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2011年8月14日 |
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いつの間にか8月半ばになり、ツクツクボウシの声が聞こえるようになりました。野球もそろそろ先が見えてきて、埼玉県民の期待を一身に背負ったライオンズは無事、最下位を突っ走っております。あしたは終戦記念日なのですね。 |
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目次
1)政府主宰のネット署名活動が復活
2)盗聴事件で得した新聞
3)暴動・略奪と英国社会の戸惑い
4)保守主義者・キャメロンの出番だ
5)脱原発・日本の可能性
6)どうでも英和辞書
7)むささびの鳴き声
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1)政府主宰のネット署名活動が復活 |
8月1日付のTelegraphによると、英国政府主催のe-petitionという署名活動システムが復活したそうですね。これは何かを訴えたい人がネット上で署名活動を呼びかけるというもので、ブレアさんが首相をやっていたころ、首相官邸のサイトにe-petitionコーナーを設けたことが最初です。昨年の選挙で連立政権が誕生したときにこのシステムは棚上げされていたのですが、このほど復活したというわけです。
やり方はここをクリックすると基本的な概念が分かると思います。用意された署名活動(petition)の呼びかけ申込み用紙に記入してこれをメール送りすると、担当省庁によって審査され合格するとe-petitionの公式サイト上での署名活動が始まる。活動期間は呼びかけ人が決めるのですが、最長で1年となっています。そして期間内に10万人が署名した案件については、議会の下院におけるディスカッションの対象として考慮される。労働党政権時代に行われた署名活動の具体的な例として
Ban dog washing machines in the UK(英国内における犬の洗浄機を禁止しよう) |
と呼びかけたケースがあるのですが、e-petitionの審査そのものは通って署名活動が行われたのですが、集まった署名が679であえなくアウトということになった。この呼びかけについて政府の関連省庁からのコメントがあって、The
Government is not aware that such machines are available in this country(政府としては、そのような機械が英国内にあるということを認識しておりません)と書いてある。その上で
However, under the Animal Welfare Act 2006 it is an offence to cause any unnecessary suffering to an animal. The maximum penalty is 6 months’ imprisonment, or a fine of £20,000, or both.
動物に対する不必要な苦痛を与えることは2006年動物愛護法で禁止されており、違反すると6か月間の禁固または2万ポンドの罰金、もしくはその両方が課されることになっています。 |
とアドバイスしています。
当然のことながら、おふざけ(としか思えない)署名活動提案もあるようで、ブラウン首相(当時)の辞任を求める署名活動というのが、なぜか審査を通ってしまいこれに7万2000人が署名したなどという例もあったようです。
もちろん10万の署名が集まっても自動的に国会で審議されるというわけではなく、最終的には議会が決めることになっているのですが、下院のリーダー(Commons Leader)であるSir George Youngによると、このシステムは何かを訴えたい国民にとってはメガフォンの役割を果たすものであるそうです。
▼私、最初はこのシステムを単なる「受け狙い」としか思えなかったのですが、サンプルを見ると、悪いシステムでもないかとも思えてきたわけです。ディスカッションを喚起する手段の一つですからね。日本の首相官邸のサイトにはこのようなもの、ないのでは? |
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2)盗聴事件で得した新聞 |
暴動騒ぎのおかげでかすんでしまったように見えるのがマードック系の新聞社による電話盗聴事件ですが、8月12日付のThe Economistのブログが盗聴をやってしまったNews
of the Worldが廃刊になったことで英国の新聞業界がどのように変わったのかについて書いています。要するに誰がイチバン得をしたのか?(who
benefited most)ということであります。
英国の場合、日本と違ってそれぞれの新聞が「日曜版」を出しているのですが、月曜日→土曜日の日刊紙とは別の新聞として制作・発行されています。例えばThe Timesには日曜版のThe Sunday Timesというのがあるし、Daily Mail(日刊)の日曜版はMail on Sundayという名前で出ています。日刊紙と日曜紙が違う名前の場合もある。News of the WorldはThe Sunの日曜版であったし、The Guardianの日曜版はThe Observerというわけです。
