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美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
musasabi journal
第132号 2008年3月16日

   


お元気ですか?関東は暖かくなりましたよ、本当に。もうプロ野球が始まるのですよね。さすがにウグイスはまだのようでありますが、梅は「しっかり」というか「ひっそり」というか、健気に咲いております。梅はいいですね。イチバンに咲くのですから。サクラのウキウキ気分もいいけれど、健気じゃないな。だいいちあっという間に散ってしまう。梅がいいですね、やはり・・・。

目次

1)"JAPAIN"と岩國さんの怒り
2)私立学校は割に合うのか?
3)「おとな扱い」って何?
4)サッチャーさんの入院に想う
5)短信
6)むささびの鳴き声

1) "JAPAIN"と岩國さんの怒り


民主党(日本のです)の岩國哲人・国際局長(Director of the International Bureau)が、最新のThe Economistの「投書欄」に投稿されて、この雑誌が最近行った日本特集について文句を言っております。The Economistの特集記事については、前回のむささびジャーナルでも紹介させてもらいました。「日本経済が停滞気味であるのは、自民・民主ともに古い勢力を抱え込んで身動きができないでいる政治が悪いからだ」というのがメッセージだった(と思う)。詳しくは、むささびジャーナル131号の「日本という痛み」という記事をご覧ください。また、The Economistの記事の全文を読みたい方はお知らせください。

で、岩國さんの投書ですが、The Economistの記事が、日本の経済的停滞は、民主党にも責任の一部はあるとしている点について「道路特定財源に光を当て、防衛省のスキャンダルを暴き出したのは民主党だ。それなのにそのことについては全く触れていないのは"遺憾"だ」(DPJ has highlighted issues such as petrol taxes going to a special fund for road construction and exposed scandals at the Ministry of Defence. It is regrettable that you never touched on these)と指摘しています。

岩國さんはさらに、The Economistの日本特集のタイトルが怪しからんと怒っている。JAPANのPとAの間にIを入れてJAPAINとした、あのタイトルです。私の印象では、岩國さんはこちらのことを言いたさに投書したのではないかと思うので、この際、その部分だけ全文紹介してみます。

さらに、私は貴誌アジア版の表紙にある"Japain"というタイトルに対して強く反対するものである。Japanはわが国の正式な名前であり、国連を初めとする国際機関にも登録され、認識されているのだ。貴誌が、わが国の名前を"pain"(痛み)と連結させたことは、全くもって無礼なことである。貴誌は、尊敬されるわが国の名前を表紙でからかったのであり、これはアジア全域のニューススタンドで売られる雑誌なのである。こうした行為は国旗を焼くのに等しい行為であり、道義上も許されず、思慮に欠けた行為である。国の名前はこのように扱われるべきではない。Furthermore, I strenuously object to the title on the cover of your Asia edition, "Japain". Japan is the official name of our nation, registered and acknowledged by the United Nations and other international bodies. It is completely outrageous that you combined the word for our nation with “pain”. You made fun of our respected nation's name on a cover that is sold on newsstands all over the region. This conduct is equal to burning a national flag, which is base and inconsiderate. No nation's name should be treated like this.

▼JAPAINという見出しは、岩國さんの言うほど「許しがたい」ようなものですか?アナタもそう思います?このタイトルを見たとき、私は単なる言葉遊びとしかとらなかった。私の方がどうかしているのでありましょうか?The Economistのこの記事は、いくつかの新聞でも取り上げられていたはずです。でも私の記憶では、このタイトルを侮辱だと考えるような記事にはお目にかからなかった。

▼それから「道路特定財源に光を当て・・・」の部分ですが、岩國さんとしては「民主党は(自民党に比べれば)よくやっとる。そのことについては何で書いてくれまへんのや!」と言いたいのですよね。でも、The Economistが言っているのは、政党の仕事は、ライバル政党やお役所のスキャンダルを暴くことではなくて、ちゃんとした政策を提示して、それを遂行することだってことです。民主党は、いつまで相手のスキャンダルを暴いて喜んでいる「野党」であり続けるつもりなのだ、というのもThe Economistのメッセージのように思えます。

▼ただ、The Economistの特集は別にして、私がかねてから感じているのは、日本の新聞、テレビなどでは余りにも野党の意見や言い分が無視されすぎているってことです。民主党が、何故ああまで武藤さんという日銀総裁候補に反対するのか。それを民主党なりにきっちりと説明する機会を与えていない。そのくせ福田さんのインタビューは毎晩のように放送されるし、自民党の派閥の動きなどは詳しく伝えられる。アンフェアだと思う。

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2) 私立学校は割に合うのか?


