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musasabi journal 162
2009年4月26日
「連休」はいかがでしたか?関東地方は寒い雨も降りました。昔は、連休というと子供たちをどこかへ連れて行かなければ、と思い、子供たちの笑顔を見たいものだから、晴れてくれるように祈ったりしたものであります。いまはそれも必要ない。はっきり言って楽でいいですね。
1)グラス半分のワインが長生きの秘訣?


毎日グラス半分のワインを飲む人は、まったくの下戸(teetotallers)より最高5年長生きするそうです。4月30日付のGuardianがオランダのWageningen Universityという大学の調査結果として伝えています。もう少し正確にいうと、アルコールを全くとらないよりも一日あたり20グラムのワインを飲む方が健康によろしい。

この調査は1900年と1920年に生まれた男性1373人のライフスタイルを1960年から2000年までの40年間にわたって追跡調査した結果なのだそうであります。1900年生まれってことは、現在109歳、1920年生まれは89歳ですが、調査された年齢は一番若い人で40歳から80歳まで、一番年寄りで60歳から100歳までということになる。

これらの男性がどのようなアルコールをどのくらい飲むかによって心臓発作などによって死ぬ確率を調べたのだそうですが、ビールやウィスキーを飲む人よりもワイン党の方が2年半長生きするとのことです。また調査された人の場合、70%が赤ワインであったそうで、Wageningen Universityに研究陣は「赤ワインに含まれているpolyphenolicという成分が心臓の保護に役に立っているのではないか」と言っている。

この調査結果について、英国のワイン・アルコール飲料業者協会(Wine and Spirit Trade Association)では、当然のことながら「適量のアルコール摂取は健康にいい(moderate consumption of alcohol can have a positive impact on people's health)という見方が確認された」と歓迎しています。

これに対して、反アルコール団体のAlcohol Concernは「アルコールは健康にいいという言い方は危険だ」(The notion that we can somehow use alcohol for health benefit is a dangerous one)と主張している。「ごく少量のアルコール摂取が健康にいいということは言えるかもしれないが、適量以上の摂取による害のことも考えるべきだ」として「男性の場合、グラス半分以上のアルコール摂取によって寿命が短くなる」(For example, in men, drinking more than half a glass a day, there's a drop in life expectancy)とのことであり、「小さなグラスに一杯のワインでも毎日飲めば、女性の場合はガンにかかりやすい」(a small glass of wine per day increases the risk of cancer in women)などとも主張しています。

ちなみに、昨年英国で消費されたワインの内訳は、赤が7億2000万本、白が7億6400万本、ローズが1億5000万本だそうです。

▼確かに「グラス半分なら飲む方が健康にいい」などと言われると、それ見たことかというわけで、酒飲みが調子づき、半分どころか1本も2本も空けてしまうことに通じるのだから、Alcohol Concernの言うことももっともではある。ワイン好きがグラス半分で我慢できるわけないもんな。

▼私の場合、teetotallerというほどではないけれど、アルコールは飲めない部類に入ります。だから、この調査結果などどうでもいいのです。ただ・・・人間、60まで生きたら、一応満足すべきなんじゃありません?ワインを半分だけ飲んで、5年長生きしたって面白くもなんともないのでは?

2)マーガレット・サッチャー、30年後の評価


今年(2009年)5月は、マーガレット・サッチャー率いる保守党政権が誕生してからちょうど30年目にあたります。あらゆる意味において英国を変えたと言われるサッチャーだけに、30周年にあたり、英国の多くのメディアがサッチャリズムとは何であったのか?という特集を組んでいます。サッチャー政権の誕生は、それほど英国の歴史において画期的な出来事であったわけです。

世論調査機関のYouGovが、サッチャーさんについていまの英国人がどのように考えているのかについてのアンケート調査を行っています。今年4月に約2500人の成人を対象におこなったものなのですが、40%が彼女のお陰で英国は住みよい国になった(she made Britain a better place to live)と答え、41%が住みにくくなった(she made it worse)と答えている。彼女は首相であったころから、それまでの首相と違って「対決政治」(confrontational politics) で知られ、国論を二分させる首相だと言われていたわけですが、1990年末に彼女が辞めてから18年も経っているのに彼女に対する評価の点で相変わらず国論を二分させている存在であると言えます。

