続けていればいずれはこうなるに決まっているのですが、むささびジャーナルも400回目ということになりました。399回目の次、401回目の前は400に決まっているのですが、何やら「特別号」のような気分というわけで、今回はエッセイではなく、現代の英国にまつわる数字をグラフにしてみました。記事はたくさんあるように見えるけれど、一つ一つは短いものばかりです。ただ例によって手当たり次第に集め放り込んだので、お互いが何の繋がりもないところがむささび流と言えば言えるかもしれない。
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目次
1)田舎の景色が違うわけ
2)日英背比べの歴史
3)他人を信用できる?
4)サクセス願望とストレス人生
5)女性は良妻賢母たるべし、か?
6)女性と政治:ルワンダがすごい
7)メディアの信頼度
8)トランプの評判
9)社会主義の理念を評価すると
10)街の風景:増えた店・減った店
11)BREXITは今
12)どうでも英和辞書
13)むささびの鳴き声
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1)田舎の景色が違うわけ
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シェフィールド大学のアラステア・レイ(Alasdair Rae)教授が調査して作成した英国の国土の使われ方マップ(A Land Cover Atlas)によると、人間集まる「町」と言われるエリアの面積は全体の約6%なのだそうで、人口の83%がそこで暮らしていることになるのだそうです。教授が集めた情報と日本の国土交通省のサイトに出ていたものを(多少無理をして)並べると次のようになる。
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国土の使われ方比較
日本の面積:378,000 km² 英国の面積:242,500 km²
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日本では殆どどこへ行っても山林があるけれど、英国の場合は延々と田園地帯が広がるだけ。このグラフでは、便宜上「農地」扱いしたけれど、英国の場合、ここでいう「農地」の半分が実際には羊や牛の放牧場です。日本の田舎の風景はすぐに峠や山が迫っている。そしてそこには必ず林や森がある。英国の田園風景は、延々と続くなだらかな丘陵で、地平線が見えることが頻繁にある。日本人はイングランドの風景に感激し、英国人は森林に囲まれた日本の田舎の風景を見て驚くのです。
▼両方に共通している(とむささびが思う)のは、田舎の風景に見事にマッチするかのように神社や教会がポツンと建っていたりすることです。 |
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2)日英背比べの歴史
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オックスフォード大学のマックス・ローザーという経済学者が主宰している Our World in Data というサイトは、名前のとおりデータ即ち「数字」を通して世界を語るものです。非常に多岐にわたるデータが出ていて面白いサイトです。むささびが何故か気に入ってしまったのが、人間の背丈(human height)に関する歴史的なデータです。例えばヨーロッパ人の中でも一番背が高いオランダ人の場合、1810年当時の身長は166cmだったのですが、100年後の1910年には176cm、1980年には182.7cmにまで伸びている。300年以上も前の人間の身長は骸骨などを調査して分かるらしいのですが、残っている骸骨といえば兵士や犯罪者、奴隷のものが多く、大体において男性なのだそうです。つまり正確な意味での平均身長ではない。
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背丈の移り変わり:cm
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日本人の場合、最も古い記録があるのは1880年のもので157.8cmだったのですが、同じ年の英国人は168cmだからすでに10cmの差があった。夏目漱石が英国へ留学したのが1900年、彼自身の背丈は知らないけれど、英国人(169.4cm)を見てかなりの差を感じたのでは?スウェーデン人はその頃でも171.2cmもあったのですね。1880年から100年間における日本人と英国人の伸び率を見ると、日本人が急速に高くなっていることが分かります。 |
▼上のグラフの中で1960年と1980年の英国人の身長を見ると、20年間で1ミリだけ低くなっている。これは何なのでしょうか?説明が書いていないので分からないけど不思議な現象ですね。それから・・・同じ時期における日本人の背丈の伸び方はちょっと異常に見えません?20年間で6センチも伸びるもんですかね。もう何十年も測ったことがないけれど、記憶によるとむささびの背丈は長い間169センチだった。1960年の大学1年生のときそうだったとすると、日本人の平均身長よりも高かったということになる。そのような記憶はないけどなぁ。
▼ついでにテレグラフ紙に出ていた情報によると、2017年の統計による平均身長が最も高い国と低い国は次のとおりです(単位はセンチメートル、ミリ以下は四捨五入)。 |
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3)他人を信用できる?
