musasabi journal
発行:春海二郎・美耶子
第149号 2008年11月9日

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UK Watch

Finland Watch

むささびの
鳴き声

美耶子の言い分

Green Alliance Club

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関東地方はぐっと寒くなってきました。北海道の余市町で、毎年一度だけ、子供たちが集まって記念撮影をする、とい う行事があります。2002年にこの町植えられたイングリッシュ・オークという木の育ちぐあいを、子供たちの成長と同 時記録しようという計画です。上の写真は今年の記念撮影です。2002年を第一回とすると今年で7回目になる。ここを クリックすると2002年から現在までの写真が出ていますが、子供というのはあっという間に大きくなるもんですね。こ の企画、50年続けたら面白いでしょうね。オークの寿命は300年とも400年とも言われるのだから、50年経っても木の方は青年なのに、人間は全員じいさん、ばあさん・・・。
1)ウェールズ語は難しい!


11月1日のBBCのサイトを見ていたら、笑っちゃ悪いけど、でも笑っちゃうような記事が出ていました。右の写真は、ウェールズのSwanseaというところで町当局が立てた看板です。矢印の上が英語、下がウェールズ語。「住宅地につき、重い荷物を積んだような車両の立入り禁止」(No entry for heavy goods vehicles. Residential site only)というメッセージですね。然るに下のウェールズ語の意味はというと

ただいま外出しております。翻訳の仕事があれば送っておいてください
I am not in the office at the moment. Please send any work to be translated

というものだった。

なぜこうなったのかというと、ウェールズ語が分からない町当局の担当者が"No entry..."という英語をウェールズ語に直そうとして翻訳屋さんにメールで送ったところ、返ってきたのが"Nid wyf yn..."というものだった。翻訳屋さんが不在通知のために流す自動返信メッセージなのに、担当者はそれが翻訳文なのだと早とちりして看板屋さんにそのまま転送して注文してしまった。この看板は、町のスーパーの近くに立てられたのですが、ウェールズ語が分かる地元の人から指摘を受けて間違いが分かったというわけ。もちろん直ちに取り替えられたとのことであります。

▼でも、看板屋さんは気が付かなかったんですかね!?気が付いたけれど「お役所からの注文だし・・・」というわけで、とにかく言われたとおりにやってしまったということ?多分、看板屋さんも分からなかったということなのでしょう。

ウェールズへ行くと道路標識の類は徹底的に英語・ウェールズ語のバイリンガルになっています。ウェールズ語というのは子音がずらずら並んでいるので、どう発音していいのかまごつきますよね。SLOW(スピード落とせ)はARAF(アラ)、NO ENTRY(進入禁止)はDIM MYNEDIAD(ディンマナディア)、At any time (常に駐車禁止)はDim o gwbl(ディモグブー)、Bus stop(バス停留所)はSafle Byslau(サブレバシア)という具合です。ここをクリックすると、ほかにもいろいろ出ています。


▼BBCによると、標識の類についてはウェールズでも南部の町などでは英語が優先、北へ行くとウェールズ語が優先されるのだそうです。 ところでウェール語というと殆ど必ず話題になるのが、ヨーロッパ最長の場所の名前のことですね。 Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch というのでありますが、英語でいうとSt Mary's Church in a hollow of the white hazel near to the rapid whirlpool and St Tysil's Church of the red caveということになる。 日本語にするのは疲れるからやめにします。

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2)クラスター爆弾禁止条約に署名しないフィンランドの事情


12月にノルウェーの首都、オスローでクラスター爆弾禁止条約の署名式というのがあるのですが、フィンランドはこの条約には当面は署名しないことに決めた、とフィンランド最大の日刊紙、Helsingin Sanomatの英文サイトが伝えています。フィンランドはロシアとの間で1280キロメートルにわたる国境を有しており、その防衛にはこれまで対人地雷なるものが使われてきたのだそうです。ただ軍の専門家の間では、クラスター爆弾のほうが効果的だとする意見もある。

