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musasabi journal 161 | |||||||
2009年4月26日 | ||||||||
161回目のむささびジャーナルです。昨日(4月25日)の関東地方は寒かったです。3月の気温だったそうであります。皆様のところは如何でしょうか? |
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1)議員の経費不祥事とブラウンさんの「不適切な笑い」 | ||||||||
現在の制度では、下院議員はそれぞれの自分の選挙区とロンドンで暮らしながら政治活動を行うために、年間最高で2万4000ポンド(約360万円)の 住宅手当を請求することができるのですが、とても正当な理由とは思えない手当の請求がなされていることが発覚している。ロンドン近郊が選挙区で、市内へ 出てくるのにも大して時間もかからないのに2か所に家を持っているとか、両親の家に暮らしている、選挙区にあるファーストハウスを賃貸ししながら手当を請求 等々・・・政治家の悪口を報道することで「庶民」の支持を受けているメディアの格好の餌食になっている。 最近になってブラウン首相がこの住宅手当そのものを廃止する意向を示した。ブラウンさんの計画によると、ロンドン以外を選挙区としている政治 家は、一律の政治活動経費を日当という形で請求できることになっている。また交通費などの経費も必ずレシート添付で請求しなければならない。さらに国会 における政治活動のための秘書は、将来は議員本人ではなく、議会(House of Commons)が雇うという形にする。これまで国会議員の中には、自分の 妻や夫、両親などを「秘書」として雇って、その経費を請求する者がかなりいたのだそうです。 ただ、ブラウンさんが経費制度の改正案を、議会ではなくてYouTubeを通じてネットを使って発表してしまったところがいかにも不自然というので、これがまた批 判の対象になったりしている。それが、来年度の予算案(政府の借金が大きいということで批判されている)発表の前日だったというので、国民の眼をそらすこと が目的だったのではないかと言われたりしている。The Economistによると、これを発表するブラウンさんは、しばしば得体の知れない不適切な笑い(he flashed an eerily inapropriate smile)を浮かべていたのだそうです。 ブラウンさんは、新計画を発表した後で保守党のキャメロン、自由民主党のクレッグ両党首とも話し合いをしたらしいのですが、「二人ともまったく感銘を 受けなかった」(Both were unimpressed)とのことで、The Economistは「これからさらに数年におよぶ国会議員の経費にまつわる問題が明らかにな って、ますます恥ずかしい事態になることは間違いない」(The imminent disclosure of several years' worth of parliamentary expenses, which will doubtless involve more embarrassments)と言っております。
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2)内部告発者保護の難しさ | ||||||||
今年の2月、Halifax Scotland Bankという銀行のSir James Crosby総裁が金融監視委員会(Financial Services Authority)の職を辞任 するという事件が起こったのですが、それはこの銀行の従業員で数年前に解雇された人物がSir Jamesの経営ミスについて内部告発したことが発端だった。 英国にはPublic Interest Disclosure Act (PIDA)という法律があります。直訳すると「公益暴露法」となってなんだかよくわからないけれど、公益保護 のためにいろいろな情報を公開・暴露した人を保護するための法律、つまり内部告発者保法です。社会正義実現のためにという理想のもとに1998年にブレ ア政権によって作られたものなのですが、4月23日付のThe Economistによると「内部告発者は理論的には保護されていることになっているが、実際にはそ うでもない」(Inside informants are better protected in theory than in practice)とのことであります。 最近の例としてThe Economistが報告しているのが、Margaret Haywardという看護婦のこと。彼女は最近(4月16日)、看護婦・助産婦審議会(Nursing and Midwifery Council: NMC) によって「公認看護婦」としての登録を取り消されたのですが、その理由というのが、彼女が最近ある病院に カメラを持ち込んで、悲惨な病棟の様子を撮影してテレビで放映するようにしてしまったということにある。まさに内部告発ですね。これ以外にも学級崩壊のひどさ加減をビデオに収めて告発したロン ドンとリーズの学校教師がクビになったという例もあるのだそうです。 内部告発者(whistleblowers)は、理論的にはPIDAで保護されている。この法律によると、告発者が「誠実かつ適切な過程を経て」(acts in good faith and goes through the right channels)行動する限りにおいては、告発がゆえに報復を受けることはない。