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World Value Survey(世界価値観調査:WVS)という国際的なNGOがあって、世界中の人びとの価値観を調査しているらしい。その機関が「人間は殆どが信用できるものだ」(most people can be trusted)という考え方にどの程度の人間が賛成するかを調査したところ、50%以上が「信頼できる」と答えた国は北欧諸国、中国、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド、サウジアラビアだった。反対に「信頼できる」と答えた人が10%以下だったのはブラジル、ペルー、エクアドル、コロンビアのような南米諸国が多かった。
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「殆どの人間が信用できる」と考える人の割合
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何が理由でこのような違いが出るのか?WVSが挙げている一つの理由が「異文化混合社会」(heterogeneity)なのですが、それは中国には当てはまっても北欧諸国には当てはまらない(と思う)。むささびの眼に映る一つの共通点として宗教がある。他人への信頼度が低い南米諸国、フィリピン、ルーマニアなどがいずれもカソリックなのですよね。さらにヨーロッパの中でプロテスタントのドイツ人の他者への信頼感は42.03%なのに隣接するフランス(カソリックが主流)の人びとの場合は18.66%と低くなる・・・違うかな?
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4)サクセス願望とストレス人生
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Ipsos MORIが23か国の人間を対象に行ったGlobal Trends Surveyという意識調査を見ると、半数以上(54%)が金持ちになることで人生における「成功」(success)を手に入れるために「大きなプレッシャー」(a
lot of pressure)を感じているとのことです。調査の質問はいわゆる「成功」と「自分の生き方」の関係に集中している。ここをクリックすると23か国全部の人びとの意見が分かるのですが、ここでは英国・日本・韓国・中国の人びとが何を感じているのかを紹介してみます。
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「自分の生き方を変えてでも成功したい」と思うか?
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「成功して金持ちにならなければ」というプレッシャーを感じるか?
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「成功」の尺度は「何を持っているか」(things I own)が基準になる
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「成功」よりもwork-life-balanceが大切だ
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Ipsos MORIのコメントによると、一般的に言って「新興国」(emerging markets)の人の方が「先進国」(established
markets)の人よりも「成功」することへのプレッシャーを感じているとのことなのですが、いまいち分からないのが日本と中国ですね。日本の場合、サクセス願望やストレスは低いとしか思えないのですが、ワーク・ライフ・バランスへの欲求めいたものも英国や中国ほどではない。中国人はどう考えてもギンギラギンのサクセス願望型である一方でワーク・ライフ・バランスへの欲求もかなり強い・・・どうなっているのか? |
▼最も鮮明に違いが出ているのが、3番目の「何を以って"成功"とするのか」という部分における日本人・英国人と中国人の態度の違いですね。「所有物」(things
I own)にその尺度を求めるのかどうか?中国人の7割が「そうだ」と言っているのに対して、日本人も英国人も3割に満たない。具体的に言うと「立派な家に住んでいる」、「高級車を持っている」等々というハナシなのであろうと推測するのですが、これらの数字をもって中国人の方が即物的と考えるのは違うのではないか(とむささびは考える)。現代の中国の方が、日本や英国よりも、努力次第で高級車や住宅が手に入る可能性が高いということか、中国人の方がそのような実例を目にしながら生きているということかもしれない。今から30年前に、日本で同じ意識調査を行っていたらどのような結果が出たのか?結果論ではなく気になる。 |
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5)女性は良妻賢母たるべし、か?