これまでの英国社会において、優れた人格教育の場として機能してきた私立学校が、最近では「いい大学へ進学するために必要な試験でいい成績をとるための機関」になっているという記事が、The Economistの3月1日号に出ていました。私自身は英国に留学したこともないし、子供が英国の学校へ通ったわけでもないので、実体験として英国の学校教育の良し悪しを知っているわけではないけれど、The Economistのこの記事を読んでいると、自分の子供たちには、いい教育を受けさせたいという切実な願望のために、親がタイヘンな犠牲を払っているということでは、どこかいまの日本とも共通していると感じてしまったわけです。

この記事によると、英国で私立教育を受ける子供たちは全体のわずか7%。かつてのように名門ファミリーの子弟だけが通うわけではないけれど、公立に比べると学費が非常に高い。4才から始まる小学校から16 才で終わる中学校まで私立でに通わせるために要するお金は、約17万ポンド(約4200万円)だとか。1年平均で1万ポンド以上(約300万円)かかることになる。これは寄宿舎ではなくて、自宅通学する生徒の学費です。

昔に比べれば暮らし向きが良くなったと言う英国人は多いけれど、(この金額では)私学教育を受ける子供たちの割合が20年前と殆ど変わらない(のも無理は無い)even though more Britons than ever before describe themselves as comfortably off, the share of children being educated privately is barely higher than it was two decades ago.

▼私の理解が正しければ、英国では公立の小中学校は学費なしだったと思うのですが・・・私立だと年間で300万円近くかかるのですか!?少し違いすぎませんか?

公立が無料として、親がそんなに高い学費を払ってまでして子供たちを私学に通わせるのは何故なのか?教育経済研究所(Centre for the Economics of Education)の調査によると、私立学校の出身者が生涯かけて手にする収入は、公立出身者のそれより35%も多いという結果が出ているのだそうです。またThe Economistの記事によると、国会議員の3分の1、貴族院議員の半分以上、有名ジャーナリストの半数以上、Oxbridgeの学生のほぼ50%、そして有名な弁護士の70%以上が私立学校出身だとのことで、要するに「私立を出ると職業的に尊敬されるような地位につけるということについては、殆ど変わっていない」(There is no sign that the elevator from independent schools to professional prominence is slowing)ということのようです。

では、何故、公立・私立の間にそのようなギャップが生じるのかというと、私学の方が圧倒的に教育環境がいいからです。それは例えば理科の実験道具が揃っているとか、生徒に対する教師の数が多いとかという意味での教育環境のことであって、かつてのように「礼儀」とか「リーダーシップ」などようなソフト面(soft skillsの教育)に優れているという意味ではない。教師の給料だって公立に比べればはるかに高い。

ここ20〜30年で、私立学校自らが、受験合格のための効率的な機械としての機能を果たすように変わってしまった。In the past few decades, private schools have transformed themselves into highly effective exam-passing machines.

というわけです。 公立学校に比べれば、とてつもない額の学費がかかるわけですが、後々の人生を考えれば、それだけの「投資」をする価値はあると考える親が多いということです。

ただ、私立学校の学費がこれまでのようなペースで値上がりしていくとすると、果たして私立教育がこれまでのように「価値ある投資」と見なされ続けるのかというのは定かではない、とThe Economistは言っている。子供を私立へ通わせる親の多くが住宅を抵当に入れて学費を捻出しており、その住宅自体のローンを併せると二重のローンを支払っていることになる。住宅価格の低下も考えられるし、銀行の貸し渋りだって出て来るであろう、というわけです。

一方、以上のような親とは全く違うやり方をしている人たちもいる。いわゆる白人ミドルクラスと呼ばれ、経済的には恵まれているのに、自分の子供をあえて「できの悪い地元の公立学校」(poorly performing local comprehensives)に通わせる人たちです。教育経済研究所がこのような親、124人とインタビューしたところ、子供たちはいずれも成績優秀で、Oxbridgeのような有名大学からも声がかかるという状態であったそうです。

