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美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
musasabi journal
第125号 2007年12月9日


2007年も、もうすぐ終わりですね。なんだかよく分からないうちに月日だけが過ぎてしまいました。 が、記憶に残るだろうと思うのは、夏の暑さです。私、66年生きていますが、暑さに恐怖を感じたのは、あれが初めてでした。

目次

1)サッカーの世界にもウィンブルドン化現象?
2)国際学力調査:英国のショック
3) OECD調査:各国垂涎の的、フィンランドの反応
4) 英国人が考える「望ましい社会」
5)短信
6)むささびの鳴き声

1) サッカーの世界にもウィンブルドン化現象?


英国はサッカー発祥の地ですが、11月22日付けのThe Economistによると、英国のプレーヤーはそれほど活躍していない。11月21日に行われたEuropean Championshipへ出場するための予選で、イングランドのナショナル・チームは負けてしまった。英国の選手が活躍しないのには、それには理由があるんだそうです。

この場合の「英国」はイングランドのことですが、イングランドの選手がどうダメかというと、欧州の32クラブ・チームが競うChampions Leagueという選手権の最近の例を見ると、イングランドの選手の数は10人。それに対して他の国は、ブラジルの約50人を筆頭にフランス、イタリア、スペインなどは30人以上、アルゼンチン、ドイツ、ルーマニア、トルコ、チャコ、セルビア、オランダなども10人以上はChampions Leagueで活躍したのだとか。

何故イングランドの選手がダメなのかということについてはいろいろな意見があるのですが、その一つが、イングランドのクラブが外人選手を使いすぎるというクレームで、Gerry Sutcliffeスポーツ大臣などもこの意見。英国のサッカーチームは、英国人の選手を使わなければならないという義務が全くないので、外人ばかりに頼りがちで、自国の選手が育たないという批判です。

「その批判はおかしい」というのが、The Economistで、他の国でも自国選手を使うという義務などはないのに、強いところは強いというわけです。

外国人を雇う方が安いということはあるかもしれないが、それは然るべきスタンダードに到達した外国人選手が、英国人よりも沢山いるというのが理由だ。イングランドのチームに外国人が少なかった時代でも、イングランド・ナショナルチームが現在強いということはなかったのだ。Foreign players are cheaper to buy, but that is because there are more of them who reach the required standard. And when there were few foreigners in English football, the national team was no better.

イングランドがダメなのは選手の育成方法に問題があるのだそうです。イングランドでは若手の育成は、それぞれのプロのクラブが作っている「アカデミー」に任されている。ここでの練習(コーチング)は週2−3回というのが一般的なのですが、ヨーロッパの国の場合は5回くらいは練習するのだそうです。

フランスでは、若いサッカー少年は12才から16才までの5年間で、2300時間以上のコーチングを受ける。これはイングランドの2倍だとか。イングランドの場合は、試合における実践練習というのが一般的なのですが、これだとボールに接する機会も限られているので、若手育成の方法としては間違っているというわけです。

フランスの場合、1988年にClairefontaineという所にナショナル・アカデミーを開所、90年、94年のワールドカップには出場できなかったのですが、98年には優勝、その2年後にはヨーロッパ選手権でも優勝している。この両方で活躍したのが、Clairefontaine育ちの選手だった。イングランドでも5年前に、フットボール協会(FA)が同じようなナショナル・アカデミーを作ることを決めており、場所もBurton-upon-Trentに決まっているのですが、それぞれのクラブが自分たちの若手育成にこだわっていて、なかなか動き出せないでいるのだとか。

アカデミーで練習を始めるのは、大体9才ごろかららしいのですが、FAの関係者は、そもそも子供のためのサッカー環境が悪くなっていると言っています。「危険な道路」(dangerous streets)ということもあるし、子供がボールを蹴って遊ぶフィールドそのものがなくなりつつあるのだそうです。

The Economistによると、外人選手の流入を制限しようという動きには支持者が増えているとのことで、これはサッカーに限ったことではなく、ブラウン首相も最近の演説で「英国の職場は英国人に」(British jobs for British workers)と発言したりしている。この発言は、サッカーではなくて移民問題に関係したものだったのですが、最近の政治的な雰囲気からすると、外国人と競争する中で、競争力を身につけるよりも「自国民保護」の声の方が大きくなっている。で、The Economistとしては、この種の保護主義には反対で、次のような結論になっています。

