上の写真は、ロシア第二の都市、サンクト・ペテルブルグで反戦プラカードを掲げてデモをやり、逮捕された76才のおばあさんだそうです。「おばあさん」と言っても、普通の年寄りとはちょっと違って、エリーナ・オシポバという名前の「アーティスト」だそうで、この反戦プラカードも彼女の制作になるものなんだとか。ロシアによるウクライナ攻撃の報を聞いてショックで3日間食事もできなかったけれど、家でじっとしていられずにデモをやって逮捕されてしまったのだそうです。むささびより4才も若い。 |
目次
1)スライドショー:キエフと周辺
2)ボリスの近況
3)アフガニスタンの想い出
4)ロシアは中国のお荷物?
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声
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1)スライドショー:キエフと周辺
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むささびジャーナル496号で「戦車は本で阻止しよう」というスライドショーをやりました。ウクライナをテーマにしたものだったのですが、ロシアによる侵略戦争前のウクライナの人びとの生活をテーマしたものだった。使った写真はいずれもマーク・ネビルという英国の写真家の作品でした。今回も英国の写真家(マイケル・ケンナ)によるもので、ウクライナをテーマにはしているのですが、撮影時期がいまから9年前の2013年であること、写真がすべてモノクロであること、そして首都・キエフとその近辺が舞台なのですが、人間は全く登場してきません。とても静かなキエフで、自然の景色は日本そっくりだと思います。
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2)ボリスの近況
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3月21日付のBBCのサイトに "Ukraine war: Boris Johnson sparks fury after comparison to Brexit" という見出しの記事が出ていました。「ジョンソン首相が、ウクライナ戦争を2016年に行われたEU離脱に関する国民投票と比較して怒りを買っている」というわけですよね。 |
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首相のこの発言は、1週間ほど前にブラックプールで開かれた保守党大会で演説した際に飛び出したもの。「英国人が本能的に自由を選ぶという点でウクライナ人と同じだ」(it's the instinct of the people of this country, like the people of Ukraine, to choose freedom)と言ったうえで、英国人が自由を尊ぶ本能があることの例について語り始め
- When the British people voted for Brexit in such large, large numbers, I don't believe it was because they were remotely hostile to foreigners. It's because they wanted to be free to do things differently and for this country to be able to run itself. あれほど多くの英国人がEU離脱を支持する投票をしたのは、我々が外国人に敵愾心をもっているからではなく、誰もが好きなように行動することを望んでいるからであり、自分たちの国のことは自分たちで決めたいと思ったからだ。
と述べたわけ。 |
ドナルド・トゥスク元欧州理事会議長 |
EUを離脱したのは英国人が自由を求めたから…ということは、解釈によってはEU加盟国が自由を求めていないようにもとれてしまうというわけで、2019年末まで欧州理事会の議長をつとめたドナルド・トゥスク氏(ポーランド閣僚評議会議長)はジョンソン首相の発言を「侮辱的」(offensive)としているし、英国保守党のバーウェル貴族院議員は「国民投票と(人間の命がかかる)戦争を比較するべきではない」(in
any way comparable with risking your life)と語り、自民党(Lib-Dem)のデイビー議長も「この発言はウクライナ人を侮辱するものだ」(an
"insult" to Ukrainians)とコメントしている。 |
ドイツのショルツ首相のランクが低いのは就任して間もないからと思われます。 |
ウクライナの状況については、世論調査機関のYouGovが「英国人が最も信頼するのは誰(どの機関)か?というアンケートを行っているのですが、最も信頼できるのはEU、信頼できないのは「フランス」という結果が出ているけれど、ボリス・ジョンソンへの信頼度も決して高いものではない。
また国別の政治指導者への英国人による人気度で見ると、ボリスは「良い」という点ではゼレンスキー、バイデンに次いで3位となっているけれど、「悪い」とする意見でもプーチンに次いで第2位となっているのだから、あまり安心はできない。 |
▼EU離脱に関する国民投票でBREXITが勝ってしまったのが、英国人の「自由への希求」が理由である、とボリスは考えており、それがウクライナ人の反ロシア感覚と共通していると言っており、それがEUに対する「侮辱」だというトゥスク元欧州理事会議長の反発は理解できますね、むささびには。ポーランド人であるトゥスクにとってEU加盟国であるということは、それほど軽いことではないということです。 |
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3)アフガニスタンの想い出