▼面白いのは、彼女が首相になっても何も変わらなかった(she had made no difference at all)という人がわずか6%しかいないということです。つまり好き嫌いが実にはっきりしているということですね。

ただ、YouGovによると、彼女についての意見は分かれるものの、彼女が不人気(unpopular)というわけでは決してない。どころか最近の政治家に比べるとはるかに人気が高い。彼女がいま首相であったとして、ブラウン首相と比べて、現在の経済危機を乗り切る能力はどちらが高いか?という問いについては、47%対34%でサッチャーに軍配が上がっている。

面白いのは保守党支持者の間の人気で、保守党の党首としては、サッチャーを推す人が49%もいるのに、キャメロンという人は24%しかいない。労働党支持者の間では、サッチャー37、キャメロン36でほぼ拮抗している。

政策面でいうと、彼女が進めた産業民営化や規制緩和が正しかったという人は56%に上っています。さらに労組の規制政策については、48%が「正しかった」と答えているのに対して「間違っていた」という意見は37%となっている。ただ公共サービスの民営化については、いまでもあまり受けがよくないようで、通信のBritish Telecom と鉄道のBritish Railが国営企業であった時代に対する「ノスタルジア」が強い、とYouGovは言っています。

▼サッチャーさんは今年83歳で認知症が伝えられています。個人的には質素な生活ぶりで、クレジットカードを持たず、投機ビジネスを嫌い、高収入はハードワークで稼ぐべしというのが口癖であったそうです。しかし彼女の「業績」の一つとされる金融のビッグバン(1986年)が、アメリカ発のサブプライムローンの基となる「金融工学」なるものにつながったのだという人もおります。

▼サッチャーさんについての私なりの思いのようなものは、むささびジャーナル132号で書かせてもらいました。1980年からこれまでの30年の英国を語るということは、サッチャーさんのやったことを語るということでもある。これは私自身、是非やってみたいことでもあります。サッチャー本人もさることながら、彼女が11年以上も首相でいることを許した挙句、結局追い出してしまった英国人という人々について、きっちり知ってみたい気がしますね。

3)フィンランド製紙業界と中国農民の「死活問題」


フィンランドの日刊紙、Helsingin Sanomatのサイト(英文版)にPetteri Tuohinenという記者による北京からの報告が出ています。見出しは「中国農民がStora Ensoの植樹のために土地を失っている」(Chinese farmers lose land to Stora Enso tree plantations)となっている。Stora Ensoはフィンランドとスウェーデンの合弁企業で、木材製品や製紙をビジネスにしているのですが、この企業が中国で進めているパルプ生産のためのユーカリの植樹計画のおかげで、植樹現場になっている農村の人々が従来の農業をできなくなっているばかりか、土地そのものまで失っている、という「告発」のレポートです。相当長い記事なので、とても全部を紹介することはできませんが、原文(英文)はここをクリックすると出ています。

問題になっているのは、広西省にあるHuashijangという村で、ここにある18万ヘクタールの土地に、Stora Ensoがユーカリの木を植えようというのが計画なのですが、同社は1億4000万ユーロを投資して、昨年12月に付近の北海(Beihai)という町にパルプ工場をオープンした。ユーカリの森で育つ樹木をこの工場に搬入してパルプ生産を行おうというのが計画だった。

Helsingin Sanomatの記事によると、中国では土地は国家もしくは地元コミュニティに属するものとされており、外国企業は土地を所有できない。しかし長期にわたってリースすることはできるというわけで、この企業は地元の役所にリクエストを提出、役所が問題の土地を入手して企業に50年間にわたってリースするという形をとることにした。

問題は、植林用にリースされた土地では昔から豆やトウモロコシを育てて生計を立てている農民がいるということで、ユーカリ植樹計画は地元農民の生活に影響する。ユーカリ林として買収された土地の中には竹林もあって、その竹を使って籠を作って生計を立てていた人もいる。

Tuohinen記者によると、ユーカリ反対派が弁護士を雇って北京の中央政府に直訴して、この計画の中止を訴えたのですが、この弁護士は、地元の役人が雇ったと思われる暴力団に蹴ったり殴ったりのリンチを受けてしまった。その弁護士が北京の外国メディアに接触してきたことから、Helsingin Sanomatのレポートにつながることになる。

