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 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
509号 2022/8/28

暑い・暑いと喘いでいるうちに、気が付いたら8月も終わり。夜になると虫の鳴き声が聞こえてきます。上の写真は「スライドショー」で使われているものの一つで、ベトナムのおばあさんたちだそうです。お見事としか言いようがないポートレートです。

目次
1)スライドショー:人間に会いに行こう
2)「解決ジャーナリズム」の必要性
3)コロナ禍:その後のスウェーデン
4)安倍晋三と竹島
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声
7)俳句

1)スライドショー:人間に会いに行こう

むささび自身は写真家になりたいと思ったことはないけれど、写真家が写した作品を見るのは大好きです。写真にもいろいろありますよね。風景写真・動物写真・報道写真・人物写真などなど。「人物写真」のことは「ポートレート」と呼んだりもする。今回紹介するのはどれもが「ポートレート」なのですが、プロのモデルとか有名人を写したものではなく、当たり前の人びとを写したものばかりです。どの写真にも共通しているのは、被写体がカメラを見ているということです。自分が写真を写されているということを分かっている…そんなときに人びとはどのような表情を見せるのか?

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2)「解決ジャーナリズム」の必要性



メディア業界についての専門サイト Press Gazette のサイト(8月16日)を見ていたら次のような見出しの記事が出ていました。
  • New network aims to boost media literacy and solutions journalism
メディアの世界に「media literacy と solutions journalism の向上を目指す新しいネットワーク」が誕生したというわけですよね。media literacy はインターネットを含む「メディア」をユーザーとして使いこなし、読者・視聴者としてメディアが伝える情報を理解し正確に解釈する能力のことですよね。メディアの言うことを何の疑問もなく受け入れてしまうような人は media literacy が低いということになる。


では solutions journalism って何?文字通りに訳せば「解決ジャーナリズム」となる。つまり社会問題について報道する際に、現実に起こっていること(戦争・殺人・災害 etc)を事実として報道するのみならず、それらの問題についての「解決策」をも報道する姿勢のこと?しかし「解決策」なんてそんなに簡単に示せるものではないし、ジャーナリストにそれを求めるのは無理ってものなのでは?

で、別のネットを当たってみたら、日本語のHuffington Postというサイトに、朝日新聞の平和博さんという記者が書いた
  • 問題点や課題の〝解決〟に向けた道筋までを報じていこうという新しい取り組みがある。「ソリューション・ジャーナリズム」と呼ばれる動きだ。
という記事が出ていた。要するに、様々な問題が起こっていることを「事実」として報道することと併せて「人々がその問題解決にどう取り組んでいるかを報じることにも力を入れる」ということで、最近のアメリカのジャーナリズムの世界で起こりつつある現象なのですね。


例えば教育問題を担当するジャーナリストが、貧困層の子どもたちの教育に、公立学校がいかに失敗し続けているかという痛烈な記事を書くとする。それなりに社会的なインパクトはあるだろうと思うけれど、「解決ジャーナリズム」の必要性を感じているメディア関係者の眼から見ると:
  • 私たちは、その記者が、あらゆる生徒たちの教育に成果をあげている学校の例、その学校がどのようにそれを実現しているのか、についても報じれば、より(大きな)インパクトを持つことができる。
ということになる。

で、英国メディアの世界を扱っている Press Gazette のサイトは、最近、英国メディアの世界にも solutions journalism の向上を狙った新しいネットワークが出来たと言っており、その推進役でもあるジョディ・ジャクソン(Jodie Jackson)という作家・メディア研究者がいろいろと語っている。


ジャクソンさんによると、最近のテレビ・ニュースは見るに忍びないような報道が多いと感じていたけれど、そのように感じているのが必ずしも自分だけではないということが分かってきた、と。
  • かつては毎日のようにテレビ・ニュースを見ていたのに、今ではそれに我慢が出来なくなってしまった。文筆業という仕事もあって私にはテレビ・ニュースを毎日見るだけの動機はあるはずなのに。It was a real gradual progression that moved me from someone who watched [the news] daily to someone who could no longer stand it, and I was really motivated to stay informed.
そこで彼女はもう一度大学へ戻って「ポジティブ心理学」(個人や社会を繁栄させるような強みや長所を研究する心理学)を研究することで、「ニュース報道が人間の精神衛生に与える影響」(impact of the news on mental health)を理解しようと努めることにしたというわけです。

