musasabi journal

home backnumbers uk watch finland watch green alliance
美耶子の言い分 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
第44号 2004年10月31日 
最近、「新聞は生き残れるか」という本を読みました。岩波新書、著者は中馬清福さんという元朝日新聞のジャーナリストであり新聞社経営という仕事もされてきた方のようです。最近、特に若者の間で新聞の存在感が薄くなっている。このままでは生き残れない・・・というわけで筆者なりの現状分析や将来への提言などが丁寧に書かれています。どちらかというと業界の話という感じではありますが、今の世の中を語る社会学の本という内容でもあります。というわけでむささびジャーナル第44号です。寒くなりましたね。考えてみると10月も今日でおしまいなのですね。

目次

@解雇された英国大使の言い分
Aやはりブッシュに勝って欲しい・・・
Bロンドンの地下鉄値上げ
C短信
D編集後記


@解雇された英国大使の言い分
10月17日のBBCが伝えるところによると、ウズベキスタンの首都、タシケントに英国大使として駐在していたクレイグ・マレイという人が、クビになってしまったらしい。クビにしたのは英国外務省、理由は(外務省によれば)外交活動上の事情(operational grounds)だそうです。ただ本人は「イラク戦争について省内で自分の意見を述べたから」と言っており、不当解雇だとして外務省を訴えようとしている。45歳の外交官だそうです。

ウズベキスタンは対テロ戦争においてアメリカに同調的な国として知られているのですが、国内では拷問などの人権抑圧が行われている。「英国の諜報機関(MI6)はこのような抑圧の結果としてウズベキスタン政府から得た情報を入手して本国に送っており、外務省がそれを使っている」と非難したマレイ氏はロンドンの本省から呼び戻されて厳重に注意されたらしい。その「注意」の中には「セックスと引き換えにビザを支給した」などというものも含まれていた、とマレイ氏は主張、外務省は否定しいるのだそうです。

大使の仕事は政府の外交政策を実施することにあるのであって、大使が政策を批判したりすることは出来ないことは当り前です。が、どうもマレイ氏の一件については、「外務省内部でも同情する声が多い」とThe Economist誌(10月21日号)が伝えています。

外務省の幹部たちがイチバン問題にしているのは、首相官邸(Downing Street)が外務省を無視して政策を決めているということで、外務省の幹部外交官の多くが「ブレアのクローンたち」(Tony's cronies)によって占められている。 ある幹部のコメントとしてThe Economist誌は次のように伝えています。

「殆どの外務省の高官がイラク戦争(あるいはそのやり方)に疑問を持っていることは公然の秘密。しかしそれを口にするのは省内でさえも躊躇してしまう。別に上から特に指示が来ているのではない。それはガッツのない高官の保身がなさせるのだ。イラク戦争について悲観的なことは言うことが許されていない」

"It is no secret that most, if not all, Foreign Office officials have deep doubts about the Iraq war, or at least the way it was done," according to a senior diplomat. "But they think twice before speaking out about it, even internally. This is not the result of any specific instructions, but rather of spineless cringing officials acting pre-emptively. Nothing downbeat is allowed to be said about the war."

このようなことは以前にもむささびジャーナルでお伝えしたと思います。アンソニー・サンプソンの記事だった。で、クビになったマレイ氏ですが、不当解雇で外務省を訴えるのだそうです。


Aやはりブッシュに勝って欲しい・・・
イラク戦争について、英国軍はついにバグダッドでアメリカ軍と直接行動を共にすることになってしまいました。BBCの特派員は「アメリカが作戦を決めて英国軍がそれを実施するのだ」と皮肉に伝えていました。ブレア首相にしてみれば、いまさら引くに引けないということなのでしょう。小泉さんも殆ど同じことですが、まだ「一緒に武器を持って戦ってくれ」とアメリカ人に言われていないだけ有難いと思っているのかもしれない。二人ともきっと心の底から「ケリーさん、勝って。お願い!」と祈っているでしょうね。

