musasabi journal

2003 2004 2005 2006 2007 2008
2009 2010 2011 2012 2013 2014
 2015 2016 2017  2018 2019  2020 
465号 2020/12/20
home backnumbers uk watch finland watch green alliance
BREXIT 美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書

寒い冬がやってきました。これが2020年最後の「むささび」です。今年も私の道楽にお付き合いを頂いたことに心より感謝申し上げます。2021年がどのような年になるのかなんてこと、考えたってどうなるものでもないけれど、できればこの道楽は続けたいと思っています。ちなみに、上の写真はデンマークの首都、コペンハーゲンの街角風景だそうです

目次

1)気になる、スコットランドの雲行き
2)BREXIT:世論は「残留」を望んでいる
3)五人五様、ロックダウンと孤独
4)日本は「コロナ」を理解していた?
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声


1)気になる、スコットランドの雲行き


以前にも触れたことがあるけれど、来年(2021年)5月6日にはスコットランド議会の選挙が行われます。スコットランドは、人口の点からしても英国全土の8%を少し超える程度なのですが、以前から独立気質が旺盛で、今もそれは小さくなってはいない。約半年後に選挙を控えたスコットランドの政治的な「雰囲気」を紹介しておきます。使うのは世論調査機関のIpsos MORIによる最近の調査です。

エディンバラのスコットランド議会

スコットランド議会は総議席数は129、議席数の順に民族党(SNP)、保守、労働、緑、自民、独立、無所属となっている。第一党は民族党ですが単独過半数ではない。スコットランドの選挙制度は日本と同じで、小選挙区制と比例代表制が併用されている。スコットランドを73の選挙区に分け、各選挙区から一人ずつが選ばれる(小選挙区制)。さらにスコットランドを8つの比例代表制選挙区にわけて、それぞれから7人ずつ、合計56人が選ばれる。小選挙区議員(73人)+比例代表議員(56人)=129というわけです。
で、各党の人気度ですが、12月2日の調査によると民族党の強さは明白で、第2位の保守党の倍以上の人気を集めている。

スコットランドといえば(むささびのような)外部の人間から見ると、最大の話題はUKからの独立です。2014年に行われた国民投票では55%対45%で、独立反対派が勝利したのですが、それが本当にスコットランドの「民意」なのかについては微妙なものがある。実はあの国民投票の2年後(2016年)に英国のEU離脱を問う国民投票が行われたのですが、スコットランドでは62%対38%という大差で「EU残留」が支持された。そこで同じ年に行われたスコットランド議会の選挙で、SNPのニコラ・スタージョン党首が「スコットランドが反対しているのにEU離脱を強制されようとしている」というわけで、この際EU離脱との関連でスコットランドの独立を問う2度目の国民投票を検討すべきだと主張した。スコットランド独立の国民(スコットランド)投票は、スコットランド議会が支持しスコットランド自治政府と英国(UK)政府の間で了解を確立した上で実施できる。


そして昨年(2019年)行われた英国議会の選挙でも「民族党は2度目の独立国民投票を行う」と訴えるマニフェストを作った民族党が、スコットランド系議席59のうちの48議席を獲得してしまった。どう見てもロンドンの英国政府がスコットランド独立を問う国民投票に反対し続けることは難しいと思われるけれど、ボリス・ジョンソンは「2014年の国民投票こそが一世一代のチャンスだったはず」(once in a generation opportunity)というわけで、スコットランドによる再度の投票には反対している。しかも1998年に成立したスコットランド法(Scotland Act 1998)によると、スコットランド議会がロンドンの英国議会が検討すべき課題を議論することは許されないことになっており、その中には「スコットランドとイングランドの連合王国」(the Union of the Kingdoms of Scotland and England)に関する事柄も含まれている・・・となると、これはやっぱり難しいかもしれないけれど、スコットランド国内における「独立」への熱意は変わっていないうえに、英国のEU離脱がスコットランドに与える影響については「悲観的」な見方が多い。

