musasabi journal
発行:春海二郎・美耶子
第93号 2006年9月17日 

Back numbers

 

いつの間にか毛布をかけて寝るのが当り前になってしまいましたね。最近では寒いので窓を閉めて寝るのですが、そうすると虫の声が聞えないのが残念であります。93回目のむささびジャーナルです。よろしくお願いします。

目次

1)「ブレアさんの哲学は正しい」(?)
2)ポール・ケネディが予想する2031年の世界
3)キューバの国際医療部隊に注目しよう!
4)『美しい国へ』を読む前に・・・
5)短信
6)むささびの鳴き声

1)「ブレアさんの哲学は正しい」(?)


9月7日、英国のブレア首相が「1年以内に辞める」と発表したニュースは日本の新聞でもかなり大きく取りあげられていました。噂によると来年5月の労働党大会前に辞めるとのことで、ブレアさんが首相になったのが1997年5月ですから、来年で首相在任ちょうど10年になるわけです。労働党の首相としては英国の歴史上最長記録です。尤も資料によると18世紀にSir Robert Walpoleという人(保守党)がいて、この人は1721年4月4日から1742年2月11日まで、20年と314日の間首相を務めており、英国の首相としては最長記録なんだそうであります。

それはともかく、1997年にあれほどの人気で首相に就任したブレアさんが、いま辞任を迫れる最大の背景として、イラク戦争がらみでアメリカべったりの姿勢が国民的な反発を呼んでしまったことにあるとされています。なぜブレアさんが国内的な批判を承知のうえで、ブッシュのやることにくっついていったのかについては、これまでにも何度か書いてきたので繰り返すのはやめにして、今回はブレア首相のやってきたことを良しとする意見も紹介してみようと思います。

London School of Economics (LSE)Anthony Giddensという先生は、ブレアさんの思想の中核にあるといわれる「第三の道」(the Third Way)という考え方を提唱した人ですが、彼が左派系のNew Statesmman誌が行った「現代のヒーロー」の一人としてブレアを推薦したことがあります。この人はブレアさんの国際舞台での活躍を大いに評価してLike him or loathe him, Blair is a global figure(ブレアを好きでも嫌いでも彼がグローバルに知られた人物であることは間違いない)と言っています。英国の首相としては、サッチャーやチャーチルに匹敵するというわけです。

Giddensがイデオローグとなった、ブレアさんのNew Labourが目指したのは「より社会民主主義的な英国」ではあるのですが、それと同時に国際主義(cosmopolitanism)を受け入れ、公共サービスへの投資を増やし、貧困をなくす政策であった。ただGiddensによると、ブレアの政策の本質は「経済」を重視したことにあるとのことで、経済政策の成功の例として、英国の労働者の75%が仕事に就いている(EU平均では63%)ことを挙げていますが、成功の背景の一つとして、英国労働者の賃金の低さがあることも認めています。

Britain remains a highly unequal society, but it is the only one in the EU where poverty has markedly decreased over the past nine years(英国は今でも極めて不平等な社会であるが、EUにおいて過去9年間で貧困が劇的に減った唯一の国でもある)とGiddensも言っているとおり、それまでの労働党が社会主義という考え方の下で「平等社会」の実現を党是としていたのに対してブレアさんのNew Labourが目指したのは、「不平等かもしれないけれど、貧困や失業が少ない社会」であったというわけです。

Giddensはまた、コソボの紛争に米軍やNATOを参加させたこと、北アイルランドの和平に進展を見せたこと等などをブレアさんの功績であるとしたうえで、Iraq is another matter(イラクは別問題だ)として、次のように書いています。

I don't believe Blair acted in bad faith. The US would almost certainly have invaded whether Britain was involved or not. At this point, everyone - for or against the intervention - has to hope that somehow a decent society will emerge. We will never know whether Iraq would have suffered even more had Saddam Hussein's murderous regime stayed in power.(ブレアも悪意があったわけではない。英国が関与してもしなくても、アメリカはイラク侵攻を行っただろう。現時点では、イラク侵攻に賛成でも反対でも、何とかしてまともな社会が実現されるように祈るしかないだろう。サダム・フセインの殺人的な体制があのまま継続した場合に、イラクがどのような苦しみを味わうことになったかは我々には分からないのだ)