クラスター爆弾というのは、空中で親爆弾が炸裂して中の子弾を広い範囲に散布するというタイプの爆弾で、地上に残り地雷化するということもあるのだそうです。今年の5月にアイルランドの首都、ダブリンでクラスター爆弾禁止に関する国際会議が開かれ、殆どの型のクラスター爆弾を禁止する条約案が合意されています。あとは12月にオスローで開かれる会議で正式に条約となる運びになっています。

今年5月のダブリン会議の際にヴァンハネン首相がこの禁止条約に乗り気でないような発言をした途端に、彼のメールに5万通を超える抗議メールが押し寄せたりしたということもあったそうです。が、Helsingin Sanomatの英文サイトは、「現在の状況では、フィンランドにとっては署名しないという以外に現実的な選択肢はない(in the present situation, Finland had no other realistic option than to not sign the treaty)」として政府の決定を支持する社説を掲載しています。

この社説によると、フィンランドはすでにクラスター爆弾の範疇に入る陸上用砲弾(field artillery shells)を所有しており、これを全面的に禁止することになると、外部からの攻撃に対する反撃能力が3分の1にまで落ちてしまう、とのことであります。また同紙は「フィンランド政府は、今回の決定についてグルジア戦争後の世界において、より説得力のあるシナリオを示すことで正当化する必要があるだろう」(Finland will now have to justify its decision with scenarios that may attract more understanding after the war in Georgia)と言っております。つまり対ロシアの国防上やむを得ないのだ、ということを説明する必要がある、ということですね。

ところでフィンランドは、これまでクラスター爆弾的な兵器を主としてスペインから輸入していたのだそうです。が、スペインがクラスター爆弾禁止条約に賛成の立場を明からにしているので、今後の供給元をスペイン以外に探さなければならない。ロシア、中国、アメリカが最大の供給国らしいのですが、Helsingin Sanomatによると、ロシアや中国の「製品」(と言っても爆弾ですが)は性能の点で問題があるとのことです。そうなるとアメリカ製ということになるのですが、これもフィンランドがこれまで求めているものとは少し違うというわけで、どの国から輸入するのかは、長期的な計画を視野に入れて、「急いで決めてはならない(Acquisitions must not be made in haste)」とヴァンハネン首相はコメントしています。

クラスター爆弾禁止条約に署名しないという、今回の決定にはもちろん反対意見もあります。フィンランドは?党から成る連立政権ですが、その一つである緑の党(Green League)は反対の意思表示をしているし、野党である左翼連合(Left Alliance)の国会議員などは「アハティサーリ元大統領がノーベル平和賞を受けた後だけに、平和の推進役としてのフィンランドの国際的な評判にキズがつく」と言っている。

▼サンタクロースだのムーミンだのを連想させる「おとぎの国」フィンランドとクラスター爆弾というのが、いまいち結びつかないわけですが、軍事大国と陸上で国境を接している国の難しさは分からないですね。

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3)自殺幇助罪を適用しない保障


多発性硬化症(multiple sclerosis)という病気にかかっていて、自ら命を絶つことを望んでいる45才の女性が起こした裁判で、この女性が敗れたことが英国で話題になっています。英国では自殺幇助罪で有罪になると最高で14年の刑に処せられる。10月31日付けのBBCのサイトに出ていたものなのですが、彼女の訴えの内容(ちょっとややこしい)を説明します。

この女性は安楽死が認められているスイスの病院へ行って自分の望みを叶えようと思っているのですが、愛する夫と一緒にスイスへ行き、彼に看取られて自分の望みを叶えたいと思っている。ただ、彼女が心配なのは、自分が"無事"望みを叶えた後に英国へ帰国した夫が自殺幇助の罪に問われるのではないかということです。

そこで彼女が裁判所に要求したのは、夫が有罪になって刑務所へ行くようなことは絶対にない、という裁判所による確約(guarantee)だった。それが彼女の訴えだったわけです。

が、裁判所が彼女に告げたのは「有罪にならないという確約はできない」ということだった。有罪になるとはいえないが、かと言って無罪の保障もできないというものだったわけです。彼女は「非常に失望し、驚いてもいる」(I'm really disappinted and surprised)というコメントを発表している。