企業や機関内部によくないことが あることがわかった場合、まず自分の上役に報告すべきであるが、上役自身がそれを隠ぺいするかもしれないと思ったときは、直接報道関係などに情報提供 をしても、それが故に不利な立場にはならない。 が、The Economistによると、この法律による保護は絶対的なものではない。例えば軍人、スパイ、ボランティア、自営業者などには適用されないし、告発 者が法律違反をするとPIDAの保護の対象にはならなくなる。英国には極めて厳しい公的な秘密保護法が存在するから、公務員などによる内部告発が法 律違反になる危険性も大いにある。 それでも英国の内部告発者保護法は外国からみると「画期的(cutting edge)」なものであると評価されている、と内部告発者保護の活動を行っている Public Concern at WorkというNPOは言っている。 尤も外国が評価していることが、この法律がちゃんと機能して内部告発者を保護しているということにはつながらない。病院のひどい状態を告発した看護婦の Haywardさんの場合、その病院によって解雇されたのではなく、看護婦・助産婦審議会という職能団体によって看護婦登録をはずされたのですが、内部告 発保護法は職能団体まで規制していない。つまり登録をはずしたのは、この法律違反にはならないわけです。ちなみに看護婦・助産婦審議会が、彼女の登 録を拒否したのは、彼女の行為が、患者のプライバシーを保護しなければならないという看護婦規定に違反するという理由によるものだった。看護婦、医者、 会計士、教師のように職能団体による資格登録のようなものが存在する職業の場合、それを剥奪されるということはその職業としてのキャリアは終わったのと同 じことになる、とThe Economistは指摘している。一つの職場をクビになるより厳しいですよね。 内部告発者保護法にはもう一つ、意図しなかった問題がある、と雇用関係の弁護士などが指摘しています。従業員が不当解雇された場合、企業が払わな ければならない損害賠償の額は最高で6万6200ポンド(約1000万円)と法律で決まっているけれど「内部告発」が理由で解雇された場合の額は決まって いない。性的差別とか人種差別による解雇と同じで、The Economistによると「疑わしい告発」(dubious whistleblowing)で因縁をつけるようなケ ースもある。 いろいろと問題のある内部告発保護法ですが、保守党などは内部告発者の保護をはっきりと雇用契約書の中でうたうべきだとしており、内部告発者のため の匿名ホットライン電話サービスを作るべきだとも言っています。 ただ内部告発者を保護する運動を行っているFrancesca Westさんは「問題点を指摘することを怖がらずに済むという社会が理想」としながらも「匿名」に よる告発を奨励することには懐疑的です。匿名告発者の名前が漏れてしまうケースもあり、そうなると企業側がなんのかんのと理由をでっちあげて解雇しようと するだろうというわけです。
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3)政治そのものが職業になりつつある時代 | ||||||||
19世紀の初めにアメリカを訪れたフランス人の歴史家、Alexis de Tocquevilleが、アメリカ社会について伝えたことの一つがエリート層に法曹人が多いとい うことだったのだそうですね。これは現代アメリカにも当たっている、どころか「ますますその傾向が強まっている」(stronger than ever)と4月16日付のThe Economistが伝えています。大統領のオバマさんがHarvard Law Schoolの学生であったことはよく知られている。国務長官のヒラリー・クリントンはエール 大学のロー・スクール、司法長官のエリック・ホルダーはコロンビア大学、 副大統領のジョー・バイデンはシラキュース大学、CIA長官のレオン・パネッタはサンタク ララ大学等々、いずれも大学の法学部を出ている。それだけではない。上院議員の半分以上が弁護士なのだそうであります。 The Economistの記事はアメリカの政治家について語っているのではなくて、世界の政治家がそもそもどんな職業の人であるのかを検討しています。いずれ も国際人名辞典(International Who's Who)の中から約5000人の政治家を選んで略歴を調べたものなのでありますが、全体的に見るとやはり法 曹人が多いのですが、次のような職業が政治家の前職として挙げられています。
政治家に法曹人が多いのはアメリカだけではなくて、実はドイツの国会議員の3分の1、フランスのサルコジ大統領の最初の内閣の16人の閣僚のうち9人が 法律家なのだそうであります。何故、法曹人が多いのか?The Economistの解説によると、法律家も政治家も社会正義だの自由と防衛だのと、お互いに似たような 事柄にかかわっているし、裁判官や陪審員を言葉で説得するのと同じようなテクニックが政治の世界でも使われる。しかし法曹と政治の世界が似ているのはいいこ とばかりではない。常に「敵・味方」「我々と彼ら」のように党派的にものを見る傾向がある点でも似ている。 法曹界出身についで多いのがビジネスの世界です。