ところで(全然関係ありませんが)、英国の歴代首相の中で在任期間がイチバン短かったのは1746年2月10日に就任、同12日に辞任したバース伯(the Earl of Bath)なる人物であったそうです。就任したのはいいのですが、彼とともに政府を組織する閣僚になる人間が一人しかいなかったというのが理由で、首相在任2日間で終わったのだそうです。

  • ブレアさんが首相になったときに、私(むささび)の印象に残っているのは、経済政策についてはそれまでの保守党のやり方(市場経済)を引き継ぐと言ったことでした。要するにそれまでの労働党のように社会主義ということを全く言わなくなったということです。
  • The TimesのPeter Riddellというコラムニストが面白いことを言っています。社会主義政党としての労働党華やかなりし頃の英国(1940年代:終戦直後)においては、工場労働者や肉体労働者が全労働市場の75%を占めていたのに対して、現在ではこれが40%を切っている。英国全体では昔ながらの「労働者階級」に代わって知識集約型の産業やサービス産業が大きく成長したわけで、ブレアさんによると、このような社会変化が昔のような社会民主主義の基盤を奪ってしまった、とのこと。
  • The Observerのコラムニスト、Will Huttonという人によると、ブレアさんが推進したNew Labourは、「選挙民にアピールする現実的な中道左派哲学」(a practical left-of-the-centre philosophy with voter appeal)を基本的にしていたとのことです。これだけだと何だかよく分からないけれど「国家よりも個人が優先されながらも、"公共の目的"とか"社会正義"を求める気持ちも強い今の時代に即した哲学(appeal that could work in our non-state, individualist times where there is still, none the less, an appetite for public purpose and social justice)と説明されると(私などには)わりと分かりやすい。
  • 要するに「みんなのため(public)」とか「正しい(justice)」を追求することは、人間にとって本来的に気分がいいものなのに、弱肉強食のサッチャリズム的資本主義はもとより、昔ながらの権威主義的社会主義の労働党時代にも尊重されることのなかった哲学のことだと(私は)解釈するのですが。
  • 最近の世論調査におけるブレアさんの支持率は、あのサッチャーが評判悪かったときの最低支持率(20%)をさらに下回っているのだそうです。が、それにしても当方の小泉さんの支持率はどうなっているんでしょうか。最近の新聞には64%と出ていました。小泉さんの人気の最大の要因は拉致家族を北朝鮮から連れて帰ったことなのだそうです。
2) ポール・ケネディが予想する2031年の世界


9月11日(月)はあの「9・11」から5周年というわけで、いろいろなメディアでこれを振り返る企画が掲載されたり、報道されたりしましたね。英国のThe Independent紙が掲載した『2031年の世界(the world in 2031)』もその一つで、あの9・11から30年後の2031年に世界がどのような状況になっているのかを3人の歴史家が予想しています。これを全部紹介するのは、私の力ではちょっときついので、ここでは米エール大学のポール・ケネディ教授の予想だけを、しかも極めて短くまとめて紹介してみます。この人は、確か20年ほど前に『大国の興亡(the Rise and Fall of Great Powers)』という本がベストセラーになった人です。

ケネディ教授がまず予測しているのは、これからも中東の石油を巡る西側諸国による軍事行動があって、2008年と2012年の間に欧州、米国それから日本でテロリストによる攻撃があるということです。何故この時期なのかについては書かれていないのがタマにキズですが・・・。

で、30年後の世界については現在とそれほど劇的には変わっていないというのが教授の意見で、2001年の時点で「あのテロが世界を変えた」というほどの変化はないということです。ただアメリカは、経済・軍事・科学技術のいずれをとっても世界一の力を持っていますが、現在より少しは他国や国際機関と協調するようになっているだろうとのこと。これは財政赤字がひどいし、ほぼ10年におよぶアフガニスタンやイラクでの戦争のお陰で軍事力の面でも限界を感じるようになったということです。

アジアは明らかに中国とインドが世界的な大国として責任を負う立場になっているのですが、そこまで行くのに両国とも国内的にかなりの混乱を経験しています。さらにロシアが世界の4番目の大国として力を発揮するようになっているのだそうです。ヨーロッパはjust fine(まあまあ)という状態で、自己中心的な進歩を続けるアメリカや15年計画の経済発展を続けるアジア諸国に対する「快適な批判勢力」(comfortable antidote)であることを楽しんでいるだろうとのことであります。アフリカは内戦だの大量殺戮だのという苦難の30年を耐えて、ケニア、ボツワナ、モロッコなどの国々はかつてよりは強くなっている。

