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013 あるがままのフィンランド?

現在、東京・新宿のオゾン・リビングセンターというところで「静けさのデザイン:現代フィンランドデザイン展」という展覧会が行われています。先日そのオープニング・レセプションに参加してきました。フィンランドの若手デザイナー、15人の作品が展示されています。椅子・電話機・寝袋など様々なのですが商品化されたモノのデザイン展というのではなく、商品化以前のまだ「芸術」の段階におけるデザインの展示といった感じです。

私、この種の芸術的展覧会なるものにはさっぱり弱いのですが、「静けさのデザイン」が変わっているのは展示されている作品をデザインした15人のデザイナー全員が展覧会の会場にいたということです。モノだけではなくて本人たちがいたということです。レセプションのスピーチでもそのように言われていた。

この催しは、日本・フィンランドデザイン協会という組織の主催によるものなのですが、スピーチの中でこの協会の日本人の幹部が面白いことを言っていました。「これまでフィンランドの芸術や文化を紹介する催しをやろうとすると、どうしても”日本人に受ける”ということに重点が置かれてしまい、本当のフィンランドらしさが消えてしまうことが多い。この展覧会は内容の企画からディスプレーまで100%フィンランド人に任せたものです」というわけですなるほどそれで15人のデザイナーは、作品を会場に並べるために全員が来日したわけだ。つまり作品のみならず、それらの並べ方もフィンランド人がフィンランド人の好きなようにやった。つまり「純粋フィンランド」というわけです。

このスピーチが何故面白いと(私が)思ったのかというと、殆ど30年もの間、外国を日本に紹介する「広報」の仕事をしてくるなかで「日本人にうけるやり方」と「本当の姿」の間にあるギャップがいつも問題になっていたからです。例えば英国の場合でいうと、「ガーデニング」とか「優雅なお茶の時間」などをテーマにすると日本人に受けるので、百貨店における商品販売などもそのようにやることが多い。フィンランドの場合だと、これが「ムーミン」であり、「オーロラ」であり、「森と湖」なのだそうです。

このような「受けねらい」の問題点は、その国に対して極めて現実とは程遠いイメージをふりまいてしまって、相互理解にはおよそ繋がらないということです。日本を紹介するのに「芸者・フジヤマ・サムライ」(さすがに現在ではそれはないか?)では、この国で毎日暮らしている我々としてはちょっと悲しいというのと同じです。

東京・新宿でやっているデザイン展は「100%純粋・フィンランド人が考えるフィンランドです」というのがそのスピーチの趣旨でありました。なるほど・・・駐日フィンランド大使も「あるがままのフィンランドを知ってもらいたい」という趣旨のことを言っていた。日本のマスメディアに登場するフィンランドは「小さいながらも情報技術などが発達した面白い国」というイメージが強いようです。

確かに面白い国には違いないと思うのですが、少しいいことずくめで描かれ過ぎている気がしないでもない。そのように描かれすぎていると「あこがれ」の対象にはなるかもしれないけれど、対等に付き合っていけるパートナー感覚のようなものはなかなか生まれないのではないかと思ったりもしています。 それはともかく、「静けさをデザインする」というこのちょっと変わった展覧会は10月28日までやっています。(2003.9)

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