BBCによると、実はこれまでにも親類同伴でスイスへ行って安楽死を遂げたケースが101件あるのですが、同伴者が帰国後に有罪になったケースは一度もないのだそうです。もちろん検察当局による調査(investigation)は行われるのですが・・・。

ただこの女性としては、これまでのケースでも、何故有罪にならなかったのかが全く明確にされていないので、自分の夫がどうなるのかがはっきりしないのは不安・不満であり、人権侵害でもあると言っています。

これに対して高等裁判所の裁判官は、英国の自殺防止法(Suicide Act 1961)がきわめて幅広く適用されているので、議会が法律そのものを変えない限り、この女性の望む「確約はできない」と言っています。

▼自殺幇助罪とは「自殺を決心している人に、自殺を容易にする援助を行う」ことを言うのだそうで、日本の刑法202条【自殺関与及び同意殺人】によると「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する」となっています。英国に比べるとかなり軽いのですね。ちなみに英国の自殺防止法1961には次のように書かれている。

A person who aids, abets, counsels or procures the suicide of another, or an attempt by another to commit suicide, shall be liable on conviction on indictment to imprisonment for a term not exceeding fourteen years.(他者の自殺または自殺しようとする試みを助け、教唆し、勧め、斡旋する者は14年以下の刑期により収監されるべく起訴されるだけの責任を負うものとする)

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4)女子誘拐事件の新聞報道


日本のメディアでは(私の知る限り)話題にならなかったのですが、昨年(2007年)5月、両親とともにポルトガルに遊びに来ていたMadeleine MacCannという3才の女の子が行方不明になるという事件がありました。未だに見つかっていないそうです。

この事件をめぐる新聞報道のあり方が問題になっています。大衆紙を中心に連日のようにセンセイショナルな報道が行われ、女の子の両親が容疑者扱いをされてしまった。主としてポルトガル警察によるリークに基づく報道だったのですが、両親のみならずその友人たちやポルトガル在住の英国人まで濡れ衣を着せられてしまった。

で、容疑者扱いされた人々が、新聞社を相手に名誉毀損の損害賠償訴訟を起こしたのですが、いずれも新聞社側の敗北というわけで、賠償金を払わされると同時に謝罪声明まで掲載させられる結果になってしまった。10月15日、ロンドンの高等裁判所で行われた判決では、そうした新聞社の一つであるThe Expressが両親の友人7人に対して総額37万5000ポンド(約6500万円)のお金を払うということで合意したのだそうです。これ以外にも大衆紙12紙合同で80万ポンド、The Expressが両親に50万ポンドそれぞれ支払うことになっている。全部で約170万ポンド(約3億1000万円)の賠償金というわけです。

大衆紙の報道の例を二つだけ紹介すると・・・。

McCanns hit by new DNA claimMcCann夫妻にDNA鑑定の打撃
The Sunの見出し。DNA鑑定の結果、両親が行方不明事件にかかわっていることが明らかになった、というニュアンスで、記事の結びは「McCann夫妻はいまや公式な容疑者であるが、娘の行方不明事件へのかかわりは否定しており、相変わらず"娘は生きていると信じている"と主張し続けている(Gerry and Kate McCann, who are official suspects in the case, deny any involvement in their daughter’s disappearance and continue to say they believe she could still be alive.)」というもの。

Leaks, smears ... now plane lies:漏洩・湖塗そして飛行機に関するウソ
同じくThe Sunの記事。どちらかというと、ポルトガル側を非難するもので、警察は「漏洩・湖塗」するし、新聞は「両親がポルトガルへ行くについて貸し切りジェットを要求した」と伝えている、と言っている。"plane lies"は"plain lies"(明白なウソ)にひっかけた言葉遊び。記事そのものは「両親はこれらを一切否定している」と書かれているのですが、読者は「へえ、そんなこともあったの・・・」というわけで、反ポルトガル感情が芽生えるだけでなく、両親についても「火のないところに煙は立たないもんな」という見方を助長するようになっている。

