むささびの鳴き声


home backnumbers uk watch finland watch green alliance
美耶子の言い分 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
104

涙はそっとしておけ

NHKの朝のニュース番組で、あるランドセル・メーカーが顧客向けのサービスとして、ランドセルを購入した親からその子供への手紙を預かり、購入の1000日後にこれを配達するというのをやっているというのを取り上げていました。「1000日後」ということは、その子が小学3〜4年生になったころという意味ですね。ニュースのポイントは、このほど東日本大震災のある被災者の子供宛てに母親からの手紙が届いたということにある。

3年前にその手紙を書いた母親は震災で亡くなり、受け取り手の女の子は父親と姉との3人暮らし。ニュースでは、その3人が待ち受ける中、母親からの手紙が届けられる。母親は二人の娘あてに書いていたのですが、カメラの前で手紙を朗読するお姉ちゃんの方は涙が止まらない・・・で、この手紙は亡くなったお母さんと娘たちの心をつなぐ宝物になっているというニュアンスでニュースはお終い。

あとから「ランドセル」「母親」「手紙」というキーワードで調べたら、いろいろな人があのニュースについて感想を書いており、私の見た範囲では「感激した」という意味のものが多く、私のように亡き母親からの手紙に涙する姉妹をカメラで写して報道することへの疑問を書いたものはありませんでした。

母親の手紙を配達するまではいいとしても、それをニュースとして扱う感覚が私には分からないわけです。テレビ取材を受けるについて姉妹や父親が何を想っていたのかはこの際問題ではなく、テレビ局の人は、自分たちの価値基準として、この父親と姉妹をそっとしておくということについてはどう考えたのだろう?この話題に限らずテレビの画面が「涙」を映し出すことに、私などは大きな抵抗感を持っているのですが、被災地の姉妹の涙に感激する人が少なからず存在するという現実に直面して自分の方が異常なのか?と思えて自信がなくなってしまった。[2011/9/25]