FAやフットボール関係者が今年の7月に出した若手育成の関する見直し案は、外人選手の割り当て制度には反対であり、(英国の)のコーチや5〜11才の子供たちの技術向上に力を入れるべきだとしている。こうした声こそが拡がるべきであり、保護主義は他の分野と同じように二流選手を甘やかすだけである。A review of youth development, commissioned by the FA and other football bodies and published in July, rejected the idea of quotas in favour of improving coaching, particularly of children from five to 11 years old. These voices deserve to prevail. In football, as elsewhere, protectionism merely coddles the mediocre.

▼この記事の中の「子供がボールを蹴って遊ぶフィールドそのものがなくなりつつある」という部分は面白いですね。私の好きな野球についても同じことが起こっている。最近、空き地でキャッチボールをしたり、一人で塀にボールをぶつけて遊ぶ子供の姿が全く見られないですね。よくないことであります。 でも「危険な道路」(dangerous streets)というのはどういう意味なのか?クルマの通りが多いので危険ということなのか、犯罪が多いという意味なのか・・・?

▼ウィンブルドン化現象(Wimbledon effect)というのをご存知ですよね。テニスのウィンブルドンは世界でも一番有名なイベントで、ロンドンを会場とはしているけれど、英国のテニスプレーヤーが優勝したのは30年前で、それ以後全く優勝なし。サッカーについても似たような現象があるというわけですね。

▼私、サッカーは辛気臭くて面白くないと思っていました。90分も走り回って、点数がせいぜい3点。疲れるだけだと・・・。しかるに最近、NHKの衛星放送でイングランドのプレミアリーグなるものの試合を見たのですが、結構面白かったですね。90走り回って2点ということに変わりはないのですが、パスされるボールが長いのですよ。チマチマしていない。あれなら見ていてもスリルがある。

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2) 国際学力調査:英国のショック


経済協力開発機構(OECD)による学習到達度調査(PISA)の国際比較なるものが発表され、日本の15才(高校1年生)は読解力で前回の14位から15位へ、科学的応用力では2位から6位へ、数学的応用力では6位から10位へと、それぞれ下落したということが、新聞やテレビで大きく伝えられましたね。英国ではどうだったのかというと、読解力は7位から17位、科学的応用力は4位から14位、数学的応用力は8位から24位へという具合で、日本に比べるとかなりドラスティックな落ち込みぶりでした。

この結果について、Guardianのサイトを読んでいたら、英国教職員組合のSteve Sinnott専務理事という人が、中学における科学教育が「お仕着せ的(over-prescribed)」で「詰め込み的(overloaded)」すぎることを批判しながら次のようにコメントしていました。

小学校における科学教育は英国が誇るべきものだが、中学校の教師は、器具も足りないし、学級のサイズも大きすぎる。それに子供たちに実用的な科学の楽しさを教えるプロ教師としての自由が許されていない。Science in primary schools is one of our greatest achievement. Science teachers in secondary schools need the equipment, small group sizes and professional freedom to enthuse youngsters about the joy and relevance of practical science.

またRoyal Society (日本でいう学術会議)のMichael Reiss教育担当理事は

若者がほかの国と比べて優れた教育を受けていないのでは、英国が将来、経済的に繁栄することなど望むべくもない。How can the UK hope to compete economically in the future if our young people are not as well educated as those in other countries?

