musasabi journal

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美耶子の言い分 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
第46号 2004年11月28日 
日本記者クラブというところで仕事をしていると、実にいろいろな人の話を聞けて 刺激になります。最近の例としてはエジプト大使が記者会見をやった時の彼のコメント。 エジプト人の対日意識について、 「日露戦争(1904年)でロシアを破った日本を中東の人々は大いに尊敬している」 というニュアンスの発言でした。 日露戦争なんて、100年前の話です。 ただ私が何故かはっとしてしまったのは「日露戦争における日本の勝利は、物事は必ずしも西洋のやり方だけが通用するのではないということを示した」というコメントでした。 中東の人々の間にくすぶっている反西洋感情を聞いたような気がしたわけ。

目次

@皇太子と教育大臣が激論!?
A英国人の対ドイツ偏見
B短信
Cギネスブック発刊50周年:記録いろいろ
D編集後記


@皇太子と教育大臣が激論!?
「最近は誰もが自分の能力以上のことをやろうとしすぎる。これは、身分不相応なことまでできると子供たちに教える現在の学校教育のせいだ」というチャールズ皇太子の発言について英国の教育大臣が「皇太子は現在の教育事情を全く分かっていないし、考え方も時代遅れだ」と批判して話題になっています。

ことの起こりは昨年、皇太子の宮殿のアシスタント(女性)の一人が「自分は大卒だ。皇太子の秘書官に昇進するための訓練を受ける資格がある」というニュアンスのメモを上司に上げたことにあります。このメモが皇太子にパスされ、それについて皇太子が上記のようなコメントをメモに書いてこの「上司」のデスクの上に置いておいたところ、これを問題の女性が見ただけでなく、それを「性的差別だ」と労働争議調停局に訴えたことで明るみに出てしまったというわけ。

皇太子のメモには次のように書かれていたそうです。

What is wrong with people now? Why do they all seem to think they are qualified to do things far beyond their technical capabilities? This is to do with the learning culture in schools as a consequence of a child-centred system which admits no failure…

child-centred system which admits no failureというのは「できないことがあるということを認めたがらない子供中心教育」即ち、子供のご機嫌取り教育ということなのでしょう。

この皇太子発言に対するチャールズ・クラーク教育大臣は次のように怒りのコメントを述べている。

We can't all be borne to be king, but we can all have a position where we can really aspire for ourselves and for our families to do the very best they possibly can. (人間誰もが王様になるべく生まれてくるわけではない。しかし誰もが自分や家族のために大志を抱いてベストを尽くすべくそのような地位に立つことは許されるはずだ)。

大臣よると、チャールズ皇太子はvery old-fashioned and out of timeであり、教育問題に口出しするときはよく考えてから発言して欲しい、とまで言い切っています。よくよく腹がたったのでしょうね。

「古臭くて時代遅れ」と言われてしまった皇太子は、「私が12年前に主張した"環境に優しい建築の必要性"という考え方も当時は時代遅れとからかわれたのに、今では誰も時代遅れとは言わないではないか」と反論したりしているそうです。

日本ではこのような皇室と大臣の論争なんて考えられないですよね。尤も英国でもこれは長年の「しきたりに反する」(ガーディアン)ことではあるらしいのですが・・・。王室だろうが皇室だろうが、普通の人と議論をするということは結構なことではありませんか?

で、この喧嘩についてブレア首相は「お互いの言い分を仔細に分析すれば共通点が見つかるはずだ」とか「自分は皇太子を大いに尊敬しているし、クラークも一流の大臣である」などとコメントしています。この人はイラク戦争についてはI have absolutely no doubtなどと確信に満ちた発言をするのに、何故か国内問題になると日和見主義になってしまう。キツネ狩り禁止についても同じような感じだった。どうしてなのでしょうか?