で、盗聴事件後の新聞業界ですが、News of the Worldが日曜版の大衆紙であったということで、これが廃刊されてイチバン得をしたのは他の日曜版大衆紙であるのは当然ですよね。News of the Worldの読者数であった約270万がどの新聞に流れたのか?7月の数字に見るかぎり、一番得をしたのはThe Sunday Mirrorで70万増えて約180万部、次いでThe Starが40万部増の70万、The Peopleが33万部増の80万部などとなっています。
高級紙では日刊のThe Guardianが前月比1万2000部増の24万8000部となっています。今回の盗聴疑惑を最初から報道し続けていたのが報われたということですね。それでも前年に比較すると2.2%減っているのだから、新聞経営としては苦戦であることに変わりはない。
盗聴事件を起こしたマードック経営のNews Internationalが出しているほかの新聞はどうだったかというと、日刊のThe SunとThe Timesはわずかながら部数を伸ばし、日曜紙のThe Sunday Timesはわずかに(0.7%)減らしたのだそうです。つまりNews of the Worldが起こしたスキャンダルの影響がほとんどなかったということですね。
▼ちなみに6月の日曜紙の合計販売部数は約970万、News of the Worldが消えたのは7月10日の日曜日なのですが、7月全体の日曜紙販売部数は約900万で70万部減っています。つまりNews
of the Worldの廃刊と同時に日曜大衆紙の読者も減ったということかもしれない。 |
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3)暴動・略奪と英国社会の戸惑い |
8月6日の土曜日あたりからロンドンで始まった暴動騒ぎがバーミンガム、リーズ、ルバプールのような町にまで飛び火していることは日本の新聞やテレビでも伝えられています。ことの発端は8月4日(木)の午後6時ごろ、ロンドンのTottenham(トテナム)地区で29才になる青年(アフリカ系)が警官に射殺されたことにあります。この日はアフリカ・カリブ系住民が暮らす地区における拳銃犯罪撲滅のために、トテナム地区で警察官が路上で職務質問などを展開しており、射殺事件はその最中に起こったわけです。
翌々日の8月6日(土)約300人が射殺事件についての抗議デモを行いトテナム警察署前に集結したことで、警察が道路を封鎖。夜の8時半ごろから火炎瓶が投げられるなどして警察車が炎上。これが暴動の始まりで、夜中まで警官との衝突、放火、店舗略奪などの行為が続いたわけですが、暴動の凄まじさはここをクリックして写真を見ると察しがつきます。
英国ではサッチャー政権時代の1980年代にもロンドン、バーミンガム、リバプールなどで暴動が起こっています。あのときの暴動には白人社会に対する黒人の若者たちの反乱というような側面が強かった。特に警察官による差別的な職務質問のやり方などが問題になったりして、黒人青年による警察に対する反感が暴動の背景にあった。
最近の英国メディアは暴動関連のニュースでいっぱいなのですが、そもそも何が原因でこのような事態になっているのか、いまいちよく分からないという内容のものが多い。要するに英国全体が当惑しているという感じです。今回の暴動を30年前の暴動の再来という見方するものもある。確かに表面的には店舗略奪・放火・警官襲撃などがあって似てはいるけれど違いも大ありです。あまりにもいろいろな場所に拡散しているばかりでなく、人種・年齢・性別も実にさまざまなのだそうです。何せ逮捕者の中には31才になる補助教員、チャリティ組織で働く若者などという、およそ暴動とかけ離れたような人間もいる。
30年前も今回も激しい店舗略奪が行われていますが、2011年の略奪行為を見ていると、略奪する側が洋服を自分の身体に合わせてみたり、ドラッグストアを略奪したものは、自分にあったサプリメントを探していたりという具合に「暴動兼ショッピング」(rioting-meets-shopping)という側面の方が強いとのことです。とても「貧民街からの悲痛な叫び(appeal
from the heart of the ghetto)という雰囲気ではない。
そうした当惑を代弁するように思えたのが8月10日付のThe Independentのサイトに掲載されていたエッセイで、次のような見出しになっています。
このエッセイを書いたのはMichael McCarthyという記者ですが、現場に駆け付ける若手の記者というよりもコラムニストのような存在・年齢の人のようです。彼によると、この暴動を見ながら英国人の多くが大きな恐怖心を覚えているのですが、それは「文化というものによる歯止めが利かなくなった若者たち(young
men, who were no longer constrained by our culture)」を目のあたりにすることによる恐怖心であります。
We are, or we have been, a culture-bound society: we have been governed
largely by informal constraints on our behaviour.