2022年版のロイター通信デジタルニュース報告書(Reuters Institute Digital News Report 2022)によると、最近の英国では35才以下の人びとが意図的にニュース報道に接することを避けているのだそうですが、その理由は「ニュース報道は自分たちの気分にネガティブな影響をもたらすから」(due to the negative effect it has on their mood)というものだった。

Press Gazette のサイトの中でジャクソンさんが強調するのは、最近のニュース報道が見る人を憂鬱な気分(depressing)にさせるものが多いけれど、彼女は「気分が良くなる報道がいいと言っているのではない:I’m not talking about stories that make us feel good」とも言っている。
  • 現在のメディアは「解決報道」に飢えている。私が言っているのは、事故・事件について伝える中でも社会における進歩についても伝えようとする「本当の調査報道」(real investigative journalism)が必要だということなのだ。We are starved of solutions in our media environment. I’m talking about real investigative journalism that reports on progress taking place.
ということです。
 

▼上に載せた漫画<"PROBLEMS SCREAM" "solutions whisper"(トラブルは叫び、解決はささやく)>はうまいこと言いますね。前者が全て大文字、後者が小文字で書かれているあたり、凝ってます。

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3) コロナ禍:その後のスウェーデン



大学で教える教授らが集まってディカッションをするサイト "The Conversation"(8月12日号)に次のような見出しの記事が出ていました。
  • Did Sweden’s controversial COVID strategy pay off? In many ways it did – but it let the elderly down 物議をかもしたスウェーデンのコロナ対策はうまくいったのか?多くの点がうまくいったと言えるが、高齢者には効果を発揮しなかった
スウェーデンの医科大学・カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)のエマ・フランス(Emma Frans)という高齢者医療の研究者が書いたものです。スウェーデンのコロナ対策については、むささびジャーナルの447号と461号でも語られています。
 
都市封鎖より「社会的距離

エマ・フランスはまずコロナが流行り始めた2020年半ばにおけるスウェーデンの状況を振り返っている。インフルエンザ対策の際に使われる方法、即ち都市封鎖などは行わず人間同士の距離を保つ「社会的距離:social distancing」という方法が採用された。

可能な限りは自宅で就労し、国内旅行なども慎むことが奨励された。さらに70才以上の高齢者については、可能な限りにおいて社会的な接触を避け、コロナ感染の兆候が見られる人には自己隔離が求められた。高齢者を始めとするリスクの高い人びとを保護すると同時に国のヘルスケア制度そのものがコロナ・ウィルスに打ちのめされるようなことがないようにするというのが政策の趣旨だった。

小学校は閉鎖されず

それでも感染者数が上昇するに伴って国全体に対する制限が設けられるようになった。例えば2020年3月には、群衆が集まるようなイベントは「最高50人」と規定されたが、同じ年の11月にはこれが8人にまで減らされた。養護施設への訪問は禁止され、中学校は閉鎖された(が、小学校はずっと開かれていた)。マスクの着用は(少なくとも最初のうちは)義務化されることがなかった。


2020年の春の時点では、スウェーデンにおけるコロナによる死者数は世界でも最も高い部類に属するとされた。他の北欧諸国(ノルウェーやデンマーク)では都市封鎖のような対策が早い時期から講じられ、感染者数も小さかったので、スウェーデンの「生ぬるい対策」(lax approach)は大いに批判された。

ただその頃にもスウェーデンのやり方を支持する人びとはいた。彼らに言わせると、都市封鎖のような過酷な対策は長続きせず、長い目で見るとスウェーデンのやり方の方が割に合う、と。伝染病との戦いはマラソンであって短距離走ではないというのが彼らの主張だった。

上のグラフはコロナ禍が始まった2020年3月初めから現在(2022年8月)までのスウェーデン、日本、米国、英国における感染者数の推移を表しています。米ジョンズ・ホプキンズ大学がまとめたもので、それぞれの国の1週間の感染者数を7で割ることで1日当たりの平均感染数を出している。このまとめによると、2020年3月初旬の頃のスウェーデンにおける1日当たりの感染者数は1.86人、日本のそれは15.71人、英国:9.43人、米国:2.29人などとなっている。これが2022年8月ともなると、スウェーデンの約904人に対して英国が5700人、米国はほぼ10万人なのに対して日本はほぼ19万人と圧倒的に多い。

超過死者数は低かった

要するにスウェーデンのやり方は成果があがったのか?答えを見つけるために筆者は、いわゆる「超過死亡者」(excess mortality)の数を検討しようと言います。「コロナがあったが故の死亡者」がどの程度存在するのか?ということです。筆者によると、スウェーデンは第一波のコロナでは厳しい影響を受けたもののコロナが故の死者数という意味ではヨーロッパでは最も低い国の一つだった。