と言い、産業連盟(日本いう経団連)のRichard Lambert専務理事は,

グローバルな競争がますます激しくなる中で、英国は"平均"だけではやっていけないのだ。At a time of increasing global competition, the UK cannot afford to be 'average'

と発言しています。いずれもかなりの危機感というわけです。

The Independent紙の社説は「英国には世界的にも優れた小中学校があるが、余りにも多くの遅れた学校をそのままにしてしまっており、それが国際ランクを下げる結果となっている」(Our best schools, both primary and secondary, are world class. But we are tolerating too many failing institutions)として、

ブレア政権が好んで採用したターゲット設定と頻繁なテスト実施というマネジメントのやり方では、英国が必要としている改善がなされなかったのだ(The managerial techniques of targets and constant testing favoured under Mr Blair have not delivered the improvement we need)

と言っている。この社説は、一番必要なのは、「優れた授業方法の確立と教育における柔軟な構造(emphasis on best teaching practice and more flexible structures)」だと言っています。「優れた授業方法」の例としては、小学校での読解力促進のために、綴りと発音を関連付けて教えるphonics methodが採用され始めていることを挙げており、「柔軟な構造」としては、学校運営を学校に任せようという姿勢が政府にうかがえることを挙げています。

この社説は結論として

PISAのような報告が伝える重要かつ避けることのできないメッセージは、英国の教育制度の現状についての独りよがりは全く不適切だということである(the underlying and inescapable message from these reports is that complacency about the state of our education system would be completely inappropriate.

と言っています。

▼OECDの調査は2000年から始まって3年に一度やるんですね。今回発表されたのは、3度目で2006年の調査です。日本の「前回」は2003年のことなのですが、英国は2003年には参加しなかったので、「前回」というのは2000年のことだそうです。いずれにしてもブレアさんが教育の向上を最大の公約として1997年に政権につき、3年後の2000年のPISA調査ではかなり上位にランクされていた。あれはナンだったの?ということですね。

▼私、個人的にはPISAには興味がないので、日本や英国がどこにランクされても構わないのでありますが、面食らってしまったのは、この調査報告についての日本の新聞各紙の扱いです。12月5日付けの朝刊(読売・朝日・産経・毎日・日経・東京)はいずれもPISAのことを第一面に取り上げたばかりか、中の面でも極めて大きなスペースを割いて解説記事を載せておりました。また産経を除くと全部の新聞が社説で取り上げていました。

▼英国の新聞については、ペーパーそのものを見ることが出来ないので、詳しくはわからないけれど、各紙とも取り上げていて、「情けない」「嘆かわしい」「何とかしなければ」という類のコメントが載っていたのは、日本の新聞と似たようなものであったのですが、推測するに新聞では第一面にデカデカという報道ではなかったのではないか?サイトに見る限りではフロントページに掲載されてはいなかった。どれもeducationというセクションの中で報告されていました。

▼日本と英国の新聞の取り上げ方のどちらがいいのかということは、私が言ってみても始まらないけれど、はっきり言って、日本の新聞の取り上げ方は異常だと思う。まるで教育専門誌のような取り上げ方です。これってそれほど「おおごと」なんですか?たかだかOECDとかいうところが何か言った程度で、なぜ日本の教育が間違っていると決めつけるのか?

▼こんなこと言ってみても「ごまめの歯ぎしり」に過ぎないのですが、新聞という新聞が、OECDの学力調査比較を第一面で報道し、どの新聞も「な、なんとかしなきゃ・・・!」というようなヒステリー症状風の見出しを付けている。これらの新聞を作っている編集者たちのアタマの「画一性」が気持ち悪くありませんか?それは彼らがかつて受けた小・中・高・大学における教育の産物なのですよね。そう考えると余計、気持ち悪い。

▼思わず笑ってしまったのは、朝日新聞の「考える力を育てるには」という社説でした。日本の教育は「勉強のできる子とできない子の二極化が深刻な問題」であり「公式をそのままあてはめるような設問には強いが、身の回りのことに疑問を持ち、それを論理的に説明するような力が弱い」というのが深刻な問題だというわけです。そこで「学力の底上げと応用力。二つの課題を克服するには、どうすればいいのか」と問いかけて、次のように言っている。

  • 一人一人の学習の進み具合をつかみ、授業についてこられなくなったら、そのつど手助けする。落ちこぼれをつくらないためには、きめ細かな後押しが要る。
  • 応用力を育てるには、公式の当てはめ方などを機械的に教えるのではなく、その論理を子どもたちに自ら考えさせる。そんな授業が求められる。

    ▼なるほど・・・で、どうすればよろしいんですか?というと:

  • いずれも、十分な教員の数とともに、その質を上げることが必要だろう。 単に授業時間を増やしただけでは、どうしようもないことは文科省も承知のはずだ。応用力が問われているのは、文科省もまたしかりである。

