musasabi journal

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493号 2022/1/16
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BREXIT 美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書

お正月なんて、あったんだっけ?という感じですね。埼玉県はかなりの寒さで、暖かい春が待ち遠しいです。山奥では梅の花がほころんでいるのが見えたりして、コロナの世の中でほっと救われたような気がします。桜のような派手さはないけれど、有難い存在です。上の写真、アムステルダムの家並みです。上手く撮るものですね。

目次

1)スライドショー:朝霧のイングランド
2)あのブレアが "Sir Tony"!?
3)BREXIT: 「一挙両得」の時代は終わった
4)若き外務大臣の「熱意」
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声


1)スライドショー:朝霧のイングランド

2021年12月12日付のBBCのサイトに'misty mornings'(霧の朝)というテーマによる、読者からの写真が掲載されていました。BBCのテーマは世界中の「霧の朝」で、実にいろいろな場所の風景が写っています。むささびはテーマを「イングランドの朝」に絞って、BBCのサイト以外からも集めて見ました。

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2)あのブレアが "Sir Tony"!?

知らなかったのですが、トニー・ブレア元首相(1997~2007年)に "Knight" と呼ばれる称号が与えられ、この1月1日をもって、「サー」の称号で呼ばれる身になったのですね。それまでは「ミスター・ブレア」だった。「サー」は苗字ではなく、名前の方に付けられる称号だから、これからは「サー・トニー」と呼ばれることになる。Tonyは "Anthony" が正式なのですが、ブレアさん本人が「トニーと呼んでくれ」と言っているのだそうです。


ブレアさん(失礼、サー・トニー!)の場合、単に "Knight" と呼ばれる身分になっただけではない。その時の君主(今はエリザベス女王)によって「お友だち」(companion)として認められることになったのだそうです。この身分は "Order of the Garter" と呼ばれ、君主ひとりにつき最高24人の人間を「お友だち」と指名することが許される。創設されたのが1348年で、イングランドでも最古の勲章なのだそうですが、ブレアの前に首相を務めたジョン・メージャーは2021年に「サー・ジョン」となり、ガーター勲章も与えられている。つまり英国には"Knight"の称号は与えられていてもガーター勲章は授与されていない人がわんさといるということですよね。

ところで「トニー・ブレア」と言えば英国人の間では、自分たちの国をアフガニスタン、イラク戦争に引きずり込んだ指導者というイメージが強く、ガーター勲章の授与(女王の専権事項であり、政府は口を挟めない)については、下院が主宰する署名制度には70万人を超える国民が「反対」の署名を行なったとのことです。


ブレアさんに対する叙勲については、Guardianのコラムニストであるサイモン・ジェンキンズが
  • ‘Sir Tony Blair’? How cheaply knighthoods come in our broken honours system:サー・トニー・ブレアだって?ナイトの称号も安っぽくなったもんだ。我々の叙勲制度は壊れてしまっているのだ
とこき下ろしております。

▼サイモン・ジェンキンズは、英国の叙勲制度は「壊れている」(broken)と言っているけれど、実際なんだかさっぱり分からないし、メディアもその分からない部分を追及しないから、ますます霧の向こうの制度になってしまうのでは?例えば「サー」と呼ばれる人間はこの世に何人いるのか?「サー」というのは男で、女性の場合は "Dame" と呼ばれる(?)とされているけれど、あのマーガレット・サッチャーは引退後には「バロネス・サッチャー」と呼ばれていた(と記憶しています)。

▼それから戦後の駐日英国大使は、現職(女性)を除いて、17人いるのですが、二人を除いて全員が Sir なのですよ。あれは何なのですかね。不思議なのは(私の知る限り)彼らはいずれも日本へ赴任する時点でサーになっていること。「日英関係の発展に尽くしたから」という業績とは別物のようなのですよ。駐米、駐露、駐タイなどなど殆どの国の英国大使も殆ど(全員ではない)が「サー」なのに、駐韓大使・駐北朝鮮大使はそうでない。

