常日ごろから英国という国をウォッチングしていない人にとっては殆どどうでもいいような話題であるが、ブレア政権発足の頃に行われたイメージアップ作戦のスローガンがこれ。Coolというのはこの場合「モダン」「かっこいい」「若い」という意味で使われている。アメリカでは若い人の間で普通に使われているスラングのような言葉である。
外国人は英国を「古い国」「歴史と伝統と格式の国」と考えており'それは英国の産業や文化にとって好ましいことではない。クールな英国を宣伝することで新しい産業や文化も振興されるであろうし、将来の英国にとって大切なことである…というわけで、ファション、映画、モダンアート、デザインなどをより強く宣伝しようではないかということになった。政府を挙げてのキャンペーンであり、例えば東京の英国大使館にある大使公邸に飾られた絵画の類も古いものからモダンアートに取り替えられたし、受付けで使われるソファなどもモダンなものが使われるようになった。もちろん大使館の広報活動ももっぱらこのような英国を宣伝するものに重点が置かれた(今でもそれは変わりがない)。
しかしこのプロパガンダは難しい。日本人の英国観は比較的好意的なものが多いのであるが、大体において日本でもてはやされる英国というと歴史とか伝統などに対する敬意を表するといった類のものが多い。日本でよく売れる「英国本」の類も概ねそのようなのであるし、英国に行きたいという観光客も大半は田園風景とか貴族の館などを目当てに行くケースが多い。日本人が英国に求めるのは「落着いた社会」「古いものを大切にする人々の暮らす国」なのである。
またCool Britanniaキャンペーンに対する反発は英国内にもある。エコノミスト誌は「クール、クールと言い立てるほどダサイことはない」と言ってこれをからかったりもした。保守派の評論家などは「三流のいんちき文化」などと決め付けたりしている。 |
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