犯罪を犯したら刑事罰を受ける年齢を引きあげるべきだという声が英国で高まっています。BBCのサイトなどによると、現在の英国(イングランドとウェールズ)における犯罪責任年齢は10才なのだそうですが、犯罪・裁判研究センター(Centre
for Crime and Justice Studies)が、これを14才にまで引き上げるべきだという報告書を発表しています。
この報告書をまとめたRob
Allenという人は、8年間にわたって少年裁判に関わってきた人で「英国では子供が刑事罰を受けるケースが余りにも多すぎる、として彼らの更生のための教育や精神衛生上のケアを充実させる方向に動いていくべきだ」と言っています。彼はまた「英国における少年裁判は、これまでの"警察署・裁判所・矯正施設(cops,
courts and corrections)"という発想を止めるべきだ」として、自宅矯正をもっと採用すること、15〜16才の犯罪者を刑務所に入れることを止めることなども求めています。
Allen氏は「最近の英国では、社会を若者から保護しようという傾向が強すぎるし、ティーンエージャーの行いに対して不寛容すぎる傾向がある」(We
have seen an increasing preoccupation with protecting the public
from young people and a growing intolerance of teenage misbehaviour
of all kinds)と言っています。彼によると、犯罪に走る子供たちの場合、その多くが困難な背景(disturbed
backgrounds)の中で育っており、学校にさえ行っていない子供がいるというわけで「そもそも善悪を分別できるだけの知的な発達をとげているとは思えない」(I
don't think they have reached the point of development that you
could safely say they do know right from wrong)と指摘しています。
Allen氏はまた少年に犯罪者としてのラベル貼りを行うことの危険性について次のように述べています。
You run the
risk of labelling them as criminals. They begin to see themselves
as delinquents, others treat them as delinquents, and very quickly
you are in a cycle that youngsters find it very difficult to break
out of. (彼らに犯罪者のラベルを貼ると、彼らが自分たちを"不良"とみなすようになり、他人もまた彼らを不良扱いするようになる。そうなると悪循環で、若い人たちは容易に抜け出せない)
実は英国の犯罪責任年齢は14才であったものを、現政権が誕生した1997年にこれが10才にまで引き下げられたという経緯があり、犯罪・裁判研究センターは「それがきっかけで子供の有罪事件が増加したとしています。が、法務省(Home
Office)は、
The current
age of criminal responsibility allows us to intervene earlier
to prevent offending and to help young people develop a sense
of personal responsibility for their misbehaviour(現在の犯罪責任年齢のお陰で、我々は早い段階で子供たちに干渉することで、犯罪に走ることをを防ぎ、彼らが非行についての自己責任感を発達させる助けにもなる)
と言っており、これについては野党も同調しているようで、陰の法務大臣であるEdward Garnier氏は「この報告書は仔細に検討してみるが、刑事責任の引き上げについてはまだ確信するまでにはいたっていない」(We
will study this report carefully but remain to be convinced about
the need to raise the criminal age of responsibility)とコメントしている。
ちなみに少年の刑事責任年齢の国別比較は次のようになっています。
England
and Wales: 10
Canada: 12
France: 13
Germany: 14
Japan: 14
Russia: 14
Italy: 15
BBCのサイトはさらに児童心理のコンサルタントであるLinda Blairさんのコメントも載せています。彼女は、子供でも善悪の区別ができるケースが多いもので、大体において「彼らにとっては母親が正しいと言うことが正しいことなのだ」(When
you are young, right is what your mother tells you is right)としています。が、彼女によると、子供の場合に自分の行為の結果にまでアタマが回らないということがあるとのこと。犯罪責任年齢の引き上げについては「14才になれば子供たちの善悪判断能力も大幅にあがるだろう」としながらも、彼らに刑罰を与えるについては「考えなければならないことが沢山ある」(much
consideration is needed)として次のように話しています。
If you punish
somebody who is young, what they have is 'empty time'. If you
don't given them something to do, or teach them how to behave
better, then they are just going to go on doing the same things.(若い人を罰すると、その間、彼らは"空白の時"を過ごすことになる。その時に彼らに仕事を与えたり、行いを改めるように教育しないと、彼らはまた同じことを繰り返すことになる)
- 14才以下の子供による重大犯罪の最近の例としては、10才の男子二人が2才の子供を殺したケース(1993年)、11才の女の子が年下の少年二人を殺した事件(1968年)、12と13才の兄弟による女子殺人(2000年)などがあるそうです。
- Children's SocietyというNPOによると「14才への引き上げは絶対必要(absolutely
essential)」とのことで「選挙権は18才にならないと与えられないのに、刑罰は10才からでも受けるというのは驚き(staggering)としか言いようがない」と言っています。
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