Huashijiang 村には100世帯が住んでいて、村人の年間所得は約2000元(220ユーロ:3万円弱)だそうですが、村の郊外には、地元の役所が作った「Stora Enso社のユーカリ計画を支持すべきだ。そうすれば地元経済が潤う」と訴える垂れ幕があるのですが、地元民はStora Ensoの名前さえ知らないとTuohinen記者は書いています。土地を買い上げるにあたって役所が提供した補償額は1ヘクタールあたり年間たったの50ユーロで、地元民によると、松を植えた方がもっとお金になるのだそうです。

実はこの村の付近にもうひと村があり、そこの場合、村人が自分でユーカリを植えてStora Ensoに販売しようとしたのですが、これが地元お役所の逆鱗にふれて、暴力事件が起こり、苗木は引き抜かれてしまった、とされている。

中国に進出しているフィンランド企業は約260社。製紙産業は、フィンランドにとって極めて重要な産業なのですが、最近の国内市場の落ち込みで輸出による業績拡大を狙わざるを得ない状況にある。アジアは(自動車と同じで)世界の製紙会社にとって最大の成長市場となっている。人口13億の中国では、一人当たり年間55キロ相当の紙が使われており、北米の場合は280キロで、中国の潜在的な市場規模を考えると、Stora Ensoにとっては、このユーカリ計画が成功するかどうかは死活問題です。

ユーカリ植樹計画について、Stora Enso社では、国連開発計画(UNDP)に計画を提出して評価を求めたのですが、UNDPの回答は「環境面でも社会的にも、地元に悪影響を与える要素はない」(the plantations do not involve any “significant environmental or social factors that could nave a negative effect on the tree plantation project in Guangxi)というものであったそうです。つまり国連のお墨付きは貰っているということですね。

自社のユーカリ植樹計画に関連して、反対派の弁護士が暴力を振るわれたと主張していることについてStora Ensoは「当社は、地元当局と警察に対して情報提供を要請しており、現在その返答を待っているところだ」(We have asked the local administration and the police for more information, and we are waiting for their answer)というコメントを発表したのですが、Tuohinen記者は、

  • つまり、Stora Ensoは、殴られた弁護士が、リンチ事件を組織したと告発している地元の役人に対して報告を求めているというわけである。(So Stora Enso is asking for a report from the very officials that the lawyer is blaming for organising the beating that he got.)

と言っている。暴力事件を起こした張本人から報告を求めてどうするのか?というのが、この記者の疑問であるようであります。

4)進歩的保守主義って何?


英国では来年(2010年)の6月3日までに総選挙が行われることになっています。日本よりは、はるかに政権交代が起こりやすい政治風土のようなものがある英国ですが、ここ30年ほどを見るとそうでもない。サッチャーさんが首相になったのが1979年、それから約18年間は保守党政権が続いたのだし、1997年にブレア労働党政権が誕生してからこれまでの12年間ずーっと労働党が支配している。

ただ来年の選挙ではひょっとすると保守党が勝つかもしれないと言われている。最近の世論調査でも保守党支持45%に対して労働党は27%となっています。私が個人的に考える理由は二つ。一つは英国の人々が労働党に飽きてしまったということ。もう一つはデイビッド・キャメロン保守党党首の個人的な人気です。1996年生まれの43歳だから、ブラウンさんより15歳も若くて颯爽としている。そのキャメロン党首の政治思想をひと言で表現すると「進歩的保守主義(progressive conservatism)」なのだそうであります。今年(2009年)1月22日にキャメロンが行った「進歩的保守主義を実現しよう:Making progressive conservatism a reality」というスピーチでそれが詳しく説明されています。

「進歩的保守主義」というと言葉の矛盾のように響くけれど、キャメロンのアタマの中ではそうでもないらしい。彼自身の言葉によると・・・

  • 私にとって進歩的保守主義とは二つのことを意味する。それはビジョンであると同時に議論・主張であり、目標であると同時に手段でもある。For me, progressive conservatism is two things. It's a vision - and it's an argument. It is about ends - but it is also about means.