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社会における女性の役割は良妻賢母(good mothers and wives)であること・・・ロシア人の7割がそのように考えている。22か国で行われたアンケート調査の結果なのですが、そのような考え方をする国のトップはインドネシアでロシアは第2位、アメリカも世界平均よりは上なのですね。面白いのは日本と韓国で、両国とも「良妻賢母」には反対の意見の方が多いのですが、韓国の場合は6割が反対なのに対して、日本の場合は反対が5割に満たない。何が違うのかというと、日本の場合に21%もの人が「分からない」としている点。こんな国は他にない。
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女性は良妻賢母であるべし?
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英国は「良妻賢母」が美徳とは思われない国の一つのように見えますよね。英国で受ける広告のイメージにある傾向があるのだそうです。それは女性を登場させるときに、「プロ」「インテリ」「ユーモラス」というイメージで描くこと。ダメなのは女性が「家庭人」や「感情的な存在」として登場するコマーシャルなのだそうです。 |
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▼上のコマーシャルはある家電製品のものです。どう見てもこの女性はお母さんですよね。この種のCMが受けないってことですかね。 |
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6)女性と政治:ルワンダがすごい
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今年(2018年)は、英国で女性に参政権(投票権と被選挙権)が認められてから100年というわけで、6月10日の日曜日にはベルファスト、カーディフ、エディンバラ、ロンドンで約10万人の女性が参加したデモ行進が行われました。ただウィキペディアなどによると1918年に認められたのは30才以上の女性参政権で、1928年になってこれが21才にまで下げられたのですね。また英国以前にニュージーランド(1893年)、オーストラリア(1902年)、フィンランド(1906年)などではすでにこれが認められていた。日本の場合は太平洋戦争が終わった1945年11月だから、敗戦でようやく認められたということになる。
英国の場合は1918年に女性の被選挙権も認められており、この年の下院選挙で女性が一人当選しているのですが、彼女がアイルランドのシンフェイン党からの立候補者であったためにロンドンの議会への参加を拒否した。その頃はアイルランドはまだ英国の一部であり、シンフェイン党などを中心に独立武力闘争が繰り広げられていた。
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国会議員の男女比
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で、現在ですが、議会(下院・衆議院)における議員の男女比を見ると、世界193か国中のトップはルワンダで男性より女性議員の方が多い(国際議会ユニオン)。そんな国はルワンダ以外ではキューバとボリビアだけ。英国は41位、アメリカは103位、韓国が118位で、日本は(お笑いください)160位だから下から数えた方が早いってこと。
▼そのルワンダですが、RWANDA NOTEというサイト(日本語)によると、1994年に発生した内戦に伴うジェノサイド(大虐殺)で男性の数そのものが激減したことがきっかけで、社会のあらゆる分野で「女性の活用」が促進されたのだそうです。国会議員の分野では2003年に議席の3割以上を女性とするクオータ制(割当制)が導入され、それによって「女性の意見を取り入れる風潮が政界から社会の隅々に広がった」とされている。2012年現在の推定によると、女性の人口が570万なのに対して男性のそれは530万となっている。英国における人口の男女比は男が3300万、女が3200万人だそうです。日本は6200万(男)対6500万(女)、ずいぶん違いますね。 |
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7) メディアの信頼度
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何かの出来事があったときに英国人が「まず見る(読む)」(most likely to turn to)メディアは何か?というアンケート調査のランキングは次の通りです。
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出来事があったとき最初に見る(読む)のは・・・
IPSOS |
実際にはこれ以外にも媒体名が挙がっているのですが、いずれも1%なので省きました。圧倒的にBBCであり、1~3位がテレビで占められているわけですが、このグラフを見てむささびが一番感心した(というか感銘を受けてしまった)のが、第4位に来ているGuardianです。たったの4%とはいえDaily
Mail, The Times, Telegraphなどの保守的と言われる新聞を抜いて4位に来ているのはすごいことです。さらにFacebookが第6位というのも驚きです。