Interntional Herald Tribune(IHI)紙が、英国の大衆メディアによるこの事件の異常な報道ぶりを伝えており、とにかくMadeleine MacCann関連の記事を載せると新聞が売れたのだそうです。昨年9月の24日間でEvening Standard紙は、12回にわたって1面トップ扱いしたところ、全部でいつもより30万部も余計に売れた。両親が容疑者扱いされた日の新聞は、一日だけでいつもより3万3000部多く売れたのだそうであります。

この事件についての新聞報道について、キングストン大学でジャーナリズムを教えるBrian Cathcart教授が、10月23日付けのNew Statesmanのサイトに「英国の新聞は如何にしてMadeleineの両親を組織的に破滅させたか」(how the British press set out to systematically destroy the parents of Madeleine McCann)という怒りのエッセイを寄稿しています。

教授によると、これだけの数の新聞が誤報に次ぐ誤報をやっておきながら、一人の編集者も記者もクビになっておらず、何故そのようなことになったのかについての新聞界による調査も為されていない。

このことは、新聞業界による責任回避の顕著な例と言える。この業界には、自分たちこそが健全な民主主義にとって重要な存在であると、真っ先に吹聴する癖があるのに、である。This is a remarkable evasion of responsibility by an industry which is the first to boast of its own importance to a healthy democracy...

つまり新聞は政治家や金融機関などが間違いを犯すと、非難ごうごうの大合唱をやるくせに、自分たちが犯す過ちについてはダンマリを決め込もうという傾向がある、というわけです。それにしても、新聞は何故このようなことをやってしまったのか?新聞を売るため(this was all done to sell newspapers)というのはごく当たり前の説明であるけれど、Cathcart教授は、編集者や記者の姿勢について

(この事件に対する)世間の関心の高さを眼にして、編集者も記者も(自分たちの意思で)記事を書いて掲載する気になっていたように見える。そうしたからと言って、彼らには何の利益もないのに、である。Seeing the scale of public interest, it looks as though editors were ready to publish stories, and reporters were ready to write them, even when they had no merit whatsoever.

と批判しています。

▼「部数を売りたい」というのは経営者的な発想ですが、とにかく話題になっていることを書きたいという(編集者や記者の)欲望は、それとは違うものなのかもしれないということですね。今回の裁判について、新聞報道の被害にあった原告側の弁護士は「(記者の側に)群集心理に駆られたイヌのような感覚があり、被害者はその生贄(いけにえ)になったということだ」(There was a pack-dog mentality here and my clients and their families were the prey)と語っています。

それでは、自らの過ちに寛容なくせに、他者の過ちには辞任を要求する偽善的な新聞経営者、編集者、記者たちとどのように付き合っていけばいいのか?Cathcart教授のアドバイスは

もし彼ら(記者や編集者)の一人が公園のベンチに坐っているのを見かけたら、どこか別のところに坐るようにした方がいい(if you happen to see one of them on a park bench, make a point of sitting somewhere else)

というものであります。

▼イラク戦争に英国が参戦するについての誤報をめぐって、BBCの記者が辞職したということがありましたが、今回の場合は、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という感じで、報道した大衆紙の誰もクビになってはいない。

▼今回の問題はいろいろと考えさせられました。日本の新聞の場合、このようなひどいことは余りない(と思う)。ただ、警察による冤罪事件というのはよくありますね。そのような場合、新聞は「警察によると・・・」というわけで、「容疑者」の自白内容を報道したりする。松本サリン事件(1995年6月)というのがありましたね。あのときは、自白さえもしていなかったと思うけれど、新聞は警察のリークをそのまま報道して河野義行さんを犯人扱いしてしまった。

▼ネットを調べていたら、松本サリン事件と報道について、同志社大学の渡辺武達という先生が、この事件報道に関与した新聞・通信・テレビの19社にアンケート調査を行ったことが出ていました。調査結果については、ここをクリックして読んでもらうとして、先生のサイトによると「誤報の可能性はあったが、警察が誤りと認めておらず断定できなかった」といったニュアンスの答えが多かった、となっている。

▼つまり、警察の言うことは「間違いだった」と警察が認めない限り「正しい」ということですね?いずれにしても、松本サリン事件については「新聞は警察の言うことを伝えたまで」というのが理由であるかどうかは知らないけれど、記者や編集長がクビになったということは聞かないし、社長が辞任というのもなかったのでは?賠償金の支払いなんてあったんですか?

