本日は6月30日、6月最後の日です。2024年も半分が過ぎてしまった…。この写真、例によってネットの世界から拾ってきたものであり、場所がどこなのかも分からない。が、背景にある山並みに懐かしさを感じるのはむささびだけではないのでは?。 |
目次
1)スライドショー: E. Coleの世界
2)災害を減らすには?
3)英中外交関係を再定義する
4)再掲載:極東ロシアの北朝鮮奴隷
5)英和辞書
6)むささびの鳴き声
7)俳句
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1)スライドショー: E. Coleの世界
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世界の優れた写真家が集まる集団 "Magnum" のメンバーにErnest Cole(アーネスト・コール)という写真家がいます。「いる」と言っても、現在も活躍しているという意味ではありません。彼は1940年に南アフリカで生まれて1990年にこの世を去っている。わずか50年しかこの世に存在しなかったわけですが、もう一つの特徴は彼が黒人であったということです。今回紹介するのは、1970年代、彼が若かったころに撮った作品なのですが、舞台は南アフリカとアメリカ・ニューヨーク、どの作品にも黒人としての視点が明確に表れています。
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2)災害を減らすには? |
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最近、日本のみならず世界のあちこちで地震・津波・山火事・竜巻のような自然災害が発生しているような気がするけれど、世論調査機関であるギャラップのサイト(6月19日)を見ていたら
という見出しの記事が出ていました。ロンドンに本部を置く「ロイズ レジスター」と呼ばれる慈善組織が最近発表した "World Risk Poll:世界危機調査" というデータ集によると、どの国でも昔に比べると危機対応は早くなっているけれど、「進歩のペースは遅い(slow progress)のだそうです。
ロイズレジスターでは、昨年(2023年)の段階で「過去5年間で何らかの災害を体験したことがある」人びとを調査したのですが、調査対象の70%が、少なくとも一度は事前の警報(メディア報道も含む)を受け取っていた。しかし30%の人びとは何らの警報をも受け取っていなかった。 |
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ロイズレジスターの報告によると、災害についての早期の警戒情報は、人命はもちろんのことインフラや財産の保護にも大いに役立っているけれど、この報告がもう一つ指摘しているのは、早期の情報提供が不十分な場合でも人びとはそれぞれの耐久力をもってこれに耐えていることが分かる。
ロイズレジスターの報告書が触れているポイントに「回復力指標:Resilience Index」と呼ばれるものがある。これは災害がもたらした逆境に対する人間の耐久力(0~100)を表している。
災害の早期警戒情報については場所や年齢層・教育によっても違いがある。中学・高校などの「高等教育:tertiary education」を受けた人びとの78%、都会住民の74%、経済力がある人びとの74%が、早期災害情報に接する機会が大きい。 |
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ロイズレジスターの報告書がさらに強調している問題に、早期警戒情報を効果的に処理するための情報システムの充実度が国によって異なるということがある。過去5年間の統計によると、東アジア諸国の90%が少なくとも一度は早期警戒情報を受け取っているのに対して、豪州・ニュージーランドの場合はこれが86%、北米の場合は83%へと低下する。対照的なのは中央アジアで、早期警戒情報を受け取った人びとは全人口の50%にとどまっており、中央アフリカではこれが38%、北アフリカでは25%にまで落ち込んでしまう。
ロイズレジスターの報告書は、これらの傾向を次のような言葉で締めくくっている。
- アフリカにおいて早期警戒情報を受け取る人が極端に少ないということは、自然災害による人命の喪失を減らすためには、さらなる国際的な取り組みが必要であるということだ。The
low levels of early warnings received by people who experienced disasters
across Africa show how much more needs to be done to help save lives and
reduce harm from disasters in some parts of the world.