英国はこれまでも現在でも文化というものによって縛られてきた社会なのであり、自分たちの行動をインフォーマルに抑制することによって統治されてきた社会なのである。
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インフォーマルな抑制(informal constraints)とは、法律や規則などによらずともめちゃくちゃなことはしないという「暗黙の了解」のようなものを言います。それこそが特筆すべき英国の強み(remarkable strengths)であったのだ、と言っている。対照的なのが「規則によって縛られる社会(rule-bound society)」としてのアメリカです。英米の違いとして路上における飲酒がある、と筆者は言います。両方とも道端で酒を飲むことはまれなのだそうですが、英国ではそれが「はしたないこと」として敬遠される(frowned upon)からであり、アメリカの場合は法律で禁止されているからなのだそうです。建国者たちが基礎から建設することになったアメリカでは規則や法律が大いに必要とされたけれど、英国の場合は「言われなくとも分かっている」市民によって社会が成り立っていたので、文章にした憲法さえ必要とされなかった。
We have plenty of rules and plenty of laws like every other nation, but what has held British society together, given its relative stability and unique values, has been culture.
英国にも他の国同様、多くの規則や法律はあるが、社会的な絆となって社会的な安定を確保し、独特の価値観を生んできたのは文化というものなのである。 |
Michael McCarthyによると、今回の暴動は、英国社会が「言わなくても了解済み」の「文化」ではなく、上から強制的に課せられる規則や法律によって秩序が保たれる社会になりつつあることを示したのであり、それが英国人には「恐怖」なのだとのことであります。
▼NHKの夜のニュースを見ていたら、ロンドンの暴動とアメリカの経済問題を並べて、両方とも世界的な経済危機がもたらしたものだというような説明をしていましたが、これにはちょっと疑問を覚えました。確かに英国でも財政赤字が深刻で、赤字削減の過程で企業倒産や失業が増えており、特にロンドン暴動の舞台となったアフリカ系社会における若者の失業率が高いということはあるけれど、それはいまに始まったことではない。この暴動を経済要因だけで説明するのはハナシとしては分かりやすいかもしれないけれど現実とは程遠いように思えます。
▼The Economistは「はっきりしていることは、いまの英国には自分の国であれ自分自身であれ、将来がどうなっても構わないと考えている若者が存在するということだ」(There is clearly a cadre of young people in Britain who feel they have little or no stake in the country’s future or their own)と言っています。かつて流行った言葉を使うならば「疎外感」を内部に抱えた若者がわんさといるということです。
▼上に紹介したMichael McCarthyのエッセイですが、暴動が他の都市に拡散する前に書かれたものです。伝統的な英国流のもののやり方、規則で縛らなくても紀律を守る伝統のようなもの(これを筆者はcultureと言っている)が永遠に失われたと嘆いているようです。そこで思いだすのが、この暴動の何日か前にノルウェーのオスロで起こったテロ事件です。あのときに見せたノルウェーの人々の戸惑いもまた従来のノルウェーでは考えられないことが起こってしまったことへの戸惑いだったのですよね。
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4)保守主義者・キャメロンの出番だ |
暴動騒ぎのために休暇を切り上げてロンドンへ帰ってきたキャメロン首相が首相官邸前で報道陣に対してコメントを発表する中で「(英国社会のある部分は)壊れているだけでなく、はっきり言って病んでいる:not
just broken but frankly sick)と語ったのですが、「英国社会は壊れている(British society is broken)」というのがキャメロンの口癖であることは、むささびジャーナルでも何度も紹介しました(174号参照)。
8月11日、急きょ招集された下院で暴動問題が討議されたのですが、キャメロン首相は冒頭発言の中で、今回の暴動の概要、秩序回復と犠牲者・被害者への対応などを語ったあとで「より深い問題(deeper
problems)について話をしたい」として次のように語っています。
Responsibility for crime always lies with the criminal. But crime has a context. And we must not shy away from it.
犯罪についての責任は常に犯罪者にあります。しかし犯罪には背景というものがあり、我々はそれから眼をそらしてはならないのであります。
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there is a major problem in our society with children growing up not knowing the difference between right and wrong.
英国社会の大きな問題の一つとして子供たちが善悪の判断ができないままに育っているということがあります。
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This is not about poverty, it’s about culture. A culture that glorifies violence, shows disrespect to authority, and says everything about rights but nothing about responsibilities.
