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むささびの鳴き声
039 「イデオロギー」って何?

新聞・雑誌の記事にはしょっちゅう出てくるのに、私自身がどうしても使えないカタカナ言葉に「イデオロギー」というのがあります。「教育現場にイデオロギーを持ち込むな」とか「ネオコンとリベラルのイデオロギー対決」等など。似たような言葉に「思想」「哲学」「考え方」「価値観」などがあり、それなりに分かったような気がしており、自分が書く文章の中でも使ったことはある。でも「イデオロギー」だけはどうにもならない。

で、英国の新聞のサイトを見ていたらSimon Jenkinsという政治評論家がThere is no Blairism. An 'ism' needs a coherent set of ideasという見出しのエッセイを寄稿しており、「この世に"ブレア主義"というものはない。"主義"というからには"首尾の通った一連の考え方"が必要だ」というわけです。ひょっとすると、このismてえのがイデオロギーにあたるんだろうか?

このエッセイの中で、Jenkinsは"首尾の通った一連の考え方"について、「ある計画を一定の方向に持って行くだけの能力を有したイデオロギーのことを言う」(an ideology capable of driving a programme in a particular direction)と定義しています。Jenkinsが言いたいのは、ブレアさんが首相になる約20年前に首相になったマーガレット・サッチャーにはThatcherismというものがあって、ブレアさんはThatcherismを引き継いだに過ぎないということです。

サッチャーさんには、首相としての自分が、英国という国をどのような方向に引っ張って行こうかということについて、明確な考え方があったけれど、ブレアさんにはそれがなくて、その場その場で適当な言葉を使って切り抜けるというやり方で最後まで来てしまった(Blair in office has taken things as he found them, tootling along until the dying fall of his departure)というわけです。

この記事に見る限り、Simon Jenkinsはイデオロギーを「人々を引っ張っていくことができるだけの首尾一貫性を持った考え方」という意味として使っているようですな。つまりイデオロギーてえものは、どちらかというと政治の世界における主義・主張ってことなんですかね。だからvegetarian(菜食主義者)のような個人的な事柄における主義のことはイデオロギーとは言わない?

確かにブレアさんの場合、演説上手で人を惹きつけるようなところがありましたよね。でもあとからよく読んでみると、実は余り大したことは言っていないということがあった。「私は誰がなんと言っても、天地神明に誓って、一点の疑問の余地もなく、1+1は2であると申し上げたい!」という感じですね。このあたりのことについては、また別の機会に書かせてもらいます。 (2007.5.13)