ということなのですが、これではなんのことだか分からない。キャメロンは、あるべき社会の実現のために「進歩的主義な目標(progressive ends)」を掲げるのですが、そこへ至るためには「保守主義的な手段(conservative means)」によるのが正しいと言っていて、この二つを併せると進歩的保守主義ということになる。

では彼のいう「進歩的な目標」とは何かというと、貧困や格差のないフェアな社会(fair society)、機会の平等が保障されている社会(opportunity society)、環境を大切にする社会(greener society)、そして犯罪やテロのない安全な社会(safer society)を作ることとなっている。でも、こんなことは誰だって言っているんじゃありませんか?という疑問について、キャメロンは、

  • そうだ。これらの目標は労働党、自由民主党も言っていることだし、主要な政治勢力はみんな言っていることだ。意見が違うのは、それらの目標をどのように実現するのかという部分なのだ。そのところで進歩的保守主義という考え方が実に興味深いものになるのだ。Yes, they are ends that we share with people in the Labour Party, the Liberal Democrat Party and right across the mainstream political spectrum. But no, we do not agree about how best to achieve those ends - and that is where progressive conservatism gets really interesting.

キャメロンによると、過去10年間の労働党政治は、上記のような「進歩的な目標」を掲げながらも、実際に起こったことは、貧富の差が拡大し、犯罪とテロが増え、社会階層が固定化し・・・つまり「進歩的な目標」とは全くかけ離れたものであったということですね。何故そうなったのか?それは「方法」が「保守主義的」でなかったからだ、ということになる。

では彼のいう「保守主義的方法(conservtive means)」とは何かというと、それには4つのポイントがある。

まずは権力の拡散、つまり中央集権の反対のことを行うこと。社会的な責任と権力を、個人、コミュニティ、市民組織(civic institutions)にゆだねることです。キャメロンによると、現代はポスト官僚体制(post-bureaucratic age)の時代であって、大切なのは「規則ではなく枠組みを作ること(creating frameworks rather than rules)」、「お達しを出すのではなく(市民の)行動に影響を与える(influencing behaviour rather than issuing diktats)」なのだそうであります。

▼ポスト官僚体制の時代(post-bureaucratic age)という言葉は初めて聞いたのですが、先進国ならどこにでも当てはまるのかもしれないですね。要するに上から指令をだすというやり方ではダメと言っているのだと思います。

次に(最初のものに関連するけれど)政府の大切な役割が、いわゆる「市民社会の組織や機能」(institutions of civic society)を強化することにあるということ。ここで興味深いのは、キャメロンのいうinstitutions of civic societyとは何かということです。普通にはNPOだのチャリティ団体のことを言うのですが、彼が最も重要な「組織」として挙げているのが「家族」(family)であるということです。いかにも保守主義でありますね。

3つめのポイントは経済。キャメロンによると、上のprogressive endsを実現するためには経済成長が欠かせない。しかしそれはかつてのような社会格差を助長し、環境破壊を伴うような経済成長ではなく、新しい経済(new economy)によって、支えられなければならない。さらに労働党政府のような「無制限の公共支出」(uncontrolled public spending)や政府の借金が増えていくような経済政策では、キャメロンのいうprogressive endsを実現することはできない。

そして4つめのポイントして、1970年代の労働党政権のような無責任な財政政策(fiscal irresponsibility)を続けていくと、いずれは政府にお金がなくなって、キャメロンのいうprogressive endsの実現もできなくなる、と主張しています。

  • より進歩的な社会を建設するために、進歩的保守主義は、政府が(財政面で)身の丈に合った政策を行うことによって、真にお金を払っただけのことはある価値を提供できるような経済計画を保持していなければならないのだ。in building a more progressive society progressive conservatism must also contain a plan for ensuring that government lives within its means and delivers real value for money.

キャメロンのprogressive conservatismという政治思想を後押ししているのが、Demosという政策提言集団なのですが、Demosはかつてブレアさんの「新しい労働党(New Labour)」ができたときに、「クールな英国(Cool Britannia)」というスローガンを提唱したことがありますね。

Cool Britanniaprogressive conservatismも「言葉だけ」という批判は受けるだろうとは思うのですが、キャメロンは、「進歩的保守主義」を自分が率いる政府の「底に流れる哲学」(underlying philosophy)であり、「指針となるような哲学のない政治は空虚で、効果的でもない(politics without a guiding philosophy is both empty and ineffective)」と言っています。キャメロンの演説テキストは、ここをクリックすると出ています。

▼日本にはかつて「保革対決」という言葉がありましたね。私、あの場合の「革新」という言葉の意味が全く分かりませんでした。他人から「アンタは革新的」と言われて気を悪くする人って、います?一方、「キミは保守的だからな」という場合は、「保守的」が否定的な意味として使われている。誰が見ても「肯定的」なものと、「否定的」なものは「対決」なんてしないのでは?昔、美濃部さんという人が都知事をやっていたとき「革新都政」なんて言われたけれど、石原さんのやっていることだって、「これまでになかった」という意味で「革新的」な部分がある。

