明けても暮れてもコロナの話ばかりですが、埼玉県の田舎道には確実に春が来ています。おそらく英国も同じことなのでしょう。上の絵はデイビッド・ホクニーという画家の描いた春の風景だそうです。BBCのサイトにあった写真をこの号のスライドショーでも使わせてもらいましたが、画家自身がノルマンディーでワンちゃんとともにロックダウン状態にあるのだそうです。
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目次
1)MJスライドショー:デイビッド・ホクニーと息抜き
2)スウェーデンのやり方
3)コロナ報道と精神衛生
4)BREXITはどうなっているのか?
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声
MJ 俳句
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1)スライドショー:デイビッド・ホクニーと息抜き
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4月1日付のBBCのサイトに、画家のデイビッド・ホクニー(David Hockney)がノルマンディーでコロナウィルスからの「ロックダウン」生活を送っているという記事(David Hockney shares exclusive art from Normandy, as 'a respite from the
news')が出ていました。ホクニーという名前は聞いたことがある程度で、むささびは殆ど何も知りませんでしたが、このサイトに出ていた絵画を見て大いに気に入ってしまった。ホクニーはこれらの作品を「ニュース報道からの息抜き」(a
respite from the news)として見て欲しいと言っています。むささびジャーナルもその「息抜き」をシェアさせてもらいますが、今回はBBCの記事の中でホクニー自身が言っている言葉も掲載することにしました。彼は今年で83才になるのですね。彼の作品や言葉もさることながら、これらを掲載することにしたBBCの姿勢にも脱帽です。
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▼何故むささびが、ホクニーの作品を紹介したBBCに脱帽するのか?それはBBCが、報道機関として自分たちが世の中で果たすべき役割を認識していることの表れだと思うからです。コロナについて「タイヘンだ・タイヘンだ」と言うだけなら誰にでもできる。いわゆる「専門家」をつかまえてきて喋らせることも。問題は、それらを聴かされる人間の立場に身を置くことが出来るかどうか・・・政府の広報機関のような日本の公共放送とはそこが違う、などと言うと「身びいき」と思われたりするのかもしれないな。 |
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2)スウェーデンのやり方
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ヨーロッパにおけるウィルス感染の広がりの中で、スウェーデンは他国のような都市封鎖(ロックダウン)というやり方をとらずに来ていることで注目されていますよね。4月7日付のBusiness Insiderが次のような見出しの記事を掲載しています。
- Sweden, which refused to implement a coronavirus lockdown, has so far avoided
a mass outbreak. Now it's bracing for a surge in deaths. ロックダウンを実施することを拒否してきたスウェーデンは、これまでのところは大量感染を避けている。が、今や死者の数の急増という事態に直面している、
記事の概略だけ紹介すると、イタリア、スペイン、フランス、英国などヨーロッパ各国で都市封鎖(ロックダウン)というやり方でウィルスの拡大を防ごうとしている中で、スウェーデンは(この記事が掲載された時点では)外出に関する規制も緩やかで、お店もレストランも通常どおり営業している。Business
Insiderの記事によると、スウェーデン政府が国民に強く求めているのは、人的空間(social distancing)をきっちり確保することと社会的な弱者(the
most vulnerable)を保護することの2点だった。会合については50人までは許される。 |
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確かにスウェーデンではイタリアやスペインのような急激なウィルスの広がりはないかもしれないが、ウィルスを完全に封じ込めたわけでもない。ステファン・ロベーン首相のコメントもかなり慎重なもののようです。Dagens Nyheterという新聞におよそ次のように語っている。
- 我々が選択した戦術は感染上昇の曲線をなるべくフラットに保つことであって、何か劇的と思われるような方法に訴えたわけではない。劇的な戦術はスウェーデンの保健制度では無理がある。劇的な戦術を避けるとなると、集中治療が必要な患者は増えるであろうし、死者も増えるだろう。死者は数千人にまで達するかもしれないと思っている。
この部分、いまいちはっきりしないけれど、The Economistなどの解説によると、要するにロックダウンのような「劇的な戦術」に訴えることによるスウェーデン経済への打撃を怖れているということのようです。経済がアウトになると、それによって支えられている公的な保健制度も維持が難しくなる。ただイタリアのような「劇的な戦術」を採用しないことによる犠牲も避けられないことも覚悟しなければ、と言っている。
ただロベーン首相はスウェーデンが採用しているやり方が他国のものと異なっているかもしれないが、誤っている(at fault)とは考えていない。「他国との戦術の違いだけを大げさに語るのは誤っている」(people
"should not dramatize" the differences between the approaches)というわけです。首相は「ひょっとすると他国とは感染の段階が異なっているのかもしれない」(we
are in different phases of the outbreak)とも語っている。 |
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スウェーデン政府のアプローチは、同国トップの感染病学者であるアンダース・テグネル(Anders Tegnell)も支持している。
- 我々はすでに最も重要な対策はとってきている。即ち身体の調子が悪いと思ったら自宅にいること、できれば自宅から仕事をすること、高齢者は特に保護すること。We think we've already taken the most important measures," he said. "Stay home if you feel ill; work from home if you can. And we have to ensure that we protect our older fellow citizens.
