英国の公共政策調査研究所(Institute for Public Policy Research:IPPR)という機関の調査によると、英国の若者は行いの点でヨーロッパでは最悪という結果が出ているそうです。例えば15歳の少年について見ると、フランスの場合、夜、友達と遊ぶと答えた若者は17%、同じ質問に対してイングランドの若者は45%、スコットランドは59%。夕飯を「両親と一緒に食べる」という若者は、イタリアでは93%なのに英国では64%。cannabisという麻薬をやったことがある15歳の割合は英国38%、スウェーデン7%、ドイツ27%という具合。
IPPRでは、これらの余り芳しくない数字について、「家庭とコミュニティの崩壊(a
collapse in family and community life)」を理由に挙げていますが、別の言い方をすると、英国の場合、若者と大人が一緒にときを過ごすということが少ないということでもある。「英国のティーンエージャーは大人との交流に欠けていることが、人生の失敗に繋がりやすい」(the
lack of adult interaction has left British teenagers increasingly
vulnerable to failure)と言っています。
一方、同じIPPRの調査として、英国の大人は他のヨーロッパ諸国の大人よりも、若者の反社会的な行動に介入することが少ない(British
adults are less likely than those in Europe to intervene when teenagers
commit anti-social behaviour)という結果もあるそうです。具体的に言うと「14才の子供たちが集団でバスで乱暴しているのを見たとして、止めに入るか?」という問いに対して、ドイツでは65%、スペインで52%、イタリアで50%の大人が「止めに入る」と答えているのに対して、英国人は34%だとか。
また英国ではイタリアやスペインなどに比べて子供と夜を過ごす大人が少ないらしいですね。大人が酒など飲みながら「社交」を楽しんでいる傍で子供がうろうろしているという風景が英国では見られない。We
don't have a culture where adults go out to pubs and bars and bring
children with themというわけです。
さらに2005年の調査では、「近所で若者がうろつくので引っ越したい」と思ったことがある英国人が150万人おり、170万人が「若者が怖いので夜間の外出はしない」と答えている。
このように見ていくと、最近の英国の若者は悪いことだらけという感じですが、子供問題を研究しているNPO組織、Barnardo'sのPam
Hibbertさんは「メディアや政治家が、若者について悪いイメージを作り上げ、それが大人の間での恐怖を煽る結果になっている(public
perceptions created by the media and politicians had bred fear amongst
the nation's adults)と言っています。確かにブレア政府は、若者による反社会的行動の取り締りにかなり力を入れ、これをPRしていましたよね。それらが大人と若者の間の壁を作ってしまったってことです。
Hibbertさんによると「過去10年の統計では若者による犯罪件数は横ばいであって増えているというわけではない」として「にもかかわらずメディアや政治家はyob(悪がき)というような言葉を使って若者を悪者扱い(demonisation)して恐怖感を煽っている」と言っています。YouthNetというNPOでも「若い人がいいことをやってもメディアは取りあげないだけだ」と報道の偏りについても文句を言っています。
そのメディアですが、BBCのサイトへの投書コーナーへの「最近の若者」についての書き込みがかなりあるのですが、その多くが若者についての不平・恐怖・違和感を訴えるものが多く、その大半が「親が悪い!」と言っている。もちろん中には冷静なコメントをする人もいます。下記などはその例かもしれない。
長い期間にわたってみれば、今のイングランドは1920〜30年代に比べれば暴力ははるかに少ないし、1920〜30年代だってビクトリア時代に比べれば暴力度は低かったはずだ。それに不健康かもしれないが、国民の寿命が延びたことも事実ではないか。(若者は悪いというのは)実によくあるハナシで、人類始まって以来繰り返されてきたのである。笑ってしまうのは、"暴力を追放するためには暴力的な罰が必要だ"というコメントが多いってこと。
But over the
long term England today is far less violent than the 1920 / 1930,
which in turn was less violent than Victorian times. Unhealthy
and yet people today live longer than ever before. This is a standard
story that has been repeated since the beginning of recorded history.
And its always amusing to read comments that what we need to do
stamp out violence is have violent punishments.
- この手の「調査結果」は、メディアに出ると、一般化(generalization)と誇張(exaggeration)の対象になってしまうので、本当に気をつけたほうがいい。メディアも悪意でやっているのではない。それどころか「世の中に警鐘を鳴らしておるのだ」などと考えてやっている(だからもっと始末が悪いってこともある)。「悪」はどこにでもいるけれど、「善」もどこにでもいるってことは注目されない。
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