▼で、キャメロンの場合は「保守的」であることを肯定的に考えており、このスピーチに見る限りは、社会問題の解決のために、どちらかというと「個人の責任」とか「家庭の役割」を強調している。「小さな政府」という、昔からの保守党の考え方を踏襲していると言えますね。おそらく労働党の考え方だと、やはり「社会」とか「政府」の役割ということが強調されるのでしょう。

4)日本の「恐竜」たちが待望する大連立構想

4月30日付のThe EconomistがTOKYO発で「日本の野党の分裂:彼は残るべきか、去るべきか?(Japan's opposition in disarray. Should he stay or should he go?)という記事を掲載しています。彼とは、いうまでもなく民主党の小沢さんのことですね。西松事件とかで、秘書が逮捕されてから小沢さんを代表とする民主党の人気が下がり、それに反比例して麻生さんの人気が上がったりしている、という状況についてのレポートです。

記事が伝えていること自体は、日本のメディアでも取り上げられているもので、取り立てて新しいことは書いていないのですが、The Economistらしいアングルが二つあります。一つは大連立の話、もう一つは民主党の岡田さんのことであります。

まず大連立ですが、今の状況で、選挙をやっても以前に言われたほどには民主党の明らかな勝利ということがなくなると、こう着状態打開のためにgrand coalition(大連立)というハナシが復活してきている。The Economistによると、

  • 大連立構想は、体制側の恐竜たち(すなわち80才を超えた新聞発行者やかつての首相経験者たち)の好む事態解決の方策である。彼らは国家の問題は自分たちが扱うべきなのだと考えており、政治におけるキングメーカーとして常に政治に手を出してきた人々である。大連立構想は、小沢代表自身が2007年末にちょっとだけ提案したこともある解決策であるが、そのときは民主党内の反対にあったものだ。大連立などというものは、政治がより責任あるものになるかもしれない、という期待・希望をより強いものにするものとはとても思えない。This is the favoured solution of the establishment’s dinosaurs--octogenarian newspaper publishers and former prime ministers--who think that they should be arranging the affairs of state and who constantly meddle in politics as kingmakers. It is a solution proposed briefly by Mr Ozawa in late 2007, much to the horror of his party. But it does little to further the hope that politics might become more accountable.

というわけで、殆どオハナシにならないという考えのようでありますね。

次に民主党の岡田克也さんについてです。民主党内の小沢嫌いの人たちにとって、鳩山由紀夫さんも「小沢軌道(Ozawa orbit)」に乗っている人だから反対意見が多い。そのような人々のお気に入りは岡田克也氏である。岡田氏は、政治の世襲制廃止とあらゆる企業献金の禁止を主張して自民と選挙を争うべきだと言っている。

企業献金の禁止は、小沢へのアタックともとれるが、岡田氏はあえてはっきりと対決しようとはしていない。The Economistによると、岡田氏のこの態度は「典型的な岡田流どっちつかず(typical of Mr Okada’s ambivalence)」なのだそうであります。で、The Economistの記事の締めくくりは次のようになっております。

  • 前回の選挙で、民主党を惨めな敗北に導いたのは岡田氏なのだが、その彼は、いま分裂をオープンにしてしまうと「民主党の政権獲得の機会を失わせることになる」と言っている。しかし小沢氏の将来についての民主党のうろたえぶりそのものが、政権獲得のチャンスを滅ぼすことになるということだってある。このうろたえは、いわゆるいわゆる「壊し屋」のせいではないのである。An open split, says Mr Okada, who led the DPJ to abject defeat in the previous election, "would ruin our chances of taking over the government." So might the DPJ's dithering over the future of Mr Ozawa, not for nothing called "the Destroyer".