レストランで食事をしたり、集会に参加することへの規制を強めることもあり得るかもしれないが、「最も効果的なのは各自がそれぞれの基本的な行動指針に従うことだ」(you
get the best effect when everyone simply sticks to the basic code of conduct)というのがテグネル氏の発想です。 |
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これはスウェーデンではなく、ドイツ・ベルリンのブランデンブルグ門付近の最近の様子です。4月10日付のSpiegelのサイトに掲載されたもので、ロックダウン状態のベルリンの象徴のような写真です。ヨーロッパ諸国は4月12日の日曜日を挟んで4月10日(金)から同13日(月)までがイースター休暇、日本で言うとゴールデンウィークの雰囲気です。Spiegelの記事も「ドイツ人はみんな今年のイースターを楽しみにしているのに・・・」と言っています。せめてイースター休暇ぐらいはロックダウンを解除して欲しい、ということで、日本ではゴールデンウィークに同じような風景と新聞記事が見られるのかもしれないよね。 |
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スウェーデン政府のやり方は、英国政府が採用しかけて止めてしまったやり方である、として批判する向きもある。「集団免疫」(herd immunity)というやり方がそれで、ウイルスが感染拡大を続け、最終的に多くの人が感染して(生き延びた上で)免疫ができれば、ウイルスは新たな宿主を見つけるのが難しくなり、アウトブレイクはおのずと止まるという発想です。英国ではこのやり方だと25万人の死者が出る可能性があるとされて、ボリス・ジョンソンが諦めたとされている。
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ヨーロッパのコロナウィルス
2020年4月10日現在
Johns Hopkins Univ & Medicne |
▼上のグラフは、日本のメディアでよくは使われる米ジョンズ・ホプキンズ大学がまとめている数字です。このグラフでは感染者数と死者数しか出ていませんが、同大学のデータにはそれぞれの国における「人口10万人あたりの死者数」というのも出ています。それによるとトップはスペインの34.42人、2位はイタリアの31.19人、英国は5番目で13.50人となっている。米国は5.68、中国は0.24人、日本は0.08人などとなっています。
▼「スウェーデンのやり方」の記事の中で、むささびの心に最も強く残ったのは、アンダース・テグネルという専門家の「最も効果的なのは各自がそれぞれの基本的な行動指針に従うこと」という言葉です。つまり人的な空間を十分にとる、手洗いをきちんとする、身体の調子がすぐれないと思ったら家にいる、高齢者には気を配る等々・・・テグネル氏の言葉は
"basic code of conduct" という英語に直されているのですが、要するに「当たり前のことを当たり前にやろう」ということなのではありませんか?
