第6号 2003年5月4日 | |||
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1)戦争には勝ったけど… 2)おせっかい国家の出現 3)大学出の女性は子供を産まない!? 4)中国人学生の「幻滅」 5)定年は人間の尊厳を破壊する? 6)) むささびJの受け売りフィンランド論:女性の社会参加、「先進国」の背景 7)短信●英国人の甘いもの好きに警告●世界ビー玉選手権●結婚式の数 ●理想のカプル●居眠り調査 8)むささびMの「将来と未来の違い」 9)編集後記 |
1)戦争には勝ったけど… |
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2)おせっかい国家の出現!? |
前回のむささびジャーナルで「子供がずる休みをすると親に罰金」という厳しい法律を英国の法務省が考えているとお伝えしました。反社会行動防止法案(Anti-Social Behaviour Bill)というのがそれなのですが、もう少し詳しいことが分かってきました。 例えば… ステレオやテレビの音がうるさい場合、地方自治体がこれを押収する力を持つ。 騒音がひどいパブやクラブについては、地元の環境観察官が即刻閉店させる力を持つ。 町のある部分については16歳以下の子供が二人以上たむろすることを警察が取り締まる力を持つ。 …ということですが、ご覧のとおり、いずれの場合も「力を持つ」というだけで、実際に取り締まらなければならないとは言っていません。で、この法案は野党から大いに反発を買っています。「どうせ忘れられてしまう法律なんだから、反対する価値もない」(保守党)、「地方選挙目当てのPR」(自民党)などとコメントしています。 実はこの法案にはもう一つ(私には)信じられないような部分があります。例の「ずる休み」なんですが、子供をずる休みさせた親については、裁判所が「親としての自覚を促すための訓練コース」(parental courses)への参加を命令することができるというのです。 これについては政府部内からも問題視する声が出ており、Lord Irvineという閣僚(大法官なる立場にある人です)がブレア首相に宛てた手紙を書いて「おせっかい国家(nanny state)の出現」「あまりにも規則でがんじがらめにしすぎる」「EUの人権関連法規にも違反する可能性がある」などと指摘をしている…ということがSunday Timesによってすっぱ抜かれたそうであります。 このAnti-Social Behaviour Billなるものに最も熱心なのがブランケット法務大臣であることは言うまでもありません。「英国から悪がき文化(Yob culture)を締め出そう」というのですが、よほど何か腹に据えかねることでもあったんでしょうね。ちなみにYobを辞書で見ると「悪がき」となっています。Boyを逆に綴るとこれになります。
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3)大学出の女性は子供を産まない!? |
英国統計局(Office of National Statistics)によると、英国の人口は2026年までに現在の5880万人から6300万人となり、ピークは2040年で6400万人に達し、それ以後は減少に向かうとされています。興味深いのは現在から2026年までの増加人口の60%が移民(430万)で占められるという点です。 統計局では「移民は英国社会においては極めて重要な役割をになっており2000年の調べでは医療関係の25%以上、教職員の9%が外国生まれ人達で占められている」とコメントしています。同じ人口統計によると、英国では大学出の女性の50%が子供を産まないという数字が出ているそうです。大学出の女性で子供を産んだ人の場合、出産した平均年齢は29歳で、大学へ行かなかった女性に比べると5歳は遅いらしい。 英国における女性一人当たりの出産率は1・74人なのですが、1950年生まれの女性の10人に一人が子供なしであるのに対して1960年生まれの場合は5人に一人が子供なしとなっています。保守派の新聞、Daily Telegraphは「女性の学歴が上がるにつれて家庭よりもキャリアを望む女性が増えてきていることが子供のいない女性が増えている理由だ」として「2003年に大学受験をした女性の数は前年比14000人(4・6%)増加で216,000人であるのに対して男性は177,387人、増加率は3・1%にすぎない」という数字をあげています。 |
4)中国人学生の「幻滅」 |
英国の大学で勉強する外人学生の数は143,000人(2001年の数字)。イチバン多いのは中国人の若者で18,000人。2002年の統計は未だ出ていないのですが、恐らく25,000を超えるだろうとされています。3月末のEconomistによると、いずれも学力優秀学生ばかりなのですが、文化・習慣の違いから苦労も多いらしいです。 まず学生としての社交生活。いずれもお金持ちの子息が多いらしく自炊をしたりした経験のない人が多い。英国の学生生活では自炊や両親からの独立が当たり前。また余暇の過ごし方にしても、英国の学生たちがパブでビールを飲みながら談笑というのが多いのに対して中国人の場合はこの種のアルコール遊びには拒否反応を示すことが多い。と、どうしても社交生活が中国人同士というケースが多くなってしまい、「英語が身につかない」という不満につながる。 