こうした親たちは、子供たちに社会的にも人種的にも多様な教育体験を積ませることで、子供たちもよくできるようになるだろうと考えたのだ(They thought their children would do well being exposed to a more socially and ethnically diverse educational experience)

ということです。この子供たちが、親の影響もあってもともとアタマが良かったということもあるのですが、受け入れた学校の方が、彼らを大切なお客様として特別待遇をしたということもある、とThe Economistは言っています。教師がその子供たちには特に注意を払うとか、放課後の特別授業をするとかです。Oxbridgeのような有名大学への進学者が一人でもいれば、学校としての格が上がるし、全国テストの成績もあがって、公表される学校ランクでも下位にいなくてもすむということです。

高い学費を払わずに有名大学へ行けたのだから、これほどお得な投資はないとも言えますが、The Economistによると、このような両親は、学校の理事として活動したり、自分の子供の成績を常にウォッチしたりという具合に、それなりの努力は払わなければならないということです。

▼どこの国にも、出身学校による差別のようなものはあるのですが、この記事を読む限り、英国の親たちの努力は涙ぐましいですね。私の知り合いの英国人は、自分のお嬢さんを寄宿舎つきの私立学校に通わせているのですが「本当に素晴らしい」と言っている。その人自身は公立学校出で、自分には出来なかった学校生活を子供に与えている親としての幸せ感覚は強いようであります。

▼過去約30年間で、英国が家柄中心の階級社会から、財力がモノをいう消費者社会へと移り変わったことの反映なのでしょうね。昔のようなスパルタ式寄宿舎教育による「人格教育」に代わって、世の中に出て具体的に役に立つ教育の方が尊ばれるようになった。「嘆かわしい」という人もいるでしょうね。確かにお金持ちだけが東大に行けるというのは、国のあり方としては望ましいものではない。でも「家柄」が中心であるよりは、分かりやすいともいえる。そもそも戦後生まれの日本人には「家柄」なんて存在しないわけだから、その弊害さえも実は分からないのでありますが・・・。

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3)「おとな扱い」って何?

BBCのサイトによると、英国の親の半数以上(55%)が、自分の子供が11才(中学1年)になったら「もう子供ではない(childhood is over)」と考えているアンケートがあるそうです。少し早すぎるんでない?

英国では16才で義務教育が終わり、17才で運転免許がとれて、18才になると飲酒・賭け事が許され、選挙権が与えられる。つい最近までは、16才で喫煙オーケーだったのですが、これは18才に引き上げられた、とThe Economistが伝えています。また義務教育を18才修了にしようという計画もあるらしい。(日本では普通乗用車の運転免許は18才、選挙権・飲酒・喫煙が20才ですね)。

要するに英国では「おとな扱い」が早すぎるのかも・・・という反省があるようです。「おとな扱い」は、別の言い方をすると「ほったらかし」ということでもありますからね。

むささびジャーナルでも紹介したと思いますが、英国は、麻薬だの暴力だのにさらされる子供が非常に多いということで、国連のユニセフから「子供が育つのには先進国中、最悪の環境」という「お墨付き」をもらったことがある。で、やはり「ほったらかし」は良くないから、子供を守ろうというわけで、もう少し「子供」の期間を増やそうってことになる。

ただその一方で、英国(イングランド、ウェールズ)では10才の子供でも犯罪を犯すと起訴の対象になる。ヨーロッパ諸国の犯罪年令(criminal age)が14〜16才であることを考えると、英国は子供の犯罪に対して極めて厳しい国であると言えます。

The Economistによると、英国では、21才以下の若年服役者の数が非常に増えているのだそうですが、それは英国の若者が犯罪的であるというよりも、他国では大したことではないとされるようなこと(万引きとか夜中に道路で大騒ぎするとか)でも、英国ではビシバシ取り締まられている・・・つまり不寛容であるということのようであります。