と、私など思っていたのですが、それは間違いで「ブレアは密かにブッシュの再選を望んでいる」という見方をしているのがThe Economistの政治コラムのBagehotのようです。それによると、ブレアがイラクに軍隊を送ったのは、イラクを民主化することへのブレアなりの信念があったからであって、ブッシュに引きずり込まれたというのではない。

つまりブレアもブッシュと同様に(おそらくブッシュ以上に)これが正義の戦いであることを信じて疑わず、これを遂行して来年1月の選挙を成功させることによって、自分たちが歴史に名を残すことができると信じている、というわけであります。万一これが失敗すると二人とも歴史に汚名を残すことになる。ブレアの場合、来年5月の選挙さえ危なくなってくるというわけです。

ケリーが勝つということは、ブッシュのイラク戦争が間違っていたということをはっきりさせることになってしまう。そうなるとヘンなコンビ(odd couple)の片割れであるブレアの政治生命も危なくなってくる。ブレアさんとしては、ケリー大統領もブッシュ同様にイラクの「民主化」にコミットしてくれるであろうと信じたいのですが、ケリーの場合はブッシュほどにはイラク戦争を始めるについて熱心じゃなかったし・・・というのがブレアの不安であるとのことです。

ところでブレアのイラク政策に反対して閣僚を辞めたロビン・クックが、今回の英軍のバグダッド入りについて、10月22日付けのガーディアンに投稿しています。彼は「これまではブレアのやることに我慢してきた人々も、この決定によって、ついに忍耐も限界に来たと感じているだろう」としています。


Bロンドンの地下鉄値上げ
10月12日にケン・リビングストン市長が100億ポンドにのぼる、ロンドンの交通改善対策を発表したのでありますが、その中の目玉の一つとして地下鉄の車両にエアコンを入れるというのがあった。かつてのロンドンでは車内エアコンなど考えられないような気温であったのに、最近の温暖化現象で夏にはこれも必要になったということなのでありましょうか?

話は違いますがこの夏にオックスフォードという町へ行った時にアシュモリアンという有名な美術館を見学したのですが、その日は結構暑くて美術館の中もかなりの高温であった。でも冷房はなし。展示部屋の片隅に扇風機を置いておりました。あとから"あれは冷房を入れると絵画によくないからなのか?"と大学の人に聞いたら、"予算がないだけ"と笑っておりました。

ただロンドンで暮らす人々にとってはエアコンよりも気になるのが来年1月から行われる地下鉄とバスの一連の料金値上げなのだそうです。市長はこれまでに「インフレ率を超えるような運賃の値上げはしない」と約束していたそうなのですが、来年の値上げはこれを上回るものになる。実は今年(2004年)の初めにも値上げはしたのだそうですね。そりゃ怒るでしょうね。

で、ロンドンにお住まいの皆様、現在の地下鉄の最低料金はいくらなのでしょうか?ちなみに東京は160円です。

C短信
学校を水浸しにすれば・・・

試験が嫌さに学校中を水浸しにしてしまったティーンエージャーがいるそうです。これは英国の話ではなくてイタリアのミラノの話。ある金曜日の午後、学校の流しの栓をしたまま水道を出しっぱなして知らぬ顔で帰宅してしまった。水は週末にわたって流れっぱなし。当然学校中水浸しというわけ。やったのは女子が4人と男子一人の5人組。Parini Schoolという学校での話しで、ミラノ最古の学校なんだそうです。実はこの5人組から犯行を認める手紙が校長あてに届いたのだそうですが、学校に対する損害は約35万ポンド。警察で取り調べを受けており、場合によっては暴力行為で起訴されるかもとのことです。

▼それにしても女4人・男1人というのも妙な取り合わせですね(などと考えるのは日本人的感覚であって、イタリアじゃ常識なのかも!?)

