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musasabi journal 162 | |||||||
2009年4月26日 | ||||||||
「連休」はいかがでしたか?関東地方は寒い雨も降りました。昔は、連休というと子供たちをどこかへ連れて行かなければ、と思い、子供たちの笑顔を見たいものだから、晴れてくれるように祈ったりしたものであります。いまはそれも必要ない。はっきり言って楽でいいですね。 |
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1)グラス半分のワインが長生きの秘訣? | ||||||||
この調査は1900年と1920年に生まれた男性1373人のライフスタイルを1960年から2000年までの40年間にわたって追跡調査した結果なのだそうであります。1900年生まれってことは、現在109歳、1920年生まれは89歳ですが、調査された年齢は一番若い人で40歳から80歳まで、一番年寄りで60歳から100歳までということになる。 これらの男性がどのようなアルコールをどのくらい飲むかによって心臓発作などによって死ぬ確率を調べたのだそうですが、ビールやウィスキーを飲む人よりもワイン党の方が2年半長生きするとのことです。また調査された人の場合、70%が赤ワインであったそうで、Wageningen Universityに研究陣は「赤ワインに含まれているpolyphenolicという成分が心臓の保護に役に立っているのではないか」と言っている。 この調査結果について、英国のワイン・アルコール飲料業者協会(Wine and Spirit Trade Association)では、当然のことながら「適量のアルコール摂取は健康にいい(moderate consumption of alcohol can have a positive impact on people's health)という見方が確認された」と歓迎しています。 これに対して、反アルコール団体のAlcohol Concernは「アルコールは健康にいいという言い方は危険だ」(The notion that we can somehow use alcohol for health benefit is a dangerous one)と主張している。「ごく少量のアルコール摂取が健康にいいということは言えるかもしれないが、適量以上の摂取による害のことも考えるべきだ」として「男性の場合、グラス半分以上のアルコール摂取によって寿命が短くなる」(For example, in men, drinking more than half a glass a day, there's a drop in life expectancy)とのことであり、「小さなグラスに一杯のワインでも毎日飲めば、女性の場合はガンにかかりやすい」(a small glass of wine per day increases the risk of cancer in women)などとも主張しています。 ちなみに、昨年英国で消費されたワインの内訳は、赤が7億2000万本、白が7億6400万本、ローズが1億5000万本だそうです。
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2)マーガレット・サッチャー、30年後の評価 | ||||||||
世論調査機関のYouGovが、サッチャーさんについていまの英国人がどのように考えているのかについてのアンケート調査を行っています。今年4月に約2500人の成人を対象におこなったものなのですが、40%が彼女のお陰で英国は住みよい国になった(she made Britain a better place to live)と答え、41%が住みにくくなった(she made it worse)と答えている。彼女は首相であったころから、それまでの首相と違って「対決政治」(confrontational politics) で知られ、国論を二分させる首相だと言われていたわけですが、1990年末に彼女が辞めてから18年も経っているのに彼女に対する評価の点で相変わらず国論を二分させている存在であると言えます。
ただ、YouGovによると、彼女についての意見は分かれるものの、彼女が不人気(unpopular)というわけでは決してない。どころか最近の政治家に比べるとはるかに人気が高い。彼女がいま首相であったとして、ブラウン首相と比べて、現在の経済危機を乗り切る能力はどちらが高いか?という問いについては、47%対34%でサッチャーに軍配が上がっている。 面白いのは保守党支持者の間の人気で、保守党の党首としては、サッチャーを推す人が49%もいるのに、キャメロンという人は24%しかいない。労働党支持者の間では、サッチャー37、キャメロン36でほぼ拮抗している。 政策面でいうと、彼女が進めた産業民営化や規制緩和が正しかったという人は56%に上っています。さらに労組の規制政策については、48%が「正しかった」と答えているのに対して「間違っていた」という意見は37%となっている。ただ公共サービスの民営化については、いまでもあまり受けがよくないようで、通信のBritish Telecom と鉄道のBritish Railが国営企業であった時代に対する「ノスタルジア」が強い、とYouGovは言っています。