    ▼分かります?私にはさっぱり分からないのですよ。落ちこぼれがいたら親切に手助けをするような質の高い教師を沢山作る必要がある・・・なるほど、結構じゃありませんか。で、どうすればそのような教師が沢山作れるの?という疑問については、授業時間を増やせばいいということではない、としか言わない。挙句の果てに「文科省の応用力が問われている」では、何を言っているのか・・・分かります?私には分からん、さっぱり。

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3) OECD調査、各国垂涎の的、フィンランドの反応


今回の学力調査では、受験したフィンランドの子供たちの4%が最高レベルの成績をとる一方、他の国の平均は1・3%だったのですね。そのことについてフィンランドの新聞、Helsingin Sanomat(英文版)は、Jarkko Hautamakiという教授の意見として「フィンランドの教育における過度な平等主義は特別な能力を持った人間を育てないという批判に根拠がないことが分かっただろう」と伝えています。

Helsingin Sanomatによると、OECDの学力調査結果は、これに参加した学校の質によって違いが出て来るのですが、フィンランドの場合、学校間の違いが非常に小さいので、どの学校が参加しても違いは6%程度なのだそうです。これが他の国になると34%の違いに繋がるのだとか。

この新聞はまたOECDの調査に対しては批判があることも伝えています。University of ViennaStefan Hopmannという教授は、テストで使われる質問が「極めてアングロサクソン的」であり、文化的なバイアスがかかった、このテストの結果に基づいて教育計画を作ろうなどと考えない方がいい」と言っています。またフィンランドのTurkuという町にあるスウェーデン語の大学、Abo AkademiMichael Uljens教授(教育学)は「OECDのテストは教育の分野で競争をあおるようなことをしている」と批判しています。

▼私自身、このテストの問題を見たことがないので、質問がvery Anglo-Saxonだと言われてもよく分からないのですが、極めて素朴な疑問として、日本や英国の新聞を見ていると、このテストをあたかもオリンピックの成績を伝えるような報道をしているのは、おかしいんでない?ってことです。勝った・負けたのハナシではないだろが、と言いたいわけです。確か安倍首相の教育再生会議だったと思うけれど「PISAで上位を取るような教育を目指す」と言っていましたね。ナニ考えてんだろ、と思いましたね。

▼それから、OECDの学力調査のたびに日本のメディアでは「フィンランドの教育に学べ」というような発言が報道されるけれど、何故か「韓国や台湾に学べ」という声は余り聞こえてこないんじゃありません?私が知らないだけなんでしょうか?

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4)英国人が考える「望ましい社会」


世論調査だのアンケートだのというものが、本当にどの程度世の中の実態を反映しているのか、よく分からない けれど、数字が出て来るのでハナシのネタとしては扱いやすいし面白いですよね。例えば昨年(2006年)1月に英 国のMORIという機関が行ったアンケート調査は、Britain Todayというタイトルにふさわしく、英国人の幸福感覚から 政治意識にいたるまで、非常に幅広い調査で、日本との共通点・相違点がいろいろ見えて楽しい。大衆紙、The Sunからの要請で 行った調査なのですが、対象は1001人の成人、うち約280人が「週に少なくとも一度はThe Sunを読む」という人た ちでありました。

英国人の考える「望ましい社会」(ideal society)についてのアンケートは、テーマが「福祉」、「所得」、「教育」の3つ があって、それぞれに二つの「理想」が与えられ、「アナタの考える"理想の社会"に近いのはどちらですか?」とい うのが設問になっています。カッコ内はThe Sunの読者に限定した数字です。

社会福祉:AとBではどちらが望ましいか?
A)福祉が社会的・集団的に提供される社会
 a society which emphasises the social and collective provision of welfare
48%(47%)
B)自分のことは自分で面倒見ることを奨励する社会
 a society where individuals are encouraged to look after themselves
46%(48%)