A英国人の対ドイツ偏見
第二次世界大戦中に日本軍に捕らえられた英国人の捕虜の扱いが理由で、日英の「和解」が進んでおらず、いまだに反日感情を持つ英国人がいるということは、どこかで申し上げました。それに関連してドイツの場合は十分に謝罪しているというので、反日感情のようなものは英国内では少ないと聞かされておりました。

なるほど・・・と多少ドイツ人に対して羨ましいとさえ思っていたのですが、10月28日付のThe Economistの小さな記事を読んで意外な気がしてしまいました。「英国人の間に残るうんざりするような(対独)偏見」(tiresome lingering prejudice)というイントロで始まるもので、11歳になる子供がドイツ語の上手であるということで、学校で「ナチ野郎」とからかわれたという例を挙げています。この少年のお祖父さんは、この話を聞いて戦争中よりも今の方が反独偏見は強いのではないかと考えてしまったそうです。

The Economistはさらに先ごろ英国を訪問したドイツのフィッシャー外相がこの問題について不満を述べたとも伝えています。あるいは30年も学校でドイツ史を教えている教師が一度もドイツに行ったことがないという例もあるとか。

またDaily Mail紙のSimon Hefferというエッセイストは「ドイツ人に悪の過去を忘却させてはならない」(The Germans must never be allowed to forget their evil past)という過激な調子のエッセイを載せたりしている。この人は1960年生まれだそうで、ナチのことなど実体験としては知らないはずなのに、です。

というわけで最近の新聞(日本)の外信面にイラク戦争をめぐって傷ついた英国と欧州の関係修復を図るためにエリザベス女王がドイツを訪問するという記事が出ていました。皇室外交というわけです。

B短信
ケネディ暗殺ゲーム!?

こともあろうにケネディ大統領の暗殺をテーマにしたテレビゲームが英国のメーカーによって開発され、アメリカのエドワード・ケネディ上院議員の怒りを買っているそうです。開発したのはグラズゴーのTrafficという会社。ケネディ暗殺はリー・ハーベイ・オズワルドという人物が行ったことになっていますが、この人物が事件後すぐに殺されてしまったので、彼が本当の犯人なのかについては未だに議論のあるところです。

で、このゲームはオズワルドが使ったというライフルで実際にケネディ大統領を狙って発射するという趣向で、オズワルドの射撃を最も忠実に再現した人に1000ドルの賞金を提供しようというもの。ケネディ議員からの抗議についてTrafficでは「これはドキュメンタリーゲームであり歴史的な事件を再現するものだ」と言っているそうです。

▼射殺犯人になったつもりで、ケネディ暗殺をゲームにするってのは・・・どういう感覚をしているのでしょうか?

長生きはビールから

男性の長寿世界一はドイツ人のヘルマン・ドネマンさんで111歳。この人の長寿の秘訣は毎日一杯のビールだそうです。元電気技師のドネマンさんは毎日必ず黒ビールを一杯やる。そうすると「この世のてっぺんに立ったような気分」になるのだそうです。ところでロスアンゼルスに本部を置くGerontology Research Groupは世界の長寿を追跡することを専門にやっている調査機関なのだそうですが、ドネマンさんの111歳というのは男性ではイチバンかもしれませんが、彼よりも年上の女性が世界に少なくとも26人はいると言っております。

▼111歳・・・そんなに長生きしてどうするんですか!?

一文無しが億万長者に

2万3000ポンドもの借金を抱え、銀行預金口座には100円もなかった男が、ある日ついに破産宣告を受けてしまった。が、宣告を受けたその日に買った宝くじで何と4700万ポンド当ってしまったのだそうであります。アメリカはニューヨーク州の話で、4700万というのは同州主宰の宝くじでは史上最高額だそうです。当ったのは駐車場の管理人をしているホアン・ロドリゲスさんというコロンビアからの移民。彼の余りの浪費癖に奥さんに家を追い出されてしまったそうなのですが、宝くじに当たるや、再び家に戻ることを許されたのだとか。宝くじの大当たりについて、当った本人は「今まで一文無しだったのが、急に金持ちになってしまって・・・こんなにお金もらってどうすればいいのか分かりません」と泣かせるコメントを発表したそうです。

▼現金なものですね、この奥さんも!!