教授がかなり悲観的な予想をしているのは中東です。2009年から2012年の間にエジプト、サウジアラビア、シリアの3国でほぼ同時に体制崩壊が起こり、イラクの内戦は悪化し、イラン内部で指導層の世代間闘争が起こる。しかし何といっても怖ろしいことに、イランがイスラエルのテルアビブを核攻撃して壊滅状態にする。それに対抗してイスラエルがイランに核で反撃、イランで1000万人の死者が出る。が、イランは大いに弱体化はしても消滅するわけではない。

このような事態に直面して怖ろしくなった大国(Great Powers)は様々な部分で妥協をはかり、国連の平和維持活動を強化し、核戦争後の処理にあたる。で、アメリカはどうするのかというと、興奮はするけれど、同時にこの泥沼に踏み込むことの恐怖をも感じてしまう。「たかだかテルアビブが消滅したからと言ってイランを核攻撃するとは何ごとだ」(who exactly did you "nuke" just because Tel Aviv had disappeared?)と、イスラエルを批難する始末です。ヨーロッパは茫然自失、ロシアは沈黙。繁栄するアジアはというと、そのような愚かな宗教とイデオロギーの戦争など、あちらの出来事で、係わり合いにはならない。壊滅的な打撃を受けたイスラエルはアメリカによって保護されてはいるものの将来は非常に不透明というわけです。

ケネディ教授によると、9・11の30年後の中東は、アラブ諸国で穏健派の指導者が出てくるかもしてないが相変わらず不安定ではある。ただ一つだけ言えるのはテロ組織のアルカイーダが「遠い過去の想い出」(distant memory)となっているだろうとのことです。教授によると、アルカイーダは中国西部のイスラム教徒に対する中国による「防衛対策」(security measures)に抗議して、2010年に上海で、2012年には北京で、それぞれ爆弾テロを実行して、自滅の道をたどるのだそうです。

アメリカと中国が対テロ戦争に共闘し、ロシアもヨーロッパもこれを支持し、世界中の国で自国内のテロリスト壊滅作戦が行われる・・・このような状況を経て、アルカイーダは「遠い過去の思い出」になるというわけです。というわけで、ケネディ教授の結論は次のとおりであります。

さて、(ニューヨークの)ツインタワービルが倒壊してから30年、我々はどうなっているのか?年をとっているだけに、おそらく多少は賢くなっているだろう。地球全体としては必ずしも幸せであったわけではない。特に多くのアフリカ諸国や中東にとってはそうだ。しかし、2031年のいまの我々は、2001年当時に学者たちが予測したよりは、はるかに恵まれた状況にいることは間違いない。そのこと自体は一応喜んでいいだろう。ただ大した喜びでないことも事実である。
So, where are we, 30 years after the twin towers came down? Older, certainly; perhaps a bit wiser. It has not been a happy planet, especially in much of Africa and the Middle East. But, in truth, we are in 2031 a lot better off than most of the pundits of 2001 thought we might be. That itself is cause for some rejoicing. But not much.

ケネディ教授の予測の中には北朝鮮が出てきません。教授の最近の著書には'The Parliament of Man: The United Nations and the Quest for World Government'という本があるそうです。

  • 『大国の興亡』は日本では大変なブームを呼びましたね。『大国の興亡』は世界史のうえで、それぞれの時代に栄えたgreat powers(大国)が衰退するのは、大体において軍事に自らの富の大きな部分を費やすことが原因であるということが、メッセージだったと記憶しています。The Independentの記事の中で教授は、30年後もアメリカは栄えているように予測しているようです。

 

3)キューバの国際医療部隊に注目しよう!