▼スコットランドの独立について、英国以外のメディアは、あたかもそれが素晴らしいことであるかのように書きまくると思うけど、当のスコットランド人とイングランド人にしてみれば、心境は複雑だろうと思います。北のスコットランド、南のアイルランド、いずれもイングランドへの感情は複雑です。何はともあれ、BREXITなどというアホな冒険はやるだけムダであります。それは間違いない。

back to top

2)BREXIT:世論は「残留」を望んでいる



この「むささび」が出る頃にどうなっているのか定かではないけれど、12月15日の時点では何やら「合意なき離脱」(BREXIT with no deal) だけは避けられそうな雰囲気です。ボリス・ジョンソンは「強硬離脱っきゃない!」と強気な姿勢を見せてはいるのですが・・・。首脳同士の話し合いがいろいろと報道される中で、案外忘れられがちなのは英国の有権者たちが「いま」何を思っているのかということです。4年前(2016年)の国民投票では52% vs 48%で「離脱」が「残留」を上回ったし、昨年(2019年)の選挙では「BREXITを成し遂げよう」(Get Brexit Done)をスローガンとして戦ったボリス・ジョンソンの保守党が大勝利を収めた・・・と、これだけ見ると、有権者たちの想いは明白であるように見える。


しかし英国における世論調査の代表的な組織である社会問題研究所(NatCen Social Research)の最近の調査によると、いま4年前と同じ国民投票が行われたとすると、54% vs 46%で「残留」が勝つという結果になっている。なぜそうなってしまったのか?NatCenによると、それはあの時に「離脱」を支持した有権者が「残留」に心変わりしたということではなくて、かつては「分からない」(Don't Know: DK)と言っていた層の多くが「残留」を支持するようになってしまったということなのだそうです。


最近のEUとの交渉が思ったように進まないということで、ボリス・ジョンソンは「合意なき離脱」という強硬論を口にするようになっているけれど、NatCenの見るところでは、そのような強硬論を支持するのは有権者の5分の1程度なのだそうです。


ジョンソン首相が直面している選択肢はEUとの合意を得たうえでの離脱か、合意なき離脱かということになるけれど、最近では「離脱」そのものの人気が低落気味であるということです。この12月31日をもって「移行期間」が終わるわけですが、最近のThe Economistなどは
  • 12月31日以後になって、離脱の結果が混乱だらけということになってしまうと、ジョンソン首相に対する支持がさらに下落ということも考えられる。 Should the consequences of Brexit prove messy after December 31st, Mr Johnson’s already falling popularity with British voters may go down further.
と言っています。

▼2016年の国民投票で「離脱」が勝利したときの大騒ぎについては、むささびジャーナル349号に詳しく載っているけれど、それまでの「常識」と思われていたものがひっくり返されたことへの「快感」のような騒ぎがあったのですよね。あの年の11月に行われたアメリカの大統領選挙で勝利したトランプとその支持者たちと同じです。離脱支持者やトランプ人間たちの快感の根底にあったのは、自分たちを押さえつけてきた(と彼らが勝手に思い込んでいた)勢力に対する「怒り」と「憎しみ」です。人間の将来に対する希望のようなものはない。だから長続きしない。トランプが負けたのはコロナへの対処の仕方がまずかったからだと言う人がいるけれど、コロナがあってもなくても負けたのだと(むささびは)確信しています。彼のような姿勢には未来がなさすぎるということをアメリカ人の多くが感じていたということです。

back to top

3)五人五様、ロックダウンと孤独


11月19日付のBBCのサイトに「ロックダウンで孤立して」(Cut off in lockdown)という記事が出ています。外出禁止に近いようなロックダウンの中で孤立する英国人たちがいろいろと語っています。それぞれの孤立が生むそれぞれの寂しさ・・・その言葉の中に苦闘する「人間」を感じます。

リズの場合

fish & chips が恋しくて

結婚して48年になるカール(73才)とリズ(68才)の夫婦はイングランド東部のノリッジ(Norwich)という町の近くに住んでいます。カールはいろいろな病を抱えており、今年の3月から家を一度も出ていない。妻のリズがケアラーの役割を果たしている。

