@BBCへの信頼度
日本では会長の辞任だの、朝日新聞との水掛け論的もめごとだのでNHKが揺れていますが、英国の公共放送BBCが大揺れに揺れてから1年が経ちます。
むささびジャーナルでもお伝えしましたが、簡単におさらいしておくと、イラク戦争に参加するにあたってブレア首相は「サダム・フセインは大量破壊兵器を45分以内に発射することができる」ということで、戦争を正当化したわけです。が、この情報が実はアヤフヤなものであることを首相官邸は知っていたのではないかという趣旨の報道をBBCのギリガンという記者がラジオ番組行った。ギリガン記者はこの情報を国防省のケリーという兵器の専門家から聞いたと言ったわけ。ケリー博士はBBCに対して、政府が大量破壊兵器についての情報を「大げさにでっち上げた」(sex-up)と語ったとされているのですが、彼は自殺してしまった。
怒ったのがブレアさんを始めとする首相官邸の人たち「でっちあげなどしていない」と主張、ハットンという人物がリードする第三者の調査機関を設けて徹底的な調査行われた結果、BBC報道が疑わしい(つまりBBCはクロ、ブレアさんらはシロ)ということになり、記者はもとより会長と理事長という2人のトップが辞任に追い込まれ、BBCの報道機関としての信頼性が地に落ちたとされたわけです。
首相官邸も羨む支持率
と、ここまでは前書き。しかるに最近(2005年1月20日)のPress Gazetteという英国のマスコミ関係の業界紙に掲載された世論調査の結果によると、数あるメディアの中でも「信頼性」という点ではBBCがダントツの一位となっています。全国2178人の成人の意見を調査したもので、BBCが一番信頼できると答えた人は624人。2位のSky News(ニュース専門局)の112人を大きく引き離している。
Press Gazetteは国民のBBCへの信頼度について「首相官邸も羨むような支持率」(a trust rating that Downing Street would be likely to envy)と皮肉っています。 部数増と信頼度の関係 ちなみに第3位は新聞のデイリーメールとガーディアンが同数で並んでいます。日本では英国を代表する高級紙のように言われるThe Timesは一応100票以上獲得していますが、ガーディアンの後塵をはいしている。
この点についてThe Timesのトムソン編集長は「新聞がイチバン信頼されているメディアであることは間違いない」と言いながら「この調査結果が正確かどうか疑問だ。国民の信頼度は発行部数が増えているかどうかによる」としています。これ、気になりますね。つまり「発行部数が多い新聞=信頼されている新聞」というのでしょうか?実に気になる。
がんばれ、ラジオ
それはともかく、昨年のギリガン記者のレポートが問題になった時に私個人として面白いと思ったのは、騒ぎの発端がBBCのラジオのニュース番組における報道だったということです。BBCのRadio4。日本でこの種のマスコミ関連のトラブルが話題になるのはテレビ、新聞、雑誌が主人公ですよね。その意味においてラジオは殆ど無視(!?)されている観がないでもない。ラジオ・ファン(夜の10時以後は殆どラジオを聴いている)の私としてはちょっと寂しい。
Aハリー王子の写真を巡るシッチャカメッチャカ
これもマスコミ専門媒体であるPress Gazetteに出ていた記事ですが、日本でも大いに報じられたハリー王子がナチの服装でパーティーに出たという「スキャンダル」に関連しています。
実はナチの服装をしたハリー王子の写真はThe Sunという新聞社が「さる筋」から7500ポンド(約150万円)を払って入手したものだった。 で、The Sunは写真を掲載する前にバッキンガム宮殿の報道担当(複数)と話をして「ハリーが(この写真について) The Sunのみにコメントをくれれば、The Sunとしてはこの写真を他社に配信することはしない」と約束をした。写真の存在については他社も知っていて、The Sunに対してセカンド・ユースの権利を買いたい(値段は何と4万ポンド=約800万円)という申し込みが複数あったのだそうです。
この写真と記事はThe Sunの1月13日付け一面(写真)に掲載されたのですが、The Sunは他社に対して事前に手紙を送りつけ、問題の写真を使うときは「1月13日のThe Sunの第1ページ全部(写真だけではない)をそのまま印刷しなければならない」と版権上の通達を出した。
皆さんそれを守ったのですが、唯一守らなかったのがDaily Mailというライバル紙(写真右)で、写真だけを掲載してThe Sunの1ページの流用であることは分からなくなっている(よく見るとThe Sunのロゴとクレジットは入っているらしい)。
というわけで(当り前ですが)カンカンに怒っているのがThe Sunで、約束違反のDaily Mailを訴えるべく法的な手続きをとりつつあるのだそうです。