次にそれぞれの媒体が発する情報への信頼度をスコア化して並べると次のようになる。「全く信用していない」(do not trust at all)を1、「大いに信用している」(trust
a great deal)を10として採点した結果のベスト10です。これもなかなか興味深い。
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信頼度スコア:10点満点
IPSOS |
BBCのスコア(7.23)は低いのか高いのか?「まず見る」というランキングでは5位だったテレビのChannel 4が第3位に来ているということは、このテレビ局は「普段はあまり見ることはないけど信頼は置ける」と考えられているということ(かもしれない)。Financial
Timesが第4位というのも驚きです。むささびの印象ではこの新聞は「普通の人」には殆ど読まれていない。それから人気という意味ではかなりの力を持つDaly
Mailはランクに入っていないのですね。 |
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ところで新聞通信調査会というサイトに日本のメディアへの信頼度に関する調査報告が出ているのですが、メディアが発する情報の信頼性については「NHKテレビ」が70.0 点で1位、2位が「新聞」(68.7点)、3位が「民放テレビ」(59.2点)となっている。NHKの情報に寄せる日本人の信頼感は、BBCのそれに寄せる英国人の信頼感よりも低いのですね。
▼新聞通信調査会のサイトで最も興味深いのは「憲法改正問題に関する情報を入手しているメディアは?」という問いに対する答えです。民放テレビ:58%、NHK
テレビ:57%、新聞:54%で、わずかとはいえNHKを押さえて民放テレビが第1位なのですね。その理由は「分かりやすさ」にあるようで、「憲法改正問題に関する情報で分かりやすいメディアは?」という問いに対しては、民放テレビ:48%、NHKテレビと新聞:44%という答えになっている。NHKについては「政府寄り」の姿勢が、新聞については「分かりにくい」ことが嫌われているということなのでは?ただ、NHKの「政府寄り」は論外として、憲法改正問題については分かりやすければいいということでもないよね。 |
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8)トランプの評判
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7月13日(金曜日)に一日だけトランプが英国を訪問することになっており、その際に女王とも面談する可能性が高い とされている(BBCのサイト)。ただ、これはトランプが正式に国賓としての待遇を受けての面談と言う意味ではない。ト ランプの国賓訪英については、今年1月の時点では賛成(45%)が反対(39%)を上回っていた。5月に行われたハ
リー王子とミーガン・マークルさんのロイヤル・ウェディングに先立って、この式典にトランプを招待すべきかどうかを聞いたところ圧倒的多数(69%)が「招待するな」と答えています。ちょっと可笑しいのは、「オバマ前大統領と一緒に招待」のセンについては、過半数とはいかないまでもかなりの数の英国人が肯定的な意見を持っていたということです。
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ロイヤル・ウェディングにトランプ?
IPSOS-MORI |
それとは別に、ここをクリックするとYouGovによるトランプという人物についての英国人による評価(好き嫌い)のアンケートが出ている。
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トランプを好きか嫌いか?
大好き(really like), 好き(like), 普通(OK), 嫌い(don't like), 大嫌い(really don't like)
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全くメチャクチャなのですが、彼を嫌う英国人が挙げる言葉としてArrogant (1631), Awful (1110), Offensive
(982), Annoying (919), Idiotic (835)などが挙げられている。最初の4つは「態度が悪い」 というのを表現する言葉ですが、最後は「愚か」というわけで、ちょっとニュアンスが違う。では彼を好む英国人が表現する
とどうなるのか?Ambitious (117), Controversial (86), Anti-Establishment (81), Bold
(75), Rich (75)のような言葉が並ぶ。最後の「金持ち」以外、どれも「嫌い」な理由の裏返しという感じですね。
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安倍さんの評判
Shinzo Abe
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▼YouGovのこの人気調査には日本の安倍首相も含まれており、人物評価は上のようになっている。圧倒的多数を占めるのが「普通」(OK)という評価です。もう一つ、トランプとの決定的な違いは投票総数です。トランプの場合は6月20日現在で15万4373人が投票しているのですが、安倍さんの場合は6607人・・・どこまで信用していい数字なのか?