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むささびジャーナル332号(2015年11月15日)に『Zinky Boys:アフガニスタンの記憶』という特集記事が出ています。1979年~1989年、ロシアがまだ「ソ連」と言われていた時代に関わったアフガニスタン紛争に派遣されたソ連軍兵士とその家族による証言集です。前号・前前号に続いて、ベラルーシの作家、スベトラーナ・アレクシェービッチ(Svetlana Alexievich)による "Zinky Boys" というタイトルの本から抜粋して再掲載させてもらいます。この本の中で語られている「ソ連兵」の心情と、現在ウクライナ攻撃に参加しているロシア軍の兵隊のそれとの間に共通点があるのでは?と思われて仕方ないのであります。 |
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ソ連のアフガニスタン紛争への関わりをウィキペディアで簡単に説明します。いまから43年前の1979年、アフガニスタンの社会主義政権(アフガニスタン人民民主党)が、国内で頻発するイスラム系の反政府勢力の暴力に対抗するべく、同盟国であるソ連に軍事介入を要請、これに応える形でソ連軍が派遣され、10年間にわたって戦いを繰り広げた。が、結局ソ連軍は1989年に撤退する。つまり負けたわけです。その間、ソ連側の死者は約1万5000人、負傷者は約3万5000人とされているのですが、アフガニスタンでは約100万人の民間人が死亡したと推定されています。ここでは「ソ連側の死者」と書いていますが、アフガニスタンへ派兵されたのは、トルクメニスタンやウズベキスタンのようなソ連構成国でも地理的・文化的にアフガニスタンに近い国の人間ではなく、もっぱらロシア人であったそうです。アフガニスタンへのかかわりがきっかけではないにしても、撤退から約3年後の1991年12月26日に「ソ連」が解体することになる。 |
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むささびジャーナル332号では10人の帰還兵・その家族の言葉が一人称で紹介されています。ここではそのうちの二人の言葉を紹介します。一人は「怒れる帰還兵」で、もう一人は「砲兵隊兵士」なのですが、両方とも自国民(ロシア人)から浴びせられる冷たい視線にいたたまれない気分になっている。 |
怒れる帰還兵:平和主義者なんて消えちまえ!
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アレクシェービッチが行ったアフガニスタンからの帰還兵たちとのインタビューは、本として出版される前に、ソ連国内の地方紙に少しずつ掲載されていた。"Zinky Boys" は筆者のところへかかってきた電話から始まります。名前も言わずに「くだらないことばかり書きやがって・・・」と怒鳴り始める。 |
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平和主義者ほど気に入らねえヤツはいねえんだ、俺には。お前、戦闘服を着て山道を登ったことってあるのかよ、砂漠の雑草のトゲみたいなヤツが鼻につまって一晩中眠れなかったことなんてあるのかよ、え?ないんなら黙ってろ。オレたちのことなんかほっといてくれ。いいか、これはオレたちの問題なんだよ、お前には関係ねえんだ!
黙ってろ!オレたちのことはほっといてくれと言ってるんだ。いいか、あいつはオレのイチバンの友だちだったんだよ。兄弟みたいなものだったんだ。いいか、オレは、戦場からあいつを連れて帰ったんだ、ビニールの袋に入れてな。アタマが切り取られてたんだ。手も足も皮をむかれて丸裸だったんだ。あいつはバイオリンが上手かったし、詩を書くのも好きだったんだ。ホントならあいつが作家になっていたんだ、お前なんかじゃない!
あいつのおっかさんはな、葬式の二日後に気が狂っちまったんだよ。夜の夜中に、あいつの墓に走って行ってあいつと横になったんだよ。ほっといてくれ。オレたちは兵隊なんだ。命令に従い、軍の誓いに忠実であること、国旗に口づけもしたんだ。「お前の言う真実」(your
so-called truth)なんて知ったことか!オレはオレの「真実」を持ち帰ったんだ。皮を剥がれたあいつのアタマ、腕、手、足・・・。お前なんか、地獄へでも消えちまえ! |
砲兵隊兵士の言い分:私たちは悪くない!
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私たちは祖国(Motherland)を裏切ったりしていません。自分もできる限り誠実に兵士としての役割を果たしたつもりです。いま世間ではあの戦争は「汚い戦争」(dirty war)だとか言われている。でも「愛国心」(Patriotism)や「人民」(People)、「義務」(Duty)というものと「汚い戦争」はどんな関係にあるんですか?あなたにとって「祖国」というのは何の意味もない言葉なんですか?我々は「祖国」が求めることをやったのですよ。
私たちは兄弟であるアフガニスタンの人たちを助けようとして出かけて行った。私は真面目にそう思ってるんです。同志の人間はみんな真面目かつ正直にそう思っていたのですよ。なのにこの国では、私たちは「誤った戦争を戦う騙された兵士たち」(misguided fighters in a misguided war)ということにされている。私たちのことを「考えの甘い愚か者たち」(naive idiots)などと呼んで何のいいことがあるんですか?そうやって「真理を追求する人間」(truth seekers)になるってことですか?イエス・キリストが処刑される前にピラト(キリストの処刑を許可したユダヤの総督)に何を言ったか憶えていますか?