カストロ首相の病気か「野球が強い」という以外、余りニュースにならないキューバという国ですが、Le Monde Diplomatique (LMD)のサイトを見ていたら、国際的な医療活動の分野で熱心に活動しているのですね。記事の見出しはCuba exports health: Havana's medics work around the world(健康を輸出するキューバ:ハバナの医者が世界で仕事をしている)というもので、パキスタンの大地震ではいち早くドクターを派遣しているし、ベネズエラでは貧困層対象の医療サービスの提供も行っているのだそうです。とても豊かとはいえないこの国が、より貧しい人々を助けようとしている(Cuba has plans to heal those poorer than itself)というわけです。

昨年10月のカシミール(パキスタン)大地震のときは、3000人を上回る医療スタッフがキューバから駆けつけたり、医療装置が送られたりしたのですが、彼らが医療活動にあたったのは、殆どが無医村のような僻地で、被災者にとってキューバは「聞いたこともない」国であったそうですが、約6ヶ月間の医療活動で、治療した患者は約150万人、外科手術は13000件にのぼったとのとです。

そもそもキューバに国際医療部隊が設立されたのは1963年のことだから、40年以上の歴史がある。派遣される医療スタッフの給料はキューバ政府がもつのですが、派遣先では現地の医療関係者も行きたがらない僻地へも乗り込むので「裸足のお医者さん」(barefoot doctors)というニックネームがあるくらいらしい。

1963年から2005年までの42年間で派遣されたドクターやヘルスワーカーは約10万人で派遣先は97カ国にのぼっている。今年にはいってからでも、3月までに25000人が68カ国で活動しているとのことで、LMDの記事によると、よく知られている「国境なき医師団」(Medecins Sans Frontieres)でも、2003年の派遣数が2040人、2004年でも2290人というから、キューバからの医療団の数は群を抜いて多いことになる。

重症患者については、ハバナの病院に運ばれるのだそうで、過去においてこの種の治療を受けた患者の中には、ベトナムの少女、Kim Phucちゃんも含まれている。彼女は米軍のナパーム弾によってやけどを負ったのですが、彼女が泣きながら裸で道路を走ってくる写真は有名です。また1986年のチェルノブイリの原発事故関連では、19000人がキューバで治療を受けたのだそうです。

キューバの国際的医療活動については、宣伝活動だと批判する向きもあるようで、ブラジルなどでは追い返されたというケースもあるのだそうです。2005年8月にニューオルリンズをハリケーン「カトリーナ」が襲った際に、キューバ政府は48時間以内に1600人の医師を派遣できる、とミシシッピやアラバマの州知事に申し出たし、ブッシュ大統領にも直接オファーしたけれど、アメリカからは返事がなかったのだそうです。

  • カシミールの大地震での活動については、パキスタンのムシャラフ大統領(ジョージ・ブッシュのお友だち)から公式な謝礼があったとのことで、謝辞の中でムシャラフ大統領は「中米のこの小国からの災害援助が、他のどの国からのものよりも大きかった」(this small nation in the Caribbean had sent more disaster aid than any other country)と述べたのことです。これはムシャラフ大統領のブッシュ大統領に対する精一杯の嫌みだったのかも? で、日本の医療援助ってどうなってるんでしょうか?調べてみよう。
4) 『美しい国へ』を読む前に・・・


安倍晋三さんの書いた『美しい国へ』という本が売れているんだそうですね。私はまだ読んでいません。他に読むべき本があって、なかなか手が回らない。で、朝日新聞の9月5日号の15ページに根本清樹という人(朝日新聞編集委員のようです)の書いた「安倍公約vs小沢主義」というエッセイが載っていて、その中で、安倍さんのこの本に触れています。それによると、安倍さんは戦中の特攻隊に触れて、次のように書いているそうであります。

「自分のいのちは大切なものである。しかし、ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在するのだ、ということを考えたことがあるだろうか」

そして根本さんは「安倍氏の要求は格段に重く、大きく、そして気高い」と書いています。根本さんによると、安倍さんは「損得を超えた価値のために役に立つ」ことの大切さを訴えているのだそうですが、根本さん自身の意見として次のように書かれています。

「政治の現実から損得ずくをなくすことなどできるだろうか。年金の問題にせよ、税制にせよ、この世では無数の利害がぶつかり合っている。<中略>普通の人びとの暮らしには死活的な問題がたくさんある。私たちはそれほど気高くないし、なる必要もない」

私はこのエッセイを読んで、安倍さんの「特攻隊賛美論」はもちろんのことですが、根本清樹という人の姿勢にも疑問を感じてしまった。安倍さんの本を読んでいないので、なんともいえないけれど、根本さんのエッセイで引用された部分だけからしても、安倍さんが言っているのは「人間、たまには損得を超えて(つまり無私の精神で)行動することもある」ってことだけなのに、根本さんは、恰も安倍さんが「政治は損得を超越しなければならない」と主張しているかのように言っている。こういうのを「揚げ足取り」というのではないか。フェアでない。

また根本さんのエッセイは「私たちはそれほど気高くないし、なる必要もない」という文で終わっています。つまり「人間、損得を超えていのちを投げ出すほどには気高いものではないし、なる必要もない」と言いたいのですよね、根本さんは。確か韓国の青年が、東京の電車の駅で転落した人を自ら飛び込んで救って、自分は死んでしまった、という事件はなかったでしたっけ?あの行為は「気高い」行為なのでしょうか?