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▼早期警戒情報については、日本はかなり発達しているのではありません?ただ自然災害というのは、人間が考え付く「警戒情報」など全く歯が立たない。それでも日本人は他者に比較すると人間の弱さを身に染みて知っている(と思います)。 |
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3)英中外交関係を再定義する
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"Chatam House" という名前で知られる英国の国際問題研究所が、6月14日付のサイトで、間もなく行われる英国の選挙に関連して
- The UK’s next government must redefine its confused relationship with China 次の英国政府は混乱している対中関係を再定義しなければならない
という見出しのエッセイを掲載しています。書いたのはユー・ジー(Yu Jie)という中国問題の研究者で、イントロの部分で次のように語っています。
- Whoever wins the UK’s general election, an incoming government needs better terms and conditions for its dealings with Beijing. 次なる英国の選挙でどこが勝つにせよ、新政権は中国との付き合いにおいて、よりまともな条件を模索しなければならない
筆者の文章になるべく忠実に紹介してみます。 |
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Dr Yu Jie
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「どっちつかず」を改めよう
中国との関係についての英国の姿勢を示す英語として ‘ambivalence’ というのがあるのだそうです。漢字では「両価性」と表現するようなのですが、日本語の辞書には《同一対象に対して矛盾する感情や評価を同時に抱いている精神状態》という説明が掲載されている(むささびの注釈)。自国の安全保障・対米関係・対中経済関係という課題に迫られると、対中関係についての英国の態度はどうしても「どっちつかず:muddled」なものになってしまう。
北京を訪問した英国首相は、この6年間でゼロであり、次期首相こそはそのような状態を改めなければならない。中国は世界第二の経済大国であり、中国側がどう思おうと、英国にとっては欠かすことができない相手に違いない。次なる英国首相は対中関係をより強固かつ現実性のあるものにしなければならない。 |
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BREXITは理解されない
英国政府にとってのジレンマといえば、一方では中国とのビジネス関係の進展を望む人びとの意見を聞き、もう一方では対中猜疑心のようなものにこだわる勢力のことも考えなければならないということだろう。一方の中国は英国をどのように見ているのかというと、EU離脱という行為は未だに不可解であり、離脱以後に続く短命な首相についてもよく分からないというのが率直な感想だろう。
北京の中国政府にしてみれば、ロンドンの新政権との関係を見直すと同時に(今回の選挙結果を見ながら)次期首相本人の権威についても観察しなおす必要が出てくる。
中国についていうと、経済成長は予想されたほど強くはないし、欧州諸国との間には貿易摩擦やウクライナ戦争のような政治問題が横たわるとはいえ、欧州諸国との経済的な連携は大切なものである。
EU諸国にとっては対中関係におけるリスクを減らすことの必要性は明らかであり、その意味では投資・貿易の分野においては中国から離れようとする意図がある。 |
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EU諸国の姿勢
とはいえフランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相は中国との関係には(それぞれに問題を抱えながらも)長続きのする姿勢(sustainable manner)で臨もうとしているようにも見える。対照的なのが英国政府の姿勢で、対中関係というと、政策面では「強硬な言語:tough rhetoric」が目立ち現実的な対策を語ろうとする姿勢に欠ける。
中国にとって「外交」とは「同じような姿勢」ではなく「異なる利害の合流」を追求する行為であると考えられている。
外交政策において、フランスやドイツと異なり、英国の場合はアメリカとの「価値観の共有」を必要不可欠なものとしている。「特別な関係:special relationship」から「インド・太平洋圏への傾斜:tilt to the Indo-Pacific」のような言葉遣いがそれを表している。その結果、人権・香港・ウクライナ戦争のような問題をめぐって英国と中国は衝突を繰り返してしまう。
中国および「グローバル・サウス」と呼ばれる国々にとって、外交とはお互いの「利害のすり合わせ:confluence of interests」であって「似た者同士の利益追求:relentless pursuit of likeminded-ness」ではない。実はこの部分が英国とNATO加盟国との間で理解が進まないところなのだ。 |
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価値観に拘ろう
英国に誕生する新政権が認めなければならないのは、外交における意識上の不調和というものの存在であり、政策の決定に当たっては英国自身およびその同盟国ではなくて「中国側の発想:Beijing’s perspective」をも考慮に入れなければならないということだ。
だからと言って、英国がこれまでにこだわってきた価値観のようなものを捨て去れと言っているのではない。いずれにしても、いわゆる「西側」ではない国々との「外交」にあたって英国の姿勢はより「洗練」されたものにならなければならないということだ。
- 英国と中国との付き合いは、英国自身の国としての力量や改革能力を冷静に計算したものに基ずくものでなければならない。主としてサービス産業に依拠する国は、中国から完全に孤立してしまうことはその国自体の生産性と繁栄に支障をきたすことになるだろう。The UK’s future dealings with China must be based on a hard calculation to strengthen Britain’s own national power and innovation capability. As an economy largely based on services, total isolation from Beijing is likely to harm the UK’s own productivity and prosperity.