▼また安倍さんを「好き」と答えた人が彼を表現する言葉として挙げているのがAdmirable (立派:5), Confident (自信満々:4), Commanding (リーダーシップ:2), Cultured (洗練:2), Assured (確信:2)などです(カッコ内の数字は投票総数)。
▼彼を嫌いと答えた人は、その理由についてBuffoon というのを挙げている。研究社の英和辞書によると「(ばかで)下品なおどけ者」という意味なのだそうですが、オックスフォードの辞書によると
"A ridiculous but amusing person; a clown" となっている。「ケッタイだけどオモロイやつ:ピエロ」ということになるかな?「ばかで下品」よりはマシなんでない!? |
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9)社会主義は正しい!
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むささびジャーナル397号で、今年がカール・マルクスの生誕200年であることをか紹介しました。むささびが、どちらかというとマルクスの思想に傾きがちであるということも。IpsosMORIのサイト(5月2日付)には、世界の28か国の2万1000人を対象に次のような質問を投げかけた調査の結果が出ています。
- 社会主義の理想は社会進歩のために大いなる価値のあるものだ、という考え方に賛成ですか、反対ですか?
- Do you agree or disagree to the statement to say that socialist ideals are of great value for societal progress?
その結果、「賛成」が最も多かったのは中国、最も少なかったのは日本だった。ここをクリックすると全部の結果を見ることができますが、28か国中の11か国の人びとの意見を紹介すると次のようになる。
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社会主義の理想は社会進歩に役立つ
IPSOS |
いろいろと興味深いことが分かるのですが、ソ連崩壊前に社会主義体制をとっていた国で、「世界平均」より上なのはロシアだけ。ポーランド、ルーマニア、ハンガリーなどは軒並み社会主義には懐疑的であること。アメリカ人が懐疑的なのは分かるのですが、フランス人はもっと懐疑的なのですね。が、なんと言ってもむささびにとって最も意外だったのは日本人の社会主義観です。なぜかくも低いのでありましょうか?分からない・・・。日本人はこれまで社会主義政権のもとで苦しい生活を強いられた経験があるわけではない。なのに何故かくも社会主義に対してアレルギー反応を示すのか?わっかんねぇ!
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▼実は(むささびにとって)もっと分からないのが中国人です。この調査における「自由な市場経済が国民にとってベストだと思うか?」という問いに対しては81%が「思う」と答えている。28か国中の6位で、日本人(56%)などよりはかなり高い。なのに、ですよ、「個人の自由は社会正義より大切だ」という考え方については中国人は37%しか同意していない。28か国中の27位(最下位はフランス人)です。つまり中国人によると「経済システムとしての市場経済は大切だが個人の自由は社会正義ほど大切ではない」ってこと?わっかんねぇ! |
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10)街の風景:増えた店・減った店
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街の風景が変わりつつある・・・むささびが暮らしている埼玉県飯能のような小さな町でさえそれを感じることがあります。昨日までここにあったはずの衣料品店が携帯電話ショップに、空地だったところにコンビニが出来た・・・そんなことだらけです。BBCの伝えるところでは英国の町でも同じことが起こっている。百貨店のHouse of FraserやMarks and Spencer、赤ちゃん用品のMothercareなどの定番ショップが店をたたむケースが増えているし、パブの数が減っていることはかなり前から言われている。
ではどのような店が増え、どのような店が姿を消しつつあるのか?増えた店の代表格が床屋さん、次いで理容室、タバコ屋、カフェやティールームなどが続いている。「タバコ屋」(vaping
shop)というのは、そこで一服くゆらせる場所なのだそうですね。ネットを見ると日本にもあるんですね。知りませんでした。刺青ショップ(tatoo