日本でも議論が盛んな「大きな政府(A)」か「小さな政府(B)」かということですよね。殆ど半々というわけですが 、A)のグループが意外にがんばっているんだ、というのが私の感想です。サッチャーさんからこの方30年、 英国はもっぱらB)を走ってきた。これを称して「近代化」(modernisation)というわけですが、別名「ア メリカ化」(Americanisation)でもある。おそらく世の中が動いている方向はB)なのだろうとは思いますが、A)は英国人たち が自分たちの社会に対するコミュニティ感覚の表れだと思う。それが結構根強いということ。

所得の分配:CとDではどちらが望ましいか?
C)誰でも好きなだけ金を儲け、これを貯め込むことが許される社会
a society which allows people to make and keep as much money as they can
46%(46%)
D)誰にとっても似たような所得・報酬を大切にする社会
 a society which emphasises similar incomes and rewards for everyone
48%(50%)

「平等社会」か、「自由競争社会」か?という議論ですよね。これもほぼ半々ですが、The Sunの読 者に限ると、自由競争よりも、同じような生活レベルという方を大切と思ったいる人が少しだけ多い。これも英 国人のコミュニティ感覚の表れだと思うのですが、ご存知のとおりThe SunRupert Murdochという社主のサッ チャー流保守主義の色彩が濃い新聞のはず。サッチャーさんの有名な言葉に「強欲であることは悪い事ではない」(There is nothing wrong with greed)というのがあるのですが、読者の庶民感覚はD)ってことなんですかね。

教育の目的:EとFではどちらが望ましいか?
E)子供たちに幅広い一般的な教育を与える社会
a country in which the schools provide children with a wide-ranging general education
68%(66%)
F)子供たちに企業が望むような技能や態度を教える社会
a country in which the schools provide children with the particular skills and attitudes wanted by employers today
29%(32%)

ここがイチバンはっきり分かれましたね。やはり面白いのはThe Sunの読者のかなり多くが、技能教育よりも一 般教育が大切だと考えていることでしょうね。この場合のgeneral educationとは具体的にどのような教育のこ とを言うのか、私にははっきり分からない。が、学校では職業訓練ではなくて、社会とか歴史などを教えること が大切と考えている人が非常に多いってことですよね。20年前には、英国でも「そんなの甘い」と言われたもの ですがね。時代が変わって、The Sunの読者も豊かになったということか?

▼これら3つのアンケートを通して見えるように思うのは、英国の人々は一般的に言って、ギスギスの競争社会 にはついていけないと感じているということなのでは?

MORIのアンケートには、「幸福度」調査も含まれています。個人の生活面での幸せ感覚です。「幸福」の定義は ともかくとして、「アンタ、幸せ?」と聞かれれて、英国人は次のように答えたそうなのですが、それをアメリ カ人、日本人と比較すると次のようになる。 アメリカはGallup、日本はNTTナビスペースの調べで、いずれも昨年(2006年)行われたものです。

アンタ幸せ?
 
英国
アメリカ
日本
幸せ
85%
96%
55.6%
不幸
7%
4%
21.7%
どちらでもない
6%
--
21.1%

というわけで、偶然とはいえ、同じような時期に行われたアンケートにおける「幸福度比較」では、上から米・英・ 日の順になり、「不幸度比較」では日本がダントツ、英米がかなり低いということになる。日本の「どちらでもない」を「幸せ」と勘定したとしても、「不幸」の21.7%は際立っていますね。

くどいようですが、私自 身は統計学者でも心理学者でもないので、「これらの数字が本当に信用性があるのか?」とか「幸福って何?」と か言われると困ります。ただの遊びです、これは。

それにしても、日本と英米の間にこのような差が出るのは、何故なのでしょうか?物質的なことは関係ないと思います。昔は住宅環境の差なんてことが言われたものだし、今でもアメリカの住宅は大きくて立派かもしれないけれど、日本人は「ウサギ小屋」(こんなこと30年前に言われたものですよね)でも、それが理由で幸福だの不幸だのということはない(ですよね)。

▼で、「そんなアホな」と言われることを覚悟で言うと、私なりの答えは、英米においては、自分が不幸であると言うのは道徳的に間違っていると考えられているということでございます。日本人にはその種の道徳的制約はない。これは宗教・信仰と関係するのではないかってことなんです、私が言いたいのは。キリスト教(イスラム教やユダヤ教も多分同じ)社会では、神によって生かされているのだから、それを「不幸」だなんて許されない。日本人にはその種の宗教心はない。