小学校を閉鎖しなかったことも正解だった。児童の間におけるコロナの重傷者数は低いし、スウェーデンの児童の学習の度合いを見ても外国において見られるような遅延現象は見られない。

つまりスウェーデン方式はまず「大失敗」とされ、次には「ひょっとすると成功かもしれない」となり、今では「スカンジナビアの成功例」とされるようになっている、と。しかし意味のある結論に達するには、スウェーデンのコロナ対策をさらに詳しく見ていく必要がある。スウェーデンではあたかも何事もなかったかのように月日が経っていったというわけでもない。

「強制」より「自発」を

2020年春からスウェーデン社会保健局(Public Health Agency)が行ってきた調査によると、スウェーデン国民の8割がコロナ禍に合わせた行動をとってきたとしている。例えば「人との間の距離をとる」もあるし、群衆のいるところへは近寄らない、公共の乗り物は避ける・・・などなど。人の移動に関する調査データによるとスウェーデン人はコロナ禍の間明らかに旅行などの「移動」を減らしてきている。

北欧4国のコロナ死者数:人口10万人あたり

Johns Hopkins Univ

スウェーデン人の行動はコロナによって強制されたようなものではなく、このような自発的ともいえる行動は地球上のどこででも可能だというものではないだろう。スウェーデンの場合、昔から政府に対する信頼感が高く、公共衛生に関する政府による呼びかけには従うという傾向が強い。

都市封鎖を避けることによる利点はあったかもしれないが、スウェーデンのコロナ対応に瑕疵がなかったわけではない。2020年末、スウェーデンのコロナ委員会(非政府機関)は政府および公共衛生機関が高齢者保護という点では失敗していると決めつけている。その頃、スウェーデンにおけるコロナによる死者の9割が70才以上の高齢者であり、死者の半数はケアホーム暮らしをしている人たちで自宅療養者は3割を下回っていた。

高齢者福祉の問題点

実際のところコロナ禍の期間中、スタッフおよび装備不足など、スウェーデンの高齢者福祉の問題点が数多く指摘された。

政府によるコロナ禍対策について、コロナ委員会による最終報告書は、初期の段階でより厳重な対策を講じるべきであったと言っている。例えば海外のハイリスク・エリアからの帰国者は隔離措置や短期間の入国禁止にするべきでもあった。

ただ、そのコロナ委員会でさえも、都市封鎖は行わないとする政府の策は基本的に理にかなっている(fundamentally reasonable)としており、市民の権利と自由に関しては絶対に必要でない限りこれを制限すべきではないという態度をとっている。同委員会はまた政府による小学校の閉鎖回避を支持している。


「実験」ではなかった

ノルウェーはヨーロッパでは数少ないスウェーデンよりもコロナによる死者数が低い国であるけれど、ノルウェーのコロナ委員会は政府による対策を評価しながらも、政府による都市封鎖が子どもたちに悪影響をもたらしたにも拘わらず公共機関は適切に対処しなかったと批判している。

スウェーデン政府による対策の重点はコロナ・ウィルスの拡散防止に置かれていたけれど、それ以外の公共衛生対策や国民の自由や人権の保護には十分な考慮が払われていたと言える。そのやり方にはいろいろと問題になることもあったとはいえ、最近ではどの国でもスウェーデンと似たような姿勢で臨んでいるように思える。

エマ・フランスによると、スウェーデンはコロナ発生以前の伝染病対策に従っただけであり、それを恰もスウェーデンが国民を材料に使った「実験」でもしたかのように言われるのはアンフェアなのであり、
  • スウェーデン以外の国々こそがそれぞれの国民を材料にする「実験」を行っていたのであり、スウェーデンだけがそのようなやり方に従わなかっただけなのだ。 Perhaps Sweden instead should be considered the control group, while the rest of the world underwent an experiment.
と言っている。

▼エマはスウェーデンのことを「コントロール・グループ」に属するのではないかと言っているけれど、彼女のいわゆる "control group" は、大多数が行っている「実験」には参加していない国のことを言っており、「参加しない」というやり方で医療関連の実験に材料を提供するのであり、医療実験の世界では大切な存在なのだそうです。

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4)安倍晋三と竹島(再掲載)


