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むささびの鳴き声
006 グリーン同盟の会と「夢」らしきもの
2002年に英国大使館というところが主催して「日英グリーン同盟」という活動が行われ、日本全国の205ヵ所の町や村がこれに参加、204ヵ所に英国生まれのイングリッシュオーク(日本でいうとナラ)の苗木が植えられた(何故参加したのが205ヵ所なのにオークの植樹先が204ヵ所だったのかというと、沖縄には気候の関係で英国生まれの木は無理であるということで、シラカシという木が植えられたからだ)。

終わりがない・・・


この企画を提案・担当した私はこれが終わると同時に英国大使館を定年退職したのであるが、企画を進行しながら気になっていたのは「2003年以後どうするのか」ということであった。普通のイベントとかキャンペーンの場合、それが終了すると一応「おしまい」となるけれど、グリーン同盟の場合、木を植えるだけではなく、これを「育てる」という行為も含まれるのではないか、と私は勝手に考えてしまったのである。

日英グリーン同盟のアドバイザーとしてお世話になったCWニコルという人が私に「さあこれからは育てなければな・・・」と言ったことがある。植えただけでは不十分だというわけである。もちろん彼の言うとおりではあるのだけれど、私たち人間が何をどうしようとオークの木は育つか枯れるかしてしまう。ただ、少なくとも植えた私たちにもオークの成長を「見守る」ことはできるはずである。ということは「日英グリーン同盟」には終わりというものがないということである。

見守り・記録し・公開する・・・

しかしただ見守るだけでは、見守る個人のアタマの中に記憶として残るだけである。この際単に見守るだけではなく、写真として記録に残す方がはるばる英国から「拉致」されてきたオークに対する敬意というものである。で、ただ写真を撮影しただけでは個人のコレクションになってしまう。撮影した写真を公開することができれば、活動もよりパブリックなものになるはずだ・・・。

というわけで、各地の人々にオークの現状を写真で知らせて欲しいとお願いしたところ、約50ヵ所もの人々がこれに応じてくれた。有難いことである。さらに嬉しいことにそれぞれの場所でオークは無事に生きているようなのである。中には南国の夏にバテ気味のものもあるし、北国の冬を雪の中に埋もれて過ごしたものもあるが、とにもかくにも一応生きていてくれているようなのだ。

横のつながり作りを

これが「グリーン同盟の会」(The Green Alliance Club: GAC)の背景であるが、この「会」は今のところ私の個人的なプロジェクトである。事務局もなければ、会費・会則もない。何もないのであるが、オークの成長を記録する以外にもう一つ、私自身には夢らしきものがある。それは、私の呼びかけに応じて写真を送ってくれた人たち(私は勝手に「GAC会員」と呼んでいる)の間の「横のつながり」を作るということである。

「横のつながりを作る」と言っても、何をどうするのか分かっているわけではない。とりあえずはグリーン同盟の会のホームページを作って送られてきた写真を公開する場とすることにした。サイバースペースとはいえ「同じ屋根の下」という感覚が生まれるかもしれないなどと思ったりしているのである。「自分たちと全く同じ木が植えられている町が全国に散らばっていると考えるだけでも楽しいではありませんか」と言ってくれた「会員」がいるけれど、そういう人が少しでもいてくれると嬉しいと思っていることは間違いない。将来どこかのオークを見ながら「全国大会」でも開くことができたら楽しいことも間違いない。

個人の活動として・・・

最後に二つだけ。一つは「グリーン同盟の会」というタイトルのことである。「日英グリーン同盟」とは言っていない。木を植えて、その成長を見守るという楽しみは「日英」に限る必要はないからである。それから私の気分としてはこの「会」はあくまでも個人の「会員」によって成り立つということである。日英グリーン同盟に参加してオークを植えたのは「組織」ではあるけれど、その成長を見守り・記録するのは、それを面白いと思ってくれる「個人」であるということなのだ。上手く説明はできないけれど、これは案外大切なポイントのような気がするのである。