▼つまり数字だけ見ると、何やら日本人は「不幸」のように見えるけれど、それは日本人の感覚が宗教だの神だのというものに影響されることが少なくて、自分に正直であるのに対して、「あちら」は、無理やり「幸せ」と言い張っているだけってことであります。

で、最初に挙げたMORIの調査に戻りますが、圧倒的多数の英国人が幸せだと思っているわけですが、あえて心配と思われる事柄を挙げて聞いてみると:

心配だ
心配ない
金がなくなること
24%
32%
職を失うこと
13%
48%
夫婦・恋人関係
8%
53%
年をとること
8%
52%
年金のこと
18%
51%

▼驚くべき数字だと思いませんか?金銭は別にして、リストラ、高齢化、年金、夫婦関係など、いずれをとって も「心配なし」の方がはるかに高いのですよ。これらはいずれも個人的な事情にかかわるものです。それが「心配 なし」というのですから、結構じゃありませんか。 これらの数字を見ると「本当は日本人の方が幸せかも」なんて言えないな。

もちろん英国人だって心配事が何もないわけではない。「心配だ」が「心配ない」を上回るものをいくつか挙げてみると:

心配だ
心配ない
子供のこと
21%
20%
最近、他人への思いやりに欠ける人間が多い
30%
15%
子供をインターネット・ポルノから守る
38%
20%
子供をインターネットの小児性愛者から守る
44%
17%

どちらかというと「社会現象」としての心配事はある、というわけです。それと「子供」が絡んでくるんですね。インターネットが子供に及ぼす悪影 響を心配しているのは、おそらくどこの国の親も同じでしょう。「他人への思いやり・・・」というのは、アメリカ化に対する不満かも。

▼ここには挙げていないけれど、テロリズムについては、「心配:39%、心配なし:59%」で、案外心配していな いんですね。この調査は、あのロンドン・テロの後に行われたのですが・・・。テロについては「心配してもしゃあ ないじゃん」というところなのかもしれない。何せ英国人は、あのIRAのテロも経験しているのですからね。「不幸慣れ」ってことか・・・。

▼最後に付け足しアンケートを二つばかり紹介しておくと、「英国には世界でもベストと思われる新聞がある(Britain has some of the best newspapers in the world)」というステートメントについて、The Sunの読者の72%が「賛成(agree)」と答えています(反対はたったの18%)。ホンマかいな!?

▼それから「真の英国人であるためには白人でなければならない(To be truly British you have to be White)」というステートメントについてはthe Sunの読者の91%が「反対」していますが、9%が「賛成」と答えているのは気になる。

 

 

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5)短信


世界一重いバイク

このバイク、重さ4・5トン。世界でイチバン重いオートバイなんだそうです。ドイツのZillyというところにあるバイク工場で職人たちが協力して1年がかりで作ったもので、ロシア製のエンジン(重さ1・8トン)を搭載しているのだそうです。ギネスブックに載ることになっているのですが、まだ道路を走るライセンスは取れていないのだとか。

▼好きものってのは、いるんですね。

車椅子でスピード違反

これもドイツの話題。Gesekeという町で電動車椅子に乗った人が時速40マイル(60キロ以上)で走って警察官に止められた。54歳になるEichmannさんという元エンジニアで、車椅子の電気エンジンを自分で改良したのだそうです。電動車椅子のスピード違反だとかで、捕まったのはこれで2度目。車椅子は没収されたのだとか。

▼車椅子で60キロというのは確かに速い。怖くないんですかね・・・。

肉屋の営業妨害?

