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014 酒飲みの国における下戸の悲哀

Teetotallerという英語、知ってます?「禁酒主義者」という意味なのだそうですが、私は知りませんでした。つい最近のフィンランドの日刊紙Helsingin Sanomatに出ていたTeetotallerによるエッセイを読むまでは。「フィンランドの忘れられた少数”民族”:禁酒主義者」というタイトルのエッセイで、アルコールを飲まないのはどこかおかしいと思われてしまうフィンランド社会における「飲めない(飲まない)人間」の悲哀が淡々と書かれています。以下はその要約。

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禁酒主義者(Teetotaller)って何?という問いに対する答えは国によって異なる。例えばイスラエルでは宗教的な儀式の一環としてアルコールを飲む人でもTeetotallerであり得るし、ポーランドの場合、ウォッカさえ飲まなければ禁酒主義者に数えられる。フィンランドの場合は「過去1年間アルコールを口にしたことがない」人はTeetotallerであるとされる。 で、私はというとこれらいずれの条件もクリアする禁酒主義者である。一滴のアルコールも飲まないのだ。理由は?と聞かれても「飲みたくないから」と答えるしかない。

私のような人間はフィンランドの全人口の10分の1なのだそうである。つまりフィンランドにおけるスェーデン語人口と同じようなマイノリティなのであるが、我々の場合、声高に権利主張をするわけでないし、特別待遇を求めるわけでもない。世の中の邪魔になりたくないと思っている「静かなるマイノリティ」である。

パーティーとか夕食会に出席すると、いろいろと質問されてうるさい。

「何故飲まないのか?」「飲みたくないから」
「ご家族の中にアルコール中毒の人でも?」「いません」
「味わってみたことある?」「いえ」
「味わったこともないのに、味が分かるの?」「分かりません」

という具合である。

ところで過去30年間、フィンランドにおいてはTeetotallerの数が劇的に減少しているのをご存知であろうか。1968年の調査では、男の下戸は全体の12%、女の下戸は40%であったのに、現在では男が8%、女にいたっては9%にまで下がっているのである。最近、ヘルシンキ大学の教授がTeetotallerの調査を行ってその一般像を発表した。 それによるとTeetotallerは何故か新興住宅地に多く、女性の場合は50から上が多い。女性の場合「お酒を飲むのはよくないこと」と宗教的な確信めいたものを持っているのに対して、男の場合は「飲まない方が金がたまっていい」という実利をあげることが多い。

フィンランドでは「アルコールをやらない」ということが極めて変わったことのように思われている。先日などはそれが理由でラジオに出演したくらいなのである。私が変人であるのかどうか、確認したかったらしい。酒を飲まない人生など退屈なのでは?と聞かれることが多いけれど、酒を飲まないと人生が退屈であるとするならば、毎日飲んでいなければならないではないか。

Teetotallerであることで損をしている部分は絶対にある。例えば何か過ちをしてしまった場合、飲む人の場合は酒のせいにすることもできるが、我々の場合はそれがきかない。飲む人が二日酔いで会社に遅れたり、仕事がはかどらなかったりすることはしょっちゅうあるのに、Teetotallerにはそれがない。にもかかわらず給料は同じなのだ。酒飲みに比べると飲まない人間の方が、体が健康であることは間違いないにもかかわらず保険料は同じというのもおかしい。

最近ではいろいろな人々がそれなりの食習慣というものを主張するようになっており、ベジタリアンとかダイエットなどが尊重されている。パーティーなどでもホストがゲストに「食べられないものは?」と聞いたりすることが増えている。が、誰も「この中にアルコールがだめという人はいますか?」とは聞いてくれない。

この新聞がレストランのウェイター、ウェイトレスを相手にアンケートをとったことがある。「気に入らないお客のタイプは?」という質問に対してTeetotallerがあげられており、その理由が「彼らはオレンジジュースだけでは満足しないから・・・」というものであった。アルコールについては何十種類ものドリンクが用意されているのに、Teetotallerが「オレンジジュースしかないのか」と文句を言うと「傲慢だ」と言われる。これはどう考えても納得がいかない。

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ざっとこのような内容であります。ちなみに私(むささびJ)もTeetotallerとはいかないまでもアルコールにはからっきし弱くて、ビールをコップ一杯飲むのがやっとです。尤も一杯だけなら実際おいしいと思うのですが。フィンランドの人達と仕事をしていると、ちょっとしたパーティーだの「おしゃべりの会」程度の催しでも、あろうことかウォッカが出る。これはきつい。最後にフィンランドのTeetotallerにとっての朗報はというと、首相のマッティ・バンハネン氏がTeetotallerなんだそうです。よかったですね!

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