- 「わたしは真理についてあかしをするために生れ、また、そのためにこの世にきたのである。だれでも真理につく者は、わたしの声に耳を傾ける」(ヨハネの福音書)
するとピラトがイエスに「真理とは何か?」(What is truth?)と問いかけたのですよね。それに対する答えは未だに出ていないけれど、アフガニスタンでの戦争についての私なりの真理(my
own truth)は、自分たちは甘かった(naive)かもしれないが悪いことはしていない(innocent)ということです。 |
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▼アレクシェービッチの原作にはこのような「証言」が45人分出ている。原作のタイトル(ロシア語)を英訳すると "Zinc Boys" となる。Zincは「亜鉛」です。この戦争に参加した兵士が戦死すると亜鉛でできた棺桶に入って「帰国」することからこのようなタイトルになったのでしょう。45人の「証言」がすべて一人称で書かれており、それぞれが自分の思いをぶつけているのですが、作者であるアレクシェービッチは「私は常に人間の声を通して世界を見ている」と語っています。 |
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4)ロシアは中国のお荷物?
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フランスの国際問題誌 Le Monde Diplomatique の英文サイト(3月7日付)に出ていた記事を紹介します。見出しは "China’s Russia problem"(中国のロシア問題)となっています。ロシアのウクライナ侵略についての中国の立場を解説するものです。掲載されてからほぼ一カ月も経つので、書いてあることがどの程度今の状況に合っているのか自信はありませんが。筆者はパリにあるアメリカン大学のフィリップ・S・ゴラブ(Philip
S Golub)教授です。 |
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棄権した国に注目を
国連総会が3月2日、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて緊急特別会合を開催、ロシアに対して軍事行動の即時停止(immediately, completely, and unconditionally withdraw)を求める決議案を141カ国の圧倒的賛成多数で採択しました。国連加盟国は193か国、反対票を投じたのはベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、ロシア、シリアの5カ国のみで、棄権は35カ国だった。この投票結果は「ロシアの国際的孤立を示すもの」というのが大方の見方のようなのですが、ゴラブ教授は「棄権」した国々にも注目することを勧めている。Global Southと呼ばれる、アフリカ・アジアを中心とした国々です。 |
Global South
国連総会の投票に棄権した国々 |
- アフリカ:アンゴラ、ブルンジ、マリ、モザンビーク、ナミビア、セネガル、南アフリカ、南スーダン、タンザニア、ウガンダ
- アジア:中国、インド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュ、ベトナム、ラオス、モンゴル、カザフスタン、キルギスタン(トルクメニスタンとウズベキスタンは投票に不参加)
- 中東:アルジェリア、イラン、イラク
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もちろん「棄権=ロシア支持」というわけではないし、これからのロシアの行動次第では反ロシアの声がますます高くなっていくことは想像できる。が、教授によると、それでもこの投票結果が示すのは西側の政府やメディアによって謳われているほどには「世界は無法な独裁国家に対して団結している」(a
world united against lawless authoritarianism)ようなものでもない。例えば、棄権国の人口を合わせると世界の人口の半分になるのだそうですね。
NATOの東方拡大に責任?
国によって異なる事情があるとしても「棄権した国々には共通した問題意識のようなものがある」と教授は言います。一つはNATOの東方拡大に対してロシアが抱いている敵意に対して米欧諸国が責任を感じるべきだということであり、もう一つは世界がかつてのように「西側」を中心に動いているわけではないということを理解するべきだということ。後者に言う「西側」(北大西洋を挟んだ米欧諸国、東南アジアにおけるアメリカの同盟国)のことです。
中国の外交政策の根っこにあるのは、まさにこのような意識であり、今回のロシアの行動に対しても事実上の「支持」のような態度をとっているように見える。が、実は中国は2014年のロシアによるクリミア併合も認めてはいないのだそうです。 |
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ウクライナの戦争が始まった当初、中国はアメリカによるNATOの東方拡大こそが犯人であると非難していた。2月4日に北京の冬季五輪の始まりに際して会談したプーチンと習近平が発表した共同声明は、次のように主張していた。
- 中露双方ともにNATOの拡張に反対し、北大西洋同盟は(世界に対する)冷戦思考のアプローチを止めることを要求する ‘both sides oppose further enlargement of NATO and call on the North Atlantic Alliance to abandon its ideologised cold war approaches.’