面白いのは、若年犯罪に不寛容である反面、選挙権を現在の18才から16才にまで引き下げようかという動きもあるということです。Julie Morganという下院議員は、そのような趣旨の議員立法を提案しているのですが、彼女によると、義務教育の期間中に選挙で投票できるようにすることで、学校で習う社会科(citizenship)の勉強にもなるとのことです。The Economistによると、18才の投票率が極めて低いので、これを下げることで少しでも投票率を上げようというのが本音のようであります。

悪いことをすれば、10才でも刑務所行きとか16才で選挙権を行使とか、要するに英国では、どちらかというと「おとな扱い」の傾向が強いってことですね。ちなみに最初に挙げたBBCのアンケートをもう少し詳しく紹介すると:

  • 親の71%が、家庭で子供がアルコールを飲むことを許している
  • 親の45%が、ボーイフレンド・ガールフレンドの家に子供が宿泊することを許している
  • 16才以下子供の53%が夜11時を過ぎても自宅にいないことが許されている
  • 親の35%が、12才以下の子供がピアスをすることを許している
  • 71%の親が、最近の子供は権威を尊敬しないと考えている
  • 72%の親が、いまの子供は自分たちが子供だったころよりもはるかにいい生活をしていると考えている

    ▼最後の二つが「親の本音」かもしれない・・・。

    ▼日本では、20才になると成人式なるものをやるようでありますが、はっきり言ってあれは「子供扱い」の見本のようなものであります。やる「おとな」も「おとな」ですが、そんなものに乗っかる子供も子供ですね。そう言えば、憲法改正のため作られた国民投票法案では「18歳以上に投票権がある」と定められているんですね。

 


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4)サッチャーさんの入院に想う


BBCを見ていたら、あのサッチャーさんが入院したというニュースが流れていました。1925年生まれだから今年で83才。この人については、とてつもない量の本が出ているであろうし、万一のことがあったら、日本の新聞でもさぞや沢山の記事やコメントが出るはずです。「万一」を期待しているわけではないけれど、この際、むささびジャーナルでも何か書かせてもらっちゃおう。考えてみると、これまでにブレアさんのことは、いろいろと出てきたけれど、サッチャーについてはそれほど書かせてもらったことがないのです。

サッチャーさんというと、英国病と揶揄された国の経済を民営化、規制緩和、市場経済主義などによって立ち直らせた人物という定評が大きいのですが、Andrew Marrという政治ジャーナリストが書いたA History of Modern Britainという本によると、彼女自身、「私が政治の世界に入ったのは、この世の中に善と悪の対立というものがあるからだ(I'm in politics because of the conflict between good and evil)」と語っているとおり、実際には産業の民営化などということに興味があったわけではない。

1979年に首相になったサッチャーさんが語った次のような言葉が、サッチャーさんという人のアタマの中をよく表していると思います。

この政府の使命は、経済的な進歩を促進するということよりもはるかに大きなものがある。それは、この国の精神と団結心を新たなものとするということである。この国の新しいムードの中核に置かれなければならないのは、自信と自尊心を回復させるということなのだ。The mission of this government is much more than the promotion of economic progress. It is renew the spirit and the solidarity of the nation. At heart of a new mood in the nation must be a recovery of our self-confidence and our self-respect.

自信と自尊心の「回復」ということは、かつてあった状態に復帰させるということですよね。Andrew Marrによると、サッチャーさんが目指したのは、英国における社会道徳の復興であったとのことです。すなわち、しっかりした結婚関係、自立と貯蓄、自己抑制、よき隣人関係、そして勤勉さ・・・いずれも19世紀(ヴィクトリア時代)の英国を支えたとされる倫理観です。サッチャーさんが目指したのは、このような道徳心を基盤にした国作りということです。

彼女が最も影響を受けたのは父親だそうで、リンカンシャーという田舎にあるグランサムというごく小さな町の乾物屋さんをやっていた人です。ただこの父親は、単なる乾物屋の主人というだけではなく、非常に熱心なメソジスト派のキリスト教徒であると同時に、名誉市長をやったりする町の名士でもあった。

その父親の影響で、彼女も質素・倹約・刻苦勉励などの精神を強調したはずだったのですが、彼女の政策の結果として起こったことは、全く違っていた、とAndrew Marrは言います。

サッチャリズムの時代を特徴付けたのは、かつてないほどの消費熱であり、クレジット文化であり、富を見せ付けることであり、手軽な金儲けであり、性的な自由快楽主義などであった。自由とはそいういうものだ。人間を自由にした途端に、何のための自由であるかが分からなくなってしまうということだ。Thatcherism heralded an age of unparalleled consumption, credit, show-off wealth, quick bucks and sexual libertinism. That is the thing about freedom. When you free people, you can never be sure what you are freeing them for.