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3)フィンランド製紙業界と中国農民の「死活問題」 | ||||||||
問題になっているのは、広西省にあるHuashijangという村で、ここにある18万ヘクタールの土地に、Stora Ensoがユーカリの木を植えようというのが計画なのですが、同社は1億4000万ユーロを投資して、昨年12月に付近の北海(Beihai)という町にパルプ工場をオープンした。ユーカリの森で育つ樹木をこの工場に搬入してパルプ生産を行おうというのが計画だった。 Helsingin Sanomatの記事によると、中国では土地は国家もしくは地元コミュニティに属するものとされており、外国企業は土地を所有できない。しかし長期にわたってリースすることはできるというわけで、この企業は地元の役所にリクエストを提出、役所が問題の土地を入手して企業に50年間にわたってリースするという形をとることにした。 問題は、植林用にリースされた土地では昔から豆やトウモロコシを育てて生計を立てている農民がいるということで、ユーカリ植樹計画は地元農民の生活に影響する。ユーカリ林として買収された土地の中には竹林もあって、その竹を使って籠を作って生計を立てていた人もいる。 Tuohinen記者によると、ユーカリ反対派が弁護士を雇って北京の中央政府に直訴して、この計画の中止を訴えたのですが、この弁護士は、地元の役人が雇ったと思われる暴力団に蹴ったり殴ったりのリンチを受けてしまった。その弁護士が北京の外国メディアに接触してきたことから、Helsingin Sanomatのレポートにつながることになる。 Huashijiang 村には100世帯が住んでいて、村人の年間所得は約2000元(220ユーロ:3万円弱)だそうですが、村の郊外には、地元の役所が作った「Stora Enso社のユーカリ計画を支持すべきだ。そうすれば地元経済が潤う」と訴える垂れ幕があるのですが、地元民はStora Ensoの名前さえ知らないとTuohinen記者は書いています。土地を買い上げるにあたって役所が提供した補償額は1ヘクタールあたり年間たったの50ユーロで、地元民によると、松を植えた方がもっとお金になるのだそうです。 実はこの村の付近にもうひと村があり、そこの場合、村人が自分でユーカリを植えてStora Ensoに販売しようとしたのですが、これが地元お役所の逆鱗にふれて、暴力事件が起こり、苗木は引き抜かれてしまった、とされている。 中国に進出しているフィンランド企業は約260社。製紙産業は、フィンランドにとって極めて重要な産業なのですが、最近の国内市場の落ち込みで輸出による業績拡大を狙わざるを得ない状況にある。アジアは(自動車と同じで)世界の製紙会社にとって最大の成長市場となっている。人口13億の中国では、一人当たり年間55キロ相当の紙が使われており、北米の場合は280キロで、中国の潜在的な市場規模を考えると、Stora Ensoにとっては、このユーカリ計画が成功するかどうかは死活問題です。 ユーカリ植樹計画について、Stora Enso社では、国連開発計画(UNDP)に計画を提出して評価を求めたのですが、UNDPの回答は「環境面でも社会的にも、地元に悪影響を与える要素はない」(the plantations do not involve any “significant environmental or social factors that could nave a negative effect on the tree plantation project in Guangxi)というものであったそうです。つまり国連のお墨付きは貰っているということですね。 自社のユーカリ植樹計画に関連して、反対派の弁護士が暴力を振るわれたと主張していることについてStora Ensoは「当社は、地元当局と警察に対して情報提供を要請しており、現在その返答を待っているところだ」(We have asked the local administration and the police for more information, and we are waiting for their answer)というコメントを発表したのですが、Tuohinen記者は、
と言っている。暴力事件を起こした張本人から報告を求めてどうするのか?というのが、この記者の疑問であるようであります。 |
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4)進歩的保守主義って何? | ||||||||