むささびジャーナルのバックナンバーを見ていたら、2013年6月16日に発行した269号に、再読の価値があるのではないかと思われる記事が出ていました。『安倍さんがノーベル平和賞をもらうために・・・』という見出しになっているのですが、オリジナルの原稿はフィナンシャル・タイムズの2013年6月3日号に出ていたものです。むささびの記事自体はそれほど長いものではないので、そのままコピペしてみます。

2013年という年は、前年の衆議院選挙で自公が勝利、第二次安倍政権が発足(2012年12月)したばかりという年だった。7月の参議院選挙では自公が圧勝、衆参両院で自公が過半数を制するようになった。要するに安倍政権は順風満帆という状態だった。

安倍さんがノーベル平和賞をもらうために・・・

むささびジャーナル269号より

2013年6月3日付のFinancial Timesのサイトに出ていた「安倍晋三がノーベル平和賞を受けるために・・・」(How Shinzo Abe could win the Nobel Peace Prize)というエッセイについて日本のメディアではどの程度報道されていたのでしたっけ?いわゆるネットメディア(特に右翼系)ではかなりの騒ぎになっていたようなのですが・・・。エッセイはCenter for Naval Analysisという米海軍関係のthink-tankの軍事アナリスト(James Clad)と大西洋協議会(Atlantic Council)という組織の研究員(Robert Manning)の二人の名前で寄稿されたものです。基本的なメッセージは、日本が竹島を韓国に譲り渡すことで尖閣諸島では中国に対して、北方領土問題ではロシアに対して強い立場に立つことができるというわけで
  • 安倍首相は(竹島問題については)勇気ある行動をとることが可能であるし、そうすべきでもある。それによって彼自身の立場を劇的に強化し、東アジアという地域に変革をもたらすものとなる。Mr Abe can and should make a bold move to dramatically improve his standing and transform the region.
というわけです。記事によると、竹島は韓国では感情的な問題になっているが、竹島は日本にとって尖閣や北方領土ほどには重要なものではない(not nearly as important for Japan as the Senkakus or Northern Territories)とのことであります。


それでも、もし安倍さんが竹島を韓国に譲るとすると、それはかつてエジプトのサダト大統領がイスラエルを訪問、アメリカのニクソン大統領が中国を訪問したのと同じようなスケールの画期的な出来事であり、誰にも文句のつけようがない行動であるとされ、ひょっとすると安倍さんはノーベル平和賞の最有力候補者にもなる(a leading contender for the Nobel Peace Prize)可能性だってあると言っています。もちろん韓国人の日本観は変わるし、中国だって日本に対する考え方を再検討することになるだろう、と言っています。

日本が韓国に竹島を譲ったりしたら、中国などはこれまで以上に尖閣要求を激しいものとするだろうという見方があるかもしれないが、
  • しかしそのような(韓国に譲るという)スケールの大きな姿勢が東アジアの問題に解決をもたらし、日本は中国やロシアに対してより強い立場に立つことができるようになる・・・ということは容易に推察できるはずだ。But one can just as easily see such a grand gesture clearing East Asia’s decks, enabling Japan to set out its much stronger case against China and Russia.
と二人は主張しています。


竹島問題で韓国に譲るという姿勢を示すことは、安倍さんの弱みを露呈することになるという見方については、それは弱みではなく「柔軟性」(flexibility)ということだというわけで、安倍さんの「勇気ある行動」は中国と同じような領土問題を抱える東南アジアの国々にとっても「柔軟性」のお手本を示すことになるではないかというわけで、
  • 壮大なる戦略においては、こまごましたことを退けて本当のゲームに集中することが大切だ。安倍氏は勇気をもって竹島を返還したのちにそのことによる利益を享受するべきなのである。In grand strategy, there is much to recommend eradicating trivial irritants and concentrating instead on the main game. Mr Abe should be bold, give the islands back - then reap the benefits.
というのが二人のエッセイの結論です。

この記事については、むささび自身の考え方として
  • ネットメディアではFTのこの記事は「日本が譲る?アホぬかせ」というような反応が多いようです。竹島を韓国にあげたらノーベル平和賞がもらえるのかどうかは分かりませんが、このエッセイで使われているgrand gestureという言葉の意味は考えてみる必要と価値があると思います。
と書いています。

▼二人のアメリカの専門家は、竹島の問題については日本(安倍晋三首相)側のgrand gestureが必要だと言っているのですが、"grand" という言葉を辞書で引くと "important and large in degree" という説明が出ています。むささびはこれを「スケールの大きな」という日本語に直しました。要するに日本人とか韓国人とかいうのではなくて「人間が直面する問題として考える」ということなのでは?このことは今でもウクライナに関連して対ロシア、尖閣問題に絡めて対中国との関係を考える上でもあてはまるのではないか?と思ったりするわけです。
 
