5月3日付けのThe Economistが社説のトップにAngry
China(怒る中国)という記事を掲載しています。「キバを剥き出した中国に恐怖を覚えるべきなのは、外国だけではなく中国政府そのものでもある」(a
snarling China should scare the country's government as much as
the world)というイントロがこの記事のメッセージです。
過去30年間にわたる経済発展を背景にして、中国政府は一党独裁体制を維持することができたけれど、いまや中国の人々は、かつてなかったような経済的な繁栄を謳歌しているわけですが、その彼らはいまや「新しい夢(new
aspirations)」を必要としている。そうした夢を満たすべく、中国政府が行ったのは、中国が世界の出来事の中心を占める力として復活する(China
will be restored to its rightful place at the centre of world affairs)ということを中国人民に対して約束することだった。北京五輪はまさにその象徴であった。にもかかわらず、聖火リレーの混乱はそのプライドを台無しにするものとなった。政府が訴えたのがナショナリズムだった。
- 中国に対する西側のメディアなどによる攻撃はあるにしても、それに対する中国の怒りは度を越している。彼らの怒りは恐怖の反映でもある。それは、反感を持ち、脅威をも感じている西側諸国が中国の台頭を阻止しようと固く決意しているということへの怖れである。China's
rage is out of all proportion to the alleged offences. It reflects
a fear that a resentful, threatened West is determined to thwart
China's rise.
ただ、「政府を支持して人民が団結しているという見てくれは幻想でもある」とThe Economistは指摘します。中国は、インドと同様に、国内的な不平・不満で一杯の国(a
land of a million mutinies)でもある。例えば、地方の農民たちには共産党の地方幹部によって土地を取り上げられたことによる怒りがある。国内の大気汚染はひどいし、政府幹部の汚職にはうんざりしているという状況です。
このような中国に対して、西側の国々はどのように付き合うべきなのか?
- 西側の指導者たちには、中国の人権問題、チベット問題、その他の”微妙な課題"について憂慮の声を上げる義務がある。何もしないで諦めてしまう必要はない。時として圧力が効くこともあるのだから。Western
leaders have a duty to raise concerns about human rights, Tibet
and other “sensitive” subjects. They do not need to resign themselves
to ineffectiveness: up to a point, pressure works.
中国はスーダン問題でもビルマや北朝鮮の問題でも、「そこそこ」とはいえ役にたっており、それは西側からの圧力のお陰でもあるということです。圧力をかけすぎると、中国内部の穏健派が強硬派にとって代わられるかもしれないという悲観論もあります。それについてThe
Economistは、
- 仮に強硬派が勝利したとしても、30年にもわたって行われてきた開放政策を止めて、中国が中国と対立という状況になるとはとても思えない。even
if they did, it is hard to see how they could end the 30-year-old
process of opening up and turn China in on itself.
と言っている。要するに、中国はもう後戻りはできないだろうというわけです。後戻りができないのは中国とかかわる世界も同じことで、お互いに共存することを学ばなければならない(the
world and China have to learn to live with each other)わけですが、中国が学ぶ必要があるのは、国内問題とはいえ、外国が口を出す権利があり、それを尊重するということだ、というわけです。
中国は、外国からの批判に対して、国民を動員してコブシを振り上げさせるというのではない賢明な反応をする必要がある。それは中国が大国になるために必要なことであるだけでなく、今後の国内的な安定のためにも必要なことだ。中国政府は、国内的な不満を外国に向けさせることをするかもしれないけれど、国民の怒りというものは、収拾がつかなくなることもある。
- 中国の指導者たちは、最後には、国内の危険なムードをより強くするような要因である、官僚の腐敗や環境汚染、人権侵害などによって起こる国民的なフラストレーションと真正面から向き合わなければならないときが来る。国民がそのことを要求するようになるだろう。In
the end, China's leaders will have to deal with those frustrations
head-on, by tackling the pollution, the corruption and the human-rights
abuses that contribute to the country's dangerous mood. The Chinese
people will demand it.
というのがこの社説の結論メッセージで、イントロの部分とも一致するわけであります。
▼この社説の原文をお読みになりたい方はお知らせを。実は社説そのものもさることながら、ウェブサイト版に掲載されたこの社説への「意見」の書き込みの方がものすごい。掲載後1週間で1765件も投稿があった。面倒なので余り沢山は読めませんが、かなりの部分が中国人からの書き込みで、西側のメディアへの批判と怒りが中心です。これらを見ていると、中国のたちは他国や他者への「怒り」が生きがいなのかも?と思ったりもしますね。
▼アメリカという国も、何かというと外敵を作り上げて「団結」することで安定が保たれていると思わざるを得ない部分がありますよね。中国と似ていないでもない?
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