    ▼大連立構想なるものを「恐竜みたいに時代離れした人たちによって支持されている考え方」と言っているあたりに、日本の政 治のわけの分からなさがあるのでしょうね。私自身、昔から何度も欧米の人たちに「何故、日本は政府が変わらないのか?」と 聞かれて返事に窮するだけだったのを憶えています。

    ▼Aという政権がダメならBに変えてみればいいではないか、というのが当然の考え方ですよね。そのことが何故できないのかが分からないのですよね。私にも分からない。分からないままに「どっちがやっても同じなんじゃないの?」というところに落ち着く。これは何やら現状批判的に響くけれど、実のところは「現状維持願望」ですね。「どうせ誰がやっても変わらない・・・」と言ってノンビリしていられる平穏を失いたくない、という意味での「現状維持願望」です。

5)どうでも英和辞書
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grip and grin:にこやかに握手をする

gripは「握る」、grinは「笑う」ですね。首脳会談のようなことがあると、まず首脳同士がにこやかに笑いながら握手をする図が見られますよね。あれです、grip and grinというのは。つまり社交辞令としての笑いですね。はっきり言って、麻生さんのgrinは気持ち悪い(と私は思っています)。写真は2009年4月19日に、トリニダード・トバゴで開かれた米州首脳会議の記者会見場で握手をするオバマ大統領とベネズエラのチャベス大統領。grip and grinとはいえ、普段から強烈な反米発言で知られるチャベスと握手をしたオバマの行動についてアメリカ国内では批判する向きもあったのだそうですね。

history:歴史

「人間は歴史から学ぶということが決してない、ということを我々は歴史から学ぶことができる(we learn from history that man can never learn anything from history)」とは、哲学者ヘーゲルの言葉だそうです。もちろん言語はドイツ語なのですが、この言葉を紹介したのはアイルランドの劇作家、George Bernard Shawです。人類の過去を振り返ると、同じ間違いを繰り返していることが分かるというわけでありますが、これが本当なら歴史という学問の存在価値がないってことになります!?

swine flu豚インフルエンザ

問題の豚インフルエンザにかからないで済む方法の一つが手洗いの励行だと言われておりますね。アメリカのある栄養剤メーカーからのメッセージによると、手洗いは約20秒間することが肝心なのだそうです。「約20秒」を別の言い方で説明すると、あのhappy birthday to youの歌を普通の速さで2回歌うと、およそ20秒かかるんだそうです。そうですか?1回でも20秒はかかると思うけど・・・。

 

6)むささびの鳴き声


▼忌野清志郎さんというロック歌手が58才で亡くなったのだそうですね。1951年生まれということは、私よりも丁度10才若い人であったということです。正直言って全く知りませんでした。聴いたこともなかった。10年違うとこうも分からなくなるものなのですかね。で、ラジオで忌野(いまいの)さんの『ぼくの好きな先生』というのを聴いたのですが、およそ次のような歌詞だった。

タバコを 吸いながら いつでも つまらなそうに
タバコを 吸いながら いつでも 部屋にひとり
僕の好きな 先生 僕の好きな おじさん
僕の好きな 先生 僕の好きな おじさん
タバコを 吸いながら 困ったような 顔をして
遅刻の 多い僕を  くちかずも少なく しかるのさ

▼この歌詞は忌野さんの作品で、ここで歌われている「ぼくの好きな先生」は今年77才だそうです。私よりも丁度10才年上ってことになる。忌野さんが死んだことについて、あるファンはネット上で次のように言っています。

「反体制」とかいうけど、要は、普通のこと、当たり前のことを、普通に、当たり前に言って何が悪いの?ということだと思う。でも、それをきちんと貫きとおすというのが、実際は難しいわけで、そういう人生を生き抜いた、という一点だけで、まず清志郎は素晴らしかった・・・。

▼なるほど、この人は「反体制」と言われていたのか・・・。昔話になるけれど、ボブ・ディランとかジョーン・バエズとかいうフォークソングの歌手がいましたよね。確かこの人たちも、その頃はanti-establishmentと言われていたと思います。エルビス・プレスリーをご存知で?あるいはレイ・チャールズ。ボブ・ディランたちには、「反戦」とか「差別反対」とかのいわゆる「メッセージ」はあったのだろうけれど、娯楽性というか「文句なしに楽しい」というものがなかったのでありますよ。

▼忌野さんに関するファンのコメントを読んでいると、この人の場合は娯楽性があったようなのですね。じゃなきゃお葬式に4万人も集まらない。おそらく娯楽性とかサービス精神のようなものが旺盛でもあったのでしょうね。

▼はっきり言って、私は彼のCDを買いたいとは思わない。何だかメロディが分からないもんな。やっぱ歌は春日八郎の『赤いランプの終列車』だわさ・・・。



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