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3)BREXIT: 「一挙両得」の時代は終わった


フロストの辞任 有権者が望むものは?
北アイルランドの状況 現実主義という薬

英国がEUを離れたのは(法的には)一昨年(2020年)の1月31日ですが、その後1年かけけて離脱後の両者の新しい関係を司る制度を準備して、昨年(2021年)の1月1日に英国は名実ともにEUを離れた。つまり昨年(2021年)12月31日は英国にとってBREXIT丸1年という時でもあった。これから2年目に入ろうというわけですが、1月1日付のThe Economistの社説が "Time to choose"(選択の時)という見出しの記事を掲載、
  • Brexit’s many contradictions are coming to a head EU離脱が内包する矛盾の多くが、放置できない状態になっている
と言っています。


1年前(2021年1月)に英国がEUを離れた際のボリス・ジョンソンは、得意の絶頂期にあったと言える。その前の1年間、彼の政府がEUとの交渉を通じて獲得したのは、EU市場の規制からは自由で、しかも市場へのアクセス権は充分に確保するという、英国企業にとっては「いいことずくめ」の成果だったのだから得意になるのも当たり前だった。

フロストの辞任

なのに1年後の2022年1月、ボリスにとってはいいことは何もないとさえ思われる状況だというわけです。シュロップシャーにおける補欠選挙の敗北(むささび491号)、コロナ関連のロックダウン中に首相官邸だけがパーティーをやっていたというスキャンダルetc のお陰で支持率は下がりっぱなしという状態だった。とどめの一撃ともいえるのは、昨年12月18日のデイビッド・フロストの辞任だった。この人はジョンソン政権の対EU交渉団のリーダーだったのですが、コロナ禍対策、増税など政権による諸々の政策に嫌気がさして辞表を提出したというわけ。


ボリスが直面する困難のある部分は、彼自身の性格的な問題にも関係している。傲慢・安っぽさ・規則軽視などですが、辞任したフロストが特に問題にしたのは、「BREXIT後の英国は新しい国としてスタートを切る」という保守党政権の約束にも拘わらず、現実には新しいスタートどころか「漂流する国」のようになってしまっている。経済成長は弱いし、EUの単一市場からの離脱がこれにさらに輪をかける状態になってしまった。現政権の見通しによると、英国の生産性は4%を維持できるとしていたけれど、現在の諸政策を見ていると、とてもそれを達成するとは思えない。

北アイルランドの状況

現在の英国が直面している問題は、EUからの離脱そのものというより、その結果として起こることが分かっていたはずのことを受け入れることができないでいるということにある。その典型が現在の北アイルランドの状況である、と社説は言います。EUの貿易制度を離脱するのと引き換えに英国が得たものは、最大限の国家主権の尊重と国家管理の権利だった。北アイルランドについて、EU側は和平の問題もあって北アイルランドを特殊扱いすることを提案した。それはEU加盟国であるアイルランド共和国と英国領である北アイルランドの間に存在する「国境」を現状のまま維持するという提案だった。


ということは、北アイルランドはEU市場との接点に関する限り、これまでどおり「EU加盟国」という扱いにならざるを得ない。ジョンソン政権が提案し、EU側も受け入れたのは、北アイルランドとUK(イングランド、スコットランド、ウェールズ)の間(アイルランド海峡)に検問所らしきものを設け、UKから北アイルランドへ運ばれるモノについてはそこで税金を払った後に北アイルランドへ入る。税金はモノを受け取る北アイルランドの人間が払う。モノがEU向けの場合はそのままEU(アイルランド共和国)へ直行するけれど、北アイルランドに留まるモノについては、それがはっきりした時点で、すで払った税金が払い戻されるというわけ。このアイデアは辞任したデイビッド・フロストも大反対だったとされている。

有権者が望むものは?

EUが持つ規則との英国の付き合い方は「優柔不断」(vacillations)という表現がお似合いだ(とThe Economistは言っている)。きっぱり縁を切るのか、離脱後もEUの単一市場が持つ規則と付き合っていくという選択肢の間でうろうろしている。EU離脱を最も熱心に推進した人間は、英国がシンガポールのように「税金は低くて、規制は緩やかな国になろう」と訴えた。しかし英国の有権者の多くが望んだのはヨーロッパの社会民主的な社会だった。実際、EU離脱後の英国はかつてよりも「ヨーロッパ的」になった面がある。最低賃金は高くなったし、社会福祉促進のために増税が行われたこともある。