態度が微妙に変化
が、ウクライナ戦争が激化するにつれて、北京の言葉遣いが微妙なもの(nuanced)になってきた、と教授は見ている。ロシア軍の爆撃による市民の犠牲について、中国政府の高官の口から出たのは「大いに憂慮」(extreme
concern)とう言葉であり、3月2日にはウクライナ・ロシアの停戦のために仲介役を果たす気があるとまで言い始めた。3月3日には中国の国連大使が次のようなコメントを述べている。
- 状況は中国の希望とは相容れないところまで来てしまった。誰にとっても利益にはならない。The situation has evolved to a point which China does not wish to see…it is not in the interest of any party.
とはいえ、この時点の中国は明確にロシアから距離を置くという姿勢ではなく、悪化する経済状況に悩むロシアに助け船を提供しようとさえしていた。が、ある日本の関係者の言葉を借りるならば
- 北京においては、もしこれ以上中国が「プーチン劇場」に引き込まれるようなことをすると、それは国家利益そのものに反することになってしまう。'concerns are growing (in Beijing) that if China allows itself to be dragged further to the “Putin Theatre”, its national interests will be undermined’.
と思われるようになってしまった、というわけです。 |
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つまりプーチンによる征服戦争には、中国が忍耐強く進めている、地球規模の管理体制の変革努力を不安定にすると同時にユーラシア大陸から東南アジア、オセアニア、そしてアフリカまでも組み込んだ新たなる国際体制の確立までも破壊しかねない危険性が潜んでいる、と中国は考えるようになっている。
ロシアは「役に立つ」存在
ウクライナ戦争が起こる前まで、中国はロシアという国が抱える知的・政治的エリートたちのことを、影響力の強いユーラシア人であり、常に西側より東側に眼を向けている存在であると考えていた。地球規模の新たなるバランス体制構築のために「役に立って必要(しかし地球規模の改革の努力の中では下位に属する)」存在であると見なしていた。ロシアは中国にとっては、石油・石炭・ガスなどのエネルギー供給国としてのみならず軍事技術の供給源であり、農業製品の輸出先でもある。
中国にとってロシアは中央アジアを経由してヨーロッパへと続く「シルクロード経済ベルト」(Belt and Road Initiative:BRI)の構築にとって「必要な存在」である(が、力関係では圧倒的に中国優位ではある)。 |
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中国としては、長い目で見て世界における権力の再分配(redistribution of power in the world)を狙っているけれど、ウクライナ戦争がもたらしたのは、アメリカを中心とする西側資本主義諸国の再軍備と団結の促進でしかなかった。ウクライナ戦争がよほど激化しない限り、中国がロシアを見捨てるということは考えにくいけれど、これからの中ロ関係を考える限りにおいては、ロシアの対中国依存度がますます高くなり、中国にとってはロシアに関する限り優位な立場に居続けることになる。ただそうは言っても中国の世界戦略に支障をきたすような戦争を許すわけにはいかないし、それは民主主義の国である台湾との「無理押しの統一」をますます困難にする。
対ロ影響力には限界?
つまり中国としては、ウクライナ戦争の結果を注意深く見守りながら、欧米側とロシア側のどちらが国際社会における立場を強めることになるのかを慎重に値踏みするということになる。理論的には、中国はロシアに対して話し合いをするように圧力をかけるだろう、と思われるけれど、中国がいまのロシアに対して持っている影響力には限界があるかもしれない。
というわけで、ゴラブ教授のエッセイは次のように結ばれている。ちょっと長いけれど、そのまま引用します。
- ただ注目すべきなのは、3月5日に発表された2022年の中国の国防費予算(1兆4500億元:2300億ドル)が、2018年のそれ(1兆1000億元)に比べると7.1%の増額となっているということだ。中国政府はこの増額について「厳しい外的脅威と不安定な安全保障環境の中で、国家主権と領土保全を守る」ためだとしている。In the meantime, the Chinese government announced on 5 March a 7.1% increase of the defence budget, to 1.45 trillion yuan ($230bn) in 2022 (against 1.1 trillion yuan in 2018) ‘to safeguard national sovereignty and territorial integrity amid severe external threats and an unstable security environment.’