ニワトリを轢いて列車が止まる

ロンドンのPaddington駅からSwanseaに向かって走っていた電車がSwindonで故障。原因はというとニワトリを轢いてしまったから・・・と伝えているのがThe Sunという新聞。いまいち説明不足の記事なのですが、どうも轢かれたニワトリが電車の燃料管のようなものを壊してしまったらしい。電車の修理に鉄道関係者のみならず何故か消防夫も駆けつけて大騒ぎになった。その間、乗客はホームで待たされていた。それにしても何故ニワトリが線路の上を歩いていたのか・・・理由はわからないのだそうです。

▼ニワトリを轢いた程度で電車が止まるもんですかね。

この赤ちゃん違う!

産婦人科で赤ちゃんを間違えるってこと、たまにありますよね。アメリカのボストン・グローブ紙が伝えるところによると、ボストン郊外のある病院でもこれが起こったそうです。母親がおっぱい(母乳)を飲ませていたのですが「どうも違う。髪の毛がこんなに長くなかった・・・」というわけで看護婦を呼ぶ。で、看護婦が赤ちゃんの脚に付けられたタグを見たら「あら、この赤ちゃん違う!」ということで大騒ぎになった。病院のスポークスマンは「お詫びの言葉もない」と平謝り。間違えた病院スタッフはクビ。

▼というわけで、どうってことない記事です。これで終わるのも癪だから英語の問題を出します。「あら、この赤ちゃん違う!」(看護婦の言葉)、「お詫びの言葉もない」(スポークスマン)をそれぞれ英訳せよ・・・というのですが。答えは看護婦が"Oops, this isn't the right baby!"、スポークスマンが"We can't apologise enough"です。簡単すぎる?

死後のセレブの金持ちナンバーワンは

死んだ後でもお金を稼ぎ続けるセレブリティのナンバーワンは誰だかご存知?そう、エルビス・プレスリー。彼に関連した年間収入は4000万ドル(約40億円)。第二位はというとPeanutsの漫画家チャールズ・シュルツで3200万ドル。3位はThe Lord of the Ringsのトルキエンで2200万ドル・・・ときて4位と5位がジョン・レノンとジョージ・ハリソンのビートルズ。10位はマリリン・モンローなのだそうです。 以上Forbes誌のサイトに出ていました。

▼エルビスってのはそんなに人気があるんですかね。私の時代のスターなのでありますが、よく聴くとビートルズの歌はこの人をルーツにしているようにも響く。


D編集後記
●確かに速報性・臨場感ではテレビに負け、知的刺激メディアとしては掘り下げた記事が多い雑誌に負け、手軽さ・速報性ではインターネットには遠く及ばない・・・というわけで新聞には昔のような「報道界の王様」というステータスはないかもしれません

●しかし新潟中越地震の被災地からの中継でテレビのレポーターが「避難所では配られた新聞を食い入るように読んでいる被災者の姿が・・・」とコメントするのを聞いていて、新聞というメディアの性格を突いているような気がしました

●おそらくその被災者が「食い入るように」読んでいたのは震災についての記事でしょう。それを何度も何度も繰り返し読んでいたのではないか。そうすることで自分の震災体験を自分の頭の中で確認したり、考えたりしていたのでは?

●テレビの視聴者にはこれができない。ただ移り変わる画面を、頭をカラにして見つめるだけ。全く受身の一方通行です。だからテレビのニュースというのは、見ていて分かったような気がするけれど、実は何も分かっていないという体験が非常に多い

●先日、池袋で新聞の「号外」なるものを初めて手にしました。地震の山崩れで車ごと生き埋めになってしまった母子の一人が救出されたことについてのものでした。池袋の駅前には普段から茶髪だの何だのというという(私などには)得体の知れない若者がたむろしています。その彼らが「号外」を手にして「えーっ助かったんだ、良かったジャン・・・ねぇ」などと言っておりました。あれも新聞のなせる業ですね。



←前の号 次の号→


message to musasabi journal