私の想像にすぎないので、間違っていたら根本さんにはゴメンネというしかないけれど、彼が「気高くなる必要もない」と言うのは、(特攻隊のように)お上に言われて、「お国(自分が信じてもいないもの)のために」命を投げ出す必要がないってことなんじゃありませんか?だったらそう言えばいいのに・・・。私に分からないのは、何故、この筆者が「安倍氏の要求は格段に重く、大きく、そして気高い」などと書くのかってことなのでありますよ。安倍さんの要求のどこが「気高い」んです?アホらしいだけのことなんじゃありませんか?

もう一度言っておきますが、人間、損得を大切に考えるのは当り前ですが、場合によっては、いわゆる「損得」を超えて行動をとるときだってあるんです。ただそれは、国(というよりも、そのときの為政者が決めたこと)のために(自分が納得もしていないのに)命を捧げるというようなことではないってことなんです。そのようなことは気高くもなんともない。ただ悲惨なだけです。根本さんのいわゆる「普通の人びと」がいつもいつも損得だけを考えて暮らしているわけではないってことなんですよ。

根本さんは、自分を「普通の人びと」の代表みたいに「私たち」などという言葉を使うけれど、それも止めて欲しい。どうせ言うなら「私」とだけ言って欲しい。違う考えの人だっているんだからさ。これ、決して揚げ足取りで言っているのではないのであります。

このエッセイは、タイトルにもあるとおり、民主党の小沢一郎さんと安倍さんの考え方の違いのようなものについて語っており、上の安部さんの「自分のいのち云々」が精神論だとすると、小沢一郎さんは「政治は精神論ではない」ということで「愛国心の押し付け」を否定しているのだそうです。

  • プラットフォームから転落した人を見て、線路に飛び降りて助けようとして、自分が死んでしまった韓国の人は、死ぬつもりで飛び込んだわけではない。でも特攻隊は死ぬことが分かっている。安部さんという人は「それ(自分の命)をなげうっても守るべき価値が存在する」などと言っております。クダクダ言いませんが、なんなんです、その「価値」っつうのは!?
5)短信


玄関マット追放作戦

英国ブリストル市からの、イマイチよく分からないニュース。市当局が最近、市営住宅の住民に配布した手紙によると「ドアマットの使用は玄関の中に限る。ドアの外側に置いてはならない」というもので、その理由として「迷惑マットは住民が避難するときの邪魔になる」(hazardous mats outside doors hamper escape routes)ことを挙げている。これに対して、借家人協会のマーシャル会長は「市役所の人間にはもっとまともなことはやれないんだろな」(these people must be sitting in offices with nothing better to do)とあきらめ顔ですが、元庭職人(今は隠居の身)のロジャー・ペリー氏みたいに「アタシはいまのまま(ドアの外側)に置いておくつもり。で、彼らがどうするのか見てやる。没収などしたら窃盗罪で訴えるつもり」(I'm keeping mine here to see what they do. If they take it, that's theft)と断固対決する人も出てきています。

  • 玄関マットの何がそんなに気に入らないんですかね。市営住宅のテナントは32000いるらしいけれど、確かに「ほかにやることあるんじゃないの?」と言いたくもなるな。それで思い出した。私の家の近くに市営の公園があるのですが、公園内のいたるところに「バーベキュー禁止」「時間外の使用禁止」「犬の放し飼い禁止」などなど「禁止」の看板がある。「公園をきれいに使いましょう」というけれど、汚くしているのが、これらの「禁止看板」であることには全く気が付いていないようです。

売春の合法化

ロシアのVorkutaという町の町長さんが「売春の合法化」を呼びかけているそうです。この町だけでなく、最近のロシアでは人種差別主義者による暴力事件が頻発しているらしい。この町長さんの発想によると、多くの暴力的人種差別主義者は性的欲求不満に陥った若者だから、売春婦の方々に一役買ってもらって・・・というわけ。「協力してくれる売春婦の方々は全て国家の保護の下に置かれるし、年金もフルに支給されます」とこの町長さんは言っています。

  • ロシアの現状を象徴している!?