Marr記者の「自由」論は面白いですね。サッチャーとしては、労働党流の面倒見のいい大きな政府から英国人を「自由」にすることによって、「自立した質素で勤勉な」個人を基盤にした国にしようと思っていた。なのにそうはならなかった。ビクトリア時代の古きよき英国を復活させるつもりだったのに、「金がものを言う」アメリカみたいな社会を実現してしまった。メチャクチャ単純化するとこうなりますね。

熱心かつ素朴なキリスト教徒であったサッチャーが、どういう経過を経て「市場経済」主義者になっていったのかを語り始めると、本が一冊書けてしまう。私にはその能力はない。亡くなった森嶋道夫さん(ロンドン大学教授)は『サッチャー時代のイギリス』(岩波新書)の中で、

禁欲ーー勤勉と質素ーーが近代資本主義の母であり、メソジストはそのような倫理を鼓吹した宗教の一派である。17世紀の禁欲運動は「ピュリタニズム」と呼ばれているが、ピュリタンの諸宗派は、主として無産者や小資本家層に信徒を持っており、彼らは貴族的大商人や金融業=冒険商人層と対立していた。

と言っています。森嶋教授はサッチャーさんを「極端な赤嫌い(反共主義)と自分は常に正しいと信ずる傲慢さ」ゆえに非常に批判的に書いています。森嶋さんは、サッチャーさんが成功するためには、

ソ連との間に妥協点を見出して、東欧諸国の経済協力を進める必要がある・・・が、仮に彼女がこのような政策をとって「イギリス病」を治癒させることに成功しても、そのような治癒はおそらく一時的でしかありえないだろう

と予言しています。この本が書かれたのは1988年のことです。まだソ連は崩壊していない。しかし私が非常に面白いと思ったのは、森嶋教授が、サッチャリズムが成功しない根拠として引用したジョン・ウェズリーという人の次の言葉です。

宗教は勤勉と質素を生み、それらは富をもたらすが、富が増すとともに高慢、激情、現世への愛着が増して宗教心が枯れる・・・

ジョン・ウェズリーは、サッチャーさんが信奉したキリスト教メソジスト派の創設者です。森嶋さんが引用したこの文章は、「サッチャリズムの時代を特徴付けたのは・・・」というAndrew Marrの文章と一緒に読むと面白い。両方とも同じことを言っている。Andrew Marrの本は2007年に出たものであり、森嶋さんのそれは1988年に出版されたものです。

▼私の極めてつたない知識によりますと、近代資本主義といえばアダム・スミスですよね。その彼の思想を表す典型的な言葉として「人間それぞれが自己利益を追求していけば、やがては"神の見えざる手"によって導かれ、世の中すべてうまくいく・・・」という趣旨のものなのではないのですか?サッチャーも「欲を持つことの何が悪い(There is nothing wrong with greed)」と言ったはずです。つまり、資本主義や市場経済主義という考え方は、人間が本来持っている利己主義とか物欲のようなものを「社会」とか「政府」という名の下に押さえつけるべきではない・・・という考え方であると、私は理解しているのですが、違いますかね。

▼サッチャーさんが「社会」とか「政府」とか言う概念を非常に嫌ったのは、「人間が人間を押さえつける」という部分であったのだろうと、私などは解釈しています。"神の見えざる手"を信ずるキリスト教徒であるサッチャーとしては、人間の理性とか知恵とかアタマだけを信ずる社会主義だの共産主義だのは、とても許せないし、うまくいきっこないと考えていたのだろうと(私は)想像しています。

▼彼女は首相として「英国の何を変えたのか?(What have you changed about Britain?)」と聞かれて「なにもかも変えましたね(I have changed everything)」と答えたのも有名なハナシですが、いずれにしても、サッチャーさんという人は考える対象として、非常に刺激に富んでおります。それは間違いない。