▼その「当たり前」のやり方では25万人が死ぬと言われて、ボリス・ジョンソンが「ロックダウン」(都市封鎖)のような方法に踏み切ったのが2020年3月23日だった。英国人を対象にしたYouGovのアンケート調査(下記)によると、3月2日の時点で英国人の間では、「コロナなんて怖くない」という意見が圧倒的(70%)だったのに、4月11日の調査では、人生観が「以前と変わらない」という人が34%なのに対して「悲観的になった」人は64%で、「楽観的になった」(5%)は殆ど存在しなくなってしまった。
▼むささびが言いたいのは、ロックダウンに伴ってその国の人びとが被っているであろう精神的な負担の大きさも考慮に入れてもいいのでは?ということです。もっとはっきり言ってしまうと「都市封鎖」をやろうがやるまいが死者は出る、だったらせめてそれに伴う精神的な負担(「封鎖」が故に命を短くしている人だっているかもしれない)だけでも減らした方がいいのでは?ということです。そのためには必然的にロックダウンを緩やかにすることになる。この発想はそれほど異常でしょうか?スウェーデンのやっていることは、それなのではありませんか? |
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3)コロナ報道と精神衛生
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前号の「むささびの鳴き声」で、「コロナウィルス報道がもたらす社会的な不安感についてメディアはどのような責任を負うのか」と文句を言いましたが、実は3月16日付のBBCのサイトに
という見出しの記事が出ていたのに気が付きませんでした。迂闊でした。記事にはコロナウィルス関連の報道に接する中で不安感を募らせてしまった人びとの例がいくつか紹介されている。
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例えばケントで暮らす2児の父親はコロナウィルスについてのニュースを数多く読んでいるうちにパニックに襲われるようになった。
- 不安を感じると自分自身のアタマをコントロールできなくなって、破滅的なことばかり考えるようになる。When I'm feeling anxious
my thoughts can spiral out of control and I start thinking about catastrophic
outcomes.
というわけですが、しばらくの間メディアによるニュース報道を読むのを止めてみたら、自分の不安感を自分でコントロールできるようになった、つまりパニックに陥ることがなくなったとのことです。
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マンチェスターに住む24才の女性は、コロナウィルスの問題以前に自分の健康に不安を抱えており、いつも関連情報に接していないとパニック状態に陥ってしまう。最近、それが高じてSNSを次から次へと当たっているうちに、いわゆる「陰謀論」のような情報を眼にして余りのひどさに泣けてきた(feel really hopeless and cry)のだそうで、なるべくSNSからは遠ざかるようにしている。代わりに本を読んだり、テレビを見るようにしているとのこと。
BBCのサイトはまた、コロナウィルス報道でたびたび繰り返される「しっかり手洗いを」というメッセージが時として有害なこともあると言っている。精神障害の一つである「強迫性障害」(Obsessive–compulsive
disorder:OCD)の傾向のある人は、手洗いの必要性を強調するメッセージにたびたび接すると「汚れ」に対する極度の恐怖心に襲われて不合理な行動をとるようになる。かつてOCD患者だったけれど今ではそれを克服したとされているある女性は
- 自分としては(手洗い励行という)アドバイスに忠実に従っているのですが、それは容易なことではない。自分にとって石鹸や洗浄水などは一種の「中毒」の対象物だったのだから。 I'm sticking to the advice really rigidly but it's hard, considering that for me, soap and sanitiser used to be something comparable to an addiction.
と言っている。
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このような例を挙げながらBBCの記事は「ニュースに関心を持つことは理解できるが、多くの人間にとって自分が抱えている精神衛生上の問題をさらに悪化させることに繋がることもある」としたうえで、世界保健機関(WHO)が発表したアドバイスを紹介している。例えば・・・
- 自分が不安を覚えたりストレスを感じたりするニュースに接することを最小限にする。
- 自分および愛する人びとを守るための情報収集は実践的な計画のために行うものとする。
- メディアを通じた「情報集め」はせいぜい一日1~2回、決められた時間に行うこと。
等々がある。詳しくはここをクリックして原文をお読みになることをお勧めします。 |
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というわけで、このBBCの記事はコロナ報道がもたらすマイナス面を語っているわけですが、一方、メディア業界の専門媒体であるPress Gazzetteのサイト(3月20日)に