カダフィ大佐の変わった発言

最近行われたアフリカ同盟(African Union)の第7回の祝賀会で、リビアの指導者であるカダフィ大佐が演説したのですが、その中で彼は何故かコカコーラについて触れ「Coca Colaの原料はアフリカの植物から採取したものである。従って我々はコカコーラ社に対して、売上げの一部をアフリカ諸国の政府に支払うことを要求すべきだ」と発言した、と英国のPA通信が伝えています。知りませんでしたね、それは。PA通信の記事によると、カダフィ大佐はこれまでにも「変わった主張」(bizarre claims)をした実績があるとのことで、「ウィリアム・シェイクスピアは、本当はSheikh Zubeirという名前で、英国へ移住したアラブ人である」と発言したこともあるのだそうです。

  • ある本によるとカダフィ大佐は訪問客を最低2時間は待たせることで有名なんだそうです。変わってますね、この人は。金正日といい勝負ですが、カダフィさんは一応核兵器の武装解除をしたからな・・・。
6)むささびの鳴き声


▼紀子様に赤ちゃんが生まれた翌日(9月7日)の新聞(朝刊)の社説の見出し並べると次のようになります。

  • おめでとうございます 男児ご誕生(日本経済新聞)
  • 静かにご成長見守ろう 意義が深い男子皇族の誕生(産経新聞)
  • 男子ご誕生 おめでとう お健やかに(東京・中日新聞)
  • 男子ご誕生 心から喜びたい (朝日新聞)
  • 紀子さまご出産 皇室の男子ご誕生を喜びたい(読売新聞)
  • 男児ご誕生 心からお喜び申しあげます(毎日新聞)

▼それぞれが赤ちゃんの誕生を祝福しています(当り前)が、どの見出しにも「男児」「男子」という言葉が使われています。各紙が「祝福」しているのは、単に赤ちゃんが生まれたということだけではなくて「男の赤ちゃん」が生まれたことを祝福している(というふうに私には見える)わけです。 本来ですと、それぞれの社説の中身を読んで皆様と一緒に考えるべきなのですが、それも面倒なので、この際毎日新聞の社説だけ読んでみたところ、その中で次のようなくだりがありました。

「今回の朗報で慶祝ムードが一気に広がったのも、多くの人が男児誕生を心待ちにしていたせいだろう」

▼え、そうなんですか!?毎日新聞の論説を書いた人は、生まれたのが女の子であったら「慶祝ムード」もそれほどには盛り上がらなかった、つまり大して歓迎されなかったと思っているわけですか!?

▼へそ曲がりぶる気は全くなしで、私は皇室・王室ことには興味がなかったし、今もない。帝王切開が「おなかを切るのよ」と家内に言われて「切腹」とどう違うのかが分からず、さぞや痛いものなのだろうと同情したりしていたわけです。ただ各紙が「男児出産」にこだわるのは、皇位継承問題があるからだ、ということぐらいは分かっており、男の子が産まれたので、当面は心配がなくなった・・・だから「こころからお喜び」ということになるのだろうということも察しがつく。 ちなみに毎日新聞は女性の天皇でもいいんじゃありませんか?という立場のようです。

▼それはともかく、上の毎日新聞の社説の言葉について言うと、自分が男児誕生を心待ちにしていた「多くの人」に属さない人間であることは間違いないようなので、正直言ってちょっと心細い・・・。

▼というようなことを考えていて、先週の日曜日(9月10日)にあるテレビ番組を見ていたら「男子ご誕生の瞬間」のテレビ局編集部の様子を伝えておりました。デスクの電話をとった編集スタッフ(30代前半とおぼしき男性)が、大きな声で「XX時XX分、男の子です!!」と叫ぶと、スタッフが全員が拍手・拍手の大騒ぎになった。さすがに泣き出す人はいなかったけれど、局あげての「慶賀ムード」という雰囲気でありました。

▼あの雰囲気では「女の子だったら、あんたら、どうだったの?」とか「天皇制なんて面倒だから止めたほうがいいんでない?」などとは、とても言えないだろな・・・というわけで、あの職場にいなくて済む自分の幸せを噛み締めてしまったわけです。

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