リズは夫をケアすることには慣れたけれど、コロナ以前の生活を想うと寂しさを感じてしまう。友人と会い、教会に行き、ショッピングをして・・・というあの生活です。ある時気が付いたのは、自分がフィッシュ&チップスを買いに行くことをたまらなく恋しく思っているということだった。そこで友人に頼んで、自分に代わってフィッシュ&チップスを買いに行き、その様子を写真に撮って送ってもらうことだった。その友人は彼女の願いを引き受け、フィッシュ&チップスを買って公園のベンチに坐って、まず写真を撮ってから自分で食べ始めた。美味しそうだった。リズに言わせると「自分に成り代わってご馳走を楽しんでくれた」(They were having a treat by proxy)ようなものだった。

リズの毎日は夫のケア以外に、本を読み、編み物をして時間を過ごす。テレビは飽き飽きしたし、ズームによる交流は「寂しさを増すだけ」(some Zooms just make her feel even more lonely)だった。
  • もうあきらめたの。これが生活だってこと。自分にやる仕事があるから満足しているともいえる。他のことを望んでも意味がない。私にとって大切なのは、家族の安全を確保することです。 I think we've got resigned to this now. This is what life is all about. In some ways, because of what we've had to do, we're more content - because there's no point wanting anything else.What really matters to me is my family, keeping them safe.

エロームの場合

団結の黄色いソックス

マンチェスター近郊のソルフォードで母親のケアをしながら暮らしているエローム・フィアバー(16才)が、16才であることと寂しさを感じることを言葉で表現すると「全世界が動いているけれど自分は動いていない(the whole world is moving - and you're not)という感じ」ということになる。
  • 何だかすべてが自分のアタマの中で動いているような感じ。自分自身はゆっくりしているのに、外を見ると自分と似たような年齢の人間の動きは早くて楽しそう。It'はs like everything is just going on in my head. My situation is slow, and I'm looking outside and see other people my age and their lives are moving fast and they are having fun.
母親は鎌状赤血球症(sickle cell anaemia)という遺伝性の貧血病で、常に付き添いが必要なので、エロームは自宅にいることが要求される。友人たちのように週末にどこかへ遊びに行くというわけにはいかない。そうするうちに自分の孤独さに眼を向けるようになる中で「寂しい、でも独りではない」(Lonely Not Alone)という名前の慈善組織に関わるようになった。寂しさと戦う若者たちを支援する活動です。「私の場合は、無理やり成長させられたという感じね」(I think I've been forced to grow up)と言っている。

エロームが参加している "Lonely Not Alone" という活動は、昨年(2019年)に生協活動を母体としてスタートしたもので、サイトを見ると次のようなスローガンが書いてある。
  • 寂しさは自分のせいだと考えがちだが、そうではない。
    We think loneliness is our fault. But it isn’t.
    寂しさは永遠に続くと考えがちだが、それは違う。
    We think loneliness will last forever. But it won’t.
    寂しさを抱えるのは難しいけれど、みんな一緒なのだ。
    It’s hard being lonely, but we’re in this together.
    皆のことを気にかけていることを示すために黄色いソックスを履こう
    Wear yellow socks to show you care.

ブルティ場合

妊婦の孤独を分かって欲しい

33才のブルティ・ペイテルはお腹に赤ちゃんがいる。初めての子供だ。「非常に寂しい、誰か母親と話がしたい」(I've felt really lonely - I just want another mum to talk to)と言います。出産についてのクラスに参加することもできず、自宅で働いている。初出産にまつわるサポートが全く得られておらず、自分の妊娠が大丈夫なのかどうかさえ分からない。「誰か、そんなこと当たり前よと言ってくれる人間が欲しい I want to hear someone say it's totally normal」と彼女は言っている。。

「孤独はとても大きな問題だと思うけれど、あまり語られないのよね。もっと注目するべきだと思う」と彼女は言います。最近、Peanutという名前の妊娠中の母親を繋げるネットワークに参加するようになったけれど、コロナ禍のいま、妊娠中の女性が抱える孤立と孤独感はもっと注目されるべきだと考えている。「パブに行けるかどうかなんてことよりはるかに大きなインパクトを持った問題よ」と主張している。

エリックの場合

孤独は耐えるっきゃない?