子供の貧困という話ではありません。文化の問題です。暴力を讃美し、権威というものを認めず、権利は主張するが責任については何も言わない・・・そういう文化が問題なのです。 |
キャメロンはまたこの演説の中で「ギャング文化」について触れており「すべての暴力の根底にストリート・ギャングの問題がある(At the heart
of all the violence sits the issue of the street gangs)と述べています。
▼メディアの間では「警察はなにをやっているのか」とか「キャメロン政府は予算カットを考え直せ」という論調がやかましいけれど「社会が壊れている」という「キャメロン節」はあまり取り上げられない。キャメロン首相はこれまで連立の相手である自民党に気を使って、ややもするとリベラル寄りの発言が多かったけれど、この暴動を機に保守主義者としてのキャメロン、個人の責任とか規律の尊重を重視する方向に走るかもしれない。それは連立相手の自民党にとっては嬉しい傾向ではないけれど、The Economistのように「それが本来のキャメロンなのだ」(this is who Mr Cameron really is)という意見もあります。暴動が保守主義者・キャメロンの人気を高めるかもしれない。
▼キャメロンのいわゆる「ギャング文化」ですが、むささびジャーナルではあまり取り上げたことがない。麻薬の売買、売春などを生業としており、もっぱらロンドン、バーミンガムのような大都市を舞台に犯罪行為を行っているのですが、日本の暴力団のようなものなのだろう(と思います)。リーダーがいて子供や若者たちがさまざまな犯罪に手を染めてお金をかせいでリーダーに貢ぐというものなのですが、たまにはギャング同士の衝突もあるのだそうです。
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5)脱原発・日本の可能性性 |
Financial Times (FT) のコラムニスト、David Pillingのエッセイ(8月10日付)は次のような書き出しになっています。
Don’t tell anyone I said so but the lights are still on in Tokyo. Unremarkable, you might think. But two-thirds of Japan’s nuclear power stations are switched off. Sweltering summer temperatures are well into the 90s Fahrenheit, putting further strain on the depleted energy supply. If nuclear power is really as vital to the Japanese economy as has been made out, how come the country has not ground to a halt?
ここだけの話であるが、東京ではいまだに電灯がついている・・・。だから何なのだとおっしゃるかもしれないが、いま現在日本では所有している原子力発電所の3分の2がオフの状態であるということを考えてもらいたい。うだるような酷暑で気温は華氏90度台をはるかに超えており、ただでさえひっ迫している電力供給をさらに難しくしている。もし、日本経済にとって原子力発電が本当に言われるほどに重要なものであるならば、何故(3分の2の原発が稼働していないという状態で)日本という国が機能停止状態に陥らずにいるのであろうか?
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「核エネルギー抜きの日本はまともにやっていけるのか(Could Japan function normally without nuclear
energy)?」という疑問があるけれど、いまでも54基ある原子炉のうち稼働しているのは17基だけという状況であり、脱原発社会の予行演習(dry
run)をやっているようなものなのだ、とPillingは言います。そのような状態であるのに停電もしないで済んでいるのは、個人・企業も含めた社会全体で節電運動が進行していることが主なる理由なのですが、東電は実際にはそれほど原発に頼っているわけではないという声もあるのだそうです。即ち昨年(2010年)一年間に東電が供給した電力の30%が原子力発電によるものですが、それでも東電の原発発電能力の20%しか使っていないという人もいる。
もちろん脱原発にはそれなりのコストがかかる。すべての原発を閉鎖した場合、石炭、石油、液化天然ガスを使った発電のために370億ドルの追加コストがかかるとされており、それは消費者の負担ということになるし、二酸化炭素の排出も増えるという問題もある。さらに長期的な課題として、日本は1973年のオイルショックを乗り切ったときのような省エネ技術を開発できるのか、いわゆる代替エネルギーの活用はどこまで増やせるのか・・・という疑問もある。