shop)や葬儀屋も増えているのだそうです。下のグラフの数字は、どれも昨年(2017年)と一昨年を比較して、新しく出来た店舗数と消えた店舗数差を示している。床屋さんの場合、昨年の総店舗数が一昨年比で+3.03%、パブの場合は-0.8%という数字が出ているのだそうです。
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増えた店トップ5
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減った店トップ5
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減った店は?パブは分かるけど、銀行、旅行業、郵便局などがなぜ減るんですかね。パブが減ってカフェやティールーム、レストランなどが増えているのは、英国人の外食文化が変わってしまったということですよね。昔は外食といえば、大人がするものと決まっていたけれど、世の中が「民主的」になったおかげで、家族そろってとか、若者同士が連れ立ってというケースが当たり前になってしまった。そうなるとタバコの煙が立ち込める中でビールを飲みながらワイワイガヤガヤというのは姿を消してしまった。ビールを飲むのなら自宅で飲んだ方が安いもんね。「新聞店」ですが、英国の場合、新聞は宅配ではなくてnewsagentsという新聞店へ行って買うのが普通です。コンビニ風の店なのですがコーヒーを飲みながら朝刊を読むというサービスを提供しているところもある。
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▼ここをクリックすると、英国の街における減った店と増えた店の細かいリストが出ているけれど、勝負の分け目はネットショッピングなのですね。百貨店や子供用品店などはネットショッピングの隆盛とともに町から消えてしまった。その意味では「賭け屋」(bookmaker)が減ったというのも理解できる。オンラインギャンブルの方が便利ですからね。そこへ行くと床屋、理容室、カフェなどはオンラインにとって代わられることがない。確かに葬儀屋だの刺青ショップというのもネット上でサービスを受けるわけにはいかないもんな。 |
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11)BREXITは今・・・
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2年前の昨日(2016年6月23日)は英国の戦後史の中でも画期的な日となりました。キャメロン政権下で、EUへの残留か離脱かを問う国民投票が行われ「離脱」が勝利をおさめたのがこの日であったわけです。英国がEU(の前身であるEC)への加盟を果たしたのは1973年、エドワード・ヒースの保守党政権下のことだった。その2年後の1975年6月5日、ハロルド・ウィルソン率いる労働党政権下で、EC加盟を続けるかどうかの国民投票が行われ残留が決まった。ほぼ40年を隔てた二つの国民投票の結果をグラフで示すと次のようになる。
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現在、下院で離脱および離脱後の対EU関係の在り方について議論が行われているのですが、基本的には「離脱はするけどなるべくEUの近くにいよう」というソフト路線と「きっぱり別れよう」というハード路線が対立している。いずれにしても今さら2年前の国民投票の結果を覆すわけにもいかないというわけで、このままでいくと、来年(2019年)3月29日(金)の午後11時を以って英国はEUから離脱することになる。では英国人自身は現在、何を想っているのか?
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EU離脱は正しい選択だったか?
YouGov |
つまり国論真っ二つというわけですよね。ちょっと可笑しいのは、この話題そのものについて、離脱派も残留派も「退屈だ」(boring)と感じている人が過半数を超えているということです。いい加減うんざりだ・・・と感じている英国人が多い、ということは「離脱もしゃあないんじゃない?」ということでしょうね。 |
▼EU離脱の問題を考えるときに「英国(人)にとって損なのか、得なのか?」という発想で考えると、何が何だかわからなくなり「ウンザリ」(boring)してしまうことは避けられないと思います。当たり前です、何年も先のことなど誰にも分からないのだから。自分たちにとって損なのか得なのか?ではなくて、自分たちも含めた「世界」にとっていいのか悪いのか?という視点に立たないと議論にはならない。BREXITをめぐる英国内の喧々諤々を傍で見ているとそれが分かる。ということは、別の問題でも同じことが言えるということなのではないか?
