詳しく見ると、年間収入10万ドル以上の所得層の49%が「幸せ」であるのに対して、3万ドル以下の人ではこれが24%に下がる(ということは、お金のあるなしが幸福感に影響しているということです)。アメリカ人の場合、さらに忘れられないのは宗教と幸福感の関係で、週に一度は教会へ行く人の43%が幸福であるのに対して、月に一度の人は31%に、殆ど行かない人の場合はこれが26%と低くなるというわけです。
この記事よると、アメリカ人の幸せ追求を理解することは、昨今のアメリカ政治を理解することにもつながるらしい。ここ数年、共和党が成功している最大の理由は、民主党との「幸せ格差」(happiness
gap)を生み出したことにある。共和党の支持者の45%がvery happyとしているの対して民主党の場合はこれが30%にとどまっている。
ここで言う「very happyな共和党支持者」の典型とは、自宅には大きな庭があり、そこでハンバーガー・バーベキューを楽しむ、その一方で自宅の玄関には立派な星条旗がひるがえっている・・・そんな人たちのことです。それにひきかえ民主党支持者はというと、地球の温暖化だの何だのという「暗い話題」が多い。これから民主党が甦りたいと思ったら、共和党的なvery
happy peopleと如何にして関連付けることが出来るか考える必要があるとのこと。
●だからアメリカ人は嫌われる!?
尤もThe Economistの記事は、アメリカ人の幸せ追求によって国外における反米意識が高まっているということもあるとしています。「反米意識」にも二通りあって、一つはアメリカがジェファーソンらの言うような理想を実現していないということに対する批判です。
が、もう一つは正反対で、「ジェファーソンが意図したとおりのことをやっているから嫌だ」(others
dislike America precisely because it is doing exactly what Jefferson
intended) というものです。大きな車を乗り回し、巨大なマンションを手に入れるという「幸せ追求」を、環境面からも美的感覚からも、とても受け入れられないと考えているヨーロッパ人がいるわけで、「アメリカ人みたいにあけすけな情熱を以て幸せを追求したら、どうしたって世界の多くの人々を不幸するということもある」(You
cannot pursue happiness with such conspicuous enthusiasm without
making quite a lot of people around the world rather unhappy)というわけです。
- The Economistの記事の原文をご覧になりたい方はご連絡ください。
- おそらく英国人であろうコラムニストが書いた、このエッセイの中で、私が最も面白いと思ってしまったのは「人間、生まれつき苦しみを背負っている」(man
is born unto trouble)という聖書のヨブ記の言葉を引用しながら、「アメリカ人はこの言葉が間違っていることを証明するために身を捧げて文明を発展させてきたのだ」と言っている部分です。この部分、もっと書きたいのですが、ただでさえ長くなっているのに、これ以上長くするのも気がひけるので、ここからあとは別のところに掲載します。
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