という見出しの記事が出ています。「コロナウィルス報道に携わるジャーナリスト全員に政府が”重要職業人”の資格を与えることにした」という意味ですよね。ジャーナリストが”重要職業人”(key worker)・・・どういうこと?英国では学校が閉鎖されているのですが、この記事によると、コロナ報道に携わる記者たちの子息に対しては、特別なチャイルドケアや教育機会が与えられるようにするということです。コロナ報道という仕事が「公共サービス」と見なされてのことなのですが、ジャーナリスト以外に法曹、宗教、慈善行為、葬儀関係などの仕事に携わる人たちにも「重要職業人」という資格が与えられるのだそうです。 |
▼レゾナンス(Resonance)というPR会社の調査によると、最近のBBCが伝えるニュースの8割以上(83%)がコロナウィルスがらみのものなのだそうです。メディア関係の専門誌であるPress Gazetteに出ていたのですが、代表的な新聞媒体であるGuardianやDaily Mailの場合は、ネット版も含めてコロナ関連の記事は全体のざっと3分の1であることを考えると、BBCの報道ぶりは殆ど「異常」と言えるかもしれない。ある日のBBCのサイトの"World"というセクションにはざっと30本の記事が出ているのですが、コロナがらみでないものはたったの2本だった。
▼そのPress Gazetteがサイト上で行っている読者アンケートによると、最近のコロナ報道で読者・視聴者のメディアに対する信頼は高まったと思うかという問いに対して「高まった」という意見は38%で、「低くなった」という意見(43%)をわずかに下回っている。記事には、読者が何故「高まった・低下した」と考えるのかについての解説がないのが残念ですが、Press Gazetteという媒体の性格からして、メディア業界の関係者の意見であることは間違いない。
▼コロナウィルス問題についての日本のメディアの姿勢について、月刊『創』編集長の篠田博之さんが『コロナ禍で未曽有の緊急事態!だからこそ問われるジャーナリズムの役割とは』というタイトルのエッセイを書いています。その中で4月7日に日本ペンクラブが発表した声明文が紹介されている。
- いつの日か、ウイルス禍は克服したが、民主主義も壊れていたというのでは、危機を乗り越えたことにはならない。いま試されているのは、私たちの社会と民主主義の強靱さである。
▼本当にそのとおりだと思います。 |
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4)BREXITはどうなっているのか?
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ヨーロッパ中がコロナウイルス騒ぎでひっくり返り、ボリス・ジョンソンが入院したりしている中で、忘れられてしまったように見えるのが英国のEU離脱です。念のために確認しておくと、2020年12月31日をもって英国はEUから離脱することになっており、現在は「移行期」(transition period)で、離脱後の英・EU貿易関係についての交渉が行われている(ことになっている)。が、3月19日になってEU側の交渉担当者であるミッシェル・バーニエがウィルスに感染していることが判明したりして交渉も遅れ気味になっている。
そんな中で4月4日付の米CNNのサイトが
というロンドン特派員の記事を掲載しています。
英国では最近になってハンコック厚生大臣が、4月末までには一日あたり10万人の英国人のウィルス検査を行うと発表して話題になった。一日10万というのは、3月末における一日の検査件数のほぼ10倍、ドイツでさえも現在の検査件数は一日5万件だから、確かに大きな数字ではある。それまで英国はコロナ検査については「ぐずぐず遅れている」(laggardly testing)という批判を浴びていたので、大臣の発言はそれまでの英国政府の姿勢をUターンさせるものとして注目された。
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それにしてもなぜ英国はコロナウィルス検査についてはこれほどまでに遅れをとったのか?いろいろと説はあるけれど、CNNの特派員によると、2016年の国民投票でEU離脱が決まって以来、EUからの独立を強調するあまり、本来ならEUと共同歩調をとらなければならない政策(EU全体として通風装置を購入するという動きなど)にさえ乗り気を見せなかった。英国政府の関係者はその件については「単なる意思疎通不足」(merely
due to a breakdown in communication)であって思想的な問題とは無関係としているけれど、その説明には乗らない向きも多い。キングス・カレッジのアナンド・メノン(Anand
Menon)教授(国際政治)は
- 他のヨーロッパ諸国と協働しているという姿勢を見せたくないということで、Brexitがそれを後押ししている。(英国では)ドイツにおける検査方法については極めて冷たかった。
Brexit has almost certainly influenced this determination to not look like
we're working with European countries. The response to questions about
the German testing system has been extremely hostile.