▼それにしても1975年と2016年の間の40年間、何が起こったのでしょうね。いまEUに拒否反応を示している(と報道されている)のは英国人に限ったことではない。フランス人なんてもう少しでナショナリストの大統領を選ぶところだったし、イタリアでもハンガリーでも同じようなことが起こっている。いまの世界で何が起こっているのか? |
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12)どうでも英和辞書
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A-Zの総合索引はこちら |
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tea time:お茶の時間(?)
夜になったらとる食事のことを "dinner" と呼ぶのはイングランドでも南の方の人なのだそうですね。北イングランドの人たちはこれを
"tea" と呼ぶ・・・ということがYouGovという世論調査機関のサイトに出ていました。イングランドで暮らす人びと4万2000人を対象に次のような質問をぶつけた。
南北ともに「庶民レベル」(working class)の人たちの意見を見ると、やたらとくっきり違うのですね。
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主なる食事を何と呼ぶか?
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念のためにCambridge Dictionaryで調べたら、"tea"には、普通の「お茶」以外に「夕方とる食事」(a meal
that is eaten in the early evening)という意味もあるのですね。"dinner"は「一日のうちの主なる食事」(main
meal of the day)なのだとか。そういえば昔、アメリカ人をレストランに招待して昼食を共にしたら、後日のお礼として "Thank
you for the dinner" と言っていましたね。つまり時間の如何を問わず「ご馳走」のような食事のことをアメリカでは「ディナー」と呼ぶことがあるということですよね。つまり
"Thank you for the gorgeous lunch" というのはおかしいってこと?
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13)むささびの鳴き声
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▼大阪で起こった地震に関連して、むささびの気持ちが重くなるような記事が出ていました。6月21日付のヤフーのサイトに朝日新聞配信の記事として出ていたもので『校長「塀の危険、3年前に伝えた」 市教委が安全と判断』という見出しだった。小学校のブロック塀が倒れて女の子が亡くなった、あの事件です。3年前に防災アドバイザーに危険性を指摘された校長が高槻市の教育委員会に伝え、市教委もハンマーで叩いたりするテストをした結果、安全と判断して校長に伝えたという記事です。結論の部分では、このブロック塀が「違法な建築物」であったことを市当局が認めており、「府警が業務上過失致死容疑で捜査している」と書かれている。見出しだけ読むことが多いむささびのような人間は、安全性を勝手に判断した市教委が怪しからんと考えてしまうし、実際そうなのかもしれないけれど、「でも・・・」と考えてしまう。
▼むささびの友人が高槻市に住んでいて、ブロック塀が崩れたこの小学校の脇の道はジョギングなどでしょっちゅう通っていた道だったとのことなのですが、彼は今回の倒壊と「当局」の対応について学者や建築家にもったいぶって語らせるテレビの報道ぶりに腹を立てていました。学者らには「もったいぶる」つもりはなく、テレビ局にも「これみよがしに放映」するつもりはなかったのかもしれないけれど、そのような報道に不愉快な想いをしたのは被災者だけではなくて視聴者も含まれている(と思う)。
▼朝日新聞のこの記事を書いた記者、見出しを付けた編集者はアタマの中で何を想っていたのか?当局の怠慢を告発するのがメディアの仕事だと想っており、自分たちは単に仕事をしただけ・・・。この記事が生んだはずの女の子の家族や友人たちの怒りや絶望感のようなものについては朝日新聞の人たちは何を想ったのか・・・それを語るメディアはいないのか?この記事には校長・市教委・防災アドバイザー・警察らが登場するけれど、社会現象としての災害には彼らの行為を伝える記者や編集者も存在しているのですよね。メディアは傍観者ではない。