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5)オバマ演説を読んでみた


バラク・オバマが大統領選挙に勝利した際にシカゴで行った演説(victory speech)の素晴らしさが、世界中で話題をさらっています。中身についての解説だの分析だのは、私にはできないので、この際、自分が気にとめた部分を数ヵ所だけ抜き出して勝手にコメントしてみます。なお英文のフルテキストはBBCのサイトで読みましたし、日本語訳はgooニュースの加藤祐子さんという人のものをそのままお借りします。

  • If there is anyone out there who still doubts that America is a place where all things are possible; who still wonders if the dream of our founders is alive in our time; who still questions the power of our democracy, tonight is your answer.
    アメリカは、あらゆることが可能な国です。それを未だに疑う人がいるなら、今夜がその人たちへの答えです。建国の父たちの夢がこの時代にまだ生き続けているかを疑い、この国の民主主義の力を未だに疑う人がいるなら、今晩こそがその人たちへの答えです。

▼演説の出だしです。ひょっとすると歴史に残るイントロかもしれない?

  • It's the answer that led those who have been told for so long by so many to be cynical, and fearful, and doubtful of what we can achieve to put their hands on the arc of history and bend it once more toward the hope of a better day.
    私たちは今まであまりにも長いこと、あれはできない、これはできないと言われてきました。可能性を疑うよう、シニカルに恐れを抱いて疑うように言われ続けてきました。けれども私たちは今夜、アメリカに答えをもらったおかげで、手を伸ばすことができたのです。歴史を自分たちの手に握るため。より良い日々への希望に向けて、自分たちの手で歴史を変えるために。

▼アメリカ人であることに自信を失ったアメリカ人へのメッセージですね。私の知る限りではcynicalという生活態度や考え方が、英国人にもアメリカ人にもイチバン嫌われる。懐疑(scepticism)はいいのですが、cynicismには建設的な部分がないってことでしょうね。

  • It grew strength from the young people who rejected the myth of their generation's apathy; who left their homes and their families for jobs that offered little pay and less sleep...
    若者は無気力だという神話を拒絶した若者たちが、給料の少ない、そして睡眠時間のもっと少ない仕事に自分を捧げるため、家と家族から離れて参加してくれた。

▼「若者は無気力だという神話を拒絶した若者たち」(young people who rejected the myth of their generation's apathy)という部分は、いまの日本にも当てはまると思うので引用しました。誰が「若者は無気力」という神話を言いふらしているのかというと、オトナですね。それもひま人のオトナです。

  • When the bombs fell on our harbour and tyranny threatened the world, she was there to witness a generation rise to greatness and a democracy was saved.
    この国の湾に爆弾が落下し、独裁が世界を支配しようとしたとき、時の国民が立ち上がり、偉業を達成し、そして民主主義を救うのをクーパーさんは見ていました。

▼爆弾が落ちてきた湾は真珠湾であり、世界を支配しようとした独裁とはヒトラーのことですね。

  • Even as we stand here tonight, we know there are brave Americans waking up in the deserts of Iraq and the mountains of Afghanistan to risk their lives for us.
    今夜ここにこうして立つ今も、私たちは知っています。イラクの砂漠でいま目覚めようとする勇敢なアメリカ人たちがいることを。アフガニスタンの山岳で目覚めるアメリカ人たちがいることを。彼らが、私たちのために命を危険にさらしていることを。

▼「私たちのために命を危険に・・・」(to risk their lives for us)というときの"私たち"とは誰のことなのか?気になりますね。このテキストを読む限りにおいては「アメリカ人」のこととしか思えない。オバマやこの演説を聴いたアメリカ人のアタマにイラク人やアフガニスタン人のことはあったのでしょうか?