最近のボリス・ジョンソンがしきりに口にする英語に "level up"というのがある。生活・教育・インフラ・科学技術などなど、あらゆる面での「レベルアップ」を約束しているけれど、それは事実上、ヨーロッパ風の産業政策や公共事業の導入と促進を意味することが多い。The Economistによると、現在の英国に必要なのは「現実主義」という薬なのだそうです。北アイルランドの問題でいうと、ボリスが言うように英国の一部でありながら貿易についてはEU加盟国というような振る舞いはそもそもが無理なことなのである、と。

現実主義という薬

ヨーロッパからの分離について、英国はコストと利益をじっくり考慮したうえできっぱりとした行動をとる必要がある。となると、国内の規則が如何に客観的にEUのものより優れているとしても、それを優先させることは非現実的であり、有権者にも受けないということは事実だ。例えばデータ保護に関するEUの規則は事実上、世界に通用する規則になってしまっている。あるいは化学関連の産業においては、英国企業にとってはEUの企業が最も重要な顧客であり、それらの企業が従うEUの規則を無視することは不可能というものだ。食品の安全や動物保護についても、英国の消費者はヨーロッパ水準を良しとしており、これを変えることには大いに反対するだろう。


もちろん英国人は何から何までヨーロッパのものがいいと考えているわけではない。例えばEU域内における農業政策は必ずしも環境保護の点で優れているとは思われていない。産業の競争政策や国家支援の在り方なども同様だ。金融産業に関する限りロンドンの自由には適わない。

ただ、健康福祉業界における規制緩和など経済成長に繋がるものはEUの規制に付き合うことでも達成は可能である、と。しかもこの分野は裕福な保守党エリアや北部の労働者階級エリアの有権者には受けがいいことが考えられる。いずれにしてもボリス・ジョンソンの「いいことずくめ」の政治では「難しい選択」(tough choices)について語られることが殆どなかった。
  • しかし彼の政府が「難しい選択」に手を付けない限り、BREXITの将来はゴミの山と化してしまうだろう。But unless his government starts making some, Brexit’s future will hold little but crumbs.
とThe Economistは指摘しています。まさに「選択の時:Time to choose」が来たということです。

▼BREXITの障害になっている北アイルランド問題とは、即ち英国の一部である北アイルランドとEU加盟国であるアイルランド共和国の間の国境をどうするのかということに尽きるわけですよね。これまでだって国境は存在したのですが、南北アイルランドともにEU加盟国であるということで、国境は「ないのと同じ」という扱いを受けてきたし、誰が見たってそれがいちばん「現実的」なアイデアだった。それをボリスのような反EU勢力がぶち壊してしまった。

▼むささびの想像によると、ボリスの本心としては、北アイルランドは英国(UK)から離れて「南」の一部になった方がすっきりするということなのではないか。が、それは北アイルランドで暮らしてはいるけれど、「英国人」であるという人びとが許さない。ボリスらにとって頭痛のタネはその人たちの感情をどうするのかということで、これには名案も何もない。

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4)若き外務大臣の「熱意」


むささびとしたことが迂闊なことですが、現在の英国の外務大臣は女性だったのですね!しかも46才という若さです。名前はリズ・トラス(Liz Truss)。2010年に保守党の下院議員となり、デイビッド・キャメロンやティリザ・メイ首相の政権でも内閣の一人ではあったけれど、外務大臣にとしてボリス・ジョンソンの政権に参加することになったのは、昨年(2021年)9月のことです。彼女の正式な肩書はSecretary of State for Foreign, Commonwealth and Development Affairs(外務・開発大臣)です。


その彼女の考え方が鮮明に語られたのが、12月8日に王立国際問題研究所(Chatham House)で行ったスピーチです。リズ・トラスのスピーチ原稿はここをクリックすると出ているのですが、最初の部分に『内向きの時代に(Age of introspection)』という見出しのついた個所があります。この部分がスピーチ全体のメッセージを伝えているのですが、The Economist誌の "Bagehot(バジョット)" という政治コラムは、彼女のスピーチについて「新外相が英国の外交政策を変革しようとしている:A new foreign secretary seeks to reshape British diplomacy」と言いながら
  • Liz Truss declares an end to the age of introspection:リズ・トラスが内向き時代の終末を宣言
と語っている。つまりこれまでの英国の外交政策は「内向き」だったのであり、それを改める必要があるということです。どういう意味なのか?国際問題研究所におけるスピーチの中の最初の部分だけをそのまま紹介します。
内向きの時代に
Age of introspection