▼同じことが加計学園の理事長なる人物が行なった得体のしれない記者会見についても言えません?『軽すぎる「作り話」の始末(毎日新聞)』、『国会での解明が必要だ(東京新聞)』、『これでは納得できない(朝日新聞)』などと批判され、安積明子さんという政治ジャーナリストは「出てきて喋ればいいというものではない」と嘲笑する記事を書いています。
▼そもそもこの会見を可能にしたのは、「地元の記者クラブ」なるものの存在ですよね。つまり加計学園にとって「気心の知れた記者たち」が存在したこと。記者会見の結果、却ってメディアの批判を浴びてしまった理事長さんですが、記者たちを相手に喋ったという実績を積むことはできた。わざわざ国会などに来なくても「記者会見で話したやんか、それ以上のことは記憶にも記録にもありまへん」と開き直ることはできる。
▼ただ、この会見について、メディアがやるべきだったのにやらなかったことが一つだけある、とむささびは思っています。それは記者会見そのものをボイコットすること、つまり誰も出席しないということです。あるいは理事長が喋っている間に皆が一斉に退場し、その場面をニュースとして実況中継するということ。それをやったら、理事長さんが「記者会見、やったやんけ」と開き直ることができない記憶・記録として残ることになったはずなのに・・・。常識的には、ボイコットなどせずに発言者の言うことを報道した上で批判があるのなら批判をするのが正しいということになるのでしょうが、それは相手が「記者クラブの加盟社以外は出席を許さない」などという姿勢をとらなければのハナシです。
▼でも岡山の記者クラブの皆さん方は、ボイコットもせずに理事長の言葉を伝え、それを批判するという方を選んだ。おかげで理事長さんは彼なりのメッセージを伝えることができ、メディアはメディアで「批判勢力」としての自分たちをアピールすることができた。win-winというのはこのようなことを言うのでしょうね。
▼このむささびの8番目に掲載した「トランプの評判」という記事と一緒に安倍首相の評判についても紹介しました。英国人によるとShinzo Abeは "OK" なのだそうです。痛烈ですよね。パーティーのような催しをすることになって、ある人物を招待するべきかどうかで迷うことがある。そんなときに言われるのが "He's OK" です。訳すと「あいつは無害だ」ということで、「招待してしなくてもいい人物」ということです。もちろん英国人の言うことなど気にする必要は全くないけれど、Shinzo Abeが投票の対象になった理由はトランプと仲がいいということ。その意味では「外交の安倍」さんはトランプに大いに感謝しなければいけない(と思う)。
▼大阪・高槻市の小学校のブロック塀のことにハナシを戻します。あのブロック塀は小学校のプールを目隠しするように作られていたのですよね。昨日(6月23日)のTBS『報道特集』もこの話題を取り上げ、この種の建造物の安全性に関する専門家に学校や市教委当局の至らなさを語らせていたのですが、ブロック塀を作ったこと自体の善し悪しについては語っていなかった。むささびの自宅の近くにも小学校がある。そのプールには金網のような仕切りはあるけれど、ブロック塀など作られていないので、子供たちが泳いでいるのが通行人に見えてしまう。高槻市のあの小学校は何故ブロック塀でプールと道路を遮断したのですかね。もうすぐ夏休み、あの小学校のプールも開かれるでしょうね。ブロック塀はどうなるのか?専門家がお墨付きを与えるような「万全の強化対策」を施されたものが再建されるのでしょうか?金網のようなものではダメなのでしょうか?
▼むささびジャーナルは今回で400号を迎えました。「道楽」で始めたものであり、今でもそれは変わらないのですが、これは読んでくれる人がいなければ成り立たない道楽です。読んでくれている(ことを知らせてくれる)皆さまには心からお礼を言います。もう少しましな400回記念号にしたかったのですが、手当たり次第いろいろと詰め込んだ道具箱のようなものになってしまいました。口惜しいけど「力の限界」であります。お元気で!
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むささびへの伝言 |