原発推進派の意見によると、原子力発電は自然エネルギーによる発電よりもはるかに安いと言われる。原発による1キロワット/時の発電コストは5円~7円であるのに対して、地熱発電の場合は12円~20円、太陽熱の場合は47円というわけです。確かに原子力発電は低コストのように見えるけれど、Pillingによると、これには隠れたコスト(hidden costs)が入っていない。例えば原発の立地先に支払う金銭、使用済み核燃料の処理費用、そしてもちろん福島のように事故が起こった際の補償金や処理費用などは計算に入っていない。
ある大学の推定によると、原子力発電の本当のコストは1キロワット/時12円で、地熱発電、水力発電よりも高いとPillingは言い、代替エネルギーは大量に作られるようになるとコストが安くなる(renewable power could be cheaper if it were produced on a larger scale)とも指摘しています。ドイツの場合、18%が代替エネルギーによっているのに、太陽エネルギーの開発では指導的な存在であった日本は1%にすぎない。Pillingによると、さまざまな規制を設けることで、日本は代替エネルギー産業を初期の段階で絞め殺してしまったのだそうです。
中には日本は自然エネルギーによる発電には地理的に適していないという人もいるけれど、自民党の河野太郎議員はそのようなことはないと主張している。議員によると日本は地熱では世界第三位、潮力では第六位の力を持っており、省エネ技術と代替エネルギーを組み合わせれば「20年以内に原発をスクラップにできる」(Japan could scrap nuclear power within two decades)とのことであります。
原発を廃止すると、いまでさえ中国や韓国の2倍とされる電気料金がさらに上がって、企業が海外へ流れてしまうという声がある。さらに原子力発電を廃止するとそれに関する技術をも失うことになり、大きな声では語られないけれど、将来、必要になるかもしれない核兵器の所有もできなくなるという意見もある、とPillingは言います。
で、最初に挙げられた「日本は原発なしで機能するのか?」という疑問に対する答えは案外早く出されるかもしれない(may be answered much
sooner than people think)とのことで、
By May next year, all of Japan’s nuclear plants will have been shut for
routine maintenance. If public antagonism continues, local politicians
may not have the willpower to order them restarted. And, if that happens,
Japan Inc will be nuclear-free -- whether it wants to be or not.
来年(2012年)の5月までには日本の原発はすべて定期点検のために閉じられた状態になる。もし現在のような反原発の厳しい世論が今後も続くとなると、再稼働を命じるだけの強い意志が地元の政治家にはないかもしれない。そうなると日本株式会社は好むと好まざるとにかかわらず脱原発ということになるだろう。 |
とPillingは言っております。
▼原発の今後といえば想い出すのは(以前にも言いましたが)かつての「非武装・平和」ですね。半藤一利さんは『昭和史・戦後篇』という本の中で、戦後の日本人の平和論は反戦というよりも厭戦、「戦争なんてもうこりごり」という感覚だったと言っています。戦争に懲りて、人間の行為としての戦争そのものを語ったり考えたりすることさえも止めてしまったということです。その意味では思考停止状態だった。だから「軍隊なしにどうやって国を守るのか?」と言われると「それもそうだな」というわけで戦争をしないで問題を解決するという思考そのものまで放棄してしまった。
▼「原発なしにどうやって国際競争に生き抜けるのか?自然エネルギー論は無責任だ」という声が聞こえてくるような気がしませんか?「脱原発」を「非武装」に、「国際競争に生き抜く」を「国を守る」に置き換えると、そのまま昔の「現実論」に戻ります。
▼最近、京都の大文字焼きで岩手県陸前高田市の松に被災者らが願いを記した薪を燃やすことについて、大文字保存会が放射能汚染を懸念して拒否しているとかいうニュースがありましたよね。その後どうなったのかは知らないけれど、当初の報道では「琵琶湖が放射能だらけになるかもしれない」という心配の声が上がったともされていました。ほとんどお笑いですが、心配している人たちにとっては笑いごとではないのでしょう。ただ最近の放射能騒ぎを見ていると「そんなにおっかないものなら、なんでまた原発なんてものをやることにしたの?」と言いたくなりますね。 |
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6)どうでも英和辞書 |
complacent:独りよがり
新聞などで非常によく使われる言葉です。例えば
Government complacent about level of UK corruption |
はある日のGuardianに出ていた見出しです。「英国における汚職のレベルについて政府がcomplacentである」というわけですが、政府が考えている以上に汚職は広がっているという意味です。complacentには「甘い」という日本語でもいいかもしれないですね。