ちなみにThe Sunに対して独占提供されるはずだったハリー王子のコメントは、バッキンガム宮殿の報道担当の間違いでライバルのDaily Mirrorにも渡ってしまったのだそうで、報道課がThe Sunに平謝りで決着しているようです。
先日も「仁義なき英国タブロイド伝説」という本を紹介させてもらいましたが、ハリー王子を巡るタブロイド同士の駆け引きを見ていると殆ど楽しくなってきますね。「朝日vsNHK」の水掛け論のような暗さがない
B短信
お見舞いに花はダメ
The Sunが伝えるところによると、マンチェスターにある病院に入院している女性の夫(80歳)が妻の見舞いに花を持っていったところ「バクテリアが流布される」という理由で持込を断られたそうで、当然のことながらこの男性はカンカンに怒っており「結構高い花だったんですよ。ふざけた話じゃありませんか」とコメントしています。老人福祉のNPOであるAge Concernの関係者も「ばかばかしい。この次は果物を禁止するのでしょうか」と皮肉っております。尤も病院側は「花びんの水の中にいるバクテリアが花に吸い上げられ、それが空気中に散布される危険性はある」とコメントしており、保健所にあたるNHSもどちらかというと病院側に理解を示しています。
▼怒るのも分かるけど、この手のこと聞いたことありますね。でも私が見舞いに行った国立大学の病院の場合は構内に花屋があったっけ。
ホームレスがスペインで豪遊?
最近、日本ではニセ札だのスキミングだのと、お金にまつわる事件というか犯罪が多いですね。オランダのDe Volkskrantという新聞によると、ロッテルダムにある銀行のキャッシュマシンが故障したのにつけ込まれ1500万円もの現金を不法に引き出されたという事故があった。引き出したのは付近のホームレスたちというのがもっぱらのウワサ。何かというと、オランダでは彼らに特別なソシアル・セキュリティのカードを渡してあり、銀行のマシンで一度に2万円まで引き出せるようになっているのだそうです(信じられます!?)。
ところが最近、コンピュータが故障して無制限に引き出せるモードになってしまった。銀行によると、少なくとも20人のホームレス・カードが使われたとかで、5万円引き出したのもいれば、200万円以上のケースもあった。ロッテルダムの福祉関係者は「高額引き出したホームレスは多分、今頃スペインの海岸でノンビリしているはずだ」とコメントしているそうです。
▼それにしてもホームレスに現金が引き出せるカードが提供されるなんてことがあるんですね、国によっては・・・。
高校生に酒飲みを奨励する「問題発言」?
スコットランドの首相にあたるジャック・マコーネルという人が、ある集会で「たまには酔っ払うのもいいんでないかい」(By all means get drunk once in a while)という発言をして問題になっています。政府による飲みすぎ防止を訴えるキャンペーンの最中にこの発言が行われたのですが、場所がまずかった。スコットランドのハイランド地方にある高校で、学生相手に行った演説だった。マコーネル氏が高校生に飲酒を奨励したわけではなく、この発言の前後に「飲みすぎはよくない」という趣旨のことも言っていた。にもかかわらず反対党はこの発言を「極めて無責任。スコットランドでは若者の飲酒が社会問題であることは分かっているはず。にもかかわらず首相(First Minister)ともあろう人物が飲酒を奨励するとはナニゴトだ」と批判しています。
▼確かに高校生相手にBy all means…というのはちょっとまずかった。今頃この演説の原稿を作った秘書官はクビになっているかも。それはともかくスコットランドでは若者のアルコールが問題になっているのですね。
C編集後記
●子供の学力低下が問題になっていますね。そのたびに引き合いに出されるのがOECDによる国際学力比較で、いつも賞賛の的になるのがフィンランドです。先日フィンランド大使館関係の人(日本人)にお会いすることがあったので、フィンランドの教育の何が良くて、いつも上位にくるのかと聞いてみました ●その人によると先生の養成の方法に違いがあるらしい。フィンランドの方が教師になるのが難しいらしい。尤もその人は「環境に違いもある」と言ってもいた。つまりフィンランドでは、日本の子供たちのように「面白いテレビ番組」もないし、パソコンゲームなどもそれほど発達はしていない ●フィンランドのテーマは「文化輸出」だそうです。音楽とかデザインとか。「だったら教科書なんか輸出すればいいんじゃないの?数学とか理科とか。売れますよ」とご忠告申し上げたところ「それがダメなのよね。フィンランドでは学校の教科書が先生の手作りなんですから、輸出のしようがない」とのこと●そういうものですかね、教育というのは。 今回もお読みいただき有難うございました
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