正直に認めましょう。最近の自由主義世界は肝心の問題から目をそらしていませんか?共産主義が崩壊したとき、我々の多くが安堵の息をつきながら「歴史の終わり」(end of history)が来たと言ったのではなかったですか?つまり最終的には自由と民主主義こそが地球全体を覆うことに疑いはない、と考えたのです。

世の中がどこも内向きになってしまった。Societies turned inwards. 世界を形成するような壮大な思想が追求されるのではなく、役に立たない思想が幅を利かせるようになった。その例が「この世に客観的な真実はない:there is no objective truth」と主張する「ポスト・モダン哲学」であると言えます。また自分たちの歴史を恥じ、将来もろくなことはないだろうと考えることが流行のようになった。


世の中がどこも内向きになってしまった。世界を形成するような壮大な思想が追求されるのではなく、役に立たない思想が幅を利かせるようになったのです。その例が「この世に客観的な真実はない:there is no objective truth」と主張する「ポスト・モダン哲学」であると言えます。また自分たちの歴史を恥じ、将来もろくなことはないだろうと考えることが流行のようになってしまいました。

社会運営上の漂流現象も起こっている。例えば(自分の国を守るはずの)防衛費は下落し、エネルギー源を(外国産の)安価なガスに頼っているし、5Gのような重要な技術まで他国に頼ろうとするようになっています。


このような怠慢現象は、地球規模の思想上の戦いを続ける人間たち(自由主義世界の敵)によって利用される。彼らは情け容赦なく自分たちの影響力を強化しようとします。そのためには金を欲しがる人間には誰にでもこれを与えようとする。もちろんそれにはすべて、受け取る側の国の主権や安全という交換条件(ヒモ)がついているのです。

今こそ目覚める時です。自由世界の「内向きの時代:Age of introspection」は今こそ終わりにしなければならないのです。我々が必要とするのは「思想と影響力とインスピレーションの時代」なのです。であるが故に英国は友好国と力を合わせて世界を繋げる自由のネットワーク(network of liberty that spans the world)を形作ろうとしているのです。


かつてアメリカのケネディ大統領が言ったように、我々は(独裁国家のように)力や恐怖による帝国主義ではなく、勇気と自由による支配や人類の未来への希望で他国を奮い立たせようとしているのです。
As JFK put it, we will inspire others “not with an imperialism of force or fear, but the rule of courage and freedom, and hope for the future of man.”

ジョンソン政権が昨年3月に鳴り物入りで打ち出した、これからの英国を示すスローガンに "Global Britain" というのがありましたよね(むささび472号参照)。The Economist誌によると、リズ・トラスこそは "Global Britain" の外交政策を象徴するような考え方をしているらしい。具体的に言うと「思想性を持つこと」「中国・ロシアとはきっぱりと対決すること」「ヨーロッパと縁切り関係にはならない」「アメリカ以外にも同盟国を有すること」 etc ということになる。それら強権的な体質を持つ中国やロシアのような国について、トラスは次のように語っている。

彼らは個人よりもグループを優先する。人びとを制度のために働かせようとする。我々の世界では制度を人びとのために働かせるようにするのです。 
They put groups ahead of individuals. They want to make people work for the system. We want to make the system work for people.

リズ・トラスが強調するのは、自由で民主的な世界において尊重されるのは、個人の自由、人間性と人権の尊重、ピープルの力などであり、これらこそが「世界を変えるための最大の力となる」(greatest transformative force on earth)と主張しています。

▼リズ・トラスは普通には "Foreign Secretary" と呼ばれるけれど、正式な肩書は "Secretary of State for Foreign, Commonwealth and Development Affairs" です。直訳すると「外国・英連邦・開発問題担当大臣」ということになる。The Economistなどによると、最後の「開発」というのはリズ自身が外相になってから付け足したものらしい。外国における経済開発にも外務省が絡むということで、それによって外務省そのものの影響力を強くて大きなものにするという意図だった。
 
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5)どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら



cakeism: いいことずくめ・一挙両得

この号の3つ目の記事で、BREXIT後の英国についてThe Economistの社説が紹介されており「いいことずくめは通用しない」という見出しが出ている。社説の原文は
  • It is time for Boris Johnson to abandon “cakeism” ボリス・ジョンソンは “cakeism” の態度を捨て去るべき時だ
となっている。“cakeism” という言葉の意味をCambridgeの辞書で引くと、次のような説明が出ています。
  • the wish to have or do two good things at the same time when this is impossible. 出来るはずがないにもかかわらず、二つのいいことを同時に持ちたい・やりたいと思うこと
そう言えば英国の新聞を見ていると "You can't have your cake and eat it too." というフレーズを眼にすることがありますよね。前後の文章との関連で、何とはなしに意味は分かった気でいたのですが、いまいちピンとこなかった。<「持つ」と「食べる」は同時には出来ない>というけれど、どんなケーキだって、持たなきゃ食えないのでは!?

