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沖縄防衛局長の「不適切発言」
2011年12月18日

前沖縄防衛局長のオフレコ不適切発言ですが、記者たちと酒を飲みながらの発言だったのですか?知らなかった。2011年12月8日付の毎日新聞の「発信箱:沖縄失言から何を学ぶか」に書いてありました。つまり酒が入ってつい口から出た言葉だったってことのようなのです。知ってました?私がメディアを通じて見聞した範囲では「オフレコの懇談」の場での発言のはずだった。つまりそれなりにマジな場所での発言ということです。酒を飲みながら「局長、ま、一杯」とか言いながら「ところで局長、例の沖縄の件だけどさぁ」と絡まれて、つい・・・だとすると、それを取り上げてキャンキャン騒ぎたてるのはアンフェアという気がしません?私はそう思うけど。

「発信箱」を書いた布施さんという記者はまた「報道機関たるもの、前局長の失言を女性への侮辱だ沖縄蔑視だと非難するだけでなく、では沖縄のために自分たちは何をしてきたのかと問うべきではないか」とも言っています。彼によると、日本のメディアはアメリカ政府には文句を言わないと批判する声もあるのだそうです。

この指摘は尤もだと思います。「犯す前に・・・」という発言を不適切だとしてメディアがいきり立ったお陰でこの役人はクビになってしまったわけですが、それが沖縄の人々にとってどのようないいことをもたらしたのでしょうか?この局長がクビになろうがなるまいが沖縄の人が米軍の存在に悩まされる続けていることに変わりはない。防衛大臣の「問責決議案」も同じことです。沖縄の少女が暴行されたのも、元をただせば自民党(と一部は公明党)が長年進めた沖縄政策のお陰で起こったこと。その事件のことを「詳しくは知らない」と言った大臣と自民党、どっちが本当に沖縄を痛めつけたと言えるのか?

政治家や役人の「失言」をメディアが追及し、お陰で非難された方がクビになったりした例はたくさんある。最近では「放射能こわいぞー」なんてのもありましたね。これも「不謹慎」というわけで、発言した大臣は辞任せざるを得ない雰囲気になったけれど、それを演出したのはメディアです。それによって「不謹慎な大臣」が追放されて「言論の力」の怖さが十分に発揮されたけれど、放射能問題そのものの解決には何の役にも立っていない。

「女は産む機械」発言を追及して大臣を辞職に追い込んだこともあった。あのときのメディアによる「けしからん」キャンペーンのお陰で日本の女性の地位が少しは上がったのか?手元に主なるメディアが作っている、あるクラブ組織の会員名簿があったので、東京で手に入る普通の新聞でこのクラブの会員記者が何人いるのか数えてみました(私もヒマ人ですね)。全部で437人だった。そのうち女性は17人、全体の3.8%です。在京テレビ局の場合は合計243人で女性は16(6%強)人だった。

もちろんこのクラブの会員名簿に出ているのは、メディアで仕事をする人の中でもほんの一握りの方たちです。肩書きをみると多くの方が「長」とか「委員」などがついており、社内でもかなり上の方の人たちであることが分かる。だからこのクラブの会員ではないジャーナリストには女性もたくさんいるのかもしれないけれど、この組織に限るならば、女性の割合は100人中4〜6人です。そんな世界に住みながら「女性蔑視」に非を鳴らすのですか!?

「原爆投下は仕方なかった」発言の大臣もメディアの袋叩きにあって辞めさせられました。でもメディアはこの大臣の発言の有無にかかわらずアメリカや世界に対して「原爆なんて許せない」と抗議でもしたのか?あの大臣発言の何十年も前に、記者会見という場で、天皇陛下が同じような「やむを得ない」発言をしたときに天皇を糾弾する論陣でも張ったのか?

というわけで、これらの政治家やお役人はメディアのリンチにあって消えて行ったけれど、あとに残るのは失言の対象になった状況には何の変化も進展もない虚しさだけ。メディアによる報道を目にし、耳で聴いて怒った、当事者ではない人々だけが溜飲を下げたかもしれないし、新聞やテレビは、それなりに存在感を示したつもりなのかもしれないけれど・・・。[2011/12/18]