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▼確かに英国人と中国人では「人間」が少し違うように見えません?ただ…共通点もある。プラグマティズムです。おそらくロシアにはそれがないのでは? |
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4)再掲載:極東ロシアの北朝鮮奴隷
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今から18年前に発行した「むささびジャーナル82号」には<極東ロシアの「北朝鮮奴隷」>という記事が掲載されています。フランスの国際問題誌 "Le
Monde Dilomatique:LMD"(英文版) の2006年4月号に掲載されていた記事を紹介したものです。記事の見出しは "North
Korean slaves"(北朝鮮の奴隷たち)となっているのですが、当時のロシアが北朝鮮からの出稼ぎ労働者を奴隷のようにこき使っている様子を報道している。記事の英文版はここをクリックすると読むことができます。当時のロシアはプーチンが第2代の大統領を務めていたようです。 |
北朝鮮の奴隷たち
むささびジャーナル82号
Le Monde Diplomatique April 2006 |
韓国・朝鮮人のことをロシア語でKoretskyというんですね。最近、Le Monde Diplomatique(英語版)のサイトを読んでいて分かりました。LMDの記事はAlain Devlpoという記者が書いたもので、極東ロシアにおける北朝鮮労働者の実態レポートです。記事のタイトル「北朝鮮の奴隷たち」とあるように、北朝鮮から職を求めてきた人々にとって現実はかなり厳しいようです。
ハバロフスクの北にあるアムール地方には森林がたくさんあり、北朝鮮からの労働者はこれらの森林からの木材切り出し人として働くケースが多い。何せ極東ロシアはロシア全体の33%という面積を占めているにもかかわらず、住んでいる人の数という点ではロシア全体の5%にすぎないのだそうです。だから森林の伐採作業についても働き手を見つけるのが大変なわけです。
この記事によると、20世紀において、北朝鮮から極東ロシアへの労働移民の歴史は3つの段階に区切ることができるそうです。第一の波が起こったのは第二次世界大戦終了と朝鮮戦争の終わりという時期で、ウラジオストックなどにおける魚の処理工場を中心に働いていた。その当時で約25000人の北朝鮮労働者とその家族がソ連に住んでいたのだそうです。 |
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第二の波は1966年、ソ連のブレジネフと北朝鮮の金日成がウラジオストックで行った秘密会談の後に起こったとされています。この会談で、北朝鮮がソ連の森林伐採事業を助けるために年間15000~20000人の労働力を提供することが約束された。当初はこれらの北朝鮮労働者の多くが、囚人であったそうです。
第三の波は現在起こっているわけですが、これはロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正日との間の会談に関係がある。ロシアがまだソ連であったころに北朝鮮に対して支援の名目で行った貸付について、金正日が自国の経済状態を説明して債務の帳消しを求めたのに対するプーチンの答えは「問題外」という冷たいものであったそうです。そこで北朝鮮としては、借金返済の代わりに労働者を送り続けると約束せざるを得なかった。
ただ最近の北朝鮮からの労働者は囚人ではなく、職を求めてくる普通の人々で、年間約1万人の北朝鮮人が労働ビザを発給された合法的の労働力です。ただそのような合法労働者がどのような条件下で働いているかについては、秘密のベールに覆われているのだそうです。 |
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LMDのAlain Devlpo記者は極東ロシアにいる韓国のキリスト教の牧師さんから聞き出したハナシによると、森林伐採の労働キャンプで働く北朝鮮労働者の労働時間は一日16~17時間、休みは新年、金日成および金正日の誕生日そして北朝鮮労働党の結成記念日を含めて、1年に1週間。それから労働ビザでロシアへ来るためには、結婚して家族がおり、しかもその家族は北朝鮮に残していくことが条件になるのだとか。Alain