BREXITについてのボリス・ジョンソンの有名なコメントに(I am “pro having it and pro eating it too”)というのがあるのだそうです。ケーキは「持つのにも食べるのにも賛成」ということですが、「それをそのまま押し通そうとして行き詰まっているのがボリスの現状だ」とThe Economistは言っているのですよね。

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6)むささびの鳴き声
▼上の写真はロンドンの中心部(Westminster)に作られたコロナ禍の犠牲者を悼む "National Covid Memorial Wall" と呼ばれる追悼壁にハートマークを書き込むボランティア。最寄りの地下鉄駅はWestminsterで、ウェストミンスター・ブリッジを渡った右側にあるSt Thomas Hospitalを囲む壁に無数のハートマークが描かれており、それぞれに犠牲者の名前が親族や友人によって書き込まれている。

WHOの数字によると、1月15日現在で英国のコロナによる死者数は15万1342人で、15万人を超えたのは米・ブラジル・インド・ロシア・メキシコ・ペルーに次いで7番目だそうです。WHOの数字では日本の死者数は1万8414人(1月15日現在)となっています。

▼これも間接的にはコロナ絡みのことではあるけれど、ボリス・ジョンソンがどうしようない状態に追い込まれて、ついに謝罪しましたね。謝罪にも二つある。一つは2020年のコロナ初期時代の全国都市封鎖の際に、首相官邸ではクリスマス・パ-ティーのようなことをやっていたこと。もう一つは2021年4月17日に行われたエディンバラ公(女王の夫君・同年4月9日に死去)の葬式の前夜にも官邸でパーティーを開いていたことです。ボリスは、この両方について国会で謝罪しています。

▼"Mr Speaker, I want to apologise"(議長、私は謝罪したい)という言葉で始まって、延々謝罪の言葉を述べているのですが、2020年の「パーティー」については、普通の意味での「娯楽」というより、ほんの仲間内の「ちょっとした集まり」にすぎないと思っていたので、つい…というわけです。さらにボリスは都市封鎖の中での「パーティー」については、「国民が私および私が率いる政府に対して感じている怒りについても分かっています」とひたすら謝罪に徹しており、現在進行中の調査委員会の判断を尊重すると述べている。

▼ただ、むささびが紹介したかったのは、ボリスの謝罪ではない。2020年12月末、ボリスらがロンドンでクリスマス・パーティーを開いていたころ、日本の国会において安倍晋三・前首相(当時)が、いわゆる「桜を見る会」に絡む政治資金規正法違反事件で、衆院議院運営委員会に出席し、過去の国会答弁について「事実に反するものがあった」と認め、謝罪した、というあの「謝罪」です。NHKのサイトによると、安倍さんは答弁の冒頭で次のように述べている。
  • 会計処理について私が知らない中で行われていたこととはいえ、道義的責任を痛感している。深く深く反省するとともに国民、全ての国会議員の皆様に心からおわびしたい。
▼要するに自分の後援会の人間が犯した過ちについて、後援される立場の人間として謝罪しているのですが、「私が知らない中で行われていたこととはいえ」という部分が、むささびの気に障るわけです。本当は謝罪などする必要はないけれど、あんたらが騒ぐから…ということをこのような言い方でごまかしているわけです。ロンドンのボリスは「あれがパーティーとは思わなかった」と言っているけれど、パーティーと考えてしまった迂闊さについては謝罪している。

▼昨夜(正確に言うと今朝)の津波報道には驚きましたね。海がない埼玉県だから、このような形での津波被害というのは殆どあり得ないのですが、「噴火」となると富士山を想ってしまいます。夕焼けの秩父連山の向こうに見える富士山のシルエットの見事さは正に "out of this world" なのです。お元気で!

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