前回のむささびジャーナルの最後でちらっと触れましたが、今から2ヶ月ほど前に日本記者クラブで、東京外国語大学の荒このみ教授の話を聞きました。現代のアメリカで「女性」であることと「黒人」であることの意味というのがテーマで、大統領選挙のクリントンとオバマの候補者争いが話題になりました。荒さんとしては「オバマでもいいけれど、今回はヒラリーの方がいい」とのことでありました。が、どうやら荒さんの望みどおりにはならないようですね。
で、オバマが民主党の候補者になるとして、次なる話題は副大統領に誰を指名するのかってことですね。最近のThe
Economistの政治コラム、Lexingtonは「ヒラリーの副大統領は止めた方がいい」と言っております。
同じ党のライバル同士が正副大統領になってうまくいったケースもあることはある。1960年のケネディとジョンソン、1980年のレーガンとブッシュ(いまの大統領のお父さん)のコンビがそれ。一方が票を集めにくい層を、もう一方がカバーするというやり方で成功した例だそうです。今回の場合、オバマの弱点である「白人労働者階級」の票をヒラリー(副大統領)が集めるという理屈ですね。ついでに言っておくと、過去の副大統領の3分の1が、大統領に昇りつめているんだそうで、ヒラリーにもその気はある、とLexingtonは言っている。
しかし白人労働者階級の人気を集めるのはヒラリーだけではない。他にも有力な政治家がいる。それとオバマのもう一つの弱みである「安保・外交」についても、有力なアドバイザーは数多くいる(とThe
Economistは言っています)。
が、なんと言ってもオバマ・クリントンの「夢のコンビ(dream ticket)」の最大の弱点は、ヒラリー・クリントンという政治家が1990年代の「退廃政治」(noxious
politics)の体現者というイメージを持っており、「変革と希望」(change & hope)のオバマとはおよそ合わない。
さらにオバマとヒラリーの正副大統領が実現した場合、ワシントンの政府が機能不全(dysfunctional)に陥ってしまうとのこと。ビル・クリントンが大統領であったときに、「ファースト・レディ」を通り越して「大統領がふたりいる(co-presidency)」のように振舞ったヒラリーが、単なるシンボルとしての副大統領という地位に満足するはずがない。しかも夫のビルは、相変わらず自分が偉いと思っているし、Team
Clintonの支持者たちは、"オバマ教徒"を「うぬぼれ揃いの若造ども」(uppity
whippersnappers)」と信じ込んでいる。こんな二人とそれを取り巻くブレーンたちが、一緒に仕事などできっこない、というのがLexingtonの主張で、このコラムが挙げる有力副大統領候補は次の通りです。
- Ted Strickland:オハイオ州知事で、元メソジスト派の教会関係者だけに「宗教票」を取り込めるかも。
- Tim Kaine:バージニア州知事。やはり元牧師。
- Edward Rendell:ペンシルベニア州知事。アルバイト(?)にTVのフットボール中継の解説者をやったりしているので、白人の庶民には受けるのでは?
- John Edwards:副大統領候補になったことはあるし、オバマ支持を表明している。
で、5月24日のニュースによると、ヒラリーさんが、ある新聞とのインタビューの中で、自分が撤退しない理由について触れて次のように述べたとのことです。
このコメントの後半が問題になったわけですね。「暗殺」に触れることで、「ひょっとするとオバマだって・・・」とでも言わんばかりの発言だというわけです。ヒラリーさんは「私はただ、民主党の候補者争いが6月までずれ込んだことは過去にもあるということを言いたかっただけ・・・」と言っているのですが、何故あの暗殺に触れたのかとなると、はっきりしていない。
▼何だか知らないけれど、口がすべった?日本の政治家にはよくあるケースですね。
▼あるサイトを見ていたら、大統領選挙の資金集めのことが詳しく出ていた。それによると、オバマさんがこれまでに集めた資金は約2億6500万ドル、ヒラリーは2億1400万ドル、共和党のマケインさんは9700万ドルというわけで、オバマがトップ。オバマの場合、寄付は全て個人からで、その数ざっと150万人だそうです。オバマ候補の公式ウェブサイトを見ると、寄付金額がひと口15ドルから最高2300ドルまで、いろいろなオプションがあり、ネットを通じて簡単に寄付ができる仕組みになっている。
▼お金の話はともかく、オバマとクリントンの公式サイトに出ているスローガンは次のようになっている。
オバ マ
I'm asking
you to believe, not just in my ability to bring about real change
to Washington...I'm asking you to believe in yours...
私が皆さんにお願いしたいのは、ワシントンに真の変革をもたらすための私自身の能力を信じるだけではなく、皆さん自身の能力も信じてもらいたいのです
クリントン
Help Make
History! 歴史を作ることに手を貸して!
▼はっきり言って、この部分ではオバマの勝ちなのでは?ヒラリーの「歴史を作る」はいかにも抽象的ですね。オバマのは、「国がアナタのために出来る事ではなく、アナタが国のためにナニをできるのか・・・」という昔のケネディ大統領の演説に似ている。
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