▼オバマさんは、イラク戦争には最初から反対だったと言われています。が、アフガニスタン侵攻には賛成であったし、いまでも「イラクから兵を引き揚げて、アフガニスタンに集中しよう」と言っているはずです。彼が、何故「イラク戦争はダメ、アフガニスタン攻撃はいい」と考えるのか?どこかのサイトを見ればしっかり説明されているのだとは思うし、時間があれば、私もそうしたいとは思うけれど、想像するに、サダム・フセインのイラクは9・11には直接関係ないけれど、アフガニスタンはオサマ・ビン・ラディンを匿っているという意味で、関係があると考えているのではないかと思います。つまり、心のどこかで「アフガン攻撃は9・11テロに対する報復」という意識があるのでは?私から見ると、オウム真理教がニューヨークの地下鉄でサリンをばらまいたら、日本を爆撃するというのと同じだと思うけれど・・・。

  • This is our time - to put our people back to work and open doors of opportunity for our kids; to restore prosperity and promote the cause of peace; to reclaim the American dream and reaffirm that fundamental truth - that out of many, we are one; that while we breathe, we hope, and where we are met with cynicism and doubt, and those who tell us that we can't, we will respond with that timeless creed that sums up the spirit of a people: yes, we can.
    今この時にこそ、私たちは人々がまた仕事につけるようにしなくてはなりません。子供たちのために、チャンスの扉を開かなくてはなりません。繁栄を取り戻し、平和を推進しなくてはなりません。今この時にこそ、アメリカの夢を取り戻し、基本的な真理を再確認しなくてはなりません。大勢の中にあって、私たちはひとつなのだと。息をし続ける限り、私たちは希望をもち続けるのだと。そして疑り深く悲観し否定する声に対しては、そんなことできないという人たちに対しては、ひとつ国民の魂を端的に象徴するあの不朽の信条でもって、必ずやこう答えましょう。Yes we can

    ▼締めくくりの部分です。 out of many, we are one(大勢の中にあって、私たちはひとつ)はどういう意味なんでしょうか?アメリカ合衆国の国民として「ひとつ」ということで、団結のようなことを言っているのでしょうか?とにかくyes, we canという楽観主義こそがアメリカという訴えですね。

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6)むささびJの、どうでも英和辞書

A〜Zの総合索引はこちら

fear:怖れ

アメリカの大恐慌(1929年)の直後に大統領になったフランクリン・ルーズベルト(1933〜1945)が就任演説で言ったのがThe only thing we have to fear is fear itself(怖れるべき唯一のことは、怖れることそのものだ)というフレーズですね。アメリカ国民の士気を鼓舞する演説というわけですが、東大の本間長世教授によると、この言葉は「内容は一つもない」のだそうです。何もないけれど効き目はあった。それはルーズベルトが雄弁家だったからなのだそうです。アメリカの政治では「雄弁」ということが、ほとんど異常なほどに重宝がられるようですね。「男は黙って・・・」なんて、じぇったい通用しまへん。

gap:差

英国の電車のプラットフォームには(私の知る限り)必ず書いてあるのがMind the Gapという注意ですね。「フォームと電車の間に隙間があるから気をつけよう」ということ。私の記憶によるとロンドンの地下鉄では、録音されたものがフォーム全体に流される。"Mind the gap. Mind the gap. Let the passengers off, first, please!"というやたらと野太いオッサンの声が響き渡る。Let the passengers off, first, please!は「降りる方が降り終わってからお乗りください」ということですね。この部分を聴いて「英国人も日本人も鉄道関係の人は同じようなことを心配しているんだな」と感心してしまった。東京ではJRの飯田橋駅で「フォームと電車の間があいていますので・・・」というアナウンスがあるはずです。こちらは優しいお姉さんの声だった(50年前のハナシですが・・・。 どうでもいいことですが、ロンドンの地下鉄でこの録音アナウンスが採用されたのはちょうど今から40年前、1968年のことだそうです。

hope:希望

英国の格言にHope for the best but prepare for the worst(最善を望み、最悪に備えよ)というのがあるんですね。現実的楽観主義というわけです。結構ですね。どこかおどおどしていて可愛いじゃありませんか?