ブロンドの怒り

ハンガリーという国では金髪(ブロンド)は嘲りの対象になったりするのでしょうか?PA通信が伝えるところによると、ブロンドに対する差別禁止法案なるものを作ることを目指したデモがこのほど国会の前で行われたのだそうです。この運動のスポークスウーマンは「ハンガリーではブロンドというだけで就職・職場ともに差別されている。ユダヤ人や黒人差別禁止法があるのだからブロンドにも同じ権利を認めて欲しい」と言っています。

ハンガリーでは国会で法案として討議してもらうには10万人以上の署名が必要らしいのですが、あと一息だとか。ところでこの活動の標的になってしまったのがBlondyという名前のバー。「名前からしてバカにしている」というわけで、デモ隊が荒れてしまい、窓めがけてタマゴやケーキをぶつけられてしまったらしい。「バカにしようなんて、とんでもない・・・」とオーナーは怒っているのですが。

▼そう言えば、昔「ブロンディ」というアメリカの漫画がありましたね。


Cギネスブック発刊50周年:記録いろいろ
記録本のギネスブックが今年発刊50周年をむかえたThe Independent紙が、彼らが選ぶ記録50種類という記事を掲載していました。シャレのつもりでいくつか紹介します。

1. シャンペンのコルク(栓)の最高飛行距離:アメリカ人のHeinrich Menicusという人が1988年にニューヨークで作った54・18メートルだそうです。(そんなに飛ぶもんですかね!?)

2. 長寿女性の世界一:Jeanne Louise Calmentという人で122歳と164日。この人、ナニ人?

3. 世界最初の有人宇宙飛行:これはマジにユリ・ガガーリン(ソ連・1961年4月12日)

4. 海難救助の最高記録:1942年にアメリカの客船Lexingtonが太平洋で沈没した時に救助された人数が2,735人で、これが最高だそうです。

5. 殺人事件発生率:コロンビアで、年間10万人につき65人が殺人だそうです。自慢にはならない。

6. タマゴの最高落下記録:と言っても何のことか分からない。空の上からタマゴを割らずに落とした記録。英国人のデイビッド・ドナヒューという人が213メートルの上空のヘリコプターから落としたのが記録だそうですが、沢山投げて幾つか割れなかったという記録らしい。素晴しくも無意味な記録です。

7. 結婚最長記録:Wesley & Stella McGowenの夫婦で1920年2月6日の結婚だとか、85年間一緒にいたことになる。結婚したときの年齢はいくつだったのでしょうか?どっちかが二十歳として現在105歳ということになる。

8. ビールの早飲み記録:カナダ人のスコット・ウィリアムズなる人物で2パイント(約1リットル)を6秒3で飲んだのが記録だとか。アホらしい・・・でもすごい!

9. 最長の交通渋滞:フランスのリヨンからパリ方向への道路で起こった109マイル(160キロ強)。1980年2月のことでした。

10. エレベーターに閉じ込められた記録:ホントかウソか、キプロスの男性が1987年に6日間閉じ込められたことがあるのだとか。

11. 樹木の最長老:アメリカのホワイトマウンテンというところにある松の一種で、樹齢4733年だそうです。それって、どうやって分かるんでしょうか?

12. バンジージャンプの最高記録:アメリカの男性が1992年に作った251メートルが破られていない。聞いただけでも吐き気がする。

13. 最低気温:人間が住んでいる環境下におけるものでは1933年にシベリアのオミャコンという村で記録された零下68度だとか。

14. 背丈のイチバン:アメリカのロバート・ワドローなる人物の2・72メートル。1940年以来破られていない。

D短信
●香田証生さんという人がイラクで殺されたことについて気になって仕方ありません。報道によると彼は「自分探しの旅」の果てにイラクへ行ったそうですね。どうもよく分からないけれど、「自分探し」なんて本人だってよく分からないのかもしれませんね●それにしても彼の死は余りにも「独り」でした。誰にも意味が分からない。単に無知・無謀・無茶ってこと?意味が分からないから批判もしないけど真面目に論じることもされない●「自分探し」の旅の果てが「すいません・・・日本へ帰りたいです」では余りにも哀しくて寂しいと思います。それだけに私としては意地でも気にし続けたいという気がするわけです。理屈はありません。「意地」に理屈なんかないもんね。

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