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5)どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら

stop-and-search:職務質問

警察官が怪しいと思う人間を路上で呼び止め(stop)、凶器や麻薬を所持しているのではないかというわけで、頭のてっぺんからつま先まで手で触りながら徹底的に調査する、あのことですよね。日本語でいうと職務質問。8月11日付のThe Economistによると、最近になって警官によるこの行為が増えているのではないかと問題になっているのだとか。

2010年4月からの1年間でイングランドとウェールズで行われた "stop-and-search" の数はざっと120万件だったけれど、2017年4月~2018年3月ではこれが28万件にまで下がっている。ずいぶん急激に減少したものですが、これは2010年にキャメロン政権が誕生した際に法務大臣に就任したティリザ・メイの政策のせいらしい。大臣に就任するや否や警察に対して「職務質問」を控えるように命令したのだそうです。彼女によると、警察による "stop-and-search" は犯罪防止には何の役にも立たず、非白人の人びとの反感を生むだけだ、と。

ただ最近になって "stop-and-search" の件数は再び上昇に転じている。その理由の一つがナイフによる殺傷事件の増加だそうで、ロンドンのサディク・カーン市長は、むしろ "stop-and-search" を増やすように警察に伝えているのだとか。お陰で昨年(2021年)3月までの1年間、イングランドとウェールズで実施された「職務質問」は70万4000件だったのだそうです。

警官によるこの種の行動については、賛否両論あるのですが、賛成派が主張するのは街頭から拳銃を減らすということなのですが、The Economistによると最近の「質問」の原因は武器の所持ではなく麻薬の所持が主なる原因なのだとか。


ところで日本では警官による「職務質問」はどのくらい行われているのか?いくつかネットを当たってみたのですが、英国のような情報を見つけることはできませんでした。ただ、九州の西日本新聞の「ワードBOX」という欄にでていた情報によると2018年一年間の「刑法犯認知件数」が約82万件だったのですが、警官による職務質問が端緒となったのは2万2607件だったとのことであります。

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6)むささびの鳴き声
▼TBSの『報道特集』(土曜日1730~1830)は、むささびが今でも見る唯一のテレビ番組なのですが、昨日(8月27日)は統一教会の問題を取り上げていました。今回の特集は、韓国人男性と結婚した「元教会員」の女性たちの「証言」、韓国における日本人妻(?)による、日本のメディアによる「反・反統一教会」報道への抗議集会などを主なる中身としていました。さすがの内容だった。ソウルにおける抗議集会に参加した日本人の女性たちによる「報道特集」キャスターからの問いかけ無視の様子などは本当に迫力があった。ここをクリックするとYoutubeで見ることが出来る(と思います)。

▼中でもむささびが特に強い印象を持ったのは、金平茂紀キャスターによる次のコメントです。
  • 日本の政治家の弁明を聞いていると、今後は関係を断ち切るとか、必死に逃げようとしてますね。そうじゃなくて、なぜそもそも、教団と関わったのかということに、ちゃんと向き合ってほしいですね。むしろ政治家の側に旧統一教会と考えや思想信条を通じるものがあったんじゃないか。知らなかったとか認識が甘かったというのは非常に卑怯な言い逃れだと思います。
▼「むしろ(日本の)政治家の側に旧統一教会と考えや思想信条を通じるものがあったんじゃないか」という部分が強烈だった。この問題について、むささびが気になって仕方なかったのは、統一教会との関係が疑われている政治家を責め立てるメディアの論調に、(むささびも含めた)日本人の中に巣食っている得体のしれない「嫌韓意識」のようなものだった。それが金平キャスターによる「日本の政治家の側の意識」の指摘によって余計はっきりしたというわけです。

▼この特集でさらに興味深かったのがオ・ミョンオクという韓国人ジャーナリストのコメントです。
  • 被害者が実在していることを知りながら放置し、自らの利益と名声のために反社会的な集団と裏で関係を持つ。正体を知っていながら手を組み、成功のためなら何でもする人たちのせいで旧統一教会による被害者は消えない。
▼彼女は過去2年間にわたってこの教団に潜入取材を続けてきた人です。「報道特集」の中では韓国語をしゃべっていたので、日本語はアウトなのかもしれない。いずれにしてもこの記者による統一教会報道は、これまで日本のメディアではどの程度使われてきたのでしょうか?

▼本日の埼玉県飯能市は暗い天気のようです。お元気で!

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