ただ来年の選挙ではひょっとすると保守党が勝つかもしれないと言われている。最近の世論調査でも保守党支持45%に対して労働党は27%となっています。私が個人的に考える理由は二つ。一つは英国の人々が労働党に飽きてしまったということ。もう一つはデイビッド・キャメロン保守党党首の個人的な人気です。1996年生まれの43歳だから、ブラウンさんより15歳も若くて颯爽としている。そのキャメロン党首の政治思想をひと言で表現すると「進歩的保守主義(progressive conservatism)」なのだそうであります。今年(2009年)1月22日にキャメロンが行った「進歩的保守主義を実現しよう:Making progressive conservatism a reality」というスピーチでそれが詳しく説明されています。 「進歩的保守主義」というと言葉の矛盾のように響くけれど、キャメロンのアタマの中ではそうでもないらしい。彼自身の言葉によると・・・
ということなのですが、これではなんのことだか分からない。キャメロンは、あるべき社会の実現のために「進歩的主義な目標(progressive ends)」を掲げるのですが、そこへ至るためには「保守主義的な手段(conservative means)」によるのが正しいと言っていて、この二つを併せると進歩的保守主義ということになる。 では彼のいう「進歩的な目標」とは何かというと、貧困や格差のないフェアな社会(fair society)、機会の平等が保障されている社会(opportunity society)、環境を大切にする社会(greener society)、そして犯罪やテロのない安全な社会(safer society)を作ることとなっている。でも、こんなことは誰だって言っているんじゃありませんか?という疑問について、キャメロンは、
キャメロンによると、過去10年間の労働党政治は、上記のような「進歩的な目標」を掲げながらも、実際に起こったことは、貧富の差が拡大し、犯罪とテロが増え、社会階層が固定化し・・・つまり「進歩的な目標」とは全くかけ離れたものであったということですね。何故そうなったのか?それは「方法」が「保守主義的」でなかったからだ、ということになる。 では彼のいう「保守主義的方法(conservtive means)」とは何かというと、それには4つのポイントがある。 まずは権力の拡散、つまり中央集権の反対のことを行うこと。社会的な責任と権力を、個人、コミュニティ、市民組織(civic institutions)にゆだねることです。キャメロンによると、現代はポスト官僚体制(post-bureaucratic age)の時代であって、大切なのは「規則ではなく枠組みを作ること(creating frameworks rather than rules)」、「お達しを出すのではなく(市民の)行動に影響を与える(influencing behaviour rather than issuing diktats)」なのだそうであります。
次に(最初のものに関連するけれど)政府の大切な役割が、いわゆる「市民社会の組織や機能」(institutions of civic society)を強化することにあるということ。ここで興味深いのは、キャメロンのいうinstitutions of civic societyとは何かということです。普通にはNPOだのチャリティ団体のことを言うのですが、彼が最も重要な「組織」として挙げているのが「家族」(family)であるということです。いかにも保守主義でありますね。 3つめのポイントは経済。キャメロンによると、上のprogressive endsを実現するためには経済成長が欠かせない。しかしそれはかつてのような社会格差を助長し、環境破壊を伴うような経済成長ではなく、新しい経済(new economy)によって、支えられなければならない。さらに労働党政府のような「無制限の公共支出」(uncontrolled public spending)や政府の借金が増えていくような経済政策では、キャメロンのいうprogressive endsを実現することはできない。 そして4つめのポイントして、1970年代の労働党政権のような無責任な財政政策(fiscal irresponsibility)を続けていくと、いずれは政府にお金がなくなって、キャメロンのいうprogressive endsの実現もできなくなる、と主張しています。
キャメロンのprogressive conservatismという政治思想を後押ししているのが、Demosという政策提言集団なのですが、Demosはかつてブレアさんの「新しい労働党(New Labour)」ができたときに、「クールな英国(Cool Britannia)」というスローガンを提唱したことがありますね。 Cool Britanniaもprogressive conservatismも「言葉だけ」という批判は受けるだろうとは思うのですが、キャメロンは、「進歩的保守主義」を自分が率いる政府の「底に流れる哲学」(underlying philosophy)であり、「指針となるような哲学のない政治は空虚で、効果的でもない(politics without a guiding philosophy is both empty and ineffective)」と言っています。キャメロンの演説テキストは、ここをクリックすると出ています。