要するに「我々はEUなしでもやっていけるのだ」と言っているようなものと言うわけですが、英国医療学会(Royal Society of Medicine)で感染病と公衆衛生を研究するガブリエル・スカリー(Gabriel
Scally)氏によると「現在の英国政府は外国からの声には一切耳を貸さない」という態度をとっている。国際保健機関(WHO)や欧州疫病予防管理センター(European
Centre for Disease Control)の助言は全く無視している」とのことであります。
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CNNの特派員は、コロナウィルスとの戦いにおいてはBrexitが英国の政治的・実践的な能力を縛っているとして、ジョンソン政権にとって2020年6月30日が大きな決定をしなければならない日になるだろうと言っている。即ち12月末まで続く「移行期間」をさらに延長するための締め切りが6月の末であるということです。ボリス・ジョンソンは「移行機関の延長は絶対にしない」と約束しているわけですが、英国は移行期間の現在でさえもEU加盟国から医療品、食料品、トイレットペーパーなどを大量に輸入している。これらの品物が朝、ヨーロッパを発って、午後には英国内のスーパーの棚に並ぶのも、企業間の摩擦なきビジネス(frictionless
between the UK and the EU)が成り立っているからである、と。
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Brexitが懐かしい!? |
夫婦が「コロナウィルス最新情報:CORONAVIRUS LATEST」というテレビのニュースを観ながら発した言葉「あ~あ、Brexitが懐かしいね」(God, I miss Brexit!)がオチです。一時は来る日も来る日もBrexitのニュースばかりでウンザリしていたのに、最近では・・・というわけです。横に積んである新聞もコロナだらけというのが可笑しい。
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「だったら移行期間を延長すればいいではないか」となるけれど、それはそれで政治的に面倒な話になる。移行期間を来年(2021年)の末まで延長ということになると、その期間中、英国は「EUのルールに従うけれど、政策決定には参加できない」という宙ぶらりんの状態を続けることになる。もちろんその間のEU予算に対してはそれなりにお金を払うことが要求される。「従属国家ということになる」(A vassal state, if you will)とCNNの特派員は言っている。つまり・・・
- だからこそジョンソン政権の現在の公式の立場は、コロナウィルスがあってもなくても、Brexitの時間表に従うということになる。Which is why the government's official position is that virus or no virus, the UK will stick to its Brexit timetable.
というわけであります。 |
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▼EUから離脱するにあたって、今後のEUとの付き合い方を準備するための「移行期間」について、首相を始めとする離脱派は、12月末になったら即離脱を主張していたわけだからコロナがどうなろうとそれは変えたくない。が、英国人の感覚としては「もう少し期間をおいてもいいんでない?」という気持ちが強いということが表れているのが上のグラフでしょうね。コロナウィルスのように一国だけでは取り組みようがない問題に直面した際に、EUのような大きな枠組みの中で解決策を模索するというのがまともな発想であるし、多くの英国人の本音もそこにあるのでは?そもそもEU離脱なんてやらなきゃよかったんだよね! |
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5) どうでも英和辞書
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A-Zの総合索引はこちら |
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caremongering:助け合い
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カタカナで発音すると「ケアモンガリング」となるけれど、実際には"care"という単語と"mongering"という単語を繋げて使われている新語。コロナウィルスの蔓延を機にカナダで始まった運動です。"care"(思いやり)は「ケア」として日本語になっているのですが、"mongering"という言葉は日本人には馴染みが薄いかもしれない。「広める」とか「拡散する」という意味なのですが、本来は好ましくないものを広めるときに使われる。典型的なのが
- scaremongering:怖がらせ
- rumourmongering:噂をまき散らす
- hatemongering:ヘイト拡散
あたりですかね。
"caremongering"の運動がカナダのトロントで始まったのは3月半ばのこと、3人の女性がFacebookで呼び掛けて作ったものなのですが、会員があっという間に3万人を超えてカナダ全土に広がった。それにしても何が面白くて"mongering"という言葉を使ったのか?発起人の女性によると、あえて"scaremongering"という好ましからぬイメージを持つ言葉に拘ってみたかったのだそうです。