ところで中国の特急列車事故に関連して私が気になって仕方ないのは、「日本ではあり得ない事故だ」という言い方がまかり通っていることです。これなどはcomplacencyの見本のようなものですね。東電とJRの共通点は、両方ともとてつもなく大きな会社であること、絶対に潰れない会社であること、そして両方ともcomplacentになり得る要素を持っていることです。
Texas Leaguer:ポテンヒット
最近はあまりラジオの野球中継で聞かれなくなったような気がするのが「テキサスヒット」という言葉ですね。内野手と外野手の間にポトンと落ちる安打のこと。その昔、ジャイアンツに川上哲治という選手がいたのですが、別名「テキサスの哲」だった。Texas
Leaguerが多かったからです。ウィキペディアによるとそれは現役の最後のころで、腰が回らなくなってまともな当たりが打てなくなったことが原因であるとなっています。
で、ポテンヒットがなぜテキサスヒットと呼ばれるのかですが、その昔、テキサス近辺を中心とす野球リーグ(テキサス・リーグ)があり、そのリーグ出身のオリー・ピカリングという選手がメジャーリーグに上がったデビュー戦で7打席連続ポテンヒットという「快挙」をやってのけた。その試合を中継したアナウンサーが
"Well, there goes Pickering with another one of those "Texas Leaguers"(さてピカリングの打席です。また例のTexas Leaguersを打つかもしれませんな) |
とやったことが始まり・・・と、これもウィキペディア情報です。尤も最近ではbloopersというのが普通で、Texas Leaguerというのは使われなくなったと書いてあります。
ところで日本の「テキサスの哲」は1920年生まれだから今年で91歳です。プロ初出場は1938年、私(むささび)の生まれる3年前のことです。引退は1975年だから36年前・・・すげぇ!川上さんの野球解説で笑ってしまったのは「この選手はいい選手ですよ、親孝行ですしね・・・」とおっしゃっていたのを聴いたときだったっけ。
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7)むささびの鳴き声 |
▼あまりにも意外な事件が起こるので、ノルウェーにおける銃の乱射事件のことなど忘れられてしまったかもしれないけれど、あの容疑者の青年が「精神鑑定には日本の専門家を使ってくれ」と要求したことはどの程度日本のメディアで伝えられたのでしょうか?私が
見たのはNHKのニュースでだったのですが、ちょっと妙な気がしたのは、なぜこの犯人が日本人による精神鑑定を要求したのかということについてNHKは全く伝えなかった
ということです。この件についてはBBCを始めとする英国のメディアはみんな伝えていました。
▼で、なぜ彼は日本人による精神鑑定を望むのか?「日本人は名誉の思想やその価値を理解しており、日本人の専門家ならいかなるヨーロッパ人(専門家)よりも自分のことをもっと良く理解するであろう」(the Japanese understand the idea and values of honour and that a Japanese specialist would understand him a lot better than any European would)と彼が(もちろんノルウェー語で)弁護士に語ったのだそうです。
▼「そんなことできっこない、あまりにも非現実的な要求だ」と弁護士は言っている。ただ犯人が「日本人なら自分の気持ちが分かるだろう」と考えているという事実は、日本人である私には興味のある部分ですね。しかもその理由が日本人なら「名誉」というものが分かるだろうとなっている。この人は、日本や日本人についてどの程度の知識を持っているのか。ひょっとすると何かの映画やアニメでも見たのか?名誉(体面)を重んずるのは日本人だけではないはずなのに、「ヨーロッパ人より日本人の方がよく分かるはずだ」などと言っている。彼のアタマにある「日本」はどんな国であり、「日本人」とはどのような人々なのか?「国のイメージ」のこととあわせて面白い話題だと思う。
▼最近の政治ニュースを聴いていると、ほぼ毎日のように菅さん退陣後の後継者に関するものがあります。その際いつも聞くイントロは「菅首相退陣の条件とされているXX法案の成立に向けて・・・」というような感じになっている。へんだと思いませんか?政治全体が首相退陣を目標としているのですよ。そもそもなぜ菅さんは退陣しなければならないのでしょうか?大震災や原発事故への対応がうまくない・・・それが理由だったと思うのですが、菅さん以外だったら原発のメルトダウンもなかったとでも言うのでしょうか?谷垣や鳩山が首相だったら飯館村の人はよそへ行ったりせずに済んだってこと?
▼むささびの感覚からすると、菅さんが頑張ってくれたおかげで日本にも「脱原発」という選択肢があるということが分かった。菅さんが粘ってくれたおかげで保安院の「やらせ」が暴露されたし、このお役所の経産省からの追放も実現した。菅さんがリーダーシップを発揮してくれたおかげで電力業界の独占体質にメスが入った・・・もう一度聞くけれど、菅さんはなぜ辞めなければならないのでしょうか?誰か教えてくれません?
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