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004 労働感覚が変化している

前号と同じようにThe Information Society & Welfare Stateという本からの受け売りをしておきましょう。「情報化世界一」「福祉も万全」「若くて前向き」…結構ずくめのフィンランドのようですが、弱点も多々あることはいうまでもありません。

冬が寒くて長いという自然条件は言ってみても仕方ないこととして、情報化と福祉というこの本のテーマに沿ったフィンランドの問題点の一つに労働感覚の変化というが挙げられています。 フィンランドは80%以上がルーテル派のキリスト教徒なのですが、労働というものについての感覚が「聖なるもの」であると同時に「苦しいもの」であるという意識が強い。

この二つの感覚を併せると「労働の苦しさに耐えることは高貴なことだ」という感覚になる。ただこれは伝統的な労働感覚であって、情報化時代のそれはかなり違う。そこでは好きな仕事をエンジョイしてお金を儲けて「ランボルギーニを乗り回しながら」カッコイイ生き方を追求しようというわけです。これは労働を義務と捉え、慎み深さをモットーとするプロテスタント的な感覚とはとても合わない。

プロテスタント風の労働感覚では、給料は「刻苦勉励」の結果として得られる高貴な報酬ですが、情報時代の成功者にとっては給料よりも企業の市場価値のほうが大切であるということになっています。報酬はそれによって得られる株の儲けであるからです。情報化時代の成功者が国際的な環境で仕事をこなしているのに対して、昔ながらの「刻苦勉励派」は国内企業に多いことは言うまでもありません。

こうした二つのグループの間のギャップが開きつつあるというのが、この本の筆者の警告です。 尤も筆者は、フィンランドにはこれら二つのグループ以外に第三のグループが存在していることを前向きに指摘してもいます。この人たちは自分と社会を創造的に関係付けることに情熱を感じている人々で、筆者はこれらの人々のことを「ハッカー」と呼んでいます。私などはハッカーといえば、世界中のコンピュータの頭脳を破壊して喜んでいる犯罪者のことを言うのかと思っていたのですが、本来の意味は「創造的に自己発見することに情熱を持つ人々」のことを言うのだそうです。

彼らにとっては仕事とはこの自己発見(self-realisation)の手段であって、金儲けの上にこれが来るのだと筆者は言っています。こうしたハッカーによる社会的ハッカー主義(social hackerism)がフィンランドにとっての希望であるということです。
 

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