もう一つ違うのは教室での態度。英国人の学生が教授を質問攻めにして「活発な」授業をするのに対して中国人の学生はひたすら黙って授業を聴くというケースが多い。悪気はないのですが、その静けさが同僚の英国人の学生にはどうもしっくりこないし、教師から見ても自分の教えていることが分かってもらえているのかどうか…という不安にも繋がったりする。 さらに興味深いと(私が)思うのは、教師と学生の関係で、中国では授業を離れると個人的に親しくなる傾向があるのに対して、英国の場合は反対。授業では「親しく」議論したりするが、それを離れるとお互いに干渉をしない「プライバシー」の世界に入ってしまう。 ただ英国の大学にしてみれば、中国の学生は1年間のMBAのコースで15,000ポンド(約280万円)、3年間の修士課程だと1年あたり8000ポンド(約150万円)も落としてくれる「お得意様」だけに大事にしなくては…ということで、生活相談などにも大いに力を入れているそうです。 |
5) 定年は人間の尊厳を破壊する? |
英語で「定年」のことを何というのだろうと思って和英辞書を見たらcompulsory retirementとなっていました。なるほど…。でretirementを日本語でどのように言っているのかと思って英和辞書を見たら「引退・退職・隠居」などの訳語が出ていました。義務教育はcompulsory educationと言いますね。何故かcompulsory retirementのことは「義務引退」「義務退職」「義務隠居」などといわずに「定年(退職)」とか「停年」などと言う。 |
6)むささびJの受け売りフィンランド論:女性の社会参加、「先進国」の背景 |
今年3月に行われた総選挙の結果、女性のアンネリ・ヤーッテーンマキ氏が首相に就任したことによって、フィンランドでは初めて首相と大統領(タルヤ・ハロネン)の両方が女性ということになりました。フィンランドの政治には女性が大いに参加しています。国会議員200人のうち75人(37・5%)が女性ですし、アンネリ・ヤーッテーンマキ首相が率いる内閣の閣僚18人のうち半数の9人が女性で占められています。 フィンランドの女性が選挙権と被選挙権を獲得したのは1906年のことですが、女性の参政権獲得としてはヨーロッパでも一番早く実現していますし、被選挙権にいたっては世界でも一番最初に女性にその権利が認められた国でもあります。女性初めて被選挙権が認められた翌年に行われた選挙では19人の女性が国会議員に選ばれています。議員総数は当時も200でしたから、女性議員の占める割合は100年前でもほぼ1割であったことになります。 ちなみに2003年の日本の衆議院議員475人のうち女性議員は7・1%で34人、参議院は246人中の36人で14・6%。それから英国の下院議員は659人中の118人ですから約18%ということになります。 要するにフィンランドにおける女性の社会参加は日本よりもはるかに高いということなのですが、フィンランド人のジャーナリストであるイルマ・サルクネンという人が次のように語っています。 「女性の政治参加を国際的に見ると極めて面白い現象に気が付く。過激な女性解放運動が盛んであった国に限って女性の政治参加が遅れている。女性選挙権が最初に認められたのは1893年、ニュージーランドでのことである。2番目がオーストラリアで1902年。アイスランドとノルウェーが1913年、デンマークが1915年である。いずれも"小国"と呼ばれる国ばかりである。何故か英国やアメリカの場合は1920年代まで待たなければならなかったし、フランスにいたっては第二次大戦後になってからである」。 英米仏と言えば「ウーマンリブ」のような運動の盛んな国とされているのに、実際には結構遅れているではないかというわけです。ちなみに日本における女性の選挙権獲得は1945年12月となっています(平凡社百科事典)。 フィンランド女性史の研究家であるメルヤ・マニネン氏によると「女性の政治参加が認められた1906年当時のフィンランドはヨーロッパの中でも一番工業化の遅れた農業国であった。農業においては男も女も野良仕事を一緒にするという生活をしていたのだから女性の社会参加の条件は既に整っていた」ということです。フィンランドの場合は女も一緒に働いており、他のヨーロッパの国々のように「上流階級」とか「優雅な貴婦人」のような存在が無に等しかった。 そう言われてみるとアメリカとか英国のいわゆる「女性解放運動家」というのはこの種の階級の人が多いのでは? 今のフィンランドでは女性の70%が仕事(フルタイム)を持っており、特に病院、学校、福祉などの分野においては7割が女性だそうです。また1987年にはフィンランド国教会(ルーテル派)が女性の牧師を受け入れることを決めています。 但しメルヤ・マニネン氏によると「フィンランドは必ずしも男女平等社会とは言えない部分もある」そうで、「企業幹部は90%が男だし、繊維・ゴム・皮革製品などの低賃金の仕事は女性がしているケースが多く、一般的に言っても女性の給料は男性のそれに比べると2割は低い」と言っています。 ちなみに最近、文化大臣にかつての「ミス・フィンランド」が就任したのですが、東京にいるフィンランドのインテリ(女性)が"shocking"であると言っておりました。shockingというのは悪い意味で「驚いた」ということです。でもこの「ミス」の場合、4-5年前から国会議員を務めていたはずなんだから今更shockingというのは当たらないんでは?そう言えば駐日フィンランド大使夫人はヘルシンキ市役所の「偉い人」だったとか聞いたことあります。