"scaremongering"は恐怖心やパニックを人の心に植え付けるけれど、アタマの"s"を削除しただけで、ほぼ正反対の
言葉になったわけです。"caremongering" は今のところは「新語」ですが、今後、英語辞書に掲載されるほど定着するかどうかが注目です。 |
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6)むささびの鳴き声
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▼4月3日、CWニコルが亡くなりました。むささびとほぼ同い年の79才だった。18年も前、2002年のことですが、駐日英国大使館の主宰で「日英グリーン同盟」という植樹活動が行われ、当時そこに勤務していたむささびはその活動を担当した。その際に大いにお世話になったのがCWニコルだった。
▼2002年という年は、はるか昔に日英同盟なるものが締結されてからちょうど100年目に当たる、何か日英間の友好促進のためのプロジェクトをやって盛り上げたい・・・というわけで実施されたのが英国生まれのオーク(ナラノキ)を日本の町や村に植えるというプロジェクトだった。日英同盟は帝国主義国家同士の軍事同盟だったけれど、今や日本と英国は環境保護のための同盟国なのだ・・・というわけで2002年の1年間、北海道から沖縄まで、200を超えるコミュニティに英国大使館が提供したイングリッシュオークという樹木の苗木が一本ずつ植えられた(沖縄は気候的にオークには向いていないので、シラカシという木を植えてもらった)。
▼この企画を担当してはみたものの、「イングリッシュオークはどうやって入手するのか?」「本当に日本で育つのか?」等など、むささびには分からないことだらけで途方に暮れていたのですが、知人の紹介で知り合ったニコルさんは日英グリーン同盟にとって一番強い味方でした。彼の仲間の紹介で様々な人々に会って意見を聞くことができた。
▼このプロジェクトを進める中で、ある環境保護の専門家から「日英グリーン同盟は、環境問題を考えることをテーマにしていながら、イングリッシュオークという外来種を日本国内に植えようとしている。それは日本の土着の自然に悪影響を与えかねない。そのあたりの整合性をどのように説明するのか」と言われた時には焦りましたね。早速長野県・黒姫にいるニコル宛てに手紙を書いて、外来種云々の問題について彼がどのように思うのかを聞いてみた。
▼間髪を入れずに返事がきた。「外来種って何なんだ?日本に外来でない樹木なんてあるのか?」というわけでかなりお怒りのようでありました。 ちなみに日英グリーン同盟は、この外来種の問題に関係して国会でも取り上げられてしまったようで、衆議院の環境委員会(だったと思うのですが)でのことで、農水省のお役人が答弁して「植樹場所がいずれも管理された場所であり、しかも植えるのがそれぞれに一本なのだから環境に悪影響を及ぼすとは考えにくい」とのことでありました。
▼私が読んだ本によるとイングリッシュオークは、もともとヨーロッパ大陸にしか生えていなかったのが、ドングリが風で運ばれたり、鳥や人間が運んできたりして英国にも生えるようになったと書いてありました。ニコルではないけれど「外来種」って何なのでしょうか?例えば北海道で拾ったドングリを埼玉県に植えるのは「外来種の移植」にあたるのでしょうか?
▼日英グリーン同盟に関連してニコルには彼なりの夢があった。それは長野県・黒姫にある自分の森と故郷であるウェールズにある「アファンの森」の間で「姉妹森関係」なるものを確立することだった。その夢はまず2002年8月25日に黒姫の森にウェールズの代表者を招いて調印式が行われたことで50%は実現、翌年(2003年)7月、今度はウェールズのアファンの森で同じようなセレモニーが行われて100%実現しました。もちろんニコルは両方に参加した。彼は普段から赤い顔をしており「黒姫の赤鬼」とか「ケルトの赤鬼」と自称していたのですが、黒姫の式典ではウェールズの国歌を直立不動の姿勢で聴きながら泣いていました。「赤鬼の眼に涙」というわけ。
赤鬼(左)の眼に涙?(2002年8月) |
▼イングリッシュオークの寿命は長いもので400年くらいと言われている。黒姫のオークがそれまで生きているのかどうか分からないけれど、植樹後20年も経たないうちに、あの「赤鬼」がいなくなってしまった。そもそもあのオークが今でも生きているのか、むささびにも分からないけれど、これから20年も経つとそのオークから落ちたドングリから新しいオークの木が育ったりしているかもしれない。「外来種」の繁殖です!でもそのオークの氏素性を知っているのはオーク本人だけ・・・ということを考えるのは、あの環境保護の専門家に申し訳ないけど、楽しいことなのであります。
▼人間がコロナ・コロナと騒いでいる中でオークも独りで寂しい思いをしているかもしれない。ここをクリックすると、オークの植樹先リストが出ています。同じコミュニティにお住いの皆さま、植わっている(かもしれない)オークの様子をむささびに教えてくれません?
▼(最後に)この号のスライドショーの中で、デイビッド・ホクニーは、コロナ禍もいつかは終わるけれど、問題は「人間がそこから何を学んだのか?だ」としたうえで、人生で大切なのは「まず食べ物、それから愛情」と言っています。この日本語の「まず」と「それから」をホクニーは
"in that order" という言葉で表現しています。英国人が念押しのためによく使う言い回しです。わ、分かりました、もう止めます!お元気で!! |
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