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▼プーチンの無茶苦茶も結局は、最近世界的に目立つポピュリズム(政治の極右化)現象の一つとしてとらえることができるのでしょうか?それにしても分からないのは「NATOの東方拡大」と「ウクライナはネオナチ」というロシアの主張は、どのような相互関係にあるのかということです。 |
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5)どうでも英和辞書
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hoax call: いたずら電話 |
3月18日付のBBCのサイトに
という見出しの記事が出ていました。Ben WallaceもPriti Patelもジョンソン政権の閣僚で、前者は防衛、後者(女性)は内務大臣なのですが、二人がウクライナ戦争に絡む「いたずら電話:hoax calls」の標的にされたというわけです。
恥ずかしながら、"hoax" という言葉にお目にかかったのはこれが初めてだったのですが、Cambridgeの辞書で引くと
"a plan to deceive someone"(計画的に他人を騙すこと)と説明されており、その例として "telling
the police there is a bomb somewhere when there is not one"という文章が出ています。
- The bomb threat turned out to be a hoax.
- He'd made a hoax call claiming to be the president.
などもよくあるケースですよね。前者は「爆弾を仕掛けた(仕掛ける)という脅迫電話がニセだった」というケースであり、後者は「社長を名乗ってニセ電話をかけた」ということですよね。ちなみにBBCの記事によると、防衛大臣にかかってきたのはビデオ電話で、「ウクライナの首相」を名乗り、ウクライナの国旗を背景に喋っていたのだそうです。日本には「オレオレ」なんてのがあるけれど、アメリカや英国で "Hey, it'me" なんてやっても...ダメだろね、多分。 |
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6)むささびの鳴き声
▼北九州市にある東八幡教会についてはこれまで何度か紹介してきました。同教会のサイトのトップページに「巻頭言」というタイトルのコラムが載っています。3月13日付の「巻頭言」に掲載されたエッセイのタイトルは『貧しさとさびしさの果てに』となっているのですが、テーマはウクライナの戦争のことです。筆者(おそらく奥田知志牧師)が取り上げているのは、この戦争で直接殺し合っている人間たち(兵士)のことであり、彼らに戦場へ行くように命ずる国のリーダーのことではない。
▼牧師によると、殺し合っている兵士たちにしてからが好き好んでやっている人間はいない。やらざるを得ないからやっている。何故やらざるを得ないのか?理由が二つあり、一つは「貧しさ」、もう一つが「さびしさ」である、と。前者の「貧しさ」は突き詰めると「食えない」状態にあることを意味する。食べ物がない、カネがない、つまり衣食住に事欠く状態にあることです。そうなると人間は戦場も含めてどへでも出かけていく。ということは、貧困状態が解消されれば、誰も戦場に向かいたいなどと思わなくなる。国のリーダーはそのことをアタマに入れている、と奥田牧師は推測します。
▼ただもう一つの理由である「さびしさ」は「貧しさ」よりも複雑で、貧困が解消されても「さびしさ」の問題は残る、と。牧師は「さびしさ」のことを「自分が世の中で全く必要とされない存在なのではないか?」という不安感のことである、と説明している。そのような感覚を抱えながら生きている人間は、国家から「君が必要だ」と言われたら、戦場に自分の存在意義を見出そうとしてしまうというわけです。
- 国家があるべき他者に成り代わり一定の価値軸となる時、私たちは大きな幻想の中に生きることになります。かつての日本がそうであったように(奥田牧師)。
▼年齢からして、奥田牧師自身は「かつての日本」を実体験としては知らないはずです。いま、ウクライナでは二つの国の人間が、国家から「君が必要だ」と言われながら戦っているように見えるけれど、家屋が破壊され、兵隊でもない人間が殺されているのは、もっぱらウクライナの方です。二つを同列に並べて語ることなど出来るのでしょうか?ウクライナの人たちにとって、ゼレンスキーの言う「君が必要だ」は、必ずしも幻想ではないかもしれない。ロシア兵の心理はこのむささびジャーナルの「アフガニスタンの想い出」に出てくる「怒れる帰還兵」と同じような心理状態なのかもしれない。彼らはプーチンの言葉をそのまま受け取っているのだろうか?
▼TBSが土曜日の夕方に放送する『報道特集』という番組で、ベラルーシのルカシェンコ大統領がインタビューされていました。彼こそはプーチンの「戦友」のような存在ですよね。インタビューの中で彼が言っていた次の言葉が非常に気になりました。
- 私や世界にとってもソ連の崩壊は悲劇だった。今となって全世界がそれに気づいたわけです。
▼ルカシェンコは1954年生まれ(67才)で、プーチンは1952年生まれの69才、両方ともソ連崩壊の時には30代半ばだった。18才からのざっと20年間を「超大国」の若者として生きていたわけだ。ゼレンスキーは?44才!プーチンもルカシェンコもそれぞれの国では「過去の人」なのでは?長々と失礼しました! |
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