エリック・クリネンバーグはニューヨーク大学の教授であり、これまでに本も書いているのですが、コロナ禍が「孤独」というものの性格を変えてしまったと考えている。ひと言で言うと
  • 独りで暮らすのは困難な時代ではあるけれど、他人とともに暮らすのも難しい時代だということ。つまり生きていることが難しい時代ということだ。 It's a very hard time to be living alone. It's also a very hard time living with other people. It's just a hard time to be living.
ということになる。

エリックは結婚して子供もいるけれど、四六時中彼らと同じ家に暮らして喧嘩ばかりしているような生活は有難いとは思わない。ただ、「独立して個人としての生活を送るという手もあるけれど、そうなると孤独も我慢しなければということになる」とも。要するに「寂しさ」(loneliness)は現代の生活の一部(a feature of modernity)になってしまったということのようであります

ナイオールの場合

人間と一緒にいたい

ロンドンで独り暮らしをするナイオール・ヘロン(53才)は鬱に悩まされ、孤独感を避けるために意識的な努力をしようとするとそれが余計に孤独の原因になったりすると感じている。「誰かとコーヒーを一杯飲むだけでも事情は一変するはず」と考えるナイオールは、コロナ禍によるロックダウンについて
  • ロックダウンによって、人間は社会的な動物だということがよく分かった。孤立して存在するように出来ていないということだ。The lockdown has made me realise we're social animals. We're not meant to be in isolation.
と言います。

ナイオールは生まれつきのゲイで、それが故に世間に受け入れられない思いをしてきた。ただ50を過ぎた今、そのような孤独感が自分の生活の中に根を張ってしまわないように心掛けている。オアシス教会の活動に参加して週に2~3回はボランティア活動をすることで、人びととの接触を保とうとしており、単にスーパーマーケットへ行くだけでも気分が明るくなる(lift your spirits)と言います。
  • 自分自身の寂しさに負けないように注意しなければ・・・You have to be careful with your loneliness.
というのがナイオールの言葉です。




▼ロンドンにあるNational Portrait Galleryのサイトを見ると "HOLD STILL" というタイトルの写真展が掲載されています。これはコロナ禍と生きる英国人の姿を写した写真100点を集めたネット展覧会です。2020年5月~6月にケンブリッジ公爵夫人(ウィリアム王子夫人)の呼びかけで英国全土から「コロナと生きる」をテーマに写真を募集、集まった作品の中から選ばれたものが網羅されている。作品募集に応えて3万1000点を超える作品が寄せられたのですが、その中から専門家が選んだものです。National Portrait Galleryは1856年に肖像画専門の美術館として設立されたもので、ケンブリッジ公爵夫人はパトロンをつとめている。美術館自体は2023年まで閉館中なのですが、"HOLD STILL" だけは特別に今年の秋に開かれた。"HOLD STILL" は「動かないで!」という意味なのだそうです。作品はどれも普通の英国人が撮影したもので、プロの写真家の作品ではない。

 back to top

4)日本は「コロナ」を理解していた?


12月17日の時点で新型コロナウィルスの感染者が189,206人、入院者が25,411人、死者が2,792人などという数字が出ており、ラジオのニュースを聴いても殆どが「新型コロナウィルス」がトップで伝えられます。ラジオ局が悪いのではないけれど、何やら怖ろし気な雰囲気のニュースが始まると、むささびはラジオを消すか、他局へ回すかしてしまう。が、ほぼ一週間前(12月12日)のThe Economistによると
  • The Japanese authorities understood Covid-19 better than most 日本の政府関係者は、新型コロナウィルスのことをほとんどどの国よりも理解していた。
となっている。それが故に「日本における感染者数は比較的小さい」(That has helped keep Japan’s outbreak relatively small)のだそうであり、それを支えているのが "3C epiphany"(3Cのお告げ)であるとなっている。3Cって何?これを日本語に直すと「3密」です。閉め切った場所(closed spaces)、混雑するところ(crowded places)そして(人間同士の)接触が近すぎる(close-contact settings)・・・どれもCから始まる言葉、だから「3C=3密」であり、これだけは避けなければならない、というわけです。