Devlpo記者にハナシをした牧師さんによると、これらの家族は、一種の人質とされるのだそうです。 |
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▼現在のロシアにおける森林伐採は民間企業がビジネスとしてやっているのだそうで、ロシアの森林からとれた木材でも、ベストの品質のものはロシア国内で売られ、中くらいの品質のものは北朝鮮へ行き、残りは中国と日本へ売られるのだそうです。
▼2006年4月14日付けの朝日新聞に「ロシアの森 中国特需」という記事が出ていました。中国はとにかく大量の木材をロシアの森から買っているのですが、実際の購買量や販売経路などに不透明な点が多く、「盗伐」の報道さえもあると報道されています。で、朝日新聞の記事によると、日本で使われている割り箸の90%が中国からの輸入なのだそうですが、中国の業者が安いロシア材を使って安く輸出している。ただ中国の輸入増大でロシアの原木の値段も、1立方米60ドルだったものが100ドルにまで上がってしまったのだそうです。ちなみに割り箸の原料はシラカバなんですね。 |
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5)どうでも英和辞書
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hangry: 空腹で機嫌が悪い状態 |
Cambridgeの辞書は "hangry" という言葉の意味を
- becoming angry because you are feeling hungry
と説明しています。形容詞です。
- People often get hangry when their blood sugar level is low. 人間は血液中の糖分が少ないと
"hangry" になることが多い
のだそうですね。
ネット情報(日本語)によると "hangry" は "hungry" と "angry"
を組み合わせた単語ですが「ちゃんとした辞書にも載っています」と書いてある。聞き分けが難しいけれど、"hungry" は日本語の「ア」の母音ですが
"hangry" は『日本語にない「ア」と「エ」の間の母音』なのだとか。下のものはアメリカのワシントン州にあるレストランのロゴです。
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6)むささびの鳴き声
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▼2024年も本日で半分終わったのですよね。むささびにとって、この前半分はいつもと少し違うものだった。むささびが暮らしている埼玉県飯能市という街にとって「西武ライオンズ」というプロ野球チームは文字通り「地元球団」という感じだった。なのに、です、6月30日現在、ライオンズはパ・リーグで23勝46敗1引分けで「ダントツ」の最下位を走っているわけ。
▼AERAdotというサイトに、そのライオンズ不振の最大の責任者(とされる)松井稼頭央監督のことが出ていました。1975年生まれというから、むささびよりも34才若い…。野球の名門・PL学園の出身で甲子園でも活躍して…要するに普通の人間には全く手の届かない世界で生きている。「PL学園」という名前は聞いたことがあったけれど、あえてウィキペディアにお世話になると、この学校は「大阪府富田林市にある男女共学の私立中高一貫校」なのですが、宗教団体・パーフェクト
リバティー教団本部敷地内に立地しているのですね。Perfect Liberty の略でPL…か。知りませんでした。今シーズンはチームの成績不振の責任をとって、松井さんは早々とクビになってしまった。しゃあないよね。
▼というわけで、今号の「鳴き声」は、このあたりで止めておきます。お元気で! |
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