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7)むささびの鳴き声


▼出勤前、朝食をとりながら、その日の朝刊に出ている記事について妻の美耶子と話をするというのが日課であり、事 実上の「むささびジャーナル編集会議」みたいになっております。で、11月4日付けの新聞の一面トップに、小室さん という音楽プロデューサーの逮捕とかいう記事が出ていたことについて、二人とも意見が一致したのが「なんでこれが トップ記事なのか!?」ということでございます。私、いまだに分からないのであります。知っている人いたら教えて くらはい。

▼英国のブック・メーカー(賭け屋)の大手、William Hillが、この次(2012年)の米大統領選で勝つのは誰かという賭けへの参加者募集を始めております。オバマのオッズ(賞金の倍率)はイーブン(賞金ほとんどなし)で、ヒラリー・クリントンが7倍、マケインさんの副大統領候補だったサラ・ペイリンが12倍(つまり大穴)だそうです。初の黒人大統領が登場したのだから、次なる話題は「初の女性大統領」ですね。William Hillの賭け率によると、何故かペイリンさんが6倍、ヒラリーは7倍で、ペイリンさんの方が可能性が高いと見られている。コンドリーサ・ライス現国務長官は25倍だから殆ど誰も考えていない。彼女だと「黒人で女性」ということで、これは画期的ですな。 ちなみに今年の大統領選のキャンペーンが始まった当初のオバマの確率は50対1だったそうです。

▼歌手のフランク永井さんが亡くなりました。数多くのヒット曲があるわけですが、私が好きだったのは、誰がなんつ ったって『夜霧の第二国道』でございます。まあ、聴いてください。

つらい恋なら  ネオンの海へ 
捨ててきたのに  忘れてきたに〜
バックミラーに あの娘(こ)の顔が
浮かぶ夜霧の ああ、第二国道

▼と、文字で書くとこうなるのですが、歌うときは「つ〜らあいい こいなああああら」とやります。で、イチバン難しいのは「バックミラーに」という部分なのでございます。「バァ〜ックゥゥゥミラアアに」とやらなければならない。これが、 なかなかさまにならない。それにしても「忘れてきたに〜」などはニクイ。じいさんが入れ歯でも置き忘れてきたみたいだもんな。

▼筑紫哲也さんも亡くなりました。個人的な想い出ですが、昔、朝日ジャーナルという雑誌がありまして、筑紫さんが 編集長をしていたらしいですね。私、この雑誌の「読者からの手紙」欄に投稿したことがあります。40年以上も前のこと です。大学紛争か何かに絡んで、新聞に「学生たちは勉強もせずにデモばかりやっていてケシカラン」という趣旨の評論 家のコメントが出ていたのに腹を立てまして「あんたら何も分からないんだから、黙っとれや」という趣旨の投稿をしたわ けであります。

▼掲載されるなどとは夢にも思っておらず、ただただアタマに来たので感情発露の手紙を朝日ジャーナルの編集部宛て に送ったら、なんとそれが掲載されてしまった。驚きましたね、あれには。読者の欄に投稿などしたのは、あれが最初 にして最後のことだった。そのときの編集長さんが筑紫さんであったのかどうか分かりません。その朝日ジャーナルが AERAに変わってしまったのも、日本社会が変わりつつあったことの現象の一つだったと言えます。

▼航空自衛隊の何とか言う名前のトップの人が「戦争中の日本は悪くなかった」とかいうニュアンスの論文を書いてクビになった 事件などを見ると、日本社会の上層部が悪い方へ変わっていることは間違いないですね。もちろんクビにしたことが悪 いのではなくて、クビになった方のアタマの中が悪いと言っているのですよ。私の言う「上層部」にメディアが入ってい ることは言うまでもありません。

▼今回も長々とお付き合いをいただき、有難うございました。

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