The Economistの記事によると、日本における新型コロナウィルスによる死者数を100万人単位に直すと18人ということになり、いわゆる先進7か国の中ではずば抜けて低い数字です。G7の中で日本に次いで死者が少ないドイツでさえも100万人あたり239人だから日本の死者が如何に低いかが分かる。しかも日本が目立つのは、このような数字が欧米で行われている強制的なロックダウン(都市閉鎖)なしで達成されていることである、と。


東北大学大学院の押谷仁教授(政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会委員)は "From the beginning we did not aim at containment" (我々は最初からウィルスを封じ込めることは狙っていなかった)と語っているのですが、教授によると、感染者の多くが穏やかな兆候を見せるか、兆候そのものを全く示さない場合、日本のような規模の国においてすべての感染者を突き止めることは不可能である、と。日本におけるテスト件数は100万人につき平均270人なのに対して、米国や英国における平均は4000人を超えているのだそうです。

欧米と異なる日本のやり方ついてThe Economistは、感染リスクについての「大まかな分け方」(granular distinctions about risks)と表現して、「厳重な都市封鎖と全くの自由放任の間を行ったり来たりする」(swinging between the extremes of strict lockdowns and free-for-all openings)という欧米のやり方の違いを強調しています。西村康稔・経済再生大臣によると、混雑する地下鉄も、窓を開けて、乗客はマスクを着用し、お互いに向き合うのではなく斜めに向かい合って座ることにすれば、感染のリスクは75%も低くすることができるとのことであります。


閑散とする飲み屋街

もちろん日本の政府による(欧米から見れば)緩やかな対処の仕方でも、日本人自身が無視してしまえばうまくはいかないわけですが、The Economistの見るところでは、日本人は大体において政府の指示に従って「ステイホーム」を実行している。そのことと日本人の国民性について西村大臣は
  • 日本社会が余りにも同質的すぎるということで批判されることもあるが、今回に限ってはそれ(同質性)が望ましい方向に働いていると思う。Sometimes we are criticised for being an overly homogeneous society, but I think it played a positive role this time.
とコメントしています。

ただ、最近の感染の広がりからしても、日本独特の「強み(advantages)」にも限界があることは明らかで、最近では自衛隊の派遣という手段にも訴えているわけです。とはいえ経済振興のための政府主宰のGo toキャンペーンについては規模を縮小することはやるけれど、全面的廃止まではやらないのが日本的なところである、と。これから寒さが到来するので、人間が「3C」の状態になりそうではあり、最近の感染拡大にも季節的な要因があるかもしれないけれど、
  • 日本の場合は、感染拡大と言っても出発点になる感染者数自体が劇的に低いものであったことは間違いない。But in Japan, at least, the recent growth in the number of cases has started from a dramatically lower base.
とThe Economistは言っています。

▼この記事の中でむささびが最も語り合いたいと思ったのは、日本人が(外国に比べると)政府の指示に従う傾向が強いことについて、西村・経済再生大臣が語ったコメントです。日本という国の「同質性」(homogeneous)について、普通なら欧米各国からの批判の対象になるかもしれないけれど、コロナ禍に関しては「同質的でよかった」と言っている。欧米政府が「ロックダウンか自由か」という二者択一的な態度で臨んでいるのに対して、日本の政府は「不要不急の外出は避けてほしい」「帰省はできるだけ避けて欲しい」という態度ですよね。

