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2008年12月21日 |
いくらなんでも、このようなひどい状況で年末を迎えようとは思いませんでした。もちろん不況のこと。さして言葉にこだわる方ではないのですが、こんな状態で「良いお年を!」なんて言いにくいですね。でも・・・人間、生き続けていくのですよね。2008年最後のむささびジャーナルです。よろしく。
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目次
1)英国・戦後首相の人気投票
2)英国版「派遣」ブルース
3)世界政府を考えるときが来た!?
4)英国の政治とジャーナリスト@:国会無視のつけ
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声
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1)英国・戦後首相の人気投票 |
BBCの人気ニュース番組にNewsnightというのがあります。BBCのサイトを見ていたら、Newsnightが視聴者を対象に、「第二次大戦後の英国で最も偉大な首相は誰か」という人気投票をやっておりました。27000人が投票したそうで、結果は次のとおりです。
1. Winston Churchill (1940-45/1951-55)
2. Clement Attlee (1945-51)
3. Margaret Thatcher (1979-90)
4. Harold Macmillan (1957-63)
5. Harold Wilson (1964-70, 1974-76)
6. Tony Blair (1997-2007)
7. Edward Heath (1970-74)
8. John Major (1990-97)
9. James Callaghan (1976-79)
10. Alec Douglas-Home (1963-64)
11. Anthony Eden (1955-57)
12. Gordon Brown (2007-) |
個人の主観による投票であることと、インターネット上での人気投票なのだから、投票者もどちらかというと若い人が多いのではないかということを考えると、あくまでも「お遊び」であって、英国の人々全体の意見を反映したものとはいえないかもしれない。しかし60年も前に首相だったWinston Churchillが相変わらずトップに来るという事実はどのように考えるべきなのでありましょうか? 学校で教わっているってこと?
Gordon Brown(現首相)が最下位にきているのは、現役であることの不利を考慮にいれる必要があるでしょう。それと、この人気投票は、現在の金融危機の前に行われたものなので、この問題へのBrownの対処の仕方への評価が考慮に入っていないことも考えたほうがいい。
いちばん面白い(と私が思う)のは、Margaret Thatcherの位置(第3位)です。彼女の前を行くClement Attleeは「ゆりかごから墓場まで」(from cradle to grave)という「福祉国家」を言い出した労働党の首相です。すぐそのあとに「福祉国家否定論者」のサッチャーさんが来るのですね。おそらく英国の人たちのアタマの中では、福祉国家が象徴する「コミュニティとしての英国」を推進した首相と「働かざるもの食うべからず」という厳しさを求めた首相の両方を支持するという矛盾が存在しているのでしょうね。
ちなみにClement Attleeはどちらかというと「党内融和」を図った首相として知られており、BBCによると「静かだが断固とした決意が称賛された(He was admired for his quiet, determined style)」のであり、サッチャーさんは「英国の社会と経済を改革したこと(transforming the British economy and society)」が手柄とされている。
▼私、サッチャーさんについては、もっとちゃんと報告したいと思っています。彼女の行ったことと、それ以後の英国を考えることは、英国のことだけでなく、日本についても語ることになる部分が多いと思います。一つだけ言っておくと、サッチャーさんは「それまでの英国」をぶっ壊したという点で小泉さんと似ていなくもないということです。彼女の「私は英国の全てを変えたのだ(I changed everything)」という言葉は有名ですが、彼女は英国の戦後首相の中で、唯一、自分の党(保守党)によって首相の座を追いだされた(forced out)人であります。
▼ちなみに1945年から現在まで、英国には12人の首相が誕生したことになるけれど、日本の場合は麻生さんで31人目です。これはどのように考えるべきなのでありましょうか? |
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2)英国版「派遣」ブルース |
BBCのサイトなどを見ていると、英国でも派遣労働者(agency workers)は厳しい状況に置かれているようです。乗用車のミニを作っている工場(ドイツBMW系)では、11月末にいつもより早く「クリスマス休暇」(要するに工場閉鎖)に入ったのですが、正社員(permanent staff)は1月5日に職場復帰するのに、約300人いる派遣社員については「出社におよばず」という通達が出されている。この工場の場合は、工場閉鎖期間中も「派遣」を含めた全ての労働者に基本給が支給されるのですが、派遣社員には失業手当は出ない。
同じくクルマのジャガーを作っている工場(インド・タタ社)では、850人の派遣の仕事が今年末で打ち切りと決まっている。その他、数十人単位のリストラはいろいろと報道されています。
英国には約140万の派遣労働者がいるのですが、同じ会社に12週間以上勤めると、いわゆる「正社員」と同じ給料を貰う権利が生まれる。しかし有給の病欠はダメだし年金の権利もない。労働組合会議(Trade Union Congress: TUC)のサイトによると、正社員に認められていて派遣社員には認められない権利として、「事前通告や正当な理由もなしに解雇されたときに"不当解雇"として訴える権利」、「失業手当を貰う権利」、「産休を取る権利」、「介護のために有給休暇をとる権利」などがあるのだそうです。
派遣労働者の労組のサイトによると、彼らの置かれた状況についての「証言」がいろいろと出ております。
57才の配管工:子供と孫が3人いる。仕事先までの距離は60マイル(約100キロ)、一日12時間労働で休みなし(1週間に7日労働)。「派遣労働者なので、配管工組合の年金にも入れない。そろそろ定年なので心配だ」(Working for an agency means I cannot contribute to the very good nationally agreed plumbers’ pension scheme which worries me as I work towards retirement age) |
ハンガリーからの移民労働者。ハンガリーで英国系の人材派遣会社に雇われて英国に派遣された。いまの仕事は、クリスマス用の七面鳥料理の準備。週45時間"くたくたになるまで"(gruelling)働いて、時給がたったの3ポンド(500円以下)。ハンガリーに応募したときは「少なくとも7ポンド」はもらえると約束されたのだそうです。 |
生きていくことが苦しいと思われるとき、勇気のある人は身をかがめて敗北を認めるということはしません。彼らはむしろ、より良い未来のための戦いに向けてなおいっそう決意を固めるでありましょう。When
life seems hard the courageous do not lie down and accept defeat; instead
they are all the more determined to struggle for a better future. |
通信企業のBT勤務の女性エンジニア。技術があるのに、何故か勤務は「お客様サービスセンター」、給料は年間で8500ポンド。正社員だと同じ仕事でも21,000ポンドももらえるのだそうです。正社員にしてもらおうと思って交渉したけれど、上役からの答えはノー。理由は彼女が子供もちで短時間しか働けないということ。彼女によると、「子供もちの正社員の場合、週2〜3日の労働が許されるのに、派遣の自分の場合はこれが4日」なのだそうです。 |
▼英国における派遣労働者の権利保護については、今年2月に議員立法として下院で提案されたのですが、英国企業の競争力が失われるという経営者側からの反対もあってこれがアウト。ようやく今年5月に政府・労組・経営者の代表間で「取り決め」(deal)ができて、給料の面での正社員との平等な権利が認められるようになった。そのあたりのことは、労働組合のサイトなどを見ると細かく出ていますが、英国における労働者の権利保護は、ヨーロッパ大陸諸国などに比べるとかなり遅れているようですね。現在、EUからも、派遣労働者の権利保護を法律で決めるようにプレッシャーがかかっているのだそうです。
▼いろいろとサイトにあたってみたのですが、英国の場合、「派遣」であれ「正規」であれ、解雇されたことで、社宅を追い出されてホームレスになってしまうということはないように思います。
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3)世界政府を考えるときが来た!? |
Financial Times (FT) のGideon Rachmanというコラムニストが、12月8日の同紙のサイトに「いまこそ世界政府を考えるとき(And now for a world government)というエッセイを書いています。「政府」というからには、単なる国際機関ではなくて、それなりの法律だの軍隊だのを有した「国家」のような存在ですよね。
現在の世界で唯一「世界政府」らしきものはEUです。EUには最高裁、EUとしての法令や官僚機構もある。必要になれば軍隊を展開する能力もある(ability to deploy military force)。ひょっとすると現在のEUが将来の世界政府のモデルになるかもしれない、とRachmanは言っています。それには理由が3つあるそうであります。
一つには、現在、国単位の政府が直面しているいろいろな問題が、実際には一国だけの問題ではなくてグローバルな問題であるケースが多いということです。地球温暖化、金融危機、対テロ戦争等々、いずれも一つの国だけでどうなる問題ではない。
二つめに言えるのは、航空機だの通信だのの技術が進んで、地球が小さくなっていること。オーストラリアの歴史学者であるGeoffrey Blaineyという人は「人類の歴史上初めて、ある種の世界政府的なものが可能になった」(For the first time in human history, world government of some sort is now possible)と言っています。尤もGeoffrey Blaineyといえども、世界政府ができるのは22世紀のことになるだろうとのことであります。気が遠くなるような先の話ではある。
Rachmanが三つめとして言っているのは、世界政府はかなり先のことではあるが、地球規模の統治(global governance)はもっと早く実現する可能性があるということです。世界中の政府が、金融危機だの地球温暖化だのといった問題をグローバルに解決しようという方向に動いているというのが現実なのだそうです。
Rachmanによると、一国主義の見本のようなアメリカにおいてさえ、オバマ時期大統領は、ブッシュに比べれば国際的な条約や取り決めに重点を置いている。オバマはThe Audacity of Hopeという自著の中で次のように語っている。
世界唯一の超大国が自らの意思で、権力の行使を抑制し、国際的に合意された基準に基づいて行動するならば、それは他国に対して、国際的なルールは守るに値するものだというメッセージとして伝わるであろう。When
the world’s sole superpower willingly restrains its power and abides by
internationally agreed-upon standards of conduct, it sends a message that
these are rules worth following. |
Rachmanは、オバマが国連を重視している証拠の一つして、側近の一人といわれるSusan Riceを国連大使に指名したことと、オバマ主宰の政権移行チームのメンバーが発表した「地球規模の不安定管理」(Managing Global Insecurity:MGI)報告書をあげている。その報告書は、例えば、国連機関として「反テロ高等弁務官事務所」(a UN high commissioner for counter-terrorist activity)を設立することや、国連主導による地球温暖化交渉、それに5万人規模の国連平和維持軍の創設などを提案しているのだそうです。
尤も、世界政府はもとより「地球規模の統治」にしてからが、相当な時間がかかるのだから「あまり有頂天にならない方がいい」(let us not get carried away)とRachmanは言っている。そのプロセスは「苦痛に満ちたスローなものになるだろう」(any push for "global governance" in the here and now will be a painful, slow process)というわけです。
その理由は、国単位の指導者に「地球規模の統治」に対する熱意がどの程度発揮できるか疑わしいということ。なぜなら、どの国の指導者も選挙民を無視することはできないからです。EUにおいても、憲法が加盟国における国民投票で否決されたりすることが多い。EUの進展は、それぞれの国民の意向を聞かないで物事を進めるとうまくいく。つまり「地球規模の統治」は非民主主義的に物事を進めるとうまくいくという傾向が強いということです。そこで、Rachmanの結論は・・・
(いまの世の中)世界で最も緊急の問題というのは、国際的な性格を有しているものなのだ。その一方で、それぞれの国の一般市民の意識は頑なにローカルのままである。そのあたりを打ち壊さないと「世界政府」の計画も永遠に国連の金庫にしまいこんだままということになるかもしれない。The
world's most pressing political problems may indeed be international in
nature, but the average citizen’s political identity remains stubbornly
local. Until somebody cracks this problem, that plan for world government
may have to stay locked away in a safe at the UN. |
ということになっております。
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4)英国の政治とジャーナリスト@:国会無視のつけ |
前回のむささびジャーナルで、フランスのジャーナリストと政治家の関係について、ちらっと紹介させてもらいました。この際、英国ではどうなっているのかについても紹介させてもらいます。テーマが非常に大きく、色々な人が色々なことを書いているので、ちゃんとした論文など書けっこない。とりあえず、「英国のことならこの人に聞け」と私が勝手に思っている、ジャーナリストで、2年ほど前に亡くなったAnthony SampsonのWHO RUNS THIS PLACE?(誰が英国を支配しているのか?)という本を参考書にして紹介させてもらいます。
Sampsonは、英国の国会討論の報道について非常に面白いことを書いています。いまから200年前の18世紀、新聞記者たちは、国会における討論の内容を報道するのにタイヘンな苦労をしたのだそうです。その頃の国会討論が非公開で行われていたからです。19世紀になると国会内に記者席(gallery)設けられ、記者たちは、国会議員から「第四の権力(fourth estate)」として警戒されていたのですが、その頃の主役はThe Timesの記者たちだった。
それが20世紀末になると、新聞が国会討論を報道することがぐっと少なくなる。ある人の調査によると、1930〜40年頃のThe Timesは、国会討論の記事を一日平均400〜500行掲載していたのに、1990年代になるとこれが100行に激減、オーナーがRupert Murdochになると、国会討論の報道そのものがなくなってしまった。編集長のSimon Jenkinsによると理由が二つあった。一つは「読者に受けない」(it did not interest readers)ことで、もう一つは「新聞こそが、日ごろの民主主義の担い手である」(the press was "a more effective agent of day-to-day demoracy)と考えたということです。
Sampsonによると、国会討論の報道がなくなると同時に目立ってきたのが「コラムニスト」と呼ばれるジャーナリストで、この人たちが活躍し始めると、政治に関する国民的な議論をリードするようになり、政治家(国会議員)の影がかすんでしまった。
いまや(新聞記者ではなく)国会議員の方が、仮想の討論場(新聞のこと)における記者たちの議論を恐る恐る「拝見」するようになってしまった。第四の権力が第一の権力になってしまったのだ。(The MPs were now in the gallery of the virtual dabating chamber, looking down in awe on the journalists. The fourth estate had become the first estate ) |
とSampsonは言います。
▼いまさら私が言うのもヘンですが、民主主義というのは立法・行政・司法の3つの権力が分立して成り立っていますね。これにメディアが「第四権力」として加わったのですが、やがてそれが「第一権力」(国会)に取って代わってしまったというわけです。 |
しかし、このような逆転現象の中で、今度はジャーナリストたちが復讐されるようになる。国会の議論に背を向けた彼らですが、ネットメディアとか24時間ニュース専門局だのの要求に応じなければならず、それまで以上に締め切りに追われて仕事をするようになった。そんな彼らが頼りにしたニュースソースが、お役所であり、首相や大臣であり、ロビー活動を行う組織だったわけですが、それらの組織にはspin doctorと呼ばれる「広報・宣伝担当」がいて、記者が気に入りそうな情報を流したり、資料提供をしたり、リークなども行った。いずれも彼らの利益のための活動であるわけで、Sampsonによるとジャーナリストたちは、spin doctorの餌食(prey)になってしまった。
メディアによる国会無視に歯止めをかけたのが、ブレア政府によるイラク戦争への参加だった、とSampsonは言います。参戦ほ是非を討論する国会に注目が集まり、新聞の一面を飾るようになった。「ジャーナリストたちもマジメな政治レポーターに戻った(the journalists were once again serious reporters of politics)」というわけです。その後、ブレアが派兵の根拠にした大量破壊兵器についての情報のいい加減さがメディアによって調査・暴露されて、遅かりしとはいえ報道の力を発揮することができた(the press was still able to show its real strength, in investigating the false information and arguments that had misled the public and the press itself)。
▼国会での議論を報道することを止めてしまった理由として、The Timesの編集長が「民主主義の担い手は、国会議員ではなくてメディアだ」と考えてしまったというSampsonの指摘は非常に面白い。「思い上がりもはなはだしい」と言いたいのでしょう。日本でも、テレビの討論番組に政治家が出演して侃々諤々のディスカッションをすることが多くなりましたよね。有名な"ジャーナリスト"や芸能人が司会をするのだから見た目には面白いかもしれないけれど、あれは基本的には娯楽番組であって、本当の意味での民主主義とは何の関係もない。
▼国会の取材を止めてしまったジャーナリストが、いろいろな組織の宣伝担当者の餌食になってしまったという部分。spin doctorの最たるものが、ブレアの報道官だったアレスター・キャンベルですね。彼の「活躍」で、メディアはブレア政府のいいように利用されてしまった。あちらの新聞のサイトを見ていると、NPOや役所が提供する広報資料を殆どそのまま使ったりしているケースが非常に多いですね。まるでNPOの担当官に直接取材でもしたような記事でも、そのNPOのサイトを見ると、彼らが配布した資料の丸写しだったりすることがよくある。
▼日本のメディアもお役所の発表する資料に基づく記事が非常に多いと指摘されています。「XX省の調べによると」とか「○○審議会がまとめて報告書では」というような記事です。これには、英国にはない「記者クラブ」というシステムによるところが大きいと指摘する人もいるけれど、それについて書きはじめるとタイヘンなので、ここでは止めておきます。役所の発表だから悪いとは言わないけれど、余りにも、それ一辺倒というのは気持ち悪い。「メタボリック・シンドローム」なんてのは厚生労働省の発表を殆どそのまま流していたように思う。犯罪の容疑者が警察に語った(と警察が言っている)ことを、そのまま報道するということも非常に多い。 |
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5)どうでも英和辞書 |
Presidents:大統領
アメリカの大統領の言葉をいくつか紹介します。
John F Kennedy: Sure, it's a big job--but I don't know anyone who can do it better than I can(大統領という仕事は、そりゃあタイヘンな仕事だよ。でも自分以上にこの仕事をうまくこなせる人間はいないと思うな)
Richard Nixon: When the President does it, that means it is not illegal(なにごとも大統領がやれば、違法ではなくなる)
Ronald Reagan: There are advantages to being elected President. The day after I was elected,
I had my high school grades Top Secret(大統領に選ばれるといいこともある。私が選ばれた次の日から、私の高校時代の成績は「極秘」扱いされるようになった)
George W Bush: I remember meeting a mother of a child who was abducted
by the North Koreans right here in the Oval Office(まさにこの大統領執務室で北朝鮮に拉致された子供の母親に会ったことを覚えている) |
▼ブッシュのI remember meeting...は、横田めぐみさんの母親にホワイトハウスで会ったときの想い出を語っているものですね。right here in the Oval Officeというのを最後にもってきてしまったので、あたかもめぐみさんがホワイトハウスで拉致されたような文章になっている。
▼George W Bushについては、もう一つ"They misunderestimated me"というのがある。2000年11月6日にアーカンソー州での集会で言ったのだそうです。どんな集会かは分からない。「誤解」(misunderstand)と「過小評価」(underestimate)を一緒にした言葉ですね。素晴らしい!
▼上に挙げた大統領で、ブッシュ以外の3人の言葉の中で、何故か私が気に入ったのはRichard Nixonですね。大統領の仕事を合法だの非合法だのというアングルで語りますかね。しかも「合法」(legal)と言わずに「違法でない」(not illegal)というあたりが、いかにもウォーターゲイトですな。
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6)むささびの鳴き声 |
▼麻生首相が漢字の読み方を間違えたというので、いろいろ言われています。「頻繁(ひんぱん)」を「はんざつ」と読んだり、「未曾有(みぞう)」が「みぞゆう」になり、「踏襲(とうしゅう)」を「ふしゅう」とやってしまったり等々。フォーサイトという雑誌の2009年1月号に掲載された『異端妄説』というコラムも、そんな麻生さんを批判しているものの一つで、書き出しは次のようになっています。
内閣総理大臣が漢字を知らないということは、笑いごとで済むような話ではない。この国の日本語能力の低下の象徴であるとともに、国家指導者の人材がいかに不足しているかを如実に物語っている。 |
で、締めくくりは
これからわが国の総理になろうという人物にはせめて漢字検定3級のテストぐらい受けてもらう必要がある。国語ができない国家運営の責任者の率いる日本など、国際社会でだれが信用するものか。 |
となっている。かんかんに怒っているわけであります。
▼私、「頻繁」とか「踏襲」ていどは読めるけれど、漢字検定3級(それってどんなものなのですか?)に受かる自信は全くない。自慢ではないけれど、妻の美耶子によると、私は「基本的な常識に欠ける」のであります。自分の常識度はともかく、美耶子さんは確かにいろいろ知っております。であるので、子供たちも「常識問題」については、母親を頼りにしていたのでございます。はっきり言って、その点は大いにコンプレックスを抱いて生きております、私は。
▼そのコンプレックス人間によりますと、麻生さんの間違いなどは「笑いごとで済むような話」なのでございます。『異端妄説』のコラムニストには、「なにをキャンキャン吠えてんのさ」と言いたい。私たちが麻生さんに期待するのは、この国から少しでも貧困や犯罪や差別をなくすことであり、漢字の読み書きではない。「踏襲」を「ふみおそい」と読んでも構いません。寒空に社宅を追い出されるような人をなくしてくれればよろしいのであります。
▼『異端妄説』が褒めている政治家に宮沢喜一さんがおります。筆者によると、宮沢さんは「総理としての実績はいまひとつだったが、教養の深さでは天下一品だった」のだそうです。漢学に詳しく、英語はペラペラで、ビル・クリントンもびっくりだったのだそうです。しかし教養が「天下一品」であったとしても「総理としての実績はいまひとつ」なのでは、しゃあないんじゃありませんか?(麻生さんのための注:天下一品は、"てんか・いっぴん"と読みます。"てんか・ひとしな"ではありません。食堂じゃないんだから)
▼それから「国語ができない国家運営の責任者」が率いる国は、国際社会で信用されないと言いますが、ブッシュさんは「子供」の複数形をchildrensとやったりしていた。彼が国際社会の信用を落とした(とされている)のは、英語の間違いが多かったからではないでしょう。イラク戦争が間違っていたからであり、国内的には金融危機を招来するような政策をやってしまったからでしょう。"childrens"とは関係ない。
▼ところで「異端妄説」というコラムの名前はどういう意味なのでしょうか?「異端」は「少数派」と似たような意味であろうし、「妄説」はYahoo!の辞書によると「根拠不明のでたらめな話」とか「取るに足らぬ話」となっています。つまり、今回のコラムも「取るに足らぬ話」として笑って無視すればいいのでしょう。それを鬼の首でも取ったようにキャンキャン言ってしまった私もお恥ずかしい・・・。ボクメンダイシモナイ(「面目次第もない」の反対)。
▼ただ、このコラムニストの言っていることは、とても「異端」とは思えない。私、何故か、コラムニストのような人たちは、まずは「異端」であるべきだと思っております。100人中・99人が「右」と言ったら「ひょっとして左なんじゃない?」とか言ってその場をしらけさせるような存在です。麻生さんの漢字力については、どの新聞も、どの雑誌も、どのテレビ番組も「みぞゆう」を取り上げて「首相たるもの、情けない!」と嘆いていたはずです。私の考えによると、「コラムニスト」といわれる人が(しかも匿名・ペンネームで)、そんなことをわざわざ取り上げて「笑いごっちゃない!」などと書くのは、勉強のできる沢山の"お利口さん"が、出来ないヤツ(少数)をよってたかって嘲笑しているようで、読んでいて不愉快であったわけでございます。この人、ひょっとして「異端」の意味を知らないんじゃないの?!
▼というわけで、今年もお付き合いをいただき有難うございました。心より感謝いたします。
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