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美耶子の言い分
028 ボランティアを遠ざけるボランティア課

私たちが暮らしている埼玉県飯能市(人口約8万)の市役所の中に市民生活推進課というセクションがあって、その中に「ボランティア課」という新しい課が誕生した。昨年4月のことだ。その役割は市民の中の個人でもグループでも、自分たちが飯能という町をあらゆる意味において住み良いところするために「自発的に」出来る事、やりたい事を前もって登録しておいて、需要ができたときに、早速それを提供できるようにしておこうというねらいで作られたものだ(と思っていた)。あえて「と思っていた」という部分をカッコに入れたのには理由がある。

私が外国人に日本語を教えるボランティアグループ、WING(We Introduce Nihon−Go)なるものを知り合い3人と作ったことは前にもむささびジャーナルで書いた。で、市役所にボランティア課ができると同時にWINGも登録した。実はボランティア課に登録したのはWINGが第1号であった。そこで実際の活動を開始するにあたり、その活動の日時などを知らせるポスターを市役所内の掲示板に貼ってもらおうとしたのだが、断られてしまった。その理由は「ひとつ貼るのを許すとウチもウチもと沢山きてしまうので・・・」というものだった。心底ガッカリしてしまった。

市のボランティアネットに登録したグループなのに、そのポスターを市役所の掲示板には貼れないと言うのだ。 個人が営利のために経営する塾のポスターを市役所の掲示板に貼れというのは無理があるかもしれないが、WINGはそのようなものではない。どころか市役所が新設した(つまりこれから市として盛り立てていかなければならない)ボランティア課に登録したばかりのグループなのだ。その我々のポスターを貼るについて「ひとつ貼るのを許すと・・・」というのである。

どうにも我慢ができなくて、市長の秘書という人物に電話で文句を言ったところ「担当者と十分検討してお答えしますので、しばらく時間をいただきたい」というものだった。これが今から約4週間前のことである。 つい最近、その秘書という人から私に電話がかかってきたのであるが、その人が私に伝えた「市役所からの回答」には、あいた口が塞がらなかった。「担当者と話し合った結果、今後市民のボランティアに対して市としてどのように対応していくかを文書にしていくことにしよう、というところまで決まった」というのである。

私が市役所に伝えたのは「ボランティアとして認めた我々の活動を知らせるポスターを役所の掲示板に貼れないというのはおかしい」ということであって、それについての回答を求めていたのに「ボランティア課の仕事について市民に説明する文章を作ることにしようと決めた」というのである。文章を書いたのでもないし、文章の内容を決めたのでもない。「文章を作ること」を決めたというのである。

私が電話をしてから4週間後に決めたのがこれであったのである。 市役所というところが、私たちのようなボランティアに対して、何ができるのか、何をすべきなのか、ということさえも明確にしないままにボランティア課なるものを開設したことになる。自分たちが何をやるのかも知らずにセクションだけ作ってしまったということである。市役所の人間と話していてお腹が空いている時に器だけで中身が入っていないお弁当を貰ったような気分だった。

最近、新聞などでボランティアとかNPOという言葉を非常にしばしば見かけるようになった。例えば外国人に日本語を教えて飯能になるべく楽しく暮らしてもらうというのは「公共のための自発的奉仕活動」であり、そのような市民が沢山暮している町というのは、おそらくとても暮しやすい町であろうと思う。私たちもそのつもりであったのであるが、市役所の対応は「(ポスターを)一つ貼るのを許すと、ウチもウチも沢山来て対応ができなくなる・・・」というのである。これを別の言い方に翻訳すると「あんたら(市民)の言うことなどいちいち聞いているわけにいかない。何故ならそれをやるとあんたら何をやらかすか分かったものではないからな」ということになる。

ボランティアが沢山来て、ポスターを貼ってくれというのはむしろ有難いことではないか。それだけボランティア活動が盛んであるということなのだ。どうしても貼るスペースが限られているのであれば、掲出期間を限るということもできるし、もっと言えばとてつもなく大きな掲示板を作ればいいのである。そこに何百というボランティアが思い思いのポスターを貼ることで、大いに盛り上がるではないか・・・というようなことは言ってみても分からないのであろう、飯能市役所の人たちには。何せボランティア課の役割を説明した文章を作ろうと決めるまでに1ヶ月もかかる人たちなのだ。(2004.2.22)