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5)短信


葬式でストリップダンス

台湾のTaizhongという村に住むCai Jinlaiという男性が、このほど103才で亡くなった。で、息子のCai Ruigongさんが葬式をあげたのですが、父親の棺の前で約10分間にわたってストリップダンスをやるというものだった、とUnited Daily Newsという新聞が伝えています。もちろん息子がストリップをやったのではなく、プロのダンサー(女性)にお願いしたもの。何故、葬式にストリップかというと、亡くなったRuigongさんがストリップ大好き人間であったので、息子が「100まで生きたら、葬式でストリップをやってあげる」と約束したんだそうです。「父のストリップ好きは村中で有名ですよ。ストリップショーを追いかけて台湾中歩き回っていたんですから」と息子さんは語っています。(このニュースは、台湾の新聞が伝えたものを英国のPA通信が伝え、それをむささびジャーナルが伝えた・・・というわけで、中国語が分からないので、英文の地名・人名にしてあります)

▼ちなみにダンサーに払ったお金は日本円で約2万だったそうです。ストリップダンスですからね、棺の前とはいえ音楽はかけたんでしょうな。参列者も含めてヘンな雰囲気だっただろな。

ついてない銀行強盗

ポーランドのWroclawという町の銀行に二人組みの強盗が押し入った。出納担当の行員めがけて胡椒スプレーを吹き付け、係りが眼をくらましているうちに金をとって逃げ出そうという計画だった。が、運というのはあるんですね。出納係のちょうど後ろの壁にエアコン装置がかかっており、吹きつけたはずの胡椒スプレーが犯人に向かって逆流、二人とも涙とクシャミにむせびながら金もとらずに逃走。まだ捕まっていないのだそうです。

▼ガスマスクなど装備していなかったんですかね、この人たち。

ゴミ拾い中毒!?

イングランドのグロスタシャーで暮らすStan Stone氏(76才)には、妙な中毒症状がある。道にゴミが落ちていると我慢できずに拾い集めてしまう・・・悪いこっちゃないけれど、本人はこれを「中毒」(addict)と呼んでいます。「4年前に家内をなくして以来、何もすることなくて、道に落ちているゴミを拾い始めたら止められなくなって・・・」というわけで、空き缶40個、空き瓶30個、ハンバーガーの包み紙15枚、同じくバーガーショップで使われるポテトの袋が20枚、タバコの空き箱10個・・・というのが、1週間の平均だそうです。

▼集めたゴミは役所に持って行くのですがStan is one of our top menと感謝されているらしい。有難いじゃありませんか。どんどん中毒ってもらいましょう。

6)むささびの鳴き声


▼私のところに、たまに自民党の河野太郎議員事務所からメルマガが送られてきます。わりと面白いことが書いてある。最近の例でいうと、テレビなどが使っている「電波」の利用料金のことがありました。

▼空気中を飛び交う「電波」は国によって管理されており、誰でも勝手に使えないようになっている。 この電波の管理に必要な国の支出は平成19年度に653億円なのだそうですが、この653億円は、テレビ、ラジオ、携帯電話、アマチュア無線など、電波のユーザーに割り振って徴収するシステムになっているのだそうです。

▼で、河野さんが問題にしているのは、653億円の割り振り方です。何と「80%以上が携帯電話に割り当てられ、テレビ局とラジオ局合計で6%」なんだそうであります。河野さんによると「テレビ局は、携帯電話が利用する周波数帯域の1.4倍の周波数帯域を使っているにもかかわらず、電波利用料の負担は、携帯電話の80分の1にしかあたりません」ということになる。河野さんの数字によると、昨年度(平成18年度)の営業収益は、例えばNHKの場合で、約6756億億円、支払った電波利用料は1215億円。もっと凄いのがフジテレビで、営業収益が3778億円で、払っている電波利用料が3億1800億円なんだとか。

▼というわけで「国民の共有財産である電波の利用料金を引き上げて、それを社会保障などに充ててもいいのではないか」と河野さんは言っています。が、「残念ながら、この問題は、どこのテレビ局や新聞も取り上げてくれません」とも言っております。そう言われてみると、テレビの「キー局」と言われるところは、いずれも新聞社と関係があるのですよね。

▼今回もお付き合いいただき有難うございました。


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