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むささびの鳴き声
029 「ぶらさがり」の説明責任

小泉さんが首相のころに、殆ど毎晩のようにテレビのニュースで立ち話風のインタビューをやっておりました。安部さんも同じようなことをやっている。こういう取材のやり方を、メディア用語で「ぶらさがり」というのだそうです。英語ではdoorstepと言います。英語については「ドアの外でちょっと立ち止まって取材に応じる」という慣習からきた言葉なのだろうと思いますが、日本語の「ぶらさがり」の語源は何なのだろうと思って、サイトをいくつかあたってみたけれど出ていませんでした。「ぶらさがり健康器」は沢山出ていたのですが。

それはともかく、現在、首相の報道担当者と内閣記者会なるクラブの間で、安部さんの「ぶらさがり」を一日に何回やるかでもめているそうです。小泉さんのときは、2回やっていたらしいのですが、それを安部さんになってから「一日1回」と言われてしまったクラブが怒って「これまでどおり2回にしてくれ」と要求しているらしい。「さもないと、安部さんを国会の廊下で捕まえてインタビューやったるで!」と言っているそうであります。

私、記者というのをやったことがないので、何とも言えませんが、読者・視聴者の立場からすると、あの種のインタビューを毎晩のように流す意味がどこにあるのか、さっぱり分からない。
「首相、靖国参拝はされるのでしょうか?」
「まあ、そのことについては総合的に判断しないとね・・・」
「郵政民営化に反対する議員については?」
「人それぞれだからね・・・」
「横綱・貴乃花については?」
「感激したね、あれは」
「皇室典範の見直しについては?」 
「いちおう専門家に検討してもらっていますからね・・・その結果を見てみないと・・・」
私、かつて「広報」の仕事をしておりましたが、広報マンにとって自分の仕事を評価してもらう最も効果的な方法は、自分の手がけた記者会見だのインタビューなどが、如何に沢山の新聞やテレビで記事になったり、放送されたりしたかを示すことでした。それを広告スペースの料金に換算するといくらになるか・・・PR会社はいずれもそんなことに血眼になっているわけです。

小泉さんの「ぶらさがり」は広報担当にとってはウハウハの大成功ですよね。テレビに流れる時間はせいぜい20秒ってところで、それほど詳しいハナシなどできるものではない。視聴者は殆ど首相が口をパクパク動かしているのを見るだけ。首相が一方的に自分のメッセージを流すと言う意味では、毎晩のように20〜30秒のテレビコマーシャルをタダでやってもらっているようなものですからね。それだけの電波をCMで買ってみなさい。数億、数十億円の価値がある。有難いじゃありませんか。CMの場合はオンエア料金以外に制作費がかかりますが、「ぶらさがり」の場合は、カメラマンから何から、みんなテレビ局が用意してくれるんですから。

結果として視聴者は、小泉さんについて「見たことある」という親近感を持つ。けれど彼の発した言葉は何も覚えていない。まさにコマーシャルですよね。

あんなものを毎晩流すより、一ヶ月に一度でいいから、30分〜1時間程度の記者会見をやって、しっかり質問して、しっかり答えるという放送・報道をして欲しいですよね。内閣記者会の人たちは、あんなものでも「ないよりはマシ」と思っているのでありましょうか?本当にあの「ぶらさがり」が彼らにできる最善なのだとしたら悲しいハナシですね。如何にメディアの側に力がないかということの証拠みたいなものですから。視聴料や購読料を払う、私のような視聴者・読者は「不良品」を買わされているようなものですからね。

メディアの人たちは、何かというと「首相は説明責任を果たしていない」と言います。二つの点でナンセンスです。一つはメディアが、首相に「説明責任」なるものを果たせる場を提供していない。だから文句は言えない。

次に説明責任を言うのなら、このような報道を流し続けていることについて、メディアの人たちがどのように思っているのか・・・そのことについての「説明責任」を果たして欲しい。「オレたちだって満足なんかしていないが、首相官邸が拒否するのだから仕方ない」なんてことは言わないでほしいですね。拒否されたのなら、「拒否された」と報道せんかい!首相官邸と内閣記者会が交渉しとるとこを放送したらええやんか!!カメラの持ち込みを拒否されるのであれば、官邸入口のところで守衛ともめるシーンを流したらええやんか!!!それが説明責任ちゅうもんや・・・と、何故か気がついたら関西弁だった。