▼欧米の政治指導者が国民に「命令」するのに対して、日本のそれは「理解を求める」態度です。それでも国民は政府の言う通りにする。西村大臣によると、それこそが同質社会の強みということになる。「み~んな日本人だもんね」という社会。どう思いますか?むささびが素直について行けない気持ちであることは言うまでもない。でもそれをきっちり説明するのは難しい。

 back to top

5) どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら 


exceptionalism:例外主義

BREXITをめぐる英国とEUの交渉のポイントの一つに英国と欧州大陸の間に横たわる海峡における漁業権の問題がある。それなりに主張する自国の海域内における漁業権を守ろうと必死なわけですが、そんな最中にあろうことか英国防衛省の関係者が、英国の漁業権を守るために軍艦を派遣することもやぶさかでないという趣旨の発言をして英国内で問題になっているわけ。例えばかつて香港総督をつとめたこともある保守党の重鎮、クリス・パッテンはジョンソン首相が「イングランドは例外という意識で突っ走る暴走列車に乗っているようなもの」(being on a "runaway train of English exceptionalism")と批判している。"exceptionalism" という言葉を辞書で引くと
  • a theory that a nation, region, or political system is exceptional and does not conform to the norm.
と説明されている。「一つの国・地域・政治制度などが例外で、通常の基準には当てはまらないという理屈」ということですよね。要するに「俺たちは特別、文句あっか!」という態度のことで、ネット的にはもっぱら"American exceptionalism"のことが語られていました。特に最近のトランプ政権とその支持者たちの言動を見ていると"exceptionalists"(そんな言葉あるのかどうか分からないけれど)の集団という気がしないでもない。

でも実は英国における鼻つまみ現象として"English exceptionalism"というのがあって、それがちょこちょこと顔を出して顰蹙を買うわけよね。BREXITはヨーロッパにおけるUKまたはBritainの”exceptionalism"のように言われるけれど、実際にはEngland人間による「例外主義」であるってこと。
 
back to top

6)むささびの鳴き声 

▼上の写真はBBCのサイトに掲載されていたもので、ロイター通信のカメラマンが写したものです。ニューヨークのマンハッタンの街角にあるPfizerの広告で、その前をマスクをつけた人が広告には目もくれずに淡々と歩いている。何故なのか、自分でも分からないのですが、むささびはこの写真に強烈な印象を受けて、ひと言発したくなってしまった。おそらく "SCIENCE WILL WIN"というメッセージに強烈な印象を受けたのでしょうね。

▼「科学は勝つ」という謳い文句は、この会社が開発したコロナ用のワクチンに関連して、Pfizerが時代の最先端を行く企業であることを訴えているのだと思いますが、コロナ禍に関連付けて一般論として考えると、「人間の知恵や技術を以てすれば新型コロナウィルスなどという自然現象も抑え込むことができますよ、皆さん、ご安心を!」と言っているのですよね。ただ連日のように伝えられるコロナ関連のニュースに接していると "SCIENCE WILL WIN" も "Will Science Really Win?" と変えてみたくなりますよね。あるいは "Science will hopefully win."も悪くないな。

▼話は飛ぶけれど、ある教会のクリスマス礼拝で牧師さんの話を聴いていたら、教会が万人に開放されているということを言いながら「『関係者以外立入禁止』という看板ほど教会にふさわしくないものはない」と強調していました。そう言われてみると、町を歩いていてこの言葉ほど頻繁に目に入るものって他にないのでは?工事現場、学校の敷地、企業の建物・・・あらゆるところに立っている。ところで「関係者以外立入禁止」って、英語で何と言うのでしょうか?ネットにはいろいろ出ていたのですが、一番いいと思ったのは "Staff Only" だった。こんな看板にも「2か国語仕様」のJIS規格なんてのがあるんですね。それによると英文は "DO NOT ENTER/AUTHORISED PERSONS ONLY" だった。ちょっとくどいんでない?

▼もっと関係ないけれど、Facebookを見ていたら、誰かが「使うと年寄り認定される『昭和言葉』ランキング」というのを載せていました。かつて流行った言葉のいろいろを紹介しているもので「ナウい」「アベック」「あたり前田のクラッカー」などがトップ3に挙げられていました。むささびは知らなかったけれど「ざまあ味噌漬け」「アウトオブ眼中」なんてのはケッコーじゃありませんか。第10位に「冗談はよしこちゃん」というのがありましたが、むささびの記憶では「冗談裕次郎」だったけどなぁ。由利徹の「チンチロリンノ・カックン」が入っていないのは許せない・・・。

▼もう止めます。お元気で、来年もよろしく!

back to top

←前の号 次の号→