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4)日本の「恐竜」たちが待望する大連立構想 | ||||||||
4月30日付のThe EconomistがTOKYO発で「日本の野党の分裂:彼は残るべきか、去るべきか?(Japan's opposition in disarray. Should he stay or should he go?)という記事を掲載しています。彼とは、いうまでもなく民主党の小沢さんのことですね。西松事件とかで、秘書が逮捕されてから小沢さんを代表とする民主党の人気が下がり、それに反比例して麻生さんの人気が上がったりしている、という状況についてのレポートです。 記事が伝えていること自体は、日本のメディアでも取り上げられているもので、取り立てて新しいことは書いていないのですが、The Economistらしいアングルが二つあります。一つは大連立の話、もう一つは民主党の岡田さんのことであります。 まず大連立ですが、今の状況で、選挙をやっても以前に言われたほどには民主党の明らかな勝利ということがなくなると、こう着状態打開のためにgrand coalition(大連立)というハナシが復活してきている。The Economistによると、
というわけで、殆どオハナシにならないという考えのようでありますね。 次に民主党の岡田克也さんについてです。民主党内の小沢嫌いの人たちにとって、鳩山由紀夫さんも「小沢軌道(Ozawa orbit)」に乗っている人だから反対意見が多い。そのような人々のお気に入りは岡田克也氏である。岡田氏は、政治の世襲制廃止とあらゆる企業献金の禁止を主張して自民と選挙を争うべきだと言っている。 企業献金の禁止は、小沢へのアタックともとれるが、岡田氏はあえてはっきりと対決しようとはしていない。The Economistによると、岡田氏のこの態度は「典型的な岡田流どっちつかず(typical of Mr Okada’s ambivalence)」なのだそうであります。で、The Economistの記事の締めくくりは次のようになっております。
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5)どうでも英和辞書 | ||||||||
A〜Zの総合索引はこちら | ||||||||
grip and grin:にこやかに握手をする gripは「握る」、grinは「笑う」ですね。首脳会談のようなことがあると、まず首脳同士がにこやかに笑いながら握手をする図が見られますよね。あれです、grip and grinというのは。つまり社交辞令としての笑いですね。はっきり言って、麻生さんのgrinは気持ち悪い(と私は思っています)。写真は2009年4月19日に、トリニダード・トバゴで開かれた米州首脳会議の記者会見場で握手をするオバマ大統領とベネズエラのチャベス大統領。grip and grinとはいえ、普段から強烈な反米発言で知られるチャベスと握手をしたオバマの行動についてアメリカ国内では批判する向きもあったのだそうですね。 history:歴史 「人間は歴史から学ぶということが決してない、ということを我々は歴史から学ぶことができる(we learn from history that man can never learn anything from history)」とは、哲学者ヘーゲルの言葉だそうです。もちろん言語はドイツ語なのですが、この言葉を紹介したのはアイルランドの劇作家、George Bernard Shawです。人類の過去を振り返ると、同じ間違いを繰り返していることが分かるというわけでありますが、これが本当なら歴史という学問の存在価値がないってことになります!? swine flu:豚インフルエンザ 問題の豚インフルエンザにかからないで済む方法の一つが手洗いの励行だと言われておりますね。アメリカのある栄養剤メーカーからのメッセージによると、手洗いは約20秒間することが肝心なのだそうです。「約20秒」を別の言い方で説明すると、あのhappy birthday to youの歌を普通の速さで2回歌うと、およそ20秒かかるんだそうです。そうですか?1回でも20秒はかかると思うけど・・・。
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6)むささびの鳴き声 | ||||||||
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