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7) 短信:英国人の甘いもの好きに警告 ・世界ビー玉選手権・結婚式の数 249,227・理想のカプル・居眠り調査 |
英国人の甘いもの好きに警告 英国人の甘いもの好きに歯医者さんが警告を鳴らしております。ある調査によると2002年の1年間で英国人が甘いものに費やしたお金は総額で10億3700万ポンド。ヨーロッパ全体の甘いもの市場の規模は昨年で59億ポンドだったので、英国のシェアは23%にもなります。これって大変な数字ですよ。2番目のドイツは8億1200万ポンドでシェアは14%となっています。英国歯科医師協会のワトキンズ会長は「英国人はあきらかに間食(特に甘いもの)の取りすぎだ」と警告しています。「寒い冬が甘いもの好きに影響している」と語るのはこの報告書をまとめたジョン・ブランド氏(マーケティングコンサルタント)で「冬になると憂鬱なのでどうしても甘いものを食べて気分を良くしたいという意識があるのではないか」と語っています。 世界ビー玉選手権 前々回の「ジャーナル」で世界じゃんけん選手権の報告をしましたが、今度はあろうことか大のオトナが集まった「世界ビー玉選手権」なるものが英国のTinsley Greenという小さな町にあるパブの前庭で開かれ、ドイツのチームが優勝、英国チームは惜しくも第2位であったという大ニュース。嘘か本当か、この選手権大会は1930年代から開かれているという由緒あるものなんだそうで、地面に直径6フィート(??)の円を描き、そこから弾き出したら勝ちという至って単純な遊び。英国チームが負けた原因は「ビールの飲みすぎで、まともにプレーができなかったこと」というのが主催者の話で「英国人の前にビールとビー玉を置いて"どっちか選べ"と言えばそこで勝負は決まったようなもの」というのは主催者の話です。ちなみに女性の部は英国チームが優勝したらしいです。 結婚式の数 249,227… これは2001年の1年間にイングランドとウェールズで行われた結婚式の総数ですが、1897年以来の低い数字なんだそうです(英国統計局)が、宗教的セレモニーによる結婚式がますます減少傾向にあるとのことです。2001年の結婚式総数のうち宗教的セレモニーを伴ったものは36%で、10年前の51%に比べると大幅な減少ですね。つまり教会で結婚式を挙げるというケースが減っているということで、人気があるのはホテルとか昔の貴族の館のようなところで、役所に届けるだけというのは案外少ないそうです。結婚年齢は男性の平均が30・6才で女性は28・4才となっています。 理想のカプル Daily Express紙の記事によると、理想のカプルは男の背丈が女性のそれよりも1・09倍高い必要があるそうです。ポーランドの学者が19才から50才までの女性600人について調査したところ、このような結果がでたとのことなのですが、パウロウスキーというこの先生によると、男も女も本能的に「適切な背丈」のパートナーを求めるものであり、その割合が1・09なんだそうであります。でも「女性は背の高い男性を好む」なんてのは今さらこの先生に言われなくても分かってることなんでない!? 居眠り調査 小売店のBootsが買い物客1900人に聞いたところ6割の人が会社で居眠りをするという結果であったそうです。どんなところで眠るのかというと従業員用の駐車場とか自分のデスクなどに混じってトイレというのもあった。ちょっと意外な気がしたのは、この人たちの平均睡眠時間が7時間半から8時間であったということです。私はそれほど長くは眠りませんね。大体6時間?で、電車の中で居眠りをすることが多くなった…これ、カッコ悪いですね。
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8) むささびMの「将来と未来の違い」 |
ついこの間、日本語の生徒さんに「将来と未来はどう違うのか。☆この子は将来のテニス選手だ、という文は正しいのか。」と聞かれて、思わず「うーん…」と唸ってしまった。もし、{将来}を使うとすれば日本人は普通{の}は入れないだろう。それじゃあ、☆この子は将来、テニス選手だ、でいいのかと口の中でモソモソと言ってみた。どこか不自然だ。「多分この子は将来、テニス選手になるだろう」とか「この子は将来、テニス選手になるかもしれない」の方が自然に聞こえる。
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9)編集後記 |
また出してしまった「むささびジャーナル」。6回目です。果たしていつまでもつのでありましょうか?我ながら興味あります。 暑いくらいになりましたね。でも暖かいのはいいです。寒いよりはるかにマシ。ただフィンランドの人たちにとってはこれからの日本の暑さはタイヘンでしょうね。「25度が限度」なんて言っている人がいたので、北海道に移住することをオススメしておきました。 英国人の書いた「定年」についてのエッセイを読んでいると、人間誰も似たようなものだという気が強くします。「英国の老人が優雅でマイペースの生き方を楽しんでいる」というのは、憧れを誘う雑誌や本のテーマとしてはいいかもしれないけれど、そのように書かれる身になるとちょっと可哀そうな気がしませんか?自分が自分でないように描かれて、それに憧れられるというのは気持ちのいいものではない。 |