Brian Clapton氏(50才)はイースト・ロンドンのBarkingというところで35年間、肉屋をやっているのですが、最近、町当局から2週間以内に防音設備を導入せよという命令を受けて途方に暮れております。最近、2階に引っ越してきた人が、肉屋が肉を叩く音がうるさい、と町当局に訴えたらしい。命令を守らないと裁判に訴えると言われている。「肉屋の2階で暮らすんですよ。どんな音がするか分かりそうなもんでしょうが」(What do you honestly expect to hear if you move in above a butcher's shop?)と怒っております。当局はさらに週日の午前6時と8時の間は肉叩きを禁止する命令を出した。「それ、肉屋にはイチバン大事な時間なんだよ。お客に肉を用意するんだから」(That's the most important time for a butcher - getting meat ready for the customers) と困り果てている、とThe Sunが伝えております。

▼怒るのも無理ないですよね。

 
6)むささびの鳴き声


▼シューマイの崎陽軒が、「不適切な原材料表示」をしていたというので、謝罪の記者会見をやっていましたね。テレビで見ました。確か11月28日、NHKの夜9時のニュースだった。よく分からなかったので、翌日、新聞を見たら、日本農林規格とか言うものがあって、使われている材料をラベルで表示するときは、使用重量の多い順に表示するよう定めている。で、崎陽軒が何をやったのかというと、「タマネギより重量が少ない干しホタテ貝柱を先に表示。同様に小麦粉よりもグリーンピースを先に示すなどしていた」(毎日新聞)のだそうであります。

▼毎日新聞のサイトによると

農水省は28日、日本農林規格(JAS)法の品質表示義務に違反するとみて、本社、横浜工場、東京工場を立ち入り調査した。公表分以外に違反事例がなければ、文書による指導にとどまる見通し。同社は関連商品の製造・販売を停止、自主回収を始めた。

となっております。

▼要するに、崎陽軒は自分のところのシューマイにホタテ、それも干したのではないホタテが入っていることを強調してしまった。ウソついたことがケシカランということですね。朝日新聞の記事によると、崎陽軒としては、ホタテの重さを「水やだし汁に浸した際の重量で計算していた」のだそうです。笑えますね。

▼私の記憶に間違いがなければ、NHK9時のニュースの女性プレゼンターは、これを伝えたあと、隣に坐っている男性キャスターに向かって「最近、不適切な表示が目立ちますね。崎陽軒もですか?」というようなニュアンスのコメントをしておりました。

▼なんだか分からないけれど、これって、わざわざ謝罪記者会見をやったり新聞各紙に謝罪広告まで載せるほどのことですか?毒を入れたわけではないし、腐ったホタテを使っていたわけでもない。要するに、タマネギよりもホタテが入っていることを強調したかったということだけでしょ?「同社は出荷済みの真空パック製品などを回収、廃棄する」(毎日新聞のサイト)というのを読んだときは、笑いを通り越して怒りを感じましたね。折角作った食べ物を、ラベル表示の順序が間違っていたというだけで捨てるアホがどこにいるんですか?もったいないとは考えなかったのですかね。

▼崎陽軒のウェブサイトによると、ラベル表示の誤りに気付いた時点で、「取引先・行政・マスコミに連絡」したと書いてあります。この程度のことは黙って張り替えれば済むのに、なぜそのような面倒なことをやったのでしょうか?多分、あとからばれて報告も謝罪もしなかったのはナンだ!と非難されるのを恐れた。

▼「報告」された行政(お役人)も本当は「どうってことないじゃん」と思ったけれど、報告されたからには何かやらないと怠慢と言われる。というわけで、記者会見をやるように崎陽軒にオススメ(命令)し、そこで自分たちは立ち入り調査だのナンだのと、監督者としての責任を果たしていることをマスコミを通じてPRする。

▼なぜマスコミは、たったこの程度のことに時間や記事スペースを割いたのでしょうか?多分、「ほかの新聞や番組が報道するだろう、自分とこだけやらないわけにはいかんやろ」と考えた。

▼つまり誰もホントは「おおごと」なんて思っていなかったのに、成り行きというか、三つ巴の「群集心理」で大騒ぎしてしまった。

▼あるメディアの専門家が「なぜ、せめて1紙くらい"当社はこのニュースは報道に値しないと考えた"と言わないのか」と嘆いておりました。私としては、あの謝罪会見に臨んだ記者の中に「こんなことで食べ物を捨ててしまうことを悪いことだとは思いませんか?」という質問をした人がいたんだろうか?と考えてしまう。崎陽軒のお詫び広告を見たい人(そんな人いないか!?)はここをクリックしてください。

 

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