The Economistの記事は、イタリアのベルルスコーニ首相と米マサチューセッツ州のロムニー州知事を例 に挙げて「ビジネス体験と難しい決断をする能力を生かして政治の世界で活躍している」(parlayed business experience and a supposed toughness of decision-making into political office)と紹介しているのですが、麻生さんの名前は挙がっていない。 ロシアでは1997年・2003年に行われた地方選挙で、州知事候補として38人のビジネスマンが立ったのですが、うち10人が当選したのだそうです。ソ連崩 壊後のロシアでビジネスマンの政界進出が目立つ理由として、競争相手を叩けること、ビジネスマンがこれまでの政治家を信用していないということなどが挙げ られています。 中国の場合、圧倒的にエンジニアが多いのだそうですね。 胡錦涛国家主席は水力関係の技術者だし、前任者の江沢民は電機、温家宝首相は地 質学関係のエンジニア。中国共産党政治局幹部9人のうち8人が技術者で残りの一人は法律家なのだとか。アメリカの大統領でエンジニア出身者を探すと なると、Herbert Hoover(1929年)にまでさかのぼらなければならない。 何故、中国の指導者には技術者出身が多いのか?The Economistの解説によると、毛沢東時代の教育環境が一つの理由だそうです。毛沢東に反対 するような意見は徹底的に弾圧されたので、「安全な学問」としてエンジニアリングがあったのだというわけです。またエンジニアというのは中国的な考え方と合う 部分があるのだそうです。結果としてモノゴトがうまく稼動させるということがエンジニアの仕事ですね。経過は二の次なのです。法曹人が多い社会で結果よ りも経過が重視されるのとちょっと違う。 アフリカの場合はゲリラ部隊も含めて軍人上がりが多いというのは想像できますね。スーダンのOmar al-Bashir大統領、エチオピアのMeles Zenawi首 相、ルワンダのPaul Kagame大統領等など。 ところでThe Economistによると、成熟した民主主義国家である英国とアメリカにおける最近の傾向といえるのが、政治そのものが職業(profession)に なりつつあるということです。英国では、政治家といえば昔は職業を引退した人のやることだったのだそうですね。保守党議員は実業界出身、労働党は労働組合出 身者か大学教授という具合だった。でもいまは違う。保守党党首のDavid Cameronは大学卒業後すぐに保守党調査部に職を得ている。現首相の Gordon Brownも前首相のTony Blairもジャーナリストや弁護士としての仕事はしたけれど、Brownは32歳、Blairは30歳の若さで政治家になってい る。 学校を出てすぐ政治の世界に入る人が多くなっている理由としてThe Triumph of the Political Class(政治階級の勝利)という本の著者である Peter Oborneという人は、政治が政治家志望者のための職場を生み出しているということを挙げている。think-tankだのNPOだのがそれに当たるわけ ですが、この種の「職場」を経由して政治家になる人が多くなると、政治の世界が実社会から離れた「同族社会階級(inbred class)のようなものになる、と Oborneさんは心配している。 ただ、そのような傾向は今後も止まらないだろう、とThe Economistは言っています。オバマさんが大統領に当選した直後には、彼の事務所で働きたいという 希望者が殺到したのだそうです。で、オバマ・チームはそれぞれの求職者に
と伝えていたのだそうです。妙なハナシのネタになりそうなことを徹底的に洗い出すってことです。つまりアメリカ政府の一員になるってことはそれだけタイヘンなこと であり、「外部の人間」にはムリってことでもある。「良くも悪くも、政治自体が職業になりつつ時代である(For good or ill, politics is becoming its own profession)」とThe Economistは言っています。
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4)進歩的保守主義って何? | ||||||||
英国では来年(2010年)の6月3日までに総選挙が行われることになっています。日本よりは、はるかに政権交代が起こりやすい政治風土のようなものがある英国ですが、ここ30年ほどを見るとそうでもない。サッチャーさんが首相になったのが1979年、それから約18年間は保守党政権が続いたのだし、1997年にブレア労働党政権が誕生してからこれまでの12年間ずーっと労働党が支配している。 ただ来年の選挙ではひょっとすると保守党が勝つかもしれないと言われている。最近の世論調査でも保守党支持45%に対して労働党は27%となっています。私が個人的に考える理由は二つ。一つは英国の人々が労働党に飽きてしまったということ。もう一つはデイビッド・キャメロン保守党党首の個人的な人気です。1996年生まれの43歳だから、ブラウンさんより15歳も若くて颯爽としている。そのキャメロン党首の政治思想をひと言で表現すると「進歩的保守主義(progressive conservatism)」なのだそうであります。今年(2009年)1月22日にキャメロンが行った「進歩的保守主義を実現しよう:Making progressive conservatism a reality」というスピーチでそれが詳しく説明されています。 「進歩的保守主義」というと言葉の矛盾のように響くけれど、キャメロンのアタマの中ではそうでもないらしい。彼自身の言葉によると・・・
ということなのですが、これではなんのことだか分からない。キャメロンは、あるべき社会の実現のために「進歩的主義な目標(progressive ends)」を掲げるのですが、そこへ至るためには「保守主義的な手段(conservative means)」によるのが正しいと言っていて、この二つを併せると進歩的保守主義ということになる。 では彼のいう「進歩的な目標」とは何かというと、貧困や格差のないフェアな社会(fair society)、機会の平等が保障されている社会(opportunity society)、環境を大切にする社会(greener society)、そして犯罪やテロのない安全な社会(safer society)を作ることとなっている。でも、こんなことは誰だって言っているんじゃありませんか?という疑問について、キャメロンは、
キャメロンによると、過去10年間の労働党政治は、上記のような「進歩的な目標」を掲げながらも、実際に起こったことは、貧富の差が拡大し、犯罪とテロが増え、社会階層が固定化し・・・つまり「進歩的な目標」とは全くかけ離れたものであったということですね。何故そうなったのか?それは「方法」が「保守主義的」でなかったからだ、ということになる。 では彼のいう「保守主義的方法(conservtive means)」とは何かというと、それには4つのポイントがある。 まずは権力の拡散、つまり中央集権の反対のことを行うこと。社会的な責任と権力を、個人、コミュニティ、市民組織(civic institutions)にゆだねることです。キャメロンによると、現代はポスト官僚体制(post-bureaucratic age)の時代であって、大切なのは「規則ではなく枠組みを作ること(creating frameworks rather than rules)」、「お達しを出すのではなく(市民の)行動に影響を与える(influencing behaviour rather than issuing diktats)」なのだそうであります。
次に(最初のものに関連するけれど)政府の大切な役割が、いわゆる「市民社会の組織や機能」(institutions of civic society)を強化することにあるということ。ここで興味深いのは、キャメロンのいうinstitutions of civic societyとは何かということです。普通にはNPOだのチャリティ団体のことを言うのですが、彼が最も重要な「組織」として挙げているのが「家族」(family)であるということです。いかにも保守主義でありますね。 3つめのポイントは経済。キャメロンによると、上のprogressive endsを実現するためには経済成長が欠かせない。しかしそれはかつてのような社会格差を助長し、環境破壊を伴うような経済成長ではなく、新しい経済(new economy)によって、支えられなければならない。さらに労働党政府のような「無制限の公共支出」(uncontrolled public spending)や政府の借金が増えていくような経済政策では、キャメロンのいうprogressive endsを実現することはできない。 そして4つめのポイントして、1970年代の労働党政権のような無責任な財政政策(fiscal irresponsibility)を続けていくと、いずれは政府にお金がなくなって、キャメロンのいうprogressive endsの実現もできなくなる、と主張しています。
キャメロンのprogressive conservatismという政治思想を後押ししているのが、Demosという政策提言集団なのですが、Demosはかつてブレアさんの「新しい労働党(New Labour)」ができたときに、「クールな英国(Cool Britannia)」というスローガンを提唱したことがありますね。 Cool Britanniaもprogressive conservatismも「言葉だけ」という批判は受けるだろうとは思うのですが、キャメロンは、「進歩的保守主義」を自分が率いる政府の「底に流れる哲学」(underlying philosophy)であり、「指針となるような哲学のない政治は空虚で、効果的でもない(politics without a guiding philosophy is both empty and ineffective)」と言っています。キャメロンの演説テキストは、ここをクリックすると出ています。
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5)ブログ論壇のと誕生と世論形成 | ||||||||
『ブログ論壇の誕生』(佐々木俊尚・文春新書)によると、2005年の郵政民営化選挙は、「団塊世代とロストジェネレーションの世代間対立が鮮明になった」選挙であったそうです。ロストジェネレーションというのは「1970年代に生まれ、就職氷河期を堪え忍び、格差社会にあえぎ、しかしインターネットを自由自在に操っている彼ら彼女ら」のことを言います。この選挙では2チャンネルというネットの世界で「小泉を支持しよう」という声が飛び交い、マスメディアが小泉さんを「ワンフレーズ政治」とバカにしたにもかかわらず、小泉・自民党が圧勝してしまった。佐々木さんによると、「マスメディア」は団塊世代の代表であり、この選挙は「マスメディアよりも、インターネット言論の方がリアルに強かったことを証明」した出来事であったというわけであります。 私(むささび)は、団塊世代よりもさらに前の世代に属するのでありますが、郵政選挙の小泉圧勝がネット世代のお陰であるというのは(恥ずかしながら)考えたことがありませんでした。同じ年にホリエモンのニッポン放送買収騒ぎがあって、ホリエモンは主要な新聞やテレビによる嘲笑や非難の対象になっていたけれど、インターネットのブログの世界では弁護士だの公認会計士だのという企業の買収のプロたちが新聞による「ライブドア報道の誤謬を検証」したりしていたのだそうです。これも知らんかった。 『ブログ論壇の誕生』は読んで字の如く、新聞・雑誌・テレビのような従来型のメディアではなく、インターネットという世界において「論壇」が形成されており、古い言論を支配していた団塊の世代と激しく対立しこれを乗り越えようとしている現状を解説しています。 著者は「論壇」なるものの形成の歴史から説き起こしています。論壇的なものの起源は17〜18世紀の英国のコーヒーハウスやフランスのカフェ社会などにある。その特徴はというと、「参加者の社会的な地位は度外視」「議論にタブーを設けない」「誰もが自由に討論に参加できる」ということにあった。ただ、それらの「論壇」は「誰もが討論をする能力を持っている」ことを前提に成立していた、いわばエリートたちの集まりであった。それが大衆社会になって、必ずしも討論能力などを持たない大衆が世論を形成するようになると、この種の論壇は衰退する。そして・・・
佐々木さんによると、ブログによる論壇は、アカデミズムとマスメディアに分断された世論形成の場を「ふたたびひっくり返して底からかき混ぜてしまう」可能性を秘めているのだそうです。面白いのは、このネット論壇というものが「社会的地位の度外視」「タブーなき言論」「参加のオープン性」の3点で、17世紀〜18世紀の西欧にあったコーヒーハウスとかカフェの世界と性質が全く同じものであるということです。 この本には「ブログは新聞を凌駕するか」という章があるのですが、その中で、「既存のマスコミが絶対に理解できない、かつ生理的にも受け付けられない」ブログの世界の特徴として「編集権を読者に委ねている」ということがあるのだそうです。つまり何かの出来事があった場合、既存メディアの人たちはそのニュース価値を決めるのは自分たちだと思い込んでいる。それがどの程度大切な出来事なのか、何故そうなのかはマスメディアが判断するのであって、読者や視聴者ではない・・・というわけで「マスコミはブログやSNSなど受け手の側が発信、編集するというのは生理的にも受け入れられない」とのことであります。 元新聞記者である佐々木さんによると、これまでの新聞社は数多くの専門記者を擁し、記者クラブ制度を利用して権力の内部に入り込むことで「一次情報を得る」ことでは卓越した力を発揮してきたけれど、それらの情報をもとにして組み立てる「論考・分析」に関しては、「旧来の価値観に基づいたステレオタイプな切り口の域を出ていない」とのことであります。具体的な例としては、
を挙げている。このような切り口は、「若いブロガーたちから見れば失笑の対象以外の何物でもない」とのことであり、ブロガーたちは、新聞社の記者のような取材力はないけれど、論考・分析の能力は極めて高く、論考・分析という点から見ると(日本では)いまや「ブログが新聞を凌駕している」とのことであります。
『ブログ論壇の誕生』は、既存のメディアの側が「ネット論壇に対する理解を深め、対等に渡り合う枠組みを作り直す」ことが必要であり、そこからマスメディアとブログ論壇が補完しあう「新たな言論の世界」が始まる・・・という文章で終わっています。なおこの本の末尾に、著者お勧めの「著名ブロガー」によるブログ・リストが掲載されています。 anti-monosの新メディア論 などなど。まだまだわんさとあります。私自身はこれまで読んだことがない。存在すら知らなかった。
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5)どうでも英和辞書 | ||||||||
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gravity:引力 地球に引力なるものがあるから、モノは上から下へ落ちる。引力がないとどうなるのか?もちろん宇宙飛行士の生活みたいになるわけ。でもSteven Wrightというアメリカのコメディアンはもっと素晴らしい説明をしております。
これは気持ち悪いな、確かに。でも、引力がないと、狩人たちだって空に浮かんでいるんだっけ・・・!? sober:しらふ 三笑亭可楽の落語、聴いたことあります?酔っ払いのマネが非常にうまかった。八っつぁんがカミさんに「オレ、酔っ払っちゃあいねえよ!」とやるときは、本当に酔っ払っているみたいだったのであります。でもあれはしらふに決まってますよね。でないと、カミさんの「アンタ、もういい加減したら?」というセリフが言えないもんな。 で、ウェールズ出身の俳優、リチャード・バートン(かなりの酒飲みだった)は次のように言っています。
バートンのお父さんも大酒飲みだった、とウィキペディアには出ております。
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6)むささびの鳴き声 | ||||||||
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