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むささびの鳴き声 美耶子の言い分 どうでも英和辞書 green alliance
2009年9月27日
今日の関東地方はちょっと寒いくらいです。朝、NHKのテレビを観ていたら、関西の噺家の名人だった桂枝雀の特集をやっていました。亡くなって今年で10年。ことしで生誕70年なのですね。英語落語も含めて、この人は本当に面白かったですね。

目次

1)家庭教師が増える理由
2)サッチャーのドイツ統一反対運動
3)ブレア政府のメディア戦略と鳩山・民主党
4)オバマさん、アフガニスタンで方針転換?
5)キャメロン研究:超名門、鳩山さんと似ている!?
6)どうでも英和辞書
7)むささびの鳴き声

1)家庭教師が増える理由

9月10日付のThe Economistによると、英国ではいま家庭教師が増えているそうですね。Sutton Trustという教育関係のNPOによると、公立学校に子供を通わせている親の22%が家庭教師を雇っている。4年前は18%だったのに、です。家庭教師を雇うのは、無料の公立学校に子供通わせている親だけではなく、有料の私立学校の子供の親にも言えるのだそうです。

なぜそうなのかというと、一つには最近はオックスブリッジのような超有名大学を目指す若者が増えていて入学競争が激しくなっている。さらに経済不況のせいで就職できない高卒の若者が大学へ行く傾向があるので、ますます競争が激しくなっている。

お金はあるけど時間がない(cash-rich, time-poor)という働く母親たちには子供の勉強の面倒を見る時間がない。でも子供にはいい学校に行って、いい大学に入ってもらいたいという欲望だけはある。そして大学の入学試験も「落とすための試験」というようなトリッキーな問題が出るようになる。親は子供を大学へ行かせるための「保険」として家庭教師を雇う。学校の授業だけではダメだと考えているということです。

家庭教師は大体が宿題の手助けをするケースが多いらしいのですが、一般的な傾向として、家庭教師が増えたことで、子供が学ぶということを自分のことと考えなくなったということが言えるのだとかで、ある家庭教師は

遊び呆けている金持ちの子供たちが試験のときになって、慌てふためいて家庭教師に助けを求めるのだ。
Lazy rich kids who had been mucking around, and coming up to exam time realised they needed help.

というわけで、家庭教師の役割を「手を取って導きながら、同時に刑務所の監視係もやること」(somewhere between hand-holding and prison-guarding)と表現しているのだそうです。

また英国では全国テストの結果を公表して、学校の比較材料として使われたりしているのですが、The Economistは、最近では子供の成績がよくなるためなら何でもするという親が家庭教師を雇うケースが多いので、テスト結果が必ずしもその学校の「授業の質」(quality teaching)を表すものではなくなっており、「好ましいことではない」(undesirable)と言っています。

▼これ、英国社会が昔のような階級性がなくなっていることの表れなのかもしれませんね。以前に比べれば勉強さえできれば誰でも大学へ行けるし、実際に行くようになった。しかも母親まで働いてお金が稼げるようになってしまった。そうなればお金を払って家庭教師を雇う親が出てくるのもほぼ必然ですね。こんなこと日本では昔から行われており、いまでは塾が家庭教師にとって代わっている。最近では「教育ママ」という言葉が聞かれなくなったけれど、家庭教師を雇う英国の親はまさにそれでありますね。

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2)サッチャーのドイツ統一反対運動

9月11日付のBBCのサイトにサッチャー首相が、東西ドイツ統一に反対していたという記事が出ていました。英国外務省が公表した資料に出ているのだそうで、Brian Hanrahanという外交専門記者によると、フランスのミッテラン大統領もドイツ統一には乗り気でなかったので、サッチャーさんにとっては「お友達」であったわけですが、サッチャー内閣の外務大臣だったダグラス・ハードとは全く意見が合わなかったのですね。

サッチャーがなぜ反対であったのかというと、統一ドイツが国際舞台で余りに大きな力を持つことへの警戒心だったそうで、

我々は鉄のカーテンの背後にいながら自由への信念を失うことがなかった(東ドイツの)人々には大いに感謝すべきである。しかしいまや(ドイツは)民主主義を建設するという難しい仕事をしなければならず、我々それが実際にどうなるのかを注意しなければならないだろう。
We must be immensely grateful to those people behind the Iron Curtain who never lost their faith in liberty. But now it's the hard work of building the democracy and then we have to see what happens.

は彼女の強大なドイツへの警戒心を表す発言であるといえます。

彼女がミッテランと昼食をとるに際して、サッチャーさんの外交アドバイザーだったCharles Powellが用意したメモには

ミッテラン大統領は、突然の再統一のおかげでドイツ人は精神的なショックを受けており、そのショックによって、ドイツは再び昔の邪悪なドイツに戻るという効果をもたらしたと言っている。
President Mitterrand [said] the sudden prospect of re-unification had delivered a sort of mental shock to the Germans - its effect had been to turn them once again into the bad Germans they used to be.

と書いてあった。BBCによると、サッチャーさんの反ドイツ論は、他のヨーロッパの指導者たちの心を動かすにはいたらなかったということもあって、彼女は、ドイツ再統一によってソ連のゴルバチョフが難しい立場に追い込まれるだろいうという主張を行ったのですが、それも効き目はなかったのだそうです。

外務省が公表した資料について、ハード外相(当時)は、サッチャー内閣の外相として唯一首相と議論をしたのがドイツ問題だったと言っている。ハード外相が残した個人的な日記によると、ドイツ問題をめぐるサッチャーさんとの話し合いについて

いつものとおり(首相は)ドイツの利己主義を非難したが、統一阻止という言い方はだんだん少なくなった。
Usual diatribe against German selfishness, but the hankering to stop unification now comes less often.

一方、西ドイツのゲンシャー外相も、サッチャーとハードの意見の不一致には気がついていたようで「ハード外相は非常に建設的で助けになってくれた(He was very constructive and helpful)」と語っている。

BBCの記事によると、ドイツへの不信感ということではサッチャーさんと一致していたフランスのミッテラン大統領も結局、西ドイツのコール首相に説得されてしまった。そして外交アドバイザーのPowellが最後にサッチャーさんに送ったメモは

いまやドイツ人が運転席に座ってハンドルを握っている。彼らのウキウキした気分は否定できない。ドイツの時代が来たのであり、彼らが自分たちの運命を決めることになる。
They are in the driving seat and Toad is at the wheel. The exhilaration is unmistakable. The Germans' moment has come: they are going to settle their destiny.

▼この中のToad is at the wheel(Toadがハンドルを握っている)という表現の意味がわからない。アメリカや英国の友人にも聞いてみたけれど、彼らにも分からない。Toadは気持ち悪いカエルという意味で人間を蔑視する表現としても使われる。「奴ら」という感じですね。Toadはドイツ人のことを言っているのかもしれませんね。

BBCの記事だけでは、サッチャーさんがなぜ東西ドイツの統一に反対したのかがいまいちよく分からない。The Downing Street Yearsという彼女の回顧録には6~7ページにわたって、そのことが書かれています。それによると、サッチャーさんはドイツが強大な力を持つことがヨーロッパの不安定化につながると考えていた。

現実的にいえば、ドイツは(連邦ヨーロッパという)枠組みの中で支配的になる可能性の方が高いのだ。なぜなら再統一されたドイツは余りにも強大すぎて、ヨーロッパの単なる一国ということではおさまらなくなるからだ。
In fact, Germany is more rather than less likely to dominate within that framework (a federal Europe); for a reunited Germany is simply too big and powerful to be just another player within Europe.

しかも(サッチャーさんによると)ドイツという国はかつては領土的野心から、現在は経済の面で東(ポーランド、チェコ、ひいてはロシア)に向かう傾向があるので、

ドイツはその性格からして、ヨーロッパの安定要因ではなく不安定要因になる国なのだ。
Germany is thus by its very nature a destabilising rather than a stabilising force in Europe.

と主張している。回顧録の中には、1989年9月に日本を訪問したあとソ連を訪問してゴルバチョフと会談、彼もドイツ統一には反対だと言っていたと書かれています。ゴルバチョフの反対によって大いに勇気づけられたとも。

あの頃は世界中がドイツ再統一に湧きかえっていたわけですが、BBCのHanrahan記者はドイツ統一について

国際的な反対を横へ押しやるだけの能力そのものが、ドイツが新しく見つけ出した力を見せつける最初のデモンストレーションになったのだ。
Its capacity to sweep aside international objections was the first demonstration of its new-found strength.

と言っています。

▼サッチャーさんによると、東ドイツの民主化は大いに結構、でも「統一」はダメよというわけですね。ゴルバチョフも同じ意見だった。ペレストロイカとか何とかで、ソ連の民主化を推進していたとはいえ、ゴルバチョフはソ連の指導者です。サッチャーさんはその人と組んでドイツ統一に反対しようとしていた。共産主義と強大なドイツと比べたら前者の方がましだってこと?

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3)ブレア政府のメディア戦略と鳩山・民主党

鳩山・民主党政権が生まれて、何やら新しい日本の夜明けという感じで日本中がワクワクしている雰囲気は1997年の英国でトニー・ブレア率いる労働党政権が誕生したときの雰囲気を思わせます。若くて颯爽としたリーダーの誕生に本当に湧きかえっているように見えたのですよね、あのときは。首相になったブレアが官邸入りするときは、おおぜいの人々がユニオンフラッグを持って大歓迎をした。それまでにはなかった風景だった。

このあたりのことについて、ロンドン大学のMaggie Scammel教授(メディア論)がBlair Effectという本の中で詳しく書いています。彼女によると、ブレア率いる労働党は、選挙運動の期間中、全国紙の過半数の支持を獲得したのですが、これは党の歴史始まって以来のことだった(For the first time in its history Labour won the support of the majority of the national press)のだそうです。

このことに大きな(大きすぎる?)役割を果たしたのが、Alastair Campbellという報道担当だった。この人は大衆紙、Mirrorの編集長を務め、党のイメージ向上のためのメディアの使い方を熟知していた。官邸入りするブレアを迎えた大群衆というのも実はCampbellが労働党支持者をかき集めて演出したものだとされている。

Scammel教授によると、ブレアもCampbellも、24時間ニュース専門テレビの誕生とかインターネットの普及などで、メディアの世界が激変していることを知っており、これをうまく利用することに力を入れた。首相官邸には「戦略的コミュニケーション課」(strategic communication unit)が新設され、Campbellは報道官(Press Secretary)という身分であったのですが、正式な閣議にも出席することが許された。それだけではない。この人には、White Hall(ロンドン版霞が関)の省庁に対してメディア戦略に関する指示を与える権限まで与えられた。この人は選挙で選ばれた政治家ではないのに、です。

Campbellという人は、余りにもメディア操作が過ぎるということで、却ってメディアから嫌われ、最終的には失脚してしまうのですが、Scammel教授によると、彼はロビー記者(官邸に特別に出入りすることが許された政治記者たち)との懇談(briefing)の内容を公開したりして、開かれた政府を推進したことにも大きな役割を果たしたし、新しいメディア時代の政権には必要な人物であったのかもしれない。彼はのちにDirector of Communications(コミュニケーション担当部長)という肩書になったのですが、この"コミュニケーション"には、メディアを通じての国民とのコミュニケーション(意思疎通)ということも含まれている。ブレア政権がいかにコミュニケーションを重視したかを物語っています。

と、これまでは前置きでありまして、私(むささび)が書きたかったのは、鳩山政権とメディアの関係のことであります。ちょっと長くなるけれどご勘弁を。

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鳩山さんが正式に首相に就任する前日(2009年9月15日)付の時事通信のニュースとして「首相会見、雑誌記者にも開放="ぶら下がり"は制限要求-民主」というのがあった。ポイントのみ抜き出すと次のようになります。

▼首相が官邸で行う記者会見は、日本新聞協会に加盟する新聞、通信、放送各社でつくる内閣記者会が主催している。民主党は内閣記者会に対し、16日の首相会見に雑誌記者10~15人程度、外国人特派員10人程度の出席を認めるよう打診。記者会側は特例的な措置として了承した。民主党はこれまでも、代表の記者会見に関し、メディアの取材制限を設けてこなかった。

▼一方、同党は、小泉政権以来の歴代首相が原則として毎日2回応じてきた「ぶら下がり取材」を1回に減らすよう、内閣記者会に申し入れた。記者会側は「首相への取材機会を減らすのは認められない」と、再考を求めている。 

時事通信の記事では触れられていないけれど、実はこの会見には、インターネットで活躍するジャーナリストも出席を希望したのですが、これは受け付けられなかったのだそうです。このあたりのことについては、The Journalというサイトに詳しく出ています。

この件については、TBSラジオのアクセスという番組が「政府の会見がフリージャーナリストやネットメディアなどにも開放されることを、あなたは歓迎しますか?」というアンケートをとったところ「歓迎する:298」「歓迎しない:28」「どちらでもない:66」という結果だった。

私、首相会見に内閣記者会という組織のメンバー以外は原則として出席できないという現在のシステムの良し悪しここで云々しようとは思いません。ただ私がお話したいのは鳩山さんたちが、自分たちの政策を推進していくために必要な国民とのコミュニケーションの手段として行うはずの記者会見を「内閣記者会」という組織に「主催」させるということの損得をどのように考えているのだろうか、ということです。1997年にブレア政権が誕生したとき、自分たちの政策を国民に理解してもらうために、メディアをどのように利用・操作しようかということをさんざ考えたはずです。

鳩山さんたちは、自分たちの記者会見からインターネット記者が排除されることの利点をどのように考えているのか?正しいかどうかということ以前に自分たちの目的にかなっているのかどうかを考えるべきだと思うわけです。すべてをオープンにすることで、社会全体の風通しをよくする。そのことによって、(例えば)マニフェストのいくつかが実現できなくなった場合でも、なぜ出来ないのかを説明するためのルートをきっちり作っておくこと・・・それが自分たちのためなんじゃありませんか?

それにしても不思議だと思うのは、首相官邸で行われる記者会見が、内閣記者会という組織によって「主催」されているということです。私はてっきり首相の側が主催者であり、内閣記者会のメンバーだけが招かれているのだと思っていたのです。

内閣記者会が主催者なのであれば、誰が出席できるかを決めるのは主催者であり、いろいろな理由でメンバー以外を排除するのは記者会の勝手です。でもなぜ彼らが主催者なのか?なぜ首相が主催者でないのか?鳩山さんの記者会見の主催者は鳩山さんであるべきであり、そこに誰が招かれるのかを決めるのも主催者であるべきなのです。内閣記者会の人たちも招きたいというのであれば、そのようにすればいいわけです。でも決めるのは首相であって、内閣記者会ではないということはきっちりしておくことです。

最初の時事通信の記事によると、民主党は「ぶらさがり取材」を一日1回にしてくれ、と内閣記者会に「申し入れている」とのことです。つまり鳩山さんたちは、「1回ならやってもいい」と思っているんですか!?だとしたら呆れてしまう。

▼鳩山さんの会見からネット記者が排除されたことは、ネットの読者以外には分かりません。なぜなら「内閣記者会」のメンバーが所属するメディアは、自分たちの作っている組織がネット記者を排除したということを報道しないからです。報道されないことは存在しないこと、というのが世の中ですね。「内閣記者会」メンバーのようなメディアは、官僚の閉鎖性とか業界による既得権を批判するのが好きですが、自分たちの閉鎖性や既得権への執着については絶対に語らない。鳩山・民主党が壊さなければならない日本社会の閉鎖性の中にメディアが入ることは間違いない。

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4)「オバマさん、アフガニスタンで方針転換?

アフガニスタン駐留の米軍マクリスタル司令官が、タリバンとの戦闘について「さらなる増派を行わなければ1年以内に敗北する可能性がある」とオバマ大統領に警告する報告書を提出したというニュースはあちこちに出ていましたね。オバマ大統領はこの3月に1万7000人の増派を行ったばかりです。9月24日付のThe Economistによると、司令官はさらに3万人程度の増派を要求しているけれど、オバマさんがそれに応じるかどうかは定かでない。

イラクから兵力を引き挙げてアフガニスタンに集中すると言っていたオバマさんですが、最近のテレビ番組でのインタビューでは

私としては、アフガニスタンに駐留することを自己目的化したり、アメリカがしかるべき期間だけ駐留するというメッセージを発することでメンツを保つということに興味はない。まともな戦略があると納得するまでは、いま以上に若い男女を増派する気はない。
“I’m not interested in just being in Afghanistan for the sake of being in Afghanistan or saving face or, in some way--you know, sending a message that America is here for the duration. Until I’m satisfied that we’ve got the right strategy I’m not gonna be sending some young man or woman over there?beyond what we already have.”

と、方針転換とさえ思えるような発言をしています。

一方、アメリカの世論はますますアフガニスタン戦争には懐疑的になりつつあるようです。世論調査機関のPew Researchの最近の調査では「アフガニスタンが安定するまで駐留すべし」という意見は50%で6月の57%より減っており、「撤退すべし」という意見は38%から43%にまで増えている。特に顕著なのが民主党支持者の間で撤退意見が多いことで、56%が撤退を希望、駐留を希望するのは37% にすぎない(共和党支持者は71%が「駐留すべし」という意見)。

マクリスタル司令官の報告書の結論は、アフガニスタンでの成功はタリバンを殺すことでは成就しないということにある、とThe Economistは言っています。カルザイ政権の下で広がった汚職によってアフガニスタンの人々が政府そのものを支持・信用しなくなっており、これを取り戻さない限り成功はしないということです。

オバマ氏がいかにアフガニスタン戦争の正しさを信じていても、無能で正当性を失った(カルザイ)政府を盛りたてるために喜んで兵力を増派することはできないだろう。オバマ氏の人生における大志はアメリカ国内の改革なのだ。そんな彼が絶対に要らないのが、ベトナム戦争の繰り返しなのだ。
However certain Mr Obama is that this is the right war, he cannot be sanguine about sending ever more soldiers to prop up an incompetent government that has lost its legitimacy. Mr Obama’s main ambition in life is to transform America at home. The last thing he needs is a Vietnam.

というのがThe Economistの結論です。

▼オバマさんは大統領選挙の間中、イラク戦争は間違っているがアフガニスタン戦争は正しいと主張していたのですよね。なぜアフガニスタン戦争が正しいのか?9・11テロを行ったアルカイーダがタリバン政権(当時)によって支持されているからということだった。アルカイーダとタリバンは一心同体というのがアフガニスタン攻撃を正当化する理由だった。

▼でもタリバンはアフガニスタン土着のイスラム原理主義者であるのに対して、国際的テロ組織であるアルカイーダは外国人であり、素朴かつ狂信的なタリバンを見下していもいるという説だってある。一心同体では全くないということです。そうなると、アフガニスタン攻撃を9・11テロと結びつけるというオバマさんの主張自体が間違っていたということになります。

▼The Economistのいわゆる「アフガニスタンのベトナム化」とは、敵を間違えているということなのではないかと(私は)解釈しています。ベトナム戦争でアメリカが敵にしていたのは「共産主義」です。でも実際に戦っていたベトコンは共産主義者ではなく、民族主義者だった。南ベトナム民族解放戦線(South Vietnemese National Liberation Front)というのが彼らの名前だった。あの頃のベトコンをタリバンに置き換えればいいわけです。タリバンは9・11とは無関係なのです。

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5)D・キャメロン研究:超名門、鳩山さんと似ている!?

日本では鳩山さんの民主党政権が誕生したけれど、英国では来年6月までには選挙が行われて、間違いなく保守党政権が誕生するだろうと言われています。保守党党首はデイビッド・キャメロン(David Cameron)。いずれは鳩山さんと握手を交わすことになる確率が高いデイビッド・キャメロンってどんな人物なのか?この際予習しておきましょう。英国は1979年のサッチャー政権誕生以来、同じ党の政権が長く続く傾向にあります。サッチャーは79年から90年までの11年間、続くメージャー政権は91年から97年までの6年間、つまり17年間、保守党政権が続いた。その後ブレアとブラウンの労働党政権が12年続いています。

キャメロンは1966年10月9日、ロンドン生まれだから今年で43才、1947年生まれの鳩山さんとはほぼ20才違う。二人に共通しているのは、政治の世界で超の字がつくような名門の出であるということです。キャメロン家からは19世紀末から20世紀初頭の保守党政治家3人出ている。キャメロンは名門イートン校からオックスフォード大学へ進み、大学では哲学・政治・経済学を専攻しており、理科系の鳩山さんとは違います。実は保守党の党首はこれまでほとんどが公立学校の出身者が多く、イートン出身者が党首になったのは、1960年代のAlec Douglas-Home以来のことなのだそうです。

サッチャーさんもオックスフォードの出身ですが、彼女の場合は学生時代から保守連盟の活動家として政治活動に参加している。キャメロンは大学時代は政治活動はまったくやっていない。ただ彼の場合は卒業と同時に保守党調査部に就職している。いきなり政党の仕事に就いたわけです。

保守党では、国会における党首討論などを行うメージャー首相にブリーフィングを行ったりしているのだから、若くしてインテリジェンスは買われていたってことですね。保守党の国会議員に当選したのが2001年。選挙区はOxfordshireにあるWitneyという町だったのですが、ここは保守党の安全地帯(safe Conservative seat)とされている。2001年に当選して、党首になったのが2005年末というわけで、議員生活たったの4年(39才)で党首になっている。2001年は若き宰相、ブレア率いる労働党の人気が絶頂期というわけで、保守党としても若さを売りにするキャメロンを担ぎ出したということです。

で、キャメロンの考え方ですが、自分のことを「優しい保守主義者(modern compassionate conservative)」と呼んでいます。「サッチャーを尊敬はするが、いわゆるサッチャー主義者ではない(certainly a big Thatcher fan, but I don't know whether that makes me a Thatcherite)」と言っているのですが、党首になったときにサッチャーさんのThere is no such thing as society(この世に社会なんてない)という有名な言葉をもじってThere IS such thing as societyと発言、自分は保守主義者ではあるけれど、サッチャーとは違うということをアピールしたりしている。

議会での投票行動を見ると、イラク戦争には賛成、猟犬を使ったハンティング禁止法案に反対(彼自身ハンティングが趣味)などは如何にも保守党です。彼が批判的なのは、与野党が対立ばかりしているPunch and Judy政治と言われるものです。

労働党の提案に賛成できるものがあるのであれば支持すべきだ。反対のための反対をするべきではない。それはPunch and Judy的な政治であり、英国民は飽き飽きしているし、我々も止めるべきだ。
If the Labour Party puts forward proposals which we agree with, then we should support them and not just oppose for opposition's sake. That is the sort of Punch and Judy politics that people in Britain are tired of and which we must end.

とのことです。

キャメロンはWhite'sというロンドンの名門紳士クラブの会員なのですが、チャールズ皇太子とその息子もこのクラブの会員なのだとか。「家系が立派すぎて普通の人の生活が分からないのでは?」という批判もあり、本人もそれを意識しているらしく、大衆紙the Sunとのインタビューでは庶民のビールreal aleが好きであると主張したりしている。a man of the people(庶民的人間)と見られたいという涙ぐましい努力であるわけ。タバコはMarlboro Lightsですが、何度も禁煙宣言をしているそうです。

自分が上流階級の人間であることについて、アメリカの雑誌TIMEとのインタビューで「英国は昔に比べれば階級社会ではなくなってきている」(a much less class-ridden society than it used to be)と言っています。

最後の「階級社会云々」についての部分ですが、キャメロンの答えよりも、TIMEの記者の質問の方が面白い。

貴方が比較的恵まれた層に属していることが、英国では不利になることもあり得るということがアメリカ人は理解できないかもしれない。アメリカではそれはむしろ有利なことであるとみなされるかもしれませんので・・・。
In America, people may have difficulty understanding why your relatively privileged background could be seen as a problem here. In America, it might be seen as an advantage...

▼アメリカ人と英国人の「階級」に対する感覚の違いですね。アメリカ人は、金持ちであることや上流階級の人間であることを悪いこととは思っていない。自分で努力して勝ち取ったものだという意識が当たり前に根付いているからです。英国人の場合は、社会的な階層は最初から決まっているものであり、個人の努力でどうなるものではないという意識がいまでも強いということです。このあたりのことは、むささびジャーナルの別のところで書かせてもらいました。

▼次回からは、もう少しキャメロンのアタマの中をのぞいてみたいと思います。

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6)どうでも英和辞書

A~Zの総合索引はこちら

inconvenience不便

英国のBT(日本のNTTにあたる)のサイトを見ていたら、電話の故障について次のようなメッセージが出ています。

We will start your repair shortly. Sorry for any inconvenience.
間もなく修理を始めます。ご不便をおかけして申し訳ありません。

このSorry for any inconvenienceのサインは、日本のみならず英国でもあちこちで見かけますよね。道路工事をしているときとか。ほとんど意味のない謝罪メッセージで、実際の意味は「とりあえず謝っておこう」ということで、Sorry for any inconvenienceと言われると余計に腹が立って「謝るくらいならちゃんとせんかい、このお!」と言いたくなる。
national emergency国家非常事態

I have left orders to be awakened at any time in case of national emergency...
国家の非常事態の際はいつでも起こすように命令した。

これ、ロナルド・レーガンの言葉です。大統領なのだから非常事態に際しては睡眠中でも起こすように命令するのは当たり前です。レーガンの言葉はこれで終わりではなかった。これに続けて

even if I am in a cabinet meeting.

と付け加えたのだそうです。「自分が閣議に出席している最中でも」ということですね。閣議のときはもっぱら眠っていたってことです。
milk牛乳

スコットランドのコメディアンにBill Connollyという人がいて、牛乳について次のような言葉を残している。

Who discovered we could get milk from cows, and what did he think he was doing at the time?
牛からミルクがとれるなんて、誰が発見したのだろう?そもそもその人は自分が何をしていると思っていたのだろう?

妙に可笑しいですね、これ。マジメに呟くように言うと余計笑える。おそらく子牛が母牛からおっぱいを飲んでいるのを見た人が、自分もやってみたら美味しかったので・・・ってことなのでは?蜂蜜を採るなんてのも、誰が始めたんのですかね。大根の上に石を置いたら美味しいタクアンになることを発見した人など、天才としかいいようがない。

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7)むささびの鳴き声

▼自民党の総裁候補3人が外国人特派員協会で記者会見をやったとテレビで報道されていました。終わってから「誰がイチバン良かったと思うか?」と尋ねたら、ダントツで河野太郎さんだった。By far the bestというから「文句なし」ということです。でしょうね。谷垣さんの「みんなでやろうぜ」は自民党の皆さんには受けるかもしれないけれど首相候補の言うこっちゃないもんな。もう一人の西村さんは「若手・中堅中心。でも先輩の意見を聞くことも大事」では何を言っているのか分からない。でも新聞によると、谷垣さんが「21県連幹部、谷垣総裁望む」だそうですね。

▼なんの証拠もないのですが、私、オバマのみならず鳩山の勝利もインターネットが作用しているような気がしてならないのです。朝日・読売・日経・NHK・・・が作ってきた「世論」に対して、これらのメディアだけを見ていたのでは分からない「ネットメディア世論」のようなものが着々と形成されているように思えてならないわけです。

▼現在は「従来のメディアのみを見ている人」「ネットメディアのみを見ている人」「両方見ている人」という3つの種類の人々が形成する「世論」が政治や社会のあり方に影響を与えている。人口からすると「両方見ている人」が一番多いわけですが、従来のメディアの世界から見ると、この人たちは自分たちから離れつつある人であり、ネットメディアからすると自分たちに近付いてきている人たちです。

▼ちなみに、9月18日付の朝日新聞の「声」(読者の投書)欄を見ると、全部で8本の投書が掲載されています。投書者の年齢は34才が一人、44才が一人で、あとは全員60才以上です。70才以上が4人もいる。平均年齢63.75です。おそらくほとんどが「従来のメディアのみを見ている人」たちですね。鳩山さんに必要なのは、63.75才ではなくて、18才~30才の人たちに語りかけるシステムを確保しておくことです。だとすると、自分の記者会見からネット記者を排除することなど考えられませんね。

▼訪米した鳩山さんの取材のために同行した(と思われる)NHKのキャスターが、ニューヨークからの報告の中で「ウォール街の人々のほとんどが鳩山さんのことを知らないというのは驚きです」という趣旨のコメントしているのを聴いて、私が驚いてしまった。いま、東京で「カナダの首相は誰ですか?」と聞かれて答えられる人が何人います?鳩山さんは、日本国内では誰でも知っているかもしれないけれど、アメリカでも誰でも知っていると期待するんですか!?自分たちのリーダーが国際的に有名であることで気分を良くするということは、おそらくどの国の人々にもあるのだろうけれど、そればかりに一喜一憂するのはいい加減にした方がいいと思いませんか?見ていて惨めな気分になる。


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