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むささびの鳴き声
080 イングランドにて:アメリカ女性が英国に感じる「壁」@

Finstock村の村紙、Finstock Newsは隔月発行で発行部数は約500部。A4で8ページほどのスペースに、教会の牧師さんからのメッセージ、住民によるエッセイ、村の催しもののお知らせなどが結構びっしり入っています。もちろん広告も。各家庭に配達されているほか2軒あるパブ、それから1軒だけある何でも屋さん(village shop)にも置いてある。もちろん無料です。

Finstock Newsの編集長をやっているのが、アメリカはコロラド生まれのジョイ・マーフィーさんであります。年齢はあえて聞かなかったけれど、「現役引退の身」というのだから60過ぎってところなのでしょう。アメリカで巡り合って再婚した英国人の旦那さん、ニックとFinstockに住み始めたのが約15年ほど前のことです。Finstock Women's Instituteという村の婦人会の会合で、かつて存在した村の新聞を復活させようと提案したのが10年前。村の空き地を畑にしてご近所さんときゅうりだのネギだのを育てる、日本でいうと「日曜菜園」、英語でいうとallotmentで知り合った仲間たちも加わって発行にこぎつけた。言いだした本人ということもあって編集長にはジョイが就任。モットーは「グローバルに考え、ローカルに行動しよう」(Think globally. Act locally)で、要するに「自分の足元を見ながらも、空の彼方のことも考えて生きましょうよ」ということであります。

そのジョイに会ってぜひ聞いてみたいことがあった。それは「アメリカ人から見た英国、英国人」ということです。私、個人的にはアメリカにも英国にも知り合いがいて、彼らが日本について感じていることは話題になるけれど、彼ら同士がお互いをどのように感じているのかについては余り知らない。言語が同じということが大きな理由であると思うのですが、私の感じ方によると日本人、英国人、アメリカ人が一緒にいたとすると、英米人の間は距離が狭くて、日英・日米間は距離が大きい、二等辺三角形のような図式になる。

というわけでFinstock村のパブでランチを一緒にすることに。その際に彼女が10年ほど前にアメリカ人向けに書いたエッセイを持ってきてくれた。彼女なりの英国観が書かれています。まず「英国好きのアメリカ人」の典型について、第二次大戦直後に英国に駐留した米国軍人たちのことを挙げている。この種のアメリカ人にとって英国は「静かで丁寧、霧と雨の国」(quiet, polite island of fog and rain)」と映ったのだそうです。

しかし英国人がアメリカ軍人たちに対して抱いていた感情は、Over paid, Over sexed, and Over hereという言葉で表現される。金持ちで、セックス好き・・・そんな奴らがOver here(やって来た)というわけです。ジョイによると、その当時の米国軍人の行いが悪かったというわけではなく、「英国人たちが昔から持っている恵まれた者への抵抗感」(the English traditionally resent the better off)のなせる業であった。

また彼女の見るところによると、英国人はアメリカ人のことを「物質主義的で宗教純粋主義」(materialistic and Puritanical)であると考えており、それ以外にもアメリカ人については「微妙な文化やアイロニーが理解できない」、「極端にオープンかつフレンドリーで平等主義的」等々さまざまな否定的な見方をしている。おそらく英国人とアメリカ人は愛憎共存関係(love/hate relationship)にあるのであろうとのことであります。

実は先日、地元の英国人たちの昼食会に招かれて日本について話をする機会があったのですが、その中で私が日英共通の話題として「アメリカ」という存在があるとして、「私の知り合いのアメリカ人(ジョイのこと)が、英国人はアメリカ人のことを"物質的かつ宗教純粋主義"だと考えている、と言っていたけれど、それは本当か?」と聞いてみた。彼らの反応は「賛成!」が圧倒的だった。宗教的な純粋さはともかく、アメリカ人が「物質的」(成金的と表現した方が適切かもしれない)であることは間違いないのだそうです。

私と同じような年ごろの男性が「この国はアメリカに守ってもらうしかない。いやでもそういうことなのだから、どうしてもアメリカに対する見方はcynical(斜めに見るような態